蒲蒲線の計画概要

京急蒲田駅京急蒲田駅

JR蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐ新空港線(通称、蒲蒲線)の計画が実現に向けて動き出している。蒲蒲線とは、東急多摩川線が矢口渡駅付近から地下化され、東急蒲田駅と京急蒲田駅を地下鉄でつなぎ、京急空港線の大鳥居駅の手前付近で京急空港線に乗り入れる計画のことである。蒲蒲線の計画の総事業費は約1,360億円と試算されている。

東急多摩川線は矢口渡駅付近から地下化するため、現在の東急多摩川線の蒲田駅は駅舎が地下に移動する計画となっている。京急蒲田駅の地下にも、蒲蒲線の新たな駅ができる予定だ。

京急蒲田駅東急多摩川線 矢口渡駅前

JR蒲田駅と京急蒲田駅は800mほど離れているが、その間が地下鉄でつながることでJR京浜東北線と京浜急行本線との間にある分断が解消されることになる。現状ではJR蒲田駅と京急蒲田駅との間を移動するには徒歩やバス等での移動を強いられており、蒲蒲線ができれば両駅間の移動がしやすくなることが期待できる。

蒲蒲線は単にJR蒲田駅と京急蒲田駅との間をつなげるだけでなく、東急多摩川線が京急空港線にも乗り入れることで、羽田空港へのアクセスが大きく向上することになる。将来は東急東横線や東京メトロ副都心線からの直通乗り入れも視野に入っており、蒲蒲線ができれば、渋谷や新宿、埼玉県方面から羽田空港へのアクセスがよくなる。蒲蒲線が東横線とも接続すれば、例えば自由が丘から羽田空港までの所要時間が現在の約52分から32分となり20分も短縮される予定だ。

蒲蒲線の整備は、一期整備と二期整備の2段階に分かれた計画となっている。一期整備とは、東急多摩川線の矢口渡駅付近から地下化し、京急蒲田駅までつなぐ整備工事のことを指す。京急蒲田駅までの地下化を先に行うのは、JR蒲田駅と京急蒲田駅の未接続の解消が第一優先として考えられているためである。

二期整備とは、京急蒲田駅から京急空港線の大鳥居駅の手前で東急と京急を接続する整備のことを指す。

京急蒲田駅JR蒲田駅前

蒲蒲線計画の課題

東急多摩川線東急多摩川線

ただし、東急と京急では線路幅が異なるため、接続といっても簡単にはいかないようだ。
また、将来的に東急東横線から乗り入れをするといっても、現在の東急多摩川線の車両は3両であるため、8両または10両の東急東横線をどのように通過させるのかも課題とされている。東急多摩川線の駅に東急東横線の車両も停車させようとすれば、東急多摩川線の各停車駅のホームを延ばさなければならない。

蒲蒲線の実現には、東急と京急の線路幅の解消や東急多摩川線のホーム延長等の課題もあり、単にJR蒲田駅と京急蒲田駅との約800mをつないで終わるといったシンプルな工事ではないようだ。

構想から40年。これまでの経緯

蒲蒲線は、1982年の大田区基本構想に位置づけられて以来、長い期間を経て検討がされてきた。蒲蒲線の計画は、2000年の運輸政策審議会(現交通政策審議会)答申第18号において、「京浜急行電鉄空港線と東京急行電鉄目蒲線(現多摩川線)を短絡する路線の新設」として答申されている。

2016年には、交通政策審議会答申第198号において「矢口渡から京急蒲田の事業計画の検討は進んでおり、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき」と評価され、計画が具体的に進み始めた。2020年9月より東京都と大田区で「新空港線及び沿線まちづくり等の促進に関する協議の場」(以下、協議の場)が設けられ、まちづくりの要素等も加味しながら新空港線をより良い事業プランとするための話し合いが開始されている。

東京都と大田区による協議の場は、構想から40年が経過した2022年の6月、第5回の協議を終え、主要な事業プランや東京都と大田区の整備費用の負担区分等が定まった状況だ。

出典:大田区 新空港線(蒲蒲線)主な合意内容等詳細出典:大田区 新空港線(蒲蒲線)主な合意内容等詳細

検討の流れと検討結果

ここでは、東京都と大田区で行われた協議の場における検討の流れと検討結果について紹介する。

協議の場は全部で5回実施されたが、第1回から「乗換利便性の向上」や「駅周辺の街づくり」、「需要予測および収支採算性」、「都区負担の考え方」等の議論がなされ、検討結果としてまとめられている。乗換利便性の向上に関しては、「JR蒲田駅と東急蒲田駅の乗換動線」と「京急蒲田駅の駅位置」が話題となっている。JR蒲田駅と東急蒲田駅の乗換動線に関しては、「新設南改札」を設け東急とJRの円滑な乗り換えを可能とする計画のようだ。京急蒲田駅の駅位置については、京急蒲田駅に近い区道の直下に建設される予定となっている。

また、沿線や駅周辺の街づくりを促進していくことも協議されている。住民からは蒲蒲線ができることで蒲田の街を素通りされるのではないかという懸念の声が上がっているが、大田区としては蒲田駅周辺を鉄道整備と合わせて多くの人が訪れてみたいと思うような街づくりを行っていくことを計画している。需要予測および収支採算性に関しては、蒲蒲線の利用者は1日約5.7万人になると見込まれている。5.7万人のうち、約1.5万人が羽田空港へ往来する人(空港旅客)が利用するという試算だ。その他の約4.2万人は羽田空港以外の目的の利用(都市内旅客)とされており、利用者は羽田空港を目的としない人の方が多く想定されている。累積資金収支黒字転換年については、17年とされている。

羽田空港を利用する観光客以外の多くの利用が見込まれている羽田空港を利用する観光客以外の多くの利用が見込まれている

都と区の予算割合は?

大田区役所大田区役所

協議の場では、東京都と大田区による都市鉄道利便増進事業の地方負担分の補助の負担割合の考え方を示している。負担割合は、東京都が3割、大田区が7割だ。都区の費用負担割合の考え方については、蒲蒲線の利用者の旅客数の割合を根拠にしている。東京都は空港旅客分(空港アクセスに関する旅客等その他の旅客分)、大田区は都市内旅客分(空港アクセスを除く大田区発着に関する旅客分)を負担するとしている。

蒲蒲線で見込まれる1日約5.7万人の利用者のうち、空港旅客数は約1.5万人(約26%)、都市内旅客は約4.2万人(約74%)であることから、東京都が3割、大田区が7割を負担することになっている。

第三セクター、羽田エアポートライン株式会社設立

蒲蒲線の事業主体は、整備主体は大田区が主な出資者となる第三セクター、営業主体が東急電鉄となっている。第三セクターとは、第一セクター(地方自治体や国のこと)と第二セクター(民間企業のこと)との共同出資の事業体のことである。
蒲蒲線では、「羽田エアポートライン株式会社」という名の第三セクターが2022年10月14日に設立された。羽田エアポートライン株式会社は蒲蒲線の整備主体として設立された組織ということになる。

第三セクターの設立時の出資比率は、大田区が61%、東急電鉄が39%となっている。東急電鉄の出資は、第三セクターが東急電鉄の連結子会社にならないようにするために、40%未満の出資比率で抑えられている。そのため、東急電鉄の出資比率は最大でも39%ということになる。

一方で、蒲蒲線が補助金を活用するためには第三セクターが公的第三セクターである必要があり、公的第三セクターとなるためには大田区が51%以上出資しなければならない。大田区が51%以上かつ東急電鉄が40%未満というのは、出資比率を決める最低限の要件となっており、結果的に大田区が61%、東急電鉄が39%の出資比率で妥結したようである。

今後の予定

今後の予定に関しては、まず一期整備区間(矢口渡駅付近から京急蒲田駅まで地下でつなぐ工事)についての都市計画決定等の手続きが行われる予定である。都市計画決定等の手続きは、第三セクターが鉄道事業を行うための認可を取得した後に約3年程度かけて行うものとされている。

工事はその後から始まり、工期は10年程度かかるものと考えられている。第三セクターは2022年10月に設立されたことから、都市計画決定等の手続きが完了するのは2025年末、京急蒲田駅まで地下でつながるのは2035年末くらいと予想される。

なお、東京都では現在「豊洲駅から住吉駅を結ぶ有楽町線の延伸計画」や「東京から有明・東京ビッグサイトまでを結ぶ臨海地域地下鉄構想」等のさまざまな鉄道プロジェクトが立ち上がっている。これらの新線の開業時期は、2030年代半ばから2040年にかけて集中している。
蒲蒲線も相次ぐ都心延伸構想と時期を同じくして開業する路線となりそうだ。

出典:大田区 新空港線(蒲蒲線)主な合意内容等詳細出典:大田区 新空港線(蒲蒲線)主な合意内容等詳細
出典:大田区 新空港線(蒲蒲線)主な合意内容等詳細蒲蒲線の整備により、大田区内における東西の移動が便利になることや、蒲田駅周辺の活性化も期待されている

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