LIFULL HOME’Sで発表している「買って住みたい・借りて住みたい街ランキング」。今回は2020年9月上旬に発表し、これまでと大きく順位や傾向が変化した「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング」に続き「買って住みたい街」についても新型コロナの影響があったのかを調査し、その結果を発表します。
「借りて住みたい街」と同じく、新規感染者が急増した2020年4月以降で「住みたい街に対する意識に変化があるか」について購入ユーザーの動向に注目して緊急調査を実施し、首都圏(1都3県)での街(駅)ランキングを算出しました。
LIFULL HOME'Sに2020年4月~8月に掲載された物件のうち、実際の検索・問合せ数から算出した"実際に探されている街・駅"のランキング結果です。
「買って住みたい街」ランキング
ポイント
1位は「勝どき」。都心・近郊の人気エリアが上位を独占するもニーズは二極化傾向を示す
賃貸ユーザーとは異なり、購入ユーザーはコロナ禍でも住みたい街に大きな変化が見られず
コロナ禍での買って住みたい街ランキング1位は都営地下鉄大江戸線の「勝どき」となりました。順位は以下のとおりです。
※「前回比」は2020年2月に発表した2020年LIFULL HOME’S買って住みたい街ランキングとの比較
| 順位 | 前回比 | 街(代表的な沿線) |
1 | – | |
2 | 17↑ | |
3 | – | |
4 | – | |
5 | 6↑ | |
6 | – | |
7 | 5↑ | |
8 | 7↑ | |
9 | 12↑ | |
10 | 19↑ | |
11 | 6↓ | |
12 | 5↓ | |
13 | 49↑ | |
14 | 13↑ | |
15 | 13↓ | |
16 | 26↑ | |
17 | 4↓ | |
18 | NEW | |
19 | 21↑ | |
20 | 19↑ | |
21 | 3↓ | |
22 | 2↑ | |
23 | 15↓ | |
24 | NEW | |
25 | 65↑ | |
26 | 22↑ | |
27 | 5↓ | |
28 | 2↓ | |
29 | NEW | |
30 | 11↑ |
「勝どき」は2020年2月に発表した2019年の年間調査においても1位となっており、2回連続してのトップに輝いています。「勝どき」人気はコロナ禍においても陰りが見えないことが調査によって明らかになりました。
勝どきエリアには東京五輪の開催に合わせて開発される大型物件の分譲が実施されており、近年最大の話題物件でもあることから1位の座を譲ることはなく、「借りて住みたい街ランキング」で4年連続1位であった「池袋」が新型コロナウイルスの流行によって「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング」で5位に転落したのとは好対照の結果となりました。
2位以下も2位「白金高輪」、3位「三鷹」、7位「中目黒」、9位「目黒」など、いずれも都心・近郊の人気エリアが順当に上位に登場しており、新型コロナの影響にほぼ関わりなく物件を都心近くで探している状況にあることが分かります。これは、賃貸物件を探しているユーザーとは大きく異なり、一旦物件を購入してしまうと簡単には買い替えをすることができないという購入ユーザー特有の心理が働いているものと推察されます。
賃貸ユーザーは、現状のコロナ禍が沈静化し始めれば郊外に向いていた意識・意向が再び都心・近郊へと戻り、同エリアでの物件検索や問合せを開始して郊外から都心方面へと「回帰」してくることが想定されます。
一方購入ユーザーは、仮に一旦郊外で住宅を購入すれば、売却や転居に関わる手続きなど手間がかかり、またいつコロナ禍が落ち着くのかが見えないという現状であることから、郊外化へは心理的ブレーキがかかっているものと考えられます。
このように賃貸ユーザーと購入ユーザーとでは住み替えに関してのハードルの高さの違いがありますが、今回の5ヶ月間のデータから分かる購入ユーザーの意向は、賃貸ユーザーのような郊外化の意向はまだはっきり見られないと考えることができます。
なお、これまで人気の高かった「恵比寿」が15位、「横浜」が17位とそれぞれ順位を落としていますが、これは同エリアの中古物件の価格が高止まりしていて関心が集まらなかったことなども原因のひとつとして想像でき、コロナ禍によって人気そのものが大きく下がったと考えるのは早計です。
また、4位に「北浦和」、5位「本厚木」、6位「八王子」、8位「柏」、10位「朝霞」など近郊からやや離れた準近郊に位置するエリアがランキング上位に登場し始めているのも大きな特徴です。
今回の調査では明らかな郊外化を示していない購入ユーザーの意向ですが、首都圏郊外に位置する房総半島や埼玉県北部エリア、神奈川県箱根エリアもしくは首都圏外ほどまで遠方ではなく、都心・近郊に通勤・通学などのアクセスが容易なベッドタウンへのニーズは高まっていると見られます。
このようなランキング上位もしくは全体的な傾向を確認すると、購入ユーザーのニーズは「コロナ禍でも資産性に変わりがないと期待できる都心・人気エリア」と「通勤・通学に便利な準近郊のベッドタウン」に概ね二極化しつつあることが分かります。
「問合せ増加率」ランキング
ポイント
問合せ増加率1位は「牛込柳町」、2位「神楽坂」。新規供給で同じエリアにニーズ増加
「鎌取」や「八幡宿」など、一部では郊外化の動きも見られる
「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング」同様、買って住みたい街でも前年同時期と比較した「問合せ数増加率ランキング」を併せて算出しました。
コロナ禍での生活環境の激変によって問合せの絶対数だけでなく、注目度が高まった街を同じくランキングにしています。増加率の順位は以下のとおりです。
| 順位 | 増加率 | 街(代表的な沿線) |
|---|---|---|
1 | 385.53% | |
2 | 367.59% | |
3 | 346.67% | |
4 | 324.11% | |
5 | 323.48% | |
6 | 318.88% | |
7 | 295.50% | |
8 | 285.16% | |
9 | 278.68% | |
10 | 275.79% | |
11 | 267.00% | |
12 | 259.73% | |
13 | 259.43% | |
14 | 255.00% | |
15 | 254.08% |
2019年4月からの同時期と比較して2020年に購入ユーザーの問合せ数の増加率が最も大きかったのは都営地下鉄大江戸線「牛込柳町」(対前年同期比385.5%)、2位もほぼ同じエリアに属する「神楽坂」(同367.6%)でした。いずれも前年から4倍弱の問合せ数に激増しています。
これは主に同エリアでの主要幹線道路の拡幅工事に伴う物件の新規供給がコンスタントに実施されたことに起因しているという見方もできます。特に都心だから注目が集まったのではなく、都心の住宅地での物件供給が増加したことによる結果と考えられます。新宿区内の高台に位置する良好な住宅地で新築物件の分譲が増えれば、価格も含めて注目が集まるのは当然のことと言えるでしょう。
よって、購入ユーザーの意向がコロナ禍によって郊外化しているとはまだ言い切れないという状況がうかがえます。
3位以下も3位「大崎」(同346.7%)、4位「江戸川橋」(324.1%)、5位「浅草橋」(同323.5%)と軒並み前年から3倍以上の問合せ数となっており、問合せ増加率においても都心エリアの人気が明らかです。
「借りて住みたい」では「八街」以下”ベスト3″を千葉県郊外エリアの街が独占し、郊外への意向が顕著でしたが、「買って住みたい」では都心・近郊の人気住宅地が上位をほぼ独占しています。
ただし、7位にJR外房線「鎌取」(同295.5%)、10位にJR内房線「八幡宿」(同275.8%)、15位にも東武東上線「新河岸」(同254.1%)がランクインしていることは注目に値します。
購入ユーザーの居住意向は都心・近郊にほぼとどまってはいますが、問合せの増加率という観点から調査すると、郊外においても局所的に問合せが増加しているエリアが登場します。都心のように新規物件が目立って供給された事実はなく純粋に問合せ数が増加しています。
このことは千葉県の房総半島方面および埼玉県川越市での潜在的な購入ニーズが高まったことを示しています。
今回のデータでは、コロナ禍をきっかけとした購入ユーザーの傾向としては都心・近郊で大きな変化が見られないものの、一部では郊外に居住エリアを移したいと考えるユーザーがいるということになります。その代表として「鎌取」や「八幡宿」が挙がっています。
つまり、今後新型コロナウイルスの流行が拡大し、都心・近郊に住み続けることがリスクと捉えられるようになれば、居住エリアを郊外方面で検討する購入ユーザーも増える可能性があるということを意味しています。
ただし現段階では、賃貸ユーザーのようにその多くが郊外での居住をイメージするのではなく、購入ユーザーにおいては一部にとどまっているということにも着目する必要があります。
「問合せ減少率」ランキング
ポイント
問合せ減少率1位は「大島」の33.3%。上位15位のうち14エリアが23区内
今回は対コロナ禍に着目した購入ユーザーの意識の変化を調査するものです。
賃貸のデータと同様、問合せ数が減少した街については、生活と交通の利便性が良好なことでこれまで優位性が認められていても、それが「コロナ禍を前提とした住宅環境」に限っては高い評価を受けなかったということを意味しています。減少率の順位は以下のとおりです。
| 順位 | 減少率 | 街(代表的な沿線) |
|---|---|---|
1 | 33.33% | |
2 | 36.69% | |
3 | 38.22% | |
4 | 41.61% | |
5 | 44.29% | |
6 | 47.62% | |
7 | 48.28% | |
8 | 51.85% | |
9 | 52.02% | |
10 | 52.31% | |
11 | 52.61% | |
12 | 54.03% | |
13 | 62.13% | |
14 | 64.50% | |
15 | 65.07% |
2019年4月からの同時期と比較して2020年に購入ユーザーの問合せ数が最も大きく減少したのは都営地下鉄新宿線の「大島」33.3%でした。昨年と比べて3分の1ほどの問合せ数にとどまっています。
2位以下も「六本木」(対前年同期比36.7%)、「篠崎」(同38.2%)、「八丁堀」(同41.6%)、「目白」(同47.6%)、「北千住」(同48.3%)など都心・近郊の交通と生活利便性のバランスの良いエリアが昨年の同時期から半分以下の問合せ数に激減しています。
都内ではコロナ禍で市場に流通する物件数が減少傾向を示している影響もあり、都心・近郊から購入ユーザーの意向は大きく動いていないものの、購入するというニーズやモチベーション自体が減少したことが都内物件の問合わせ減少率に表れている可能性がうかがえます。
- ランキングに登場する15エリアのうち14エリアが23区内の街(駅)であること
- そのいずれも都心・近郊の住宅地として人気を獲得しているエリアでもあること
- 併せて問合せ増加率においても都心・近郊で新規物件の開発が行われた街にニーズがほぼ集中していること
これらを考慮すると、都心・近郊の街での購入ニーズ全体がコロナ禍では減少傾向にあり、そのニーズがこの時期においても新規物件の開発が実施された特定のエリアに集まったことで問合せの増加率と減少率の明暗を分けたものと見ることができます。
まとめ
今回の期間における「コロナ禍での買って住みたい街」ランキングの調査からは、下記が浮き彫りになりました。
ポイント
- 購入ユーザーの意向は現在の居住エリアから大きく動かないこと(ニーズの先送りによる全体的な減少で賃貸ユーザーとは対照的)
- コロナ禍が長期化した場合を想定して一部居住エリアの郊外化を検討する動きがあること
- コロナ禍だからこそ公共交通機関を利用せずに通勤・通学可能な職住近接エリアでの住宅購入を検討する可能性があること
- 準近郊エリアであるベッドタウンでの購入をイメージする意向も重なって全体的にはニーズが二極化しつつあること
賃貸ユーザーの意向とは大きく異なり、都心・近郊での居住ニーズには変化が見られないものの、コロナ禍の影響にほぼ関わりなく都内の新規開発物件のあるエリアにニーズが集まり、そうでないエリアに関しては都心を中心にニーズが減少傾向にある状況です。
また賃貸ユーザーに顕著な”郊外への意向”についても一部にとどまることがわかりました。
なお、「問合せ数の減少率」ランキングは【1都9県】に調査エリアを拡大しても問合せ数が大きく減少した街は都心・近郊にほぼ集中していることから、首都圏(1都3県)を対象とした調査とまったく同じ結果が得られています。
| 調査概要 | ||||
|---|---|---|---|---|
対象期間
・コロナ禍での買って住みたい街ランキング LIFULL HOME’S に掲載された購入物件のうち、問合せの多かった駅名をそれぞれ集計
・問合せ増加率ランキング LIFULL HOME’S に掲載された購入物件のうち、前年比で問合せ数の増加率が高かった駅名をそれぞれ集計
・問合せ減少率ランキング LIFULL HOME’S に掲載された購入物件のうち、前年比で問合せ数の減少率が高かった駅名をそれぞれ集計
増加率および減少率ランキングは対象期間および前年同期間における問合せ数上位500駅を対象とした 問合せ数および問合せ増加率、減少率が同値の場合は前年の問合せ数および問合せ増加率、減少率の数値の高い(低い)駅を上位とした |
LIFULL HOME’S住みたい街ランキング
withコロナ時代の住まい探し記事
本件に関するお問合せ先
株式会社LIFULL(ライフル)
プレスリリースはこちら
更新日: / 公開日:2020.10.27










