そもそもの不動産会社数
2023年に発生した不動産仲介業の倒産は120件(前年69件)であり、前年比7割増となったことから話題となっている。倒産件数が増えたといっても、実は不動産会社(宅地建物取引業者)の全体の数は増え続けている。2023年3月末時点の宅地建物取引業者は全国で12万9,604業者存在し、9年連続の増加だ。
不動産会社は2013年から増加傾向にあるが、不動産会社の数は不動産価格とも強い相関関係がある。全国の地価も2013年から総じて上昇が続いており、不動産会社の増加と同じ傾向をたどっている。不動産価格が上がれば得られる仲介手数料が上昇し、不動産会社の経営環境も良くなるため、不動産価格の上昇と不動産会社の増加は連動しているものと考えられる。
近年の傾向として、不動産会社は毎年1,000~1,500社程度のペースで増え続けており、倒産件数よりも10倍以上の会社が増えていることから、今後も不動産会社は増加するものと見込まれる。
不動産会社倒産数の増加
2023年の全国における全業種の倒産件数は8,690件となっている。前年比35.18%であり、増加率は31年ぶりの高水準だ。
全国の企業で倒産件数が増加した背景としては、主に3つの原因が考えられている。
1つ目は、新型コロナウイルスが流行したときに融資を受けたゼロゼロ融資の返済が始まったことが倒産増加の原因とされている。ゼロゼロ融資の返済額は2024年にピークを迎えることから、ゼロゼロ融資の影響による倒産は2024年も続くと見込まれている。
2つ目は、円安による原材料費等の高騰も原因とされている。円安圧力は2022年頃から強まり始め、一向に収まる気配がないことから企業経営を圧迫する要因となっている。円安は2024年に入っても続いており、原材料費等の高騰による倒産は2024年も続くと思料される。
3つ目は、人手不足が原因とされている。人手不足は少子高齢化の影響で慢性的な問題となっており、解決策が見いだせない状況にある。2024年4月からは、運送業や建設業に時間外労働規制が適用されることから、さらに人材不足の状況が悪化することが懸念されている。
不動産会社に関しては、2023年の倒産件数は120件となっており、年間の倒産件数として過去最多を記録した。2022年の倒産件数は69件、増加率は約74%となっている。全業種の倒産件数の増加率は35.18%であることから、不動産会社は2倍以上の割合で倒産が増えたことになる。
不動産会社倒産数の考え得る原因
全業種における一般的な倒産理由としては、ゼロゼロ融資の返済や円安、人材不足といったことが要因となっているが、不動産会社の場合は少し様相が異なる。
今回倒産が増加した不動産会社のタイプは、賃貸マンションやアパートの仲介・管理を手掛けるいわゆる「街の不動産屋」だ。まず、アパート等の管理を行っている会社は、毎月、安定した管理料収入が入ってくるため、資金繰りに困らないビジネスモデルとなっている。
製造業や建設業のように大きな支出が先行し顧客からの入金が遅いビジネスでは、常に資金繰りが課題となるが、街の不動産会社はそのようなビジネスモデルではない。街の不動産会社は基本的には資金繰りには困らないことから、そもそもゼロゼロ融資を受けている会社は少ないと思われる。
また、不動産会社は国内市場を相手にビジネスを行っているため、円安の影響はほとんど受けない。むしろ、海外投資家が日本の不動産を割安と感じて購入するため、円安は日本の不動産業界にとって良い影響をもたらす傾向がある。人材不足に関しては、不動産業界にも生じている慢性的な問題ではあるが、物流業界や建設業界に比べれば人材は確保しやすい状況にある。
そのため、ゼロゼロ融資の返済や円安、人材不足といった要因は、不動産会社の倒産に必ずしも大きな影響は与えていない。不動産会社の倒産が急増した理由は別にあり、その主な理由は賃貸ニーズの減少が大きいとされている。
賃貸の成約件数は、毎年引越しシーズンである3月が最も多くなるが、その件数は首都圏では3万件前後が標準とされている。しかしながら、2023年時点では首都圏の賃貸成約件数が2万3,000件となっており、大きく落ち込んでいる。賃貸成約件数が大きく減少した理由は、在宅勤務の普及や優秀な人材の獲得を目的として転居を伴う異動制度の見直しが大企業を中心に進んだことで法人向けの賃貸ニーズが減ったためだ。加えて引越し代の高騰により、個人の住み替えニーズが減ったことも賃貸成約件数が減少した理由となっている。
3月の賃貸需要に頼っていた不動産会社では、賃貸成約件数の減少が大きな打撃となり、一部の会社では倒産までに至ったものと推測される。
業界の高齢化も大きな問題
近年、不動産業界では不動産テックという用語が使われて久しく、業務の中でIT化が急速に浸透している状況にある。不動産テックとは、「不動産」と「ITテクノロジー」を融合させた「新しい不動産サービス」の総称のことだ。
仲介会社の仕事は主に売買仲介と賃貸仲介に分かれるが、不動産テックは特に賃貸仲介の分野に早くから浸透している。賃貸仲介で不動産テックが浸透したきっかけは、2017年10月から開始されたIT重説の解禁である。重説とは賃貸借契約や売買契約の前に行う重要事項説明のことであり、IT重説とはオンラインを使って重要事項説明を行うことを指す。
IT重説は、2017年10月に賃貸仲介で解禁され、2021年3月から売買仲介でも解禁された。2017年10月は、まだ新型コロナウイルスが流行する以前の時期であり、その時点から賃貸仲介では既に非接触型の営業スタイルが広まり始めていた。
その後、新型コロナウイルスが流行すると、内見もオンライン内見が流行る等、賃貸仲介の業務では一気にIT化が浸透していった傾向がある。高齢の代表者が家族経営しているような不動産会社では、これらのIT化の波に適応できず、賃貸の成約件数を大きく減少させてしまったことが推測される。
不動産業界におけるデジタル化は今後もますます広がっていくことが予想されており、代表者が高齢か否かに関わらず、変化に対応しきれない場合には倒産リスクが高まる状況となっている。
業界に与える影響
不動産会社は倒産件数以上に開業数があり、業者自体の数は増加傾向にあることから、倒産件数の増加が業界に与える影響としては限定的であると考えられる。
業者数は増加しているため、業者間の競争が激しくなっており、生き残るには各社が差別化していくことが重要となってくる。不動産業界のIT化の流れ以外にも、法人の賃貸需要の減少という新たな変化が生じていることから、変化に対応していくことも求められている。
近年は不動産価格自体が上昇しており、経営環境としては良い状態が続いているが、差別化や環境変化への対応を怠ると倒産してしまうという事実が浮き彫りになったといえる。
今後の展望
近年は不動産価格の上昇を背景に、全体としては不動産会社の数は増加傾向にある。気になるところとしては、最近の新しい不動産会社は創業当初からいきなり買取再販事業を行っている業者が多いという点だ。
買取再販事業とは、買い取った不動産を転売して利益を得るビジネスであるが、売れ残りリスクがあるため、本来であれば資金力が十分にある会社でないと手を出しにくい商売である。しかしながら、近年は不動産価格が上昇しており、買取再販事業のリスクが低いことから、創業したての資金力のない会社でも借入金を使って買取再販事業を行っている。
仮に不動産価格が下落に転じた場合、次は資金力のないにもかかわらず買取再販事業を行っている会社が借入金の返済に窮し、大量に倒産することが予想される。不動産価格はしばらく上昇が続くものと見込まれるものの、将来の経営環境の変化を踏まえれば買取再販事業には過度に依存せず、次なる一手を講じておいた方が良いだろう。
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