不定期に噴火を繰り返している富士山
過去5,600年間で約180回の噴火が確認されている富士山。そのうち96%は小規模あるいは中規模噴火であるが、最後に確認された1707年の宝永噴火は、非常に大規模なものだった。噴火は約2週間続き、その噴煙は上空20kmまで達した。また、降灰は100km離れた江戸の街どころか房総半島(千葉県)にも届き、関東一円の農作物に多大な被害をもたらした。この災禍から300年以上経った現在、富士山の噴火を不安視する声が絶えない。富士山が位置する静岡県の担当部署に問合せたところ、噴火が周期的に発生する明確な証拠はないそうだ。つまり、富士山はいつ噴火してもおかしくはない。
国土交通省などが事務局となっている富士山火山防災協議会および富士山ハザードマップ検討委員会では、2004年6月に富士山ハザードマップを策定していたが、17年後の2021年3月に、新たな科学的知見が蓄積されたことによりその内容を改定している。日本一高い富士山は、噴火による影響も非常に大きくなる。富士山ハザードマップの内容を確認してみよう。
富士山ハザードマップとは何か
富士山ハザードマップとは、富士山の噴火によって生じるさまざまな被害の範囲を地図上に分かりやすく表示したものだ。噴火が発生した際に、どのような被害がどの範囲まで到達するのかが一目で理解できるようになっている。
富士山ハザードマップには、「ドリルマップ」と「可能性マップ」の2種類がある。それぞれの役割は以下のとおり。
ドリルマップ
溶岩流や火砕流、融雪型火山泥流といった個々の火山現象を数値シミュレーションによって描いた分布図のこと。数値シミュレーションとは、過去の噴火履歴を参考に噴火の規模や火口の位置などを仮定し、現象の影響が及ぶ可能性がある範囲をコンピュータで計算したものだ。溶岩流の仮定発生地点は252地点(改定前44地点)、火砕流の仮定発生地点は35地点(改定前9地点)ある。なお、これは次に発生する噴火を予測したものではなく、実際の噴火では火口の位置や規模によってシミュレーションとは異なる範囲に影響を及ぼすことがある。
可能性マップ
ドリルマップを重ね合わせて、各火山現象が及びうる最大範囲や最小到達時間を網羅的に示した地図のこと。したがって、一度の噴火で、マップに表示された範囲のすべてに影響が及ぶわけではない。
なお、「可能性マップ」の対象となる火山現象は、以下だ。
●溶岩流
火口から流出した溶岩が地表を流れ下る現象。
●火砕流・火砕サージ
火山灰や大小さまざまな岩石が高温の火山ガス等と一緒になって高速で斜面を流下する現象。その中でも火山灰と空気の混ざった高熱の爆風を火砕サージという。
●融雪型火山泥流
噴火に伴う火砕流等の高温の噴出物が、火口付近の積雪を急速に解かして泥流化し、高速で流下する現象。
●大きな噴石
噴火によって火口から吹き飛ばされた岩石等が落下してくる現象。
●降灰
噴火などによって火山灰が地上に降ってくる現象。
●降灰後土石流
噴火によって斜面に火山灰が堆積すると、少量の雨でも土石流が発生する可能性が高まる。
これらについてそれぞれ「可能性マップ」が公表されている。
富士山ハザードマップ(改定版)のおもな特徴
想定火口範囲
山頂から半径4㎞以内を想定火口範囲に設定。その理由は、山頂付近は降下火砕物が厚く堆積しているため、まだ見つかっていない火口がある可能性があるからだ。
対象とする噴火年代
改定前は3200年前から現在までを参考にしていたが、改定により5600年前から現在までになった。そのうち96%が小規模噴火あるいは中規模噴火であるが、次の噴火が小・中規模になるとは限らない。
溶岩流の到達可能性範囲
大規模溶岩流の噴出量を改定前の約2倍である13億m3に変更し、地形データを精緻化したことなどで溶岩流の到達可能性範囲が拡大した。これにより、大月市(山梨県)や相模原市(神奈川県)など7市5町が新たに含まれた。
火砕流の到達距離
火砕流の噴出量を改定前の240万m3から1,000万m3に見直したことや地形データの精緻化によって、火砕流の到達距離が長くなる傾向となった。
融雪型火山泥流の危険度区分
新たに融雪型火山泥流の到達時間による区分および危険度区分を追加した。
融雪型火山泥流の範囲
発生原因となる火砕流の想定噴出量の増大や地図データの精緻化によって、融雪型火山泥流が遠方まで届く結果となった。
情報量は膨大。各自治体に問合せるという手もあり
このように富士山ハザードマップを確認すれば、富士山周辺のどこにどのような被害が出る可能性があるのか、詳細に把握することができる。だが、上記リンク先を見てもらえれば分かるように、その情報量は非常に多く、容易に理解できるようにまとまったパンフレットなどは今のところない。そのため、ある程度時間に余裕があるタイミングで確認する必要があるだろう。ただし、周辺の自治体によっては、このハザードマップを参考に避難方法などをまとめたパンフレットなどを作成しているところもある。そのような資料がないのか、各自治体へ問合せしてみるという手もある。
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