まちの小さな公園が喫煙者でいっぱいに!?

名古屋駅からデパートや商業ビルが立ち並ぶ中を歩いて南東へ10分ほど。広小路通と呼ばれる大通りから路地を入った2つ目の区画に小さな公園がある。北と東側は道路に面し、南と西は立体駐車場の建物となっている。

ここで2022年11月から社会実験が始まった。名称は祢宜(ねぎ)公園というのだが、この数年、“灰皿”公園と別名が付けられてしまうほどに喫煙者の利用が増加。吸い殻をポイ捨てするマナー違反が横行するようになってしまった。社会実験では、誰もが心地よく憩える公園を目指し、検証していく。

この活動を進める「名駅南地区まちづくり協議会」の会長・近藤多喜男氏、副会長代行・内藤誠氏、副会長・矢野祐敬氏に、その先にあるまちづくりについても含めて話を伺った。

名古屋駅からほど近い、名駅南地区にある祢宜公園。近年、全国的にも問題になっている喫煙者のマナー違反に悩むように…(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)名古屋駅からほど近い、名駅南地区にある祢宜公園。近年、全国的にも問題になっている喫煙者のマナー違反に悩むように…(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)

まちの移り変わりで「陸の孤島」に

名駅南地区の位置※名駅南地区まちづくり協議会発行「名駅南地区まちづくりビジョン」より名駅南地区の位置※名駅南地区まちづくり協議会発行「名駅南地区まちづくりビジョン」より

名駅南地区は、名古屋城の西の玄関口となる街道があり、古くから“まち”が形成されていたという。そんななか1886(明治19)年に名古屋停車場(笹島駅)が設置されて発展。1937(昭和12)年に北へ約400mのところに現在の名古屋駅が開業すると、笹島駅は貨物専用駅に。笹島駅から港を結ぶ中川運河と堀川という水上輸送路と隣接していたこともあり、流通業務地区としての土地利用が進んだ。1945(昭和20)年には戦争で焼け野原となってしまったが、流通関連の建物が再びでき、まちの賑わいも戻った。

その後、1986(昭和61)年に笹島貨物駅が廃止されると、倉庫などは減少。またバブルの影響で土地の値段が上昇したことで、個人の住宅を手放す人も増えた。生まれも育ちも名駅南地区という近藤氏は、「陸の孤島みたいな感じになってしまって」と振り返る。

そんななかでまちの治安を維持するため、近藤氏が事務局長となって住民による「安心快適な名駅南まちづくりの会(名南会)」を立ち上げた。そのときから祢宜公園にも後述するような課題があった。なお、その後に「安心快適な名駅南まちづくりの会」の活動に自分たちも何かできないかと、エリア内に社屋などを構える企業が集まって2010(平成22)年に「名駅南地区まちづくり研究会」を設立。6年後に「名駅南地区まちづくり協議会」となり、住民やエリア内の企業、飲食店などと連携してまちづくりを進めている。

もともと地域の人たちの寄附によって子どもたちのためにと作られ、町内会の祭りなども行われていた祢宜公園。治安維持のために柵を設置したが、子どもたちも遊びにくい状況になってしまった。遊具を作るなど試行錯誤するも、事務所などが増えてビジネス街として栄えてくると、違法駐輪に加え、新たな問題が浮上する。

2018(平成30)年の改正健康増進法成立により、受動喫煙防止対策がされるようになったことで屋内禁煙とする企業が増え、喫煙者が公園を利用するようになった。すぐ近くの広小路通が歩行喫煙禁止区域である影響もあると考えられる。密を避けることが求められたコロナ禍では、特に顕著になったそうだ。

名駅南地区の位置※名駅南地区まちづくり協議会発行「名駅南地区まちづくりビジョン」より左から、「名駅南地区まちづくり協議会」の矢野祐敬副会長、近藤多喜男会長、内藤誠副会長代行

新たな住民層が増え始めたことをきっかけに公園の利活用を考える

遊具は、老朽化などで撤去したこともありブランコが残るのみで、面積も小さい祢宜公園。エリア南部には遊具や噴水、花壇があるより広い公園があるが、祢宜公園は名古屋駅に近い場所にある公園としての価値に期待がかかる遊具は、老朽化などで撤去したこともありブランコが残るのみで、面積も小さい祢宜公園。エリア南部には遊具や噴水、花壇があるより広い公園があるが、祢宜公園は名古屋駅に近い場所にある公園としての価値に期待がかかる

名駅南地区はどんどん変化している。そこには、2027年予定のリニア中央新幹線開業を見据えた動きも。名古屋駅から徒歩圏内、そして名古屋駅地区と並ぶ繁華街の栄や大須方面へ向かう途中に位置する利便性のある場所なのだ。企業の事務所の進出や、そこで働く人々や名古屋駅を訪れた観光客を主なターゲット層にした飲食店が増加。近年は、大手デベロッパーによる分譲マンションが次々と誕生し始めている。

名古屋駅という一大繁華街の近くにありながら、歩道が広くて歩きやすく、ほどよい落ち着きがある雰囲気。これまでのマンションはエリア内にある企業で働く単身者や、近くの大学に通う学生といった層に向けたワンルームが多かったが、新たな分譲マンションはファミリー層にも対応する部屋が増えた。

「いま、名駅南のまちには、住みやすく、来訪者も過ごしやすく、働きやすくと、いろんな切り口があります。その一つが祢宜公園なんです」と近藤氏。

新しいマンションに移り住んだ子どものため、働く人のために。そして、名古屋駅から歩いてきたときに、名駅南地区の入り口のような場所にあることで、「歩きやすいまちのためのスタート地点というものになりたいね」と。そこで協議会は、ワークショップを立ち上げた。

人工芝で緑の空間を増やし、ポイ捨てを減らす社会実験

町内会で“灰皿”公園となってしまった祢宜公園の清掃を行ってきたが、多くの地域がそうであるように、参加する人々の高齢化などで負担が大きくなってきていた。それもあって、協議会が取組みを進めることにした。

ワークショップを主宰する内藤氏が経緯を教えてくださった。「調査をしてみると、95%ぐらいが喫煙利用のみという結果が出ました。入りづらい雰囲気になっていることと、ポイ捨てがかなりひどくて。きれいにしては捨てられてまた汚くなるという繰り返しでした。地元の課題ということで、ワークショップを立ち上げ、まずは、緑が足りないね、ベンチとかがあるといいよねなど、こういう風になったら、という案を出しました」

名駅南地区まちづくり協議会による清掃活動の様子。かつてはポイ捨てされた吸い殻が1,000本ほどあったときも(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)名駅南地区まちづくり協議会による清掃活動の様子。かつてはポイ捨てされた吸い殻が1,000本ほどあったときも(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)
名駅南地区まちづくり協議会による清掃活動の様子。かつてはポイ捨てされた吸い殻が1,000本ほどあったときも(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)ワークショップで出された祢宜公園の整備イメージ(資料提供:名駅南地区まちづくり協議会)

そして月2回の有志による自主清掃や、携帯灰皿を配るなどの物理的な対策をしたあと、協議会内にワーキンググループを設置。町内会や学区、行政などと協力しながら調査や社会実験の具体的内容の検討をした。

そして、ワークショップでの利活用プランでも提案されていた、芝生広場があることでマナーを守る機能ができればと人工芝を敷くことに。第1弾を2022年11月に、第2弾を2023年2月に行い、現在は敷地の半分ほどが緑の空間になった。

社会実験の開始約2週間前に、芝生の上での禁煙について告知看板の設置や周辺にチラシを配布するなどして呼びかけた。月1回行っている調査の結果を見てみると、芝生の上へのポイ捨てが減少しているそうだ。

名駅南地区まちづくり協議会による清掃活動の様子。かつてはポイ捨てされた吸い殻が1,000本ほどあったときも(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)公園の地面がコンクリートで天然芝を植えることが難しいため、人工芝を選択。空間に緑が備わると、癒しの雰囲気がグッと引き立つ

まちを活気づける取組みを公園利用に広げる

「クリばこ」(http://kuribako.com/)は、良好な地域環境の形成に貢献していると認められる建築物などが表彰される「愛知まちなみ建築賞」を2018年度に受賞している(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)「クリばこ」(http://kuribako.com/)は、良好な地域環境の形成に貢献していると認められる建築物などが表彰される「愛知まちなみ建築賞」を2018年度に受賞している(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)

さらに「喫煙者以外の方に来ていただくきっかけづくりとして」(内藤氏)と、イベント開催も行う。

協議会では祢宜公園の取組みよりも以前の2015(平成27)年から、“クリエイティブチャレンジ”と題してエリア内を東西に延びる三蔵通(みつくらどおり)と呼ばれる道路を軸にして、クリエイティブなことでまちを活気づけようという活動を実施していた。

三蔵通沿いにある立体駐車場の1階部分に「クリばこ」という名称で、アーティストをはじめとする人たちの「やりたい」を叶える場所としてシェアキッチンも備えたレンタルラウンジを作った。展覧会や子どもたちのパフォーマンス披露、路上ライブなど幅広く利用されつつも、コロナ禍で残念ながらストップしていたが、2022(令和4)年から再始動した。

そんななか、名古屋市が行う、アーティストや文化芸術団体などの活動支援や観光・まちづくりなどのさまざまな分野との連携を促進する「クリエイティブ・リンク・ナゴヤ助成事業」に協議会の取組みが採択された。

そこで“クリエイティブチャレンジPart2”として、クリばこと共に祢宜公園も舞台に、2023年3月3日~10日にイベントを開催。

路上ライブや学生団体による寸劇などがクリばこや周辺で行われるなか、祢宜公園では書道家による書道パフォーマンスを実施。喫煙者だけではない、多くの人々がイベントのために公園を訪れた。

また、2023年3月より毎週水曜日にキッチンカーを入れる取組みも始めた。

「芝生を敷いて緑が増え、ポイ捨てが減ってきたので、少しずつ新しい利用を増やしていきたい。子どもたちが公園に増えたかというと、まだそこまではいっていないですし、芝生を敷いたことを気付いてない方もいらっしゃるので、知っていただく機会としてもイベントやキッチンカーを呼んだりという試みを2023年度も引き続きやっていきたいなと思っています。近隣住民で増えたファミリー向けや子どもたちのためのことも考えていければ」と内藤氏。

立体駐車場の建物の壁に面していることを活用しての映画上映や、公園の機能としてベンチの設置などを構想しているそうだ。

「クリばこ」(http://kuribako.com/)は、良好な地域環境の形成に貢献していると認められる建築物などが表彰される「愛知まちなみ建築賞」を2018年度に受賞している(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)2023年3月に開催された、書道パフォーマンスの様子(写真提供:名駅南地区まちづくり協議会)

魅力を発信しながら、よりよいまちへ

名駅南地区では、クリエイティブチャレンジのメイン舞台となる三蔵通と、祢宜公園も面する名駅南通(仮称)に花のハンギングバスケットを設置している。もともとは、2016年にエリア内に誕生した劇団四季の専用劇場への道しるべとして始まったものだが、現在も引き続き協議会主体で手作りして、まちを美しく彩って景観を魅力あるものにしている。

まちの景観を美しくするハンギングバスケットまちの景観を美しくするハンギングバスケット

そういったことを含めて、地区の“魅力”を発信するためにSNSの活用を始めた。ただ、エリア内にある飲食店のPRもと連携を深めようとしたところでコロナ禍となり、一時中断に。そこで、「名駅南まち歩きMAP」を制作した。

「名駅南を訪れた方に、こんなところですよとお伝えする“地図”がいいんじゃないかと。エリア内を歩いていただくのにも参考になります。食事ができる飲食店がメインに記載されていますが、クリばこの場所や、ここは社寺仏閣が多いという歴史的な面など、協議会の会員の方が紹介したいと思うところをアンケートで取り、そのなかで掲載可だったところを載せました。これからコロナも収まっていくと思いますので、この地図と連携してSNSも利用しながら、魅力発信ができればと考えています」と矢野氏。

協議会のオブザーバーとなっている名古屋工業大学の学生に協力してもらったイラストもおしゃれで、見て楽しい地図になっている。エリア内のビジネスホテルとマンションのモデルルームにも置いてもらい、好評を得ているという。

2022年10月からは、協議会のほか名古屋市や警察などが参加し、まちづくりの施策を決める「名駅南まちづくり懇談会」もスタートした。

名駅南地区がまちづくりの方針としているのは、「住みたい 働きたい 憩いたい 心地よいオアシスのまち」「創りたい 楽しみたい わくわくドキドキ集うまち」「訪れたい 寄り道したい ふらりブラブラできるまち」「明るい きれい ほっとしたい スマイルあふれるやさしいまち」という4つだ。

その方針に向けて着実に進み、小さな公園を“灰皿公園”と呼ばれることから抜け出すことを含めて、熱い取組みが行われていると実感した。土地利用の多様化が進みつつも、駐車場などの低未利用地も目立つという名駅南地区。まちの変革期を迎え、たびたびお世話になっている来訪者の1人としてその未来に大いに期待したい。

取材協力:名駅南地区まちづくり協議会 http://meiekiminami.com/

まちの景観を美しくするハンギングバスケット名駅南地区まちづくり協議会が制作した「名駅南まち歩きMAP」。裏面には飲食店などスポットの詳細説明を記載。本地図は協議会のホームページからダウンロードできる

公開日:

ホームズ君

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