水戸駅北口の現状と再開発の背景1
かつて水戸駅北口には西友が運営するLIVIN(リヴィン)が立地していた。
LIVINは、同じく北口にて2018年まで営業を続けていた丸井水戸店と並び商業施設の拠点として北口のにぎわいを創出していた。LIVINは2009年まで営業を続けていたため、当時を知る方であれば水戸駅北口のにぎわいを覚えているのではないかと思う。
LIVIN閉店後は2012年に建物解体が完了し、その後は、跡地活用の検討は継続して行われるものの空き地の状態が長年にわたって続いていた。水戸駅北口を出ると目の前に広大な空き地とむき出しの建物解体跡により、県庁所在地の駅前としてはどこか寂しさを感じさせたのではないかと思う。
水戸市は、約60万人を有する都市圏の中心地であり、中心駅である水戸駅が1日平均乗車人員としては約2.5万人とJR常磐線内では茨城県内最大の利用者数を誇り、駅構内はにぎやかである。
一方で、水戸市を含む都市圏全体の特徴として、郊外での住宅・商業開発の圧力が依然として高い傾向にある。市街化区域(市街化を促進する区域)の人口密度は、北関東の主要都市で最大となる約46.2人/haであるものの、都市計画区域内の人口に占める市街化調整区域人口(市街化を抑制する区域)の割合は27.8%と北関東の主要都市の中では最大となっている。また、水戸市は15年前に比べて市街化調整区域の人口割合が約1%上昇(約2,400人増、区域面積マイナス13ヘクタール)しており、市街地が郊外へ拡大している傾向にある。
水戸駅北口の現状と再開発の背景2
こうした状況などから、水戸市では「中心市街地活性化基本計画」の策定(第2期計画は2023年3月に国から認定を受けている)、さらには公共交通とコンパクトシティが連携した多極ネットワーク型コンパクトシティの形成を目指す「立地適正化計画」を早い段階で策定し、積極的に水戸駅周辺の中心市街地へ再投資を行っている。
水戸市では、このような取り組みを進めることで日常生活に必要なサービスが身近に存在する「すべての人が安全して暮らせる多極ネットワーク型コンパクトシティ」を目指すとしている。
近年では2023年には「建築界のノーベル賞」とされるプリツカー賞を2013年に受賞した伊東豊雄氏が手がけた「水戸市民会館」(泉町一丁目北地区再開発事業)が中心市街地に建築されている。
このほかにも、中心市街地での取り組みとして、水戸城の大手門や櫓(やぐら)の再建なども行い観光振興にも力を入れている。また、官民連携による偕楽園や千波湖といった観光地の魅力向上にも取り組んでいる。ちなみに、水戸市民会館の隣には同じくプリツカー賞を2019年に受賞した磯崎新氏(2022年没)が手がけた水戸芸術館が立地している非常に珍しいエリアでもある。
話を戻し、水戸駅北口の再開発については、2016年に「水戸駅前三の丸地区第一種市街地再開発事業」として区域面積約1ヘクタールの土地に都市計画決定を受け事業が始動した。
しかしながら、その後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等を受け事業計画を変更(縮小)するなどして工事着手が遅れていた状況だったが、今年7月から建物工事に着工する見通しとなった。
市街地再開発事業の概要
水戸市の条例に基づき設置された建築計画の標識等によると市街地再開発事業の概要は次のとおり。
・建築主:水戸駅前三の丸地区市街地再開発組合
・設計者:株式会社長谷工コーポレーション
・用 途:共同住宅(マンション)、事務所、飲食店、店舗、車庫
・階 数:地上20階、業務棟は地上4階
・高 さ:59.99m
・敷地面積:6,675.78m2
・延べ面積:24,979.94m2(容積率計算対象:17,991.25m2)
・容積率:269%(指定容積率600%)
・竣工予定:2026年12月下旬
マンション部分の売主は、株式会社フージャースコーポレーションとなっており、分譲用住戸は181戸(総戸数184戸)を予定している。同社が公表している今年4月時点の情報によると、竣工予定は2026年12月下旬、販売開始は今年11月を予定している。
計画では、水戸駅北口のペデストリアンデッキからマンション棟と業務棟のそれぞれにアクセス可能となる。
また、今回の市街地再開発では、街区のきめ細かなまちづくりを行う際に指定する「地区計画」を都市計画決定しており、水戸駅北口から歴史的景観に配慮した歩行用通路(幅員6m)が整備され、水戸の観光資源である弘道館や復元された大手門までのアクセスがしやすくなる予定となっている。
水戸市ではマンション建設が増加
近年、水戸市の中心市街地ではマンション建設が進んでいる。
水戸駅北口の市街地再開発では184戸が供給されるが、このほかにも、水戸駅南口で株式会社タカラレーベンにより225戸(竣工予定:2025年2月中旬)、北口では、株式会社穴吹工務店により84戸(竣工予定:2024年6月、完売)と水戸京成百貨店隣で商業・マンションの複合施設として71戸(竣工予定:2025年)、穴吹興産株式会社により65戸(竣工予定:2025年12月下旬)が予定されている。
いずれも中心市街地であり、総戸数は629戸となる。
また、昨年には水戸駅南口に「プラウド水戸桜川」が竣工し総戸数125戸が供給されている。これら総戸数に水戸市の1世帯あたりの人員平均2.2人を乗ずると約1,700人増となり、若干、中心市街地の人口密度を押し上げることになる。地方都市では中心市街地の人口密度が低下傾向にあるなかでは大きな効果となる。
水戸駅前周辺の市街地再開発の今後について
水戸市内でのマンション建設動向は今後どうなるのか。
水戸市では、都市づくりの方針として、まちなかの人口密度や地価の維持を掲げている。これは、中心市街地の活性化やネットワーク型コンパクトシティの形成に取り組んでいるためであるが、これら計画を根拠として、市街地再開発事業などへのまちなか投資を行っている。
2023年4月に策定している「第2期中心市街地活性化基本計画」では、駅北口の中心市街地の居住人口の目標を2022年の7,029人から2027年には8,100人とする目標を掲げている。このことから計画期間の間は、市による再開発事業等への投資は継続されると想定され、今後も計画と歩調を合わせた民間事業者の取り組みが期待される。
また本稿の文量の関係上、具体的な数値は載せないが、今年1月の公示地価を確認すると、水戸市の市街地では地価を維持(中心市街地では上昇)しており、首都圏へのアクセス性も良い水戸駅周辺はこれからもマンション需要は継続するのではと考えられる。
まとめ
今回の水戸駅北口での市街地再開発事業だが、当初、計画ではホテル用途についても検討が行われていたが現計画ではなくなり、マンション棟と業務棟(オフィス・飲食店・店舗)とされている。
現計画を見ると、主にマンション色が強いように感じられ、商業の活性化に対しては消極的な動きに映るかもしれないが、商業機能が皆無というわけではなく店舗用途も予定されているために今後の入居テナントについては期待されるところである。
LIVIN(リヴィン)閉店から10年以上が経過し、現在までに北口の丸井が閉店するなどにぎわいが低下していた北口での再開発の本格始動は商業活性化を望む市民や、一等地にもかかわらず長年にわたり更地のままであった土地が動き出すのは水戸の地域経済にとって大きくプラスに働くのではないかと考えられる。
また機会があれば、市街地再開発ビルの開業後において水戸駅北口の動向を記事にできればと思う。















