定年を迎えてからは収入状況が大きく変化するため、できるだけ早い段階から資金計画について考えることが大切です。そのなかでも、住居は、安心できる暮らしを根底から支える重要なポイントとなります。

今回は定年後を見据えた住まい選びに関して、賃貸と持ち家の違いや住宅ローンの考え方、住居探しで押さえるべき項目を解説します。
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老後の生活にかかる費用

 

住居について見ていく前に、まずは老後の生活にどのくらいの資金が必要となるのか、総務省による2020年の家計調査(※)を基に解説します。

 

家計調査の結果によれば、65歳以上の単身無職世帯の平均家計支出は、1ヶ月当たり「13万3,146円」とされています。

 

主な内訳は「食費27.5%」「住居費9.3%」「水道光熱費9.7%」などであり、住居費を計算するとおよそ「1万2,383円」です。これは、調査結果に持ち家の場合が含まれているためであり、賃貸物件を借りることを想定すれば、支出は平均よりも上回ってしまうと考えられます。

 

それに対して、月々の平均収入は「13万6,964円」であり、平均支出と見比べてみてもほとんど余裕はありません。

 

さらに、非消費支出を除いた「可処分所得」(自由に使えるお金)を見てみると、「12万5,423円」まで下がります。そのため、年金などの社会保障給付だけではなく、それまでの計画的な貯蓄が重要であることが分かります。

 

65歳以上の夫婦2人無職世帯の場合、平均家計支出は1ヶ月当たり「22万4,390円」とされています。

 

主な内訳は「食費29.3%」「住居費6.5%」「水道光熱費8.8%」などであり、住居費を計算すると「1万4,585円」です。こちらも調査結果に持ち家のケースが含まれていることを考慮すると、賃貸物件の場合はさらに多くの費用を見積もる必要があるといえます。

 

一方、収入は「25万6,660円」であり、そのうち85.7%は年金などの社会保障給付です。

 

そのうえで可処分所得は「22万5,501円」とされているため、支出と見比べてみるとほとんど余裕がないことが分かります。そのため、夫婦2人世帯の場合も定年後に備えて貯蓄を行う重要性が高いといえます。

 

(※)総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要

定年後の生活

 

定年後の支出について考えると、やはり住居費が大きなポイントになることが分かります。ここでは、持ち家と賃貸の違いについて、いくつかの点から詳しく解説していきます。

 

入居に必要な初期費用は、賃貸よりも持ち家のほうが負担は大きくなります。持ち家の場合は、手数料や税金などの諸費用として、物件価格の3~10%程度のコストが発生します。

 

たとえば、3,000万円のマンションを購入しようとした場合には、少なくとも100万円以上の初期費用がかかり、場合によっては300万円近くになることもあるのです。

 

それに対して、賃貸の初期費用は家賃の4~6ヶ月分が目安とされており、持ち家と比べればコストを安く抑えられます。

 

ローン返済額と家賃負担額については、どのようなプランを選択するかによっても異なるため、一概に比較することはできません。ただ、住宅ローンを完済してからは、当然ながら持ち家のほうがはるかに負担は小さくなります。

 

定年前までに住宅ローンを完済できるのであれば、毎月負担額の面では持ち家のほうが安心感があるといえます。しかし、住宅ローンを組むときには、失業や病気などの原因によって途中で返済ができなくなってしまうリスクもあります。

 

賃貸物件では、ローンリスクを想定する必要がなく、生活が苦しくなったらより家賃の安い物件に引越すといった選択も可能です。

 

持ち家と賃貸の大きな違いのひとつは、維持費の有無です。持ち家の場合は固定資産税などの税金、修繕費用の積み立てなどを負担する必要があり、年間では40万円程度が目安となります。

 

一方、賃貸物件では物件を所有する貸主が負担することとなるため、維持費の面から見れば負担が軽くなります。

 

維持費のような性質を持つ費用に更新料がありますが、支払うタイミングは一般的に2年に一度であり、料金も家賃の1ヶ月分が目安なので、持ち家と比べれば決して大きな負担ではありません。

 

持ち家のメリットは、間取りや設備の自由度が高く、ライフスタイルの変化に合わせてリフォームも行える点にあります。

 

また、一戸建てであれば、子ども世帯との同居に備えて増築するといった選択肢もあるため、家族構成の変化にも柔軟に対応しやすいです。

 

一方、賃貸物件のように気軽に引越しができず、住み替えやリフォームを行うためには大きな費用がかかってしまいます。そのため、持ち家を購入するのであれば、賃貸物件以上に綿密な人生設計が求められます。

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50歳から住宅ローンを組むときに意識すべきポイント

 

50歳からでも住宅ローンは問題なく利用することができます。しかし、30代や40代で利用するケースと比べると、いくつか注意しておかなければならないポイントがあるのも確かです。

 

ここでは、50代からの住宅ローン利用計画で意識すべきポイントについて見ていきましょう。

 

住宅ローンの審査では、借入時年齢とともに“完済時年齢”も対象となります。多くの住宅ローンでは75~80歳までと決められているので、50歳から住宅ローンを組むなら、返済期間は最長でも25~30年が目安になります。

 

ただ、定年後に収入が減少してしまうことを考慮すると、できる限り65歳までには返済を完了させておきたいところです。

 

多くの住宅ローンでは、融資を受けるにあたって「団体信用生命保険」(団信)の加入が必須とされます。団信とは、利用者に死亡や高度障がいといった万が一の事故があった場合に、代わりに住宅ローン残債を弁済してもらえる仕組みです。

 

ただ、団信は生命保険であることから、利用するためには健康状態が重要な審査項目となります。

 

「フラット35」のように、物件の担保評価を重視する代わりに団信の加入が必須でない住宅ローンもあるものの、この場合でも、返済できなくなるリスクを考えると健康状態の悪化については十分に目を向けておく必要があります。

 

定年を迎える65歳までに返済を完了させるためには、返済期間を15年に設定する必要があります。ここでは、返済期間15年だとどのくらいの毎月返済額になるのか、具体的な事例を基にシミュレーションしてみましょう。

 

今回は、計算にあたって以下の条件を設定しました。

条件

  • 物件購入価格:3,500万円のマンション
  • 借入時年齢:50歳
  • 返済期間:15年
  • 金利:全期間固定金利1.5%
  • 頭金:500万円を用意
  • その他の条件:ボーナス利用なし

この条件で計算すると、結果は以下の表のようになります。

住宅ローン借入額

3,000万円

毎月返済額

18.7万円

総返済額

3,353万円

利息支払額

353万円

 

また、仮に同じ条件で2,000万円のマンションを購入するケースを想定すると、結果は以下の表のようになります。

住宅ローン借入額

1,500万円

毎月返済額

9.4万円

総返済額

1,676万円

利息支払額

176万円

住宅ローンを利用する際には、無理のない毎月返済額を明確にしてから、借入限度額を計算することが大切です。

 

返済期間が短いケースでは、どうしても毎月の負担額が大きくなってしまうため、慎重に借入額を検討しましょう。

老後に持ち家を活用するポイント

 

持ち家を選択する場合は、定年前までに住宅ローンを完済できていれば、住居費に関する心配事はある程度少なくなります。

 

しかし、最初に紹介したように、老後における平均的な家計の収支を見てみると、住居費を除いてもギリギリになってしまうのが現状です。

 

そのため、万が一に備えて、持ち家を活用する方法についても目を向けておくと安心です。ここでは、シニア世代の持ち家活用方法として、「リバースモーゲージ」の仕組みについて解説します。

 

リバースモーゲージとは、持ち家を担保として融資を受けられる仕組みのことです。老後に万が一生活資金が不足してしまった場合、まとまったお金を用意するためには、家の売却や賃貸による収益化を検討するのもひとつの方法ではあります。

 

しかし、売却には時間やコストがかかってしまい、賃貸による運用をするためには専門的な知識やサポートが必要です。

 

リバースモーゲージでは、自宅を担保に銀行から借り入れが行え、返済は契約者が亡くなったときに担保物件を売却して賄うことができます。

 

そのため、老後の資金調達方法として、有効な選択肢のひとつになるのです。リバースモーゲージには、以下のような特徴があります。

メリット

  • 利用している間も自宅に住み続けられる
  • 高齢者でも借り入れができる
  • 資金使途は自由(事業用を除く)
  • 既存の住宅ローンを借り換えることもできる

デメリット

  • 自宅を相続させるためには、相続人が一括返済をしなければならない
  • 土地の評価額によっては借りられる金額が少なくなることもある
  • マンションを対象外としている金融機関もある

リバースモーゲージは、上記のように自宅の売却が前提となるため、相続人の同意が必要となります。

 

また、物件によっては利用できない、あるいは借りられる金額が少ないケースがあるため、あらかじめ不動産会社などの専門家に相談しておくことも大切です。

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マンション

 

最後に、老後を見据えた住まい選びで押さえておきたいポイントをいくつか紹介します。

 

定年後の住居においては、若い世代と比較して以下のような項目の重要性が高まります。

  • バリアフリーに対応しているか
  • メンテナンス負担が大きくないか
  • セキュリティ面は充実しているか
  • 生活利便性は高いか
  • 車がなくても生活に困らないか

こうした項目を意識すると、広々とした一戸建てよりも、ワンフロアに必要な設備がまとまったマンションのほうが生活はしやすいといえます。

 

また、マンションでは共用部分の維持管理を管理会社に行ってもらえるのに加え、オートロックや防犯カメラなどのセキュリティ設備が充実しているところも多いです。

 

さらに、一戸建てが閑静な住宅街に建てられることが多いのに対して、マンションは比較的に利便性の高い立地につくられることが多いです。駅や商業施設までの距離が近ければ、将来的には自家用車を手放しても、問題なく生活を送ることができます。

 

このように、50代からの家探しでは、高齢になってからも居住することを想定したうえで、生活しやすい条件を洗い出すことが大切なのです。

定年後の生活

 

  • 定年後の平均的な家計収支を見ると収入に対する支出の割合が大きく、ほとんど余裕がないことが分かる
  • 賃貸の場合は、平均よりも住居費がかかるため、さらにやり繰りが難しくなる
  • 持ち家の場合は、定年を迎えるまでに住宅ローンを完済できるような計画を立てるのがベスト
  • 万が一に備えて、リバースモーゲージの仕組みを理解しておくことも大切
  • 50代からの持ち家探しでは、住宅ローンの返済期間と定年後のライフスタイルを十分に検討する

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更新日: / 公開日:2021.10.22