千里ニュータウンとともに生まれた、自然あふれる千里中央公園
北大阪急行電鉄の終点「千里中央」駅から東に向かって歩いて10分ほど。帰宅途中の高校生、買い物袋をかごに乗せたママさんたちやカートを押して歩くお年寄りとすれ違いながら、緑に囲まれた道を進むと千里中央公園にたどり着く。千里中央公園は豊中・吹田両市にまたがる千里丘陵にあり、1963 年に開業した千里ニュータウンと共に生まれた。高度成長期の都市計画で生まれた人工のまち・千里ニュータウンは、一戸建て住宅と集合住宅が100 万戸を超える建設を行う方針のもと生まれた専用住宅地だ。自然が多く静かで快適な環境が人気で、今でも多くの世帯が暮らしている。
面積14.2haの総合公園には、巨大アスレチックや総延長150mのローラースベリ台、体育館や野外炊さんコーナーなど子どもが楽しめそうな遊び場が揃っている。またなによりの魅力はその自然の多さだろう。老若男女がそれぞれの目的で訪れる、市民の生活に寄り添った公園だ。
この千里中央公園内に2023年3月30日、新施設「1OOORE SCENES(センリシーンズ)」がオープンした。豊中市が進める「千里中央公園再整備にかかる活性化事業」の取り組みとして、豊中市と民間事業者が連携して地域とともに整備を進めてきた施設だ。
量の整備から、質の整備へと舵を切る
豊中市が「千里中央公園再整備における活性化事業」で目的に据えているのは、公園の特性を生かした運営への移行だ。公園をまちの環境をつくる一つの要素とみなして、利用価値を引き出し、地域コミュニティの形成や周辺地域への経済効果を与える魅力ある公園づくりを目指していく。活性化事業は公募により選ばれ、運営に携わるのは「千里中央公園パートナーズ」だ。構成企業は、代表を務めるエイチ・ツー・オーリテイリング株式会社(以下、H2O)、株式会社ローソン、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)という3社。他協力企業8社と豊中市が連携しながら、ここを拠点に千里中央公園の活性化を図っていく。
「千里中央公園に求めるテーマは『くつろぎ』『遊び』『活気』。そこで私たちは量の整備から質の整備へ舵を切りました。具体的には、住民一人あたりの公園面積を増やすという量の視点ではなく、市民が使いたくなる公園を育てようとする質の視点です。豊中市には大小約480の公園がありますが、地域に暮らす世帯や住民のライフスタイルが変わるとともに、公園に求められるニーズも変わっている現状があります。公園の再整備基本計画を立てる際に、近隣住民へ行ったアンケート結果では、公園内にくつろげる飲食店や施設がほしいなどの要望も上がっていました。一方で、都市部の豊かな自然をいたずらに壊してほしくないという声もあります。これらを両立させて1OOORE SCENESは誕生しました」と豊中市公園みどり推進課の日高厚さんは話す。
LABOで行う、住民を主体的に巻き込んだプロジェクト
20年間使われていなかった旧公園管理事務所をリノベーションして、1OOORE SCENESは完成した。施設にはイタリアンカフェ「SEN°C(センド)」、ミニショップ「LAWSON(ローソン)」、コミュニティスペース「LABO(ラボ)」が併設される。運営のプロジェクトリーダーであるH2Oは、阪急百貨店や阪神百貨店を展開し、大阪だけでなく関西に暮らす人々の生活を支え続けてきた小売業者だ。改めてこの場所で地域の一員となり、公園を通して地域活性化に取り組むために、施設が完成する以前からさまざまなワークショップを行ってきた。
2022年7月には、『1OOORE PARK LABみんなでつくる千里中央公園 講座編』が行われた。「講座編」では、まちづくりや公共空間のマネジメントを専門とする講師のレクチャーが6回行われ、公園での活動の可能性について意見交換がなされた。続いて10月から開催の「企画・実践編」では5回連続講座として、公園の資源をどう生かしていくかという問いかけから、他市の事例紹介、企画立案から実践までを行った。そして2023年4月2日には、「企画・実践編」で生まれた企画イベントが公園内で披露された。
「あくまでも主役は地域住民。地域の方々が公園でやってみたいことやお困りごとなどを聞きながら、私たちも地域の一員だというスタンスで、一緒になって公園の遊び方から考えるようなプログラムを進めていきたいです」と、千里中央公園パークマネジメント株式会社 代表の杉本良平さんは話す。
パークコミュニケーターが公園と住民をつなげる
1OOORE SCENESの中で、特徴的なのが、コミュニティスペース「LABO(ラボ)」だろう。LABOには、パークコミュニケーターという千里中央公園パートナーズのスタッフが常駐し、地域住民と直接関わりながら公園でやってみたいことやお困りごとなどを聞きながら公園づくりを行っていく。
「LABOは、地域住民同士が交流を深め、皆で一緒に公園づくりをするための拠点です。公園って、人が常駐しているところって意外と少ないと思うんですよね。私たち運営事業者が、リアルな地域の声を聞くための場所でもあり、人と人をつなぐという役割も含めて、緩やかなコミュニティが生まれていくことを想定しています」と、パークコミュニケーターの原田綾子さんは話す。
2021年12月頃から千里中央公園パートナーズと豊中市の定例会議も毎週1回行われている。官民連携で公園事業を進める中で、起こる問題や議題を検討しながら前に進んできた。公園の落とし物から、設営物の可否など、些細なことから大きなことまで議題に上るそうだ。一つひとつ解決していくことで、「やっと様式美ができあがってきた」のだそう。
自分たちの公園を、どう使い倒すか
「公園って面白くて、実は2年前にベンチを増やしたのですが、それだけで人が滞在するようになりました。同じようにこの拠点ができたことで、新しい動きが生まれつつあることをまさに体感しています。LABOの活動によって地域の方と距離が縮まり、意見交換をする場面も増えていくと思います。行政だけでは思いつかない斬新なアイデアがたくさん出てくる一方、どう許可をとって進めていくかはこれからの課題ですね。何でもNGにするのではなく、運営事業者や住民の意見をなるべく前に進められるようにしていきたい」と豊中市公園みどり推進課の市村崚さんは話す。
自然豊かでアクティビティが豊富だという千里中央公園の良さをどう生かしていくのか。「これから20年続く事業です。持続可能なサービスにするために、一定の利益は目指していますが、地域をつなぎ、人が集まり公園が賑わうという目的をまずは達成したいです。今後、公園運営を手伝いたい人や企画をやりたい人などと積極的に関わっていきたい。公園使いを自分ごととして考えられる、ひとつのコミュニティがつくれたらいいですよね」と杉本さん。公園の問題は、公園で考える。公園を使う人が、使いたいように設える。新しい公園を実現するための基盤づくりは、今始まったばかりだ。




















