活力ある都市の未来を見据えるスーパーシティとは

全国に先駆けて、本格的なスーパーシティを目指すことになった大阪市全国に先駆けて、本格的なスーパーシティを目指すことになった大阪市

大阪市がスーパーシティ型国家戦略特別区域(以下、スーパーシティ特区)に指定されたのは、2022年4月。そこまでの経緯はこうだ。2020年9月に改正国家戦略特区法が施行され、同年12月、全国の地方公共団体に対するスーパーシティ特区の公募が開始された。31の地方公共団体から提案があったが、各提案に対して再提案の依頼がなされ、さらなる調査や諮問会議を経て大阪市とつくば市がスーパーシティとして閣議決定されている。

スーパーシティ構想は、内閣府による地方創生戦略の一つである。内閣府地方創生推進事務局は「住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指す」(スーパーシティ・デジタル田園健康特区について:内閣府地方創生推進事務局 2022年12月より)ものと、その構想を掲げる。
AIやビッグデータなどを活用し、地域の課題を解決するにとどまらず、より良い暮らしへ発展させることが狙いとされ、地域住民への先端的サービスを実現するために、幅広い分野が連携していくこと、また、それらを実現させる大胆な規制改革を一体的に推進するという。

本稿では、スーパーシティに指定された大阪市が2022年12月に策定した「大阪スーパーシティ全体計画」の概要を説明する。

先端的サービスを速やかに社会の仕組みとして、全国都市の課題解決につなげたい

大阪市の人口は275万人、大阪府全体の人口は882万人にのぼるが、スーパーシティへの取り組みは、大阪府と連携して計画を推進するとしている。大阪市には「夢洲」と「うめきた2期」という2つの広大なグリーンフィールドがあり、それらを活用し、先端的サービスの実証や実装を行う計画だ。一からまちづくりを行うグリーンフィールドの性質から、速やかに先端的サービスの実証や実装が可能となるという。

大阪市の計画では、この「速やかに」という点が重要だ。なぜなら大阪市が目指すスマートシティは、やがて「全国都市の課題解決をリードする存在となる」とも謳われ、将来的に大阪市の枠を超えて全国の都市のデジタル化をリードすることを目指しているからだ。

グリーンフィールドの一つである夢洲グリーンフィールドの一つである夢洲

大阪スーパーシティは、3つのプロジェクト展開を計画

大阪スーパーシティ全体計画のテーマは「データで拡げる“健康といのち”」だ。
ヘルスケアの分野では、豊かに暮らす健康長寿社会を目指し、ビジネス・イノベーションの分野では、活力にあふれるデータ駆動型社会を、モビリティではストレスフリーな最適移動社会を軸に取り組みが進められるという。具体的には2つのグリーンフィールドで3つのプロジェクトを展開していく計画だ。

スーパーシティには新規開発型のグリーンフィールド型と、既存都市型のブラウンフィールド型があり、大阪市は前者のグリーンフィールド型を提案してスーパーシティ特区に指定されている。
そのグリーンフィールドが「夢洲」と「うめきた2期」というわけだ。大都市に位置するこれらのエリアは、先述のとおり先端的サービスの実証や実装を速やかに行えるというのが選定理由とされている。この2つのグリーンフィールドで「夢洲コンストラクション」と「うめきた2期」、そして2025年に開催される国際的な博覧会の3つのプロジェクトが、段階的に行われる。

2つのグリーンフィールドで3つのプロジェクトが計画される(出所:大阪市「大阪スーパーシティ全体計画」)2つのグリーンフィールドで3つのプロジェクトが計画される(出所:大阪市「大阪スーパーシティ全体計画」)

2023年度から「夢洲コンストラクション」がスタート

夢洲は、大阪市此花区内にある人工埋立地だ。2025年、この地で国際的な博覧会が開催される。イベントの関連整備、跡地撤去、跡地開発に際し、「夢洲コンストラクション」プロジェクトとして、
① 建設工事現場内外の移動
② 建設工事及び資材運搬
③ 建設作業員の安全・健康管理
の3つの円滑化を推進すると説明されている。
たとえば、建設現場にドローンを活用する。資材運搬、測量、工事管理、現場の見守りなどにその活用が謳われているのは、作業の円滑化はさることながら、作業員の安全を考慮してのことだ。また資材の効率的輸送と作業員の移動には、自動運転バスを使うことが盛り込まれ、交通渋滞の緩和を目指す。

2024年度には「うめきた2期」が一部先行まちびらき

うめきたは、JR大阪駅北側にあった梅田貨物駅跡地を中心とする開発エリアだ。先行開発区域のうめきた1期はグランフロント大阪などがそれにあたり、2013年に完成。続くうめきた2期を、スーパーシティ特区のプロジェクトに挙げた。

Parkness Challengeとして「ライフデザイン・イノベーション」をテーマに、「超スマート社会が到来する中、IoT やビッグデータなどの活用により、創薬や医療機器開発などの分野にとどまらず、人々が健康で豊かに生きるための新しい製品・サービスを創出」すると説明されている。たとえば、大阪広域データ連携基盤(ORDEN)によって、場所や国籍を問わず先端国際医療サービスが受けられたり、「ヒューマンデータとAIの分析で、個々に合った健康促進プログラム」を受けられたりするという。また“みどり×IoT×健康“でロボットが管理する公園「うめきたパークネス」などのまちづくりも計画されている。これらのサービスは、将来的には他の地区でのまちづくりにも活用される予定だ。

うめきた2期エリアは、JR大阪駅に隣接する一等地だうめきた2期エリアは、JR大阪駅に隣接する一等地だ

2025年に開催される国際的な博覧会もスーパーシティ計画の一部に

1970年に大阪で国際的な博覧会が開催されたときに建てられた岡本太郎デザインの「太陽の塔」は、今なお大阪北摂エリアのシンボルとしてそびえ立つ。55年の時を経て2025年、再び大阪で国際的な博覧会が開催されようとしている。

イベントは「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマ。サブテーマには「Saving Lives(いのちを救う)」「Empowering Lives(いのちに力を与える)」「Connecting Lives(いのちをつなぐ)」と掲げられている。世界中から2,820万人が集うと予想されるこの国際的な博覧会は、豊かな未来社会の実現に向けて“未来医療が体験できるサービス”のほか、世界のさまざまな最先端技術を体験できるビッグイベントだ。これをレガシーとして継承したいと大阪市は意気込む。

既述の「夢洲コンストラクション」プロジェクトに加えて、イベント開催期間中は、会場内外で自動運転によるバス移動を実施。会場へのアクセスには、日本初の空飛ぶクルマを実装する計画だ。これはスーパーシティ計画の中でも、ひときわ大きな注目の的となるのではないだろうか。

また、2016年からフィンランドで実証実験され日本でも関心が寄せられる、MaaSの導入も挙げられている。MaaSとは、複数の公共交通機関や移動手段の中から最適な組み合わせを即時に選び出し、一括して検索、予約できるばかりか、料金の決済までもワンストップで行う移動関連サービスだ。

これによりストレスのない最適な移動社会を目指し、実社会での実装へとつなげるために大阪スマートシティ計画で実証したい考えだ。

夢洲には、地下鉄の延伸も予定されている夢洲には、地下鉄の延伸も予定されている

大阪スーパーシティ全体計画が示す未来へのビジョン

これらの計画は、もちろんその場限りのイベントプランではない。「豊かに暮らす健康長寿社会」「ストレスフリーな最適移動社会」は、博覧会終了後の2026年度以降、実社会に実装されることが前提だ。たとえば、健康・医療・介護・スポーツなどのサービスは、データ連携基盤の活用やAI分析よって個々に合ったものを適切なタイミングで受けられるという。
データ連携基盤は交通・観光にも活用され、ストレスのない移動を可能にするだけでなく、さまざまな移動サービスが「新たな価値を創出」する。そのために「大胆な規制改革を伴う先端的サービスを実装するとともに、イノベーションの担い手となる企業等の創業支援・ビジネス環境整備にも注力し、大阪府域につなげていく」と示されている。

大阪は商人の町として発展した町だ。天下の台所として食文化が発展し、また文楽や上方落語といった芸能文化も育った。近代においても数々の民間企業が育ち、その活力で発展してきた背景がある。
かつては東京に次ぐ大都市と言われた大阪だが、近年その存在感が薄まる中でも地方創生に向けた国家戦略スーパーシティ特区に指定されたのは、そんな大阪が持つポテンシャルへの期待度が高いからではないだろうか。
さらに京都や神戸などの関西経済圏の中心地にあり、関西全体の発展のために地理的にも好都合といえる。東京一極集中の解消が叫ばれる中で、国として「大阪をもう一つの日本の核に」という思惑もある。大阪から始まるスーパーシティによって、かつての大阪が発展してきたような活力が再び生まれることを期待したい。

データ活用やデジタル技術の進展は、暮らしの未来地図にはもはや欠かすことはできない。具体的な都市デザインとして描かれた「大阪スーパーシティ全体計画」が、日本の社会が抱える課題の解決に向けて、ひとつのメルクマールを示す存在となってほしいと思う。

都市課題の解決へ、デジタル&データ活用による未来デザインを描くスーパーシティ構想(画像はイメージ)都市課題の解決へ、デジタル&データ活用による未来デザインを描くスーパーシティ構想(画像はイメージ)
ホームズ君

LIFULL HOME'Sで
住まいの情報を探す

賃貸物件を探す
マンションを探す
一戸建てを探す