大阪市の中央に位置し、カフェなどの飲食店が多く立ち並ぶ、西区新町エリア。魅力的なお店がありつつも、ある時期までは2軒目、3軒目と線を結ぶような楽しみ方はなかなかできなかったといいます。
そんな新町に2020年の「二甲料理店」開店を皮切りにして、新しい人の流れとドープなカルチャーの香りを持ち込んだのが、株式会社等白代表の前田貴紀さんです。

この度は、他府県からの来店はもちろん、府内からもクリエイティブな職に従事するお客さんが多く訪れる立ち飲み屋「お料理横目」について、町の変化と併せてお話を伺いました。大阪府の物件を探す

横目があしらわれた店内ライト

―「二甲料理店」、その後同じ場所をリニューアルされるかたちで「喫酒オルタナ」、そしてここ「お料理横目」(以下、「横目」)、また直近では「二甲立食店」と複数の店舗を手掛けられていますね。

前田さん:「2020年4月に新町で『二甲料理店』を始めました。当初から3年で区切りと決めていたので2023年4月に一度畳んで、その跡地で『喫酒オルタナ』を6月にオープンさせました。『横目』は2021年10月のオープンです」

―最初のお店「二甲料理店」はどういった経緯で始められたのでしょうか?

前田さん:「それまでは独立を前提に会社に所属し、飲食店の経営やマネジメントを経験しました。独立するのであれば自分のカラーのお店を出さなければ意味がないと思ったので、僕らの“発表のステージ”として『二甲料理店』を仲間と開店させました。30歳のタイミングでしたね」

―新町だったのには理由があるのですか?

前田さん:「僕らの世代にとっての新町は飲みに繰り出すような町ではなかったので、正直ほとんど行ったことがありませんでした。有名なお店さんの存在は知っていましたが、あくまで点であって、町と遊んでいる感じがない。逆にだからこそ若い世代で新しい表現ができたらおもしろいのではないかと思いました。

あとは単純に物件の魅力ですね。マンションの一室に入っていくようなストロークがあるので入るまでのハードルは高いのですが、ドアを開けると空間が開放的で。当時は、間口が広くて、外から中の様子が見えていて、ネオンがキラキラしている、みたいなお店がすごく多かったこともあって、世の中の逆張りになるし良くなるイメージもすぐに見えました」

―「横目」も新町ですが、町の楽しみ方を点から線、面と広げていく意図を感じます。

前田さん:「そうですね。ポテンシャルがあるはずの町なのにもったいないと思っていたんです。もっといろんな世代、価値観が流動的に動く町になれるんじゃないかと。だからこそ人が交流するハブとして、かつ僕らが新しい表現をする場所として『横目』を始めました。飲食店が持つカジュアルさという魅力は、さまざまな価値観を持った人たちが出会うきっかけになると思っています」

―一方で前田さんご自身もそうですし、ヒップホップが流れていることに象徴的されるようにお店の雰囲気もどこか飲食店らしくないような気も……。

前田さん:「僕自身、飲食業がクリエイティブだと思っているからですかね。だから『飲食店で働いている』と言いたくないんですよ(笑)。いまはまだ代わる言葉を見つけられてはいないのですが、“飲食業”という言葉についてくるイメージにまとめられないように尖った表現をしているつもりです」

―なるほど、これまでのお話でも“表現”という言葉を使われている意図がわかりました。

前田さん:「飲食を表現として捉えると、川上から川下までの流れが明確にわかるというおもしろ味があります。つまり、仕入れ、調理、目の前のお客さんの反応まで、全部自分たちで直に見ることができる。今日やろうと思ったことをすぐにお客さんに届けられる。例えば、化粧品を売ることもプロフェッショナルな技術に変わりありませんが、飲食でいう調理の部分はありません。また、美容師さんとも性質が異なります」

―マネジメントであったり、飲食店を大局的に考える立場だと思いますが、最初はどういった意識でこの世界に入ったのですか?

前田さん:「まず何より、資格も年齢も国籍も関係なく誰でも入っていけることを魅力に思っていました。一方で労働環境、金銭面が優れているわけではないとは長く言われていることです。そこに変化を作りたいという意識でした」

お店を彩るデザインワークは前田さんが信頼を置く、名古屋のチーム「デザインパーソン」によるもの

オリジナルステッカーは時期によって色が変わるので、再訪時には要チェック!

―そういった飲食の可能性や問題に対して、チームや場を作ることでアプローチしたということですね。

前田さん:「はい、だからこそ僕らの根本には『自分たちが楽しく働く』という意識があります。それがファッションでも音楽でも何でもいいんです。実際、いま働いてくれているスタッフはもともとアパレルや音楽をしていたけど、飲食に興味を持って合流してくれたメンバーです。そういった飲食の枠を越えた自由なチームを作ることが楽しいし、そのチームで人間のライフスタイルと切り離すことのできない“食”という文化の普及に努めることにやりがいを感じています」

―複数のカルチャーが食に収斂して、なおかつ食からまた広がっていくような場だと。お店にいて印象的だった出来事はありますか?

前田さん:「旅行で日本に来た海外のお客さんが『○○さんにおすすめされました』って来てくれるのは嬉しいですね。日本でも遠方のお客さんが紹介で来てくれたりとか。お客さん全員が満足するお店ではないと思うんですよ。騒がしいとか音楽の趣味が合わないとか、人それぞれなので。そのなかでも魅力を感じてくれた人がちゃんと覚えていてくれて、口コミで広めてくれて。やっていることは間違っていないなと思えます」

―お客さんはどんな方が多いですか?

前田さん:「年齢や性別でターゲットを決めていなくて、強いて言えば僕らの表現に共感してくれた人たちがターゲットです。なのでよく来てくれるのは、アパレル関係、美容師、デザイナー、建築関係、広告代理店の方など、ちょっとクセがあったりクリエイティブな香りのする人が多いです。お店を始めた当初よりもお話ししていて『おもしろい!』と思うお客さんが増えた印象なので、その意味でも純度が上がっていると思います」

右手前から時計周りに「横目のバタしゃぶ」(1,650円)、「蛸と春菊のカルパッチョ」(660円)、大根の唐揚げ(550円)。メニューは常にアップデートされるので最新のお料理は店頭で確かめるのが吉

「バタしゃぶ」は限定5食。牛フィレ肉に澄ましバター、食感と味のアクセントにはスパイスの効いたパン粉が。お酒が進むこと間違いなし

―ちなみに前田さんがカウンターのなかでお料理をすることもあるんですか?

前田さん:「ないです(笑)。基本的にお客さんと喋っています。近くに『二甲立食店』ができたので、こっちに一週間、その次はあっちに一週間という形で動いています。でも知り合いが来ていると連絡があれば駆けつけて、一緒にしゃべって、飲んで(笑)」

―やはり代表自らが現場にいることは重要ですか?

前田さん:「そうですね。現場は好きですし、さらにお店をよくするためには現場のことを知らないといけないと思うので。お客さんは毎日変わりますが、仕事自体はルーティン的な要素が多いので慣れや飽きが出てきてしまいます。だから僕がお客さん的な目線で見て、おかしいと思うようなことがあれば言うようにしています」

―新町を拠点に複数の店舗を持たれていますが、町の変化などを感じる部分があれば聞かせてください。

前田さん:「僕らのパワーかどうかはわからないですが、少しずつ若い人が自分のお店を始めるようになったとは思います。最初にお店を始めるときから僕らがいることによって『新町に出店したい』とお店側に思わせたいと考えていたんです。みんなで町を盛り上げていけるような環境になってきました」

―たいへん興味深いお話をありがとうございました。最後に今後の展望をお願いします。

前田さん:「今後の直営店の展開は、僕がお世話になった土地、お世話になっている人がいる土地で一区切りかな。大学時代を過ごした京都、一緒に仕事をしているチームがいる名古屋、最後は出身地の福岡。その後はフランチャイズ展開も視野に入れています。ほかにも、音楽やファッションに精通したスタッフに恵まれているので、食以外の分野で活躍できる場を作っていきたいです。いずれにしろ、『二甲料理店』は3年で閉めましたが『横目』はそのような予定はありません(笑)。でも仮にいつか閉店したときに『ここには横目っていうお店があってね……』と語り継がれるような場所にしたいと思います」

マネージャーを務める宮内はるなさんはアパレル業界から「横目」に

◆今回取材したお店

「お料理 横目」

住所:大阪市西区新町1丁目22-12 102

電話:06-6599-8998(当日のみ予約可)

営業時間:18:00~24:00(食事L.O 23:00 / ドリンクL.O 23:30)

定休日:祝日

Instagram:@oryori_yokome

今回紹介した「お料理 横目」はOsaka Metro長堀鶴見緑地線・西大橋駅から徒歩2分ほど。四つ橋線・四ツ橋駅からも徒歩5分強と好立地です。新町は上記2路線に加えて、千日前線・西長堀駅も擁しており交通面は抜群といえます。繁華街である心斎橋にほど近いながらも落ち着いた住居環境から、近年ますます人気のエリアです。

前田さんの実感にあったように、若い方が始めるお店が増えたり、「横目」をはじめとした飲食店の面ができつつあるようで、活気も感じられます。西大橋駅の平均家賃は7.23万円と同路線上では心斎橋駅に次ぐ高価格帯ですが、アクセスや住環境の良さはもちろん、スーパーといった日用品を買う場所にも困らない、利便性にも優れたエリア。これからより盛り上がっていくであろう町で新しい暮らしをスタートさせてみてはいかがでしょうか。

取材・文:石川宝 写真:三宅愛子

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更新日: / 公開日:2026.02.27