開業して50年。初となる新幹線駅・JR新神戸駅前の再整備
新幹線に乗って神戸まで。県外や海外からの旅行客が神戸市に降り立つ、最初の地となるJR新神戸駅。六甲山系を背景にするJR新神戸駅は、神戸市の資源である自然を感じられる場所にある。しかし交通における神戸の玄関口でありながらも、駅周辺はにぎわいが少ない状態。まちの質・くらしの質を一層高めることで、都市ブランドの向上と人口誘引につなげるプロジェクト「リノベーション・神戸」の一環で、2024年度末の完成を目指す「JR新神戸駅前広場・生田川公園の再整備計画」が2022年1月からスタートしている。
これまで、神戸創生の中心として神戸市が注力してきたのが、三宮エリアの再整備だ。三宮は7つの路線が集まる神戸一の繁華街で、兵庫県民にとっても観光客にとっても重要な場所。特に近年は、観光・集客施設が多数集まる、ウォーターフロントエリア(新港突堤西地区、メリケンパークエリア)の開発に積極的だ。神戸ウォーターフロントのシンボルとなりえる大規模多目的アリーナ「神戸アリーナ KOBE Smartest Arena」も、2024年度完成を目指して建築されている。そんな中、後れを取ってきたのが、JR新神戸駅周辺の再整備だ。
1972年にJR新神戸駅は新幹線駅として開業した。50年が経過し周辺環境の老朽化が進んでおり、地下鉄やバス、タクシーなどの交通結節点でありながらも、アクセスがわかりにくいという課題がある。
1995年に起こった阪神・淡路大震災の復興に時間がかかったことも、駅前の整備が遅れた理由のひとつに挙げられるだろう。だが、満を持して、リノベーションが行われることとなった。
交通機能の利便性向上と、にぎわい創出をかなえる施設
JR新神戸駅の後ろにそびえ立つ六甲山系から神戸港まで、北から南をつなぐように流れている生田川。この川沿いにあるのが生田川公園だ。今回の改修の範囲は、JR新神戸駅駅前広場から道路を挟んだ生田川公園の一部まで。この一帯を活用し、「山と街をつなぐ新神戸ハーブガーデン」をデザインコンセプトとする新しい施設が誕生する。2022年9月に施設デザイン事業者を選ぶ、公募型プロポーザル方式を実施。7社から提案応募があり、委託候補事業者として株式会社E-DESIGNを代表とするグループ企業が選定された。駅前リノベーションは、具体的にどのように進められるのだろうか。
「公共交通の利便性向上、周辺エリアに向かう歩行者動線の改善、神戸の玄関口としてふさわしい空間の創出という、大きく3つの目的を達成する計画となっています」と神戸市の担当者は話す。
「1つ目は、公共交通の利便性向上です。現状、バス、タクシー乗り場、一般駐車場が1、2階に混在しています。そのため、新幹線改札口と同じ2階に公共交通(バス・タクシー)の乗降場所を集約し、初めて来訪される方でも乗り換えがわかりやすいロータリーにします。1階と2階で一般車と公共交通を分離するなど、交通の円滑化を図ります。
2つ目は、周辺エリアに向かう歩行者動線の改善です。駅の裏手には布引の滝や、ロープーウェイで登れば山頂には神戸布引ハーブ園、西側に徒歩約10分行けば北野異人館エリアがあります。にもかかわらず、案内が明確でないこともあり、それらの周辺観光地へのアクセスがわかりにくい状態になっています。新幹線改札前の出入り口部において、あらゆる方面に歩行者動線の起点となる結節点を整備し、案内標識やサインも増設する予定です」
JR新神戸駅と繁華街である三宮エリア。この南北をつなぐことは大きな課題でもある。駅舎を出ることなく、そのまま地下鉄に乗り換えて1駅先の三宮駅に向かうというのが、現在の一般的な移動パターンとなっている。JR新神戸駅前からのアクセス案内がわかりやすくなれば、南側エリアへの移動方法が、地下鉄以外にも多様化しそうだ。
ハーブをテーマにした魅力のある空間を
駅の南側に新設される駐車場の上部にはデッキが整備され、「山と街をつなぐ新神戸ハーブガーデン」と題するような、神戸らしさを感じられるシンボル空間も生まれる。布引ハーブ園が隣接していること、多様な外来文化を取り入れてきた北野エリアから西洋文化を感じられるハーブが、修景の軸とされている。
「3つ目の目的は、神戸の玄関口としてふさわしい空間の創出です。新神戸駅は、付近に山・川・トンネルがあるなど、地形の制約があり、人の集まりやすい空間設計を求めるには、なかなか難しい立地にありました。人通りがなく寂しいという声も多く、今回の再整備を機に、新たなにぎわい空間を創出したいと考えています」
駅前広場に用意される2つのシンボル空間には、ハーブを中心に四季を通じて変化するさまざまな花や緑を植栽し、記念撮影スポットとして「BE KOBE」モニュメントの設置を予定している。「デッキ上ににぎわいを創出するために、ショップや専門店の誘致も目指しています。できれば、ハーブや植物に関連する業態だと親和性もありそうです」
地域や地元企業と共に生み出したい、地域に広がるにぎわい
駅前は居住地でもあり、古くからの住民も多いエリアだ。今回のプロジェクトに関して、地域からネガティブな意見は聞こえてこないという。
地域の人に親しまれてきた生田川公園にある桜の木を生かして、駅前広場と一体となり、桜の名所として魅力ある空間に。現状ある噴水もリニューアルされ、湧き水を活用した親水広場と変わっていく。デッキ上や生田川公園の親水広場を活用してマルシェやイベントなども想定しているという。今後は、地元企業や地域と連携しながら、駅前に盛り上がりを生み出していく予定だ。
「交通問題の解決が今回の目的ですが、施設や広場が新しい交流拠点となり、そのにぎわいが地域に広がっていけばよりよいですね。それがひいては、この地に住んでみたいという想いにつながるとうれしいです」
2025年には大阪で国際イベントの開催も予定されている。神戸に訪れる外国人観光客も、新型コロナウイルスの感染が落ち着けば、増加が見込まれるだろう。観光客にとっての第一印象をつかさどるJR新神戸駅。神戸に降り立った人たちに、“神戸らしさ”を感じてもらい、心を引きつける空間となるかもしれない。神戸ブランドに新たな魅力が追加されるプロジェクトになりそうだ。












