社会人になると所得にひもづいて、さまざまな税金が発生します。そのうちのひとつが「住民税」であり、原則として日本に住所を持つほとんどの人が支払わなければなりません。
今回は住民税の基本的な仕組みや支払い方法、計算方法、節税方法について詳しく解説します。
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住民税の基本的な仕組み

そもそも住民税とはどのような税金なのでしょうか。ここではまず、基本的な仕組みについて見ていきましょう。
住民税とは
住民税とは、行政サービスの維持や管理のために必要な資金を確保するための税金です。地方公共団体の住民であることに対して発生する税金であり、1月1日時点で住所のあった地域で課税されます。
課税対象となるのは、専業主婦や学生などの所得がない人や生活保護受給者、前年の所得が一定以下である世帯など(主に非課税世帯と呼ばれる)を除いて、日本に住所のあるほとんどの人です。
そのため、社会人として仕事をするうえでは、原則として発生する税金と考えておいていいでしょう。
住民税には、都道府県に納める「都道府県民税」と市区町村に納める「市町村民税(東京都23区では特別区民税)」の2種類がありますが、課税時や納税時には合算されるため、基本的には両者の違いを意識する場面はほとんどありません。
住民税はいつから納める? 社会人1年目には発生しない理由

前述のとおり、住民税は所得にひもづいて発生する税金ですが、基本的には社会人1年目には発生しません。その理由は、住民税が「前年の所得」に対して課される税金であるためです。
そのため、アルバイトなどで前年に100万円以上の収入がある場合(自治体によって多少の違いはある)を除けば、基本的に1年目は課税されません。そして、社会人2年目になると、1年目の収入を基に住民税が課税されることとなります。
なお、少し細かな計算にはなりますが、4月入社の場合、社会人2年目は前年の4月~12月までの所得が対象となります。それに対して、3年目以降は1月~12月までが対象となるので、2年目の時点よりもさらに税額が高くなるのが一般的です。
賃貸物件を探すフリーランスやフリーターはどのように納める? 住民税の徴収方法

住民税の納付方法には2種類あり、会社員の場合は「特別徴収」と呼ばれる方法で徴収される仕組みとなっています。ここでは、2つの徴収方法について詳しく見ていきましょう。
会社員の場合:特別徴収
会社員などの給与所得者や65歳以上の公的年金の受給者は、特別徴収と呼ばれる方法で納税を行います。これはいわゆる「天引き」という形で、勤務先や日本年金機構が「特別徴収義務者」となって徴収・納付を行う方法です。
給与所得者については、それぞれが住む市区町村によって計算された住民税額が会社に通知されます。そして、会社は6月から翌年5月までの給与支給のタイミングで、税額分を天引きして市区町村へ納付を行う仕組みです。
個人事業主などの場合:普通徴収
個人事業主やフリーランスといった給与所得者以外の人は、普通徴収と呼ばれる方法で住民税の納付を行います。これは市区町村から届けられた納税通知書を基に、自分で税金を納める方法です。
普通徴収の場合は、その年の確定申告書などを基に市区町村が住民税額を算出し、毎年6月に税額や納期などを記載した納税通知書が送付されます。なお、納付方法は一括払いと4回の分割払いから選べます。
会社員でその他の所得がある場合
給与所得者は基本的に特別徴収を利用するので、自分で住民税を納付することはありません。
ただ、利子所得や配当所得といったその他の所得がある場合は、普通徴収として自分で納付をするか、給与所得と合算して会社から特別徴収してもらうか選ぶことができます。
確定申告の書類には、住民税の納付方法を選択する欄があるので、手続き自体はそれほど難しくはありません。
住民税の計算方法

住民税は市区町村によって自動的に計算され、特別徴収なら納付も天引きで行われるため、特に意識をしなければ納税額を把握していないというケースも少なくありません。
ただ、これから社会人になる人は、住民税の計算方法も把握しておくといいでしょう。住民税は「均等割」と「所得割」の2つの合計額で算出されます。
均等割の計算方法
均等割は、所得にかかわらず、一律で金額が決まっています。都道府県民税は1,500円、市区町村民税が3,500円であり、合計は5,000円です。
もともとの金額はそれぞれ1,000円、3,000円の合計4,000円であったものの、震災復興に関して地方公共団体が行う防災のための財源として、2023年まで時限的に各500円ずつ加算されています。
所得割の計算方法
所得割は、所得に応じて課税されるため、所得が多いほど税額も大きくなります。ただ、所得税のように税率まで異なるわけではなく、一律10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)で計算されます。
また、所得額に直接10%の税率がかかるわけではなく、医療費控除や生命保険料控除、配偶者控除といった「所得控除額」を差し引いた額を基準に計算します。
さらに、そこから住宅ローン控除などの「税額控除額」を引いた金額が実際の住民税額(所得割額)です。
住民税の計算式
- (所得額-所得控除額)×10%-税額控除額=所得割額
- 所得割額+5,000円(均等割額)=住民税額
住民税を節税する方法

これまで解説したように、住民税は所得に応じて自動的に計算されるものであり、計算方法は比較的シンプルです。そのため、住民税を節税する選択肢はそれほど多いわけではありません。
ここでは、住民税を節税する代表的な方法として、ふるさと納税の仕組みを解説します。
ふるさと納税の仕組み
住民税は居住する自治体に納付する税金であるため、住民の多い都市部とそうでない地方では、どうしても税収に大きな地域差が生まれてしまいます。こうした状態を解消するために設けられたのが「ふるさと納税」と呼ばれる仕組みです。
具体的には、特定の地方自治体に寄付をすると、所得税からの控除、住民税からの控除、特例税額控除を受けることができます。
収入や家族構成、その他の控除との兼ね合いなどによって、控除額の上限は決められているものの、上手に活用すれば住民税の大きな節約につながります。
そのうえで、寄付した自治体特有の返礼品を得られる仕組みなので、応援したいエリアがある場合などには積極的に活用してみるといいでしょう。
なお、具体的な上限額については、総務省が運営する「ふるさと納税ポータルサイト」で計算方法が紹介されているので、事前にチェックしてみてください。
まとめ

- 住民税は一定の所得がある人が納める地方税のこと
- 前年の所得を基に課税されるため、社会人2年目から発生するケースが多い
- 納付方法には2種類あり、会社員などの給与所得者は特別徴収で納税する
- 住民税は一律で決められている「均等割」と所得に応じて計算する「所得割」の合計額で計算する
- ふるさと納税を活用すれば所得税および住民税の節税が可能
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