定年を迎えると収入は減少するのが一般的であり、住宅ローンの返済が残っている場合には、それまでとは違った返済計画が必要となります。また、退職金をどの程度返済に充てるべきかといった、重要な選択肢も生まれます。

今回は老後の平均的な収支の状況にも目を向けながら、定年後の住宅ローン返済に関する基本的な考え方について解説します。
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退職金を確認する

特別な貯蓄がなければ、定年後は退職金や年金収入から老後資金を捻出することとなります。そのため、まずはどのくらいの収入が得られるのか、データをもとに確認しておきましょう。

厚生労働省が5年おきに行う「就労条件総合調査」(※1)によれば、退職金の平均額は高校卒の現場職で1,159万円高校卒の管理・技術職で1,618万円大学卒で1,983万円とされています。

 

勤続年数が一定以上である場合、基本的には退職金が老後資金の軸となります。ただ、過去15年間における調査結果では年々平均額が減少しており、退職金のみで老後資金を賄えるケースは少なくなっているのも現状です。

 

そのため、まずは自身が受け取れる退職金額を把握することが、定年後の生活設計を考える重要な一歩だといえます。

総務省統計局の家計調査(※2)では、夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯における平均年金収入は、1ヶ月あたり20万6,678円とされています。

 

年金の加入期間や種類などの個別事情によっても受給額が異なるため、こちらも事前に受け取れる金額を把握しておくことが大切です。

 

(※1)厚生労働省「就労条件総合調査・2018年_退職給付(一時金・年金)の支給実態

(※2)総務省「家計調査報告(家計収支編)2019年(令和元年)平均結果の概要

定年後の生活資金

続いて、定年後に必要な生活資金についても、家計調査を基に見ていきましょう。

夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦無職世帯の場合、住居費(全体の5.7%≒1万3,677円)を除いた1ヶ月あたりの平均支出金額は22万6,270円とされています。

 

この数字を先ほどの平均年金収入と比較すると、生活費だけで実質的には毎月「約2万円の赤字」となってしまいます。

以上のデータは、生活上で最低限必要なものに関する金額であり、ゆとりのある生活を送るためにはさらに多くの資金が必要となります。

 

たとえば、生命保険文化センターの調査(※)によると、ゆとりのある生活を送るうえで必要だと考える上乗せ額は、平均で月14万円程度とされているのです。

 

住宅ローンを抱えている場合には、さらにそこから返済額を捻出する必要があるため、より綿密な資金計画が求められるのです。

 

あくまでも平均データによる目安ではあるものの、定年後も安定して返済を続けるために工夫が必要であることは確かです。

 

(※)生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》

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住宅ローンの返済額

ここまで見てきたとおり、定年後の住宅ローン返済には綿密な計画が必要となります。ここからは、返済計画を立てるうえで押さえるべきポイントについて見ていきましょう。

無理のない返済計画を立てるうえでは、何よりもまず住宅ローンの残債と退職金を正確に把握することが大切です。

 

返済がどのくらいまで続くのか、毎月いくら負担する必要があるのかなど、具体的な数字を調べて返済計画を立てましょう。

定年を迎える人にとって、退職金は住宅ローン返済の重要な資金源となります。しかし、すべてを返済に充てるのには大きなリスクが伴います。

 

たとえば、高齢になるとともに病気やケガなどのリスクが高まるため、医療費の負担額が増えるのが一般的です。また、住居のバリアフリー化など、大きな出費が発生する場面も少なくありません。

 

毎月の生活費が赤字になってしまう点も考慮すると、退職金をすべて手放してしまうのではなく、手元にいくらかの資金を残しておくほうが安心な場合もあります。

ローンの繰り上げ返済

定年後の住宅ローン負担を軽減させる方法のひとつに、在職中に「繰り上げ返済」を行うといったものがあります。ここでは、繰り上げ返済の仕組みと注意点について見ていきましょう。

繰り上げ返済とは、資金のゆとりがあるときに、普段の返済額に上乗せした金額を支払う方法です。前倒しして支払いを進めることで、利息負担分が少なくなり、総返済額を減らせる点が大きなメリットです。

 

なお、繰り上げ返済には、返済期間を圧縮する「期間短縮型」と、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2つがあります。いずれの場合も、比較的余裕のある現役時代に積極的な支払いを行うことで、定年後の負担が小さくなります。

繰り上げ返済して支払ったお金については、後から返還を求めることはできません。手元の生活資金を削ってしまうとゆとりのある生活ができなくなるため、あくまでも余剰金を充てるように心がけることが大切です。

 

また、金融機関や支払い方法によっては、繰り上げ返済時に手数料がかかってしまうこともあるため、事前に仕組みを調べておきましょう。

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住宅ローンの借り換え

老後資金について考えるときには、返済が苦しくなってしまったときの対応策を知っておくことも大切です。ここでは、リスクに備えるための方法を3つに分けて解説していきます。

まだ住宅ローンを一度も借り換えていない場合には、住宅ローンの借り換えが、リスクを抑えた対処法となります。現在借り入れているローンよりも金利が安いものへ借り換えることで、返済額を減らせる場合があります。

 

ただ、借り換えには事務手数料や抵当権移転費用などの諸費用が、少なくとも数十万円程度必要です。そのため、金利の差がそれほどない場合には、あまりメリットを得られません。

 

また、借り換え時には審査が行われ、年齢や年収が重要なポイントとして判断されます。年齢については、70歳以下であれば基本的には審査対象になるものの、年収がネックになってしまうケースは多いでしょう。

 

民間の金融機関の場合は、公的年金を収入として認めないところが多く、定年後の審査では不利になるケースが多いでしょう。そのため、公的年金を収入として認めてもらえる「フラット35」への借り換えが有利になるケースが多いでしょう。

リバースモーゲージとは、自宅を担保として生活資金を借り入れる方法です。借りたお金については、利用者が亡くなった後に担保物件を処分して返済する仕組みです。

 

住宅ローンから借り換えた場合には、「元金と利息」を返済していた状況から、「利息のみ」の返済に変更することができます。その結果、月々の返済額を減額させることが可能です。

 

ただ、すべての自治体や金融機関が取り扱っているわけではなく、住宅の種類などが限定されるケースもあります。また、地価の変動などによって、担保にした物件だけで返済できないといったリスクもあるため慎重な判断が必要です。

リースバックとは、現在の住居を第三者に売却したうえで、家賃を払いながら引き続き入居をする方法です。売却によって得られた資金は、住宅ローン返済だけでなく、老後資金の備えとして利用することもできます。

 

住居の所有権は手放してしまうものの、生活環境を変えずに資金が得られる点は大きなメリットです。

定年後の住宅ローン

  • 退職金と年金収入の目安を知ったうえで、自身の収入状況を的確に把握することが大切
  • 定年後の収入が年金収入のみの場合は、毎月の支出が収支を上回る可能性がある
  • 退職金をすべて住宅ローン返済に充てるにはリスクもある
  • 繰り上げ返済の仕組みと注意点を把握しておく
  • 返済が難しくなってしまったときの対策を知り、実情に合わせた判断が重要
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更新日: / 公開日:2021.05.20