北海道が全国一の数。進化し、多様化する道の駅

「道の駅めぐり」という言葉も耳にするほど、観光に、買い物に、遊びに、身近になった道の駅。かつてはドライブ中に立ち寄る休憩地点という色合いが濃かったが、今では立派な目的地にもなっている。

全国最多の129駅(2021年5月11日時点)が登録されている北海道では、登録駅数は2020年に127となり、20年前の2倍弱になった。利用者は2020年は新型コロナウイルスの影響で減ったものの、ほぼ右肩上がり。2019年は4,165万人を数え、2000年の2.3倍に達する。

道内の「道の駅」登録数と利用者数の推移(北海道開発局提供)道内の「道の駅」登録数と利用者数の推移(北海道開発局提供)

道内にある道の駅の取り組みを支援している国土交通省の北海道開発局が、北海道の「『道の駅』ランキング2020」を発表した。北海道地区「道の駅」連絡会が主催しているスタンプラリーの対象は、通常営業している124駅。このうち100駅以上のスタンプを、2020年6月19日~2021年5月23日に押印した人を「完走者」として認定した。

ランキングはその約2,800人を対象に、①道路や地域に関する情報提供が充実していた②ゆっくり休憩できた③トイレがきれい④家族で訪れたい⑤長時間滞在したい⑥再度訪れたい⑦冬に訪れたい⑧いちおしの“おいしいもの”―の8部門で施設を選んでもらった。各部門のトップ施設を調べると、道の駅へのニーズが多様化していることが分かる。人気の秘密や各施設の魅力を紹介する。

地元名産のカキを軸に、工夫を満載。3冠の「厚岸グルメパーク」

釧路市から根室半島に向かって約45km。厚岸町の「厚岸グルメパーク」は、「ゆっくり休憩できたと感じた」「長時間滞在したい」「いちおしの“おいしいもの”」の部門で3冠に輝いた。全国区の知名度を誇るカキの名産地として、新鮮な魚介類を楽しめる。

1階にはリニューアルされた、気軽にカキを味わえるオイスターカフェがある。2階には「魚介市場」と炭焼きコーナー、オイスターバーも。厚岸では全国的に人気が高まるウイスキー醸造所「厚岸蒸留所」があり、カキと厚岸ウイスキーのマリアージュを売り出している。

首都圏でもその名が知られる、厚岸産のカキ(北海道開発局提供)首都圏でもその名が知られる、厚岸産のカキ(北海道開発局提供)

副支配人によると、潮風を感じる高台からのビューポイントが好評で、コロナ対策で屋外のイスとテーブルも数を増やした。飲食は、町内の特産素材を生かし、ニーズの異なる多彩なメニューを用意して「選ぶ楽しさ」につなげているという。

完走者からは「厚岸湾の景色が素晴らしかった」「休憩所が広い」「カキや海鮮好きは楽しみながらゆっくり食事が出来る」という声が寄せられた。“おいしいもの”部門では3年連続の1位で、文字通りグルメパークとして定着している。

首都圏でもその名が知られる、厚岸産のカキ(北海道開発局提供)ソーシャルディスタンスに配慮し、充実させた屋外スペース(北海道開発局提供)

トイレとファミリーフレンドリーで2冠の「千歳」

新千歳空港から車で10分という絶好のアクセスを誇る「サーモンパーク千歳」(千歳市)は、「トイレがきれいだと感じた」と「家族で訪れたい」の2部門で1位になった。幅広い世代に人気の「サケのふるさと千歳水族館」に隣接している。

トイレ部門では4年連続でトップで、2020年版での得票率は25%を占める。1日2回の清掃に加え、消毒の徹底、1時間に1回の点検、個室への便座除菌クリーナー設置などを実施している。「開放感があり綺麗! 美術館みたい」「広くてソーシャルディスタンスがある」と絶賛する完走者もいた。

スタンプラリー完走者の大きな支持を得た、サーモンパーク千歳のトイレ(北海道開発局提供)スタンプラリー完走者の大きな支持を得た、サーモンパーク千歳のトイレ(北海道開発局提供)

家族部門での得票数は、2位より57%も多かった。サーモンパーク千歳は、サケが遡上する千歳川のほとりにあり、橋からは、インディアン水車で迫力あるサケ捕獲の様子を見学できる。完走者からは「公園があり、サケの遡上が見られる」「水族館があり食事も充実しているので一日遊べる」という評価が寄せられている。

屋内外に子どもの遊び場が充実しているのも特徴だ。世界の知育玩具や遊び環境をプロデュースする会社が監修したキッズスペースは地域の家族連れに人気。冬は外遊びする場所が限られるため、2020年9月からは冬限定で遊具を増設するという力の入れようだ。「子どもが大人になり、親になっても利用してもらえる道の駅」を目指しているという。

スタンプラリー完走者の大きな支持を得た、サーモンパーク千歳のトイレ(北海道開発局提供)地域の家族連れも多く利用する屋内のキッズスペース(北海道開発局提供)

世界遺産、大パノラマ、流氷…。地域資源に磨きをかける施設

「充実した情報提供」の部門では、知床地方の「うとろ・シリエトク」が首位になった。世界遺産・知床の玄関口にあり、サケの水揚げが日本一というウトロ港に隣接。公式ホームページでも「知床観光の情報を提供する観光案内所がございますので目的地の1つとして訪れて頂けます」とアピールしている通り、情報発信に力を入れている。

関係機関と連携し、多い時は1日に10回以上、常に最新の情報を更新。スタッフから詳しい説明をすることもある。ランキングでの得票率は34%に達し、得票数は2位の約4.5倍と圧倒的な支持を受けている。「映像情報や、パンフレットが充実」「クマ出没情報があり良かった」と完走者からも好評だった。

道の駅「うとろ・シリエトク」では観光地や交通、クマの出没など多彩で充実した情報が掲示されている(北海道開発局提供)道の駅「うとろ・シリエトク」では観光地や交通、クマの出没など多彩で充実した情報が掲示されている(北海道開発局提供)

「再度訪れたい」部門では、北海道らしい大パノラマの絶景が自慢の「ぐるっとパノラマ美幌峠」(美幌町)が1位に選ばれた。国内最大のカルデラ湖・屈斜路湖を眼下に収めることができる、道東を代表するスポットの美幌峠にあり、雲海で知られている。駐車場から歩いて行ける展望台からの眺めも人気だ。完走者からは「あの景色は何度でも見たい」「雲海が見たい」「天気の良い日に景色を見たい」という声があり、一つとして同じ景色が現れないことが、リピート願望を高めている。

「冬に訪れたい」でトップの座を射止めたのは、「流氷街道網走」。網走市中心部、網走川のほとりにあり、冬は流氷砕氷船「おーろら」の発着場にもなっている。デッキからは、秋に紅一色のサンゴ草が広がる能取湖を望め、冬には流氷が間近に迫る。人気のある地ビールやスイーツをはじめお土産も充実。その92%が道内在住者という完走者からは「食堂でグルメを堪能しながら流氷を眺められる」「やはり生で流氷を見てみたい!」という声が相次ぎ、道民にとっても冬の風物詩を楽しむ拠点になっていることが分かる。

道の駅「うとろ・シリエトク」では観光地や交通、クマの出没など多彩で充実した情報が掲示されている(北海道開発局提供)道の駅「ぐるっとパノラマ美幌峠」からは、壮大な雲海と屈斜路湖を楽しめる(北海道開発局提供)
道の駅「うとろ・シリエトク」では観光地や交通、クマの出没など多彩で充実した情報が掲示されている(北海道開発局提供)道の駅「流氷街道網走」は砕氷船の発着場にもなっており、間近で流氷を楽しめる

ドライブ観光が盛んな北海道。広域連携の拠点として

道の駅を拠点とした情報発信について知らせるチラシ(北海道開発局提供)道の駅を拠点とした情報発信について知らせるチラシ(北海道開発局提供)

それぞれの道の駅が魅力アップを図っている中、近年求められているのは、道の駅同士や、関係機関との連携だ。

国土交通省によると、道内の道路総延長は約9万1,000kmで、圧倒的な長さがあり、道の駅の数も日本一になっている。公共交通機関が張り巡らされていないエリアが多いため、車で観光する上で広域連携の重要性も高まっている。

インバウンド需要の回復を見据え、開発局は「道の駅と地域がともに育つ」ことを目指し、観光情報を道の駅から一元的に発信する取り組みに着手。釧路・根室・オホーツク地域の一部の20自治体や観光協会などと手を携え、道の駅は「うとろ・シリエトク」や「ぐるっとパノラマ美幌峠」「厚岸グルメパーク」など12施設(2021年度現在)を拠点とし、二次元バーコードを掲載したフライヤーなどを配布。多言語対応のデジタル観光マップを用意し、ビューポイントや観光地、イベント・アクティビティ・グルメ、コンビニ・飲食店・ガソリンスタンドなどの施設、交通規制などの情報をワンストップで発信している。

道の駅を拠点とした情報発信について知らせるチラシ(北海道開発局提供)訪日外国人客の回復を見据え、英語やサインで発信する情報を一覧にしたフライヤー(北海道開発局提供)

地域づくりの“核”として。道の駅は「第三ステージ」へ

道の駅南ふらの道の駅南ふらの

道の駅は観光とともに、地域づくりにコミットしていく拠点としても注目されている。

国土交通省は、地方創生を具体化していく手段として道の駅を活用する方針を掲げていて、全国で「重点『道の駅』」を選定。道内では「南ふらの」(南富良野町)がピックアップされた。国内有数の体験型観光のワンストップ窓口として、多様なニーズに対応した情報発信コーナーを整備していくという。また高齢化が進む地域の住民が定住しやすい環境をつくるため、道の駅の交通結節機能を高め、都市間バスや町内デマンドバスなど複数の交通体系のハブとする。休憩施設としても、子育て世代やサイクリスト、バスを待つ住民など、さまざまな人が利用できるように充実させる。

同省によると、国による道の駅の登録制度が始まった1993年からは「第一ステージ」として、「通過する道路利用者のサービス提供の場」だったが、2013年からの「第二ステージ」では「道の駅自体が目的地」となるよう充実を図ってきた。

2025年を目標年とする「第三ステージ」では、①道の駅の世界ブランド化②広域的な防災拠点化③地域センターという3つの「目指す姿」を描いている。

世界ブランドを目指すために、複数の移動手段を使った経路検索から予約・支払いまで一貫したサービス「Maas(マース)」や海外プロモーションを推進。建物の耐震化や無停電化、通信・水の確保、大規模駐車場といった条件を満たした「防災道の駅」は、道内では「厚岸グルメパーク」をはじめ4駅(2021年6月11日現在)が選ばれている。

道の駅「北オホーツクはまとんべつ」に設置された子育て応援自販機(北海道開発局提供)道の駅「北オホーツクはまとんべつ」に設置された子育て応援自販機(北海道開発局提供)

地域センターとしては、子ども連れが使いやすい施設の併設、自動運転ターミナルが代表例として想定されている。既に、飲料品メーカー・自治体・開発局が連携して、おむつや液体ミルク、おしりふきをばら売りする「子育て応援自販機」を2019年から設置。2021年12月24日現在、道内の15駅に登場している。

これからは、「地方創生・観光を加速する拠点」「元気に稼ぐ地域経営の拠点」になることが期待されている道の駅。広大な面積、人口減少、公共交通網の衰退をはじめ、課題先進地と言われる北海道でも、各地域でどのような存在になっていくかが注目される。

道の駅南ふらの道の駅北オホーツクはまとんべつ

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