外国籍住民の多い、大阪コリアタウンのあるまち
本格的な韓国料理店、露店販売型のキムチ店や食材店が、狭い通路の両サイドに並ぶ。御幸通商店街、御幸通東商店街と御幸通中央商店街の3つから成る「大阪コリアタウン」は、大阪・生野区にある。歴史的背景によって、数世代にわたる在日韓国人や起業のために来日した韓国人が多く生活するエリアであり、近年の韓流ブームもあって、観光客で賑わうスポットにもなっている。
区民の5人に1人が外国人という大阪・生野区。また2022年5月末時点で、54ヶ国の人々が暮らしているというデータもあるほど、全国的に見ても、都市部では外国人の人口比率が高い傾向にある(※総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」2021年1月1日より)。国々に分かれたコミュニティが多く存在しているため、他国間のコミュニケーションが希薄となり、子育てや災害時などで孤立する人が生まれてしまうという問題も生まれている。
他にも外国ルーツの子どもたちが持つ言葉の壁のため、教育が十分に受けられていないというケースもある。大阪市では、子どもたちへの日本語・適応指導や教育相談など、この多文化・多国籍地域ならではの課題に取り組んできた。しかし該当する子どもたちの増加により、対応が追いついていないという現状だ。
生野区の持つ課題に取り組む、多文化共生の拠点
そんな生野区に2023年5月3日、多文化共生の新拠点が誕生した。「いくのコーライブズパーク(略称:いくのパーク)」は、つなぐ・まなぶ・たべる・はたらく・つどう・たのしむ・つたえる・まもるという8つの機能を兼ね備えた大型複合施設である。
2021年3月に閉校となった御幸森小学校は、韓国や朝鮮にルーツを持つ地域の子どもたちが通い、世界各国のさまざまな文化を学び、多文化共生教育に取り組んできた100年の歴史がある。この施設をそのまま活用し、1〜3階、屋上スペースに飲食店、スポーツスクールやNPOなど合計22のテナントが入居する。
大人気YouTuberフォーエイトのマネジメントも行う会社が運営する撮影スタジオがあったり、日本ドローン機構株式会社がドローン講習を行う拠点があったりと、多種にわたる事業体が集まっている。
運営するのは「株式会社RETOWN」と「NPO法人IKUNO・多文化ふらっと」。これから20年間の貸付期間中の運営は共同事業体として共同運営を行う。リーシングもほぼ半分ずつ負担し、大阪市に賃料を納めるスタイルで運営される。
民間✕NPO法人✕行政で取り組む、まちづくり
運営事業体の強みが異なるのが、興味深いところだろう。株式会社RETOWNは「食を通したまちづくり」をビジョンに掲げ、まちが本来持っているポテンシャルを生かして拠点を作るローカルデベロッパー事業を行っている。大阪・大正エリアの水辺空間を活用した複合施設「TUGBOAT TAISHO」の運営も記憶に新しいだろう。
一方のNPO法人IKUNO・多文化ふらっとは、大阪市生野区において「誰一人取り残さない」多文化共生のまちづくりを目指して活動している団体。市民が主導となり人的交流、情報交換や学びと実践の場となるプラットホームづくりに力を注いでいる。
またいくのパークは、地域の防災拠点として、地域住民を守る役割も担っている。災害時には開放され、大阪市主導で避難場所として部分的に活用されることとなる。
「生野区は課題が多い分、ポテンシャルのある場所。民間とNPOと行政が関わりあって運営していく施設というのは、全国的にも希少な取り組みだと思います。『NPO法人 IKUNO・多文化ふらっと』さんの地域に根ざした活動と、われわれ(株式会社RETOWN)の食を中心とした事業は相性抜群。食は国を超えた文化交流を可能とするからです。それぞれの強みが発揮されることで、これまでにない相乗効果が生まれることを期待しています」と株式会社RETOWN 代表取締役・松本篤さんは話す。
ビール醸造所、YouTuber用撮影スタジオ、ダンススクールなど多種多様な22テナント
食のコンテンツも豊かだ。1階の喫茶室みゆきもりは、元保健室。床材や体育館の椅子をそのまま使うことで、新店舗だけれど落ち着きのある空間に仕上がっている。名物メニューは「いくのコロッケ」。新名物になればとの思いが込められている。給食室はほぼそのまま活用され、CiXホールディングス株式会社(株式会社RETOWNのグループ会社)が行っている事業「飲食人大学」が移設された。お寿司、中華料理の2つのコースが用意されており、中華料理コースに関してはミシュランシェフの澤田州平さん(中国菜エスサワダ・オーナーシェフ)がカリキュラムを組んだもの。包丁での魚のさばき方からメニュー作りまでを一貫して3ヶ月で学べるコースとなっており、転職先相談も行う。
大阪のクラフトビール醸造所「MARCA BREWING」は北堀江から醸造所を移転し、いくのパークの地ビールも誕生予定。屋上バーベキューが楽しめる「いくのBBQスカイパーク」は、プールそのものが飲食会場。機材レンタルをすれば、コリアンタウンで仕入れた肉やキムチを持ち込んで、この場所で食べることができる。まさにこの土地ならではの楽しみ方だろう。
言語の壁を超えて、まちに寄り添いサポートする
「入居テナントの募集には、多文化多世代のサポートと学びという2つを軸に行いました」と、NPO法人 IKUNO・多文化ふらっと 代表理事・森本宮仁子さんは話す。図書館ふくろうの森は、図書室兼子育てスペース。日本語以外の7〜8ヶ国語の本も用意されており、多国籍の子どもたちにとっても優しい図書館だ。
2階の特定非営利法人コリアNPOセンターでは、在日コリアンの人権にまつわる問題に取り組んだり、キムチづくりやハングル教室など、異文化体験プログラムの実施をしている。3階の保育施設「大阪聖和保育園」では、一時・休日保育も行っている。また「つどいの広場」は、親子であれば誰でも登録無しで利用できるスペース。子育て世代にとっては、安心して子どもと過ごせる居場所となるだろう。
「私たちの目標は、この地域に住み暮らす人の課題解決を行うこと。そして誰が訪れても暮らしやすいまちを、20年かけて作り上げることです。日本だけでなく、韓国を始めとする海外からも注目されているエリアでもあります。これからの時代に必要とされる多文化共生をいち早く実現し、全国NO.1のグローバルタウンを目指したい」と松本さんと森本さんは締めくくった。
まちの課題を解決しながら、学びや食を通して交流しながら、まちの機運を高めていく。いくのパークが地域に果たす役割は大きそうだ。どのように溶け込んでいくのか、これからの生野区に注目したい。
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