ヨーロッパやその影響を受けた南米の街には、必ずといっていいほど大きな広場があり、街の中心となっています。そんな広場を駅前に設けているのが京王線の調布駅です。

「日本の駅前にはロータリーはあっても、駅と一帯になった広場はあまりないので、非常に面白いですね。市役所も近くにあって、まさに街の中心。子どもが自分でつくった物を売る『こどもいっぴんいち』や、調布発祥の野外映画上映会『ねぶくろシネマ』など、人が集うユニークなイベントをたくさん行っています。あれだけの広さがあるので、有効に使えば今後も多様なイベントの開催が期待できるのではないでしょうか」

調布市自体はそれほど規模の大きい自治体ではありません。しかしそれは、コミュニティが育まれやすいという利点にもつながります。最近は若い住民も増加傾向で、その世代向けのサービスが充実しつつある点も魅力です。

予算に余裕があるならば、少々土地の値は張るものの都心エリアの可能性も探ってみましょう。そこで浮上してくるのが、近接する小田急線豪徳寺駅と東急世田谷線山下駅です。

「少し前に松陰神社前駅付近の個性的な商店が面白いと人気が出ましたが、豪徳寺駅と山下駅は第2の松陰神社前になりそうな雰囲気があります。東急世田谷線沿線は都心に直結しない分、開発も遅れてきたので穴場的。周囲には評価の高い住宅街もあるなど環境はいいです。小さい区画の土地は、デザインに凝った狭小住宅に向いていますね」

最近、既に一定の知名度がある首都圏の主要駅の街でも、かつてと様相が変わりつつあるケースが見受けられます。JRと東武アーバンパークラインの2路線利用可能な船橋駅はその代表例です。

「若い世代の住民による街づくり、盛り上げようという動きが非常に活発です。きっかけは2006年に１人の学生が立ち上げた民間図書館。ベッドタウンを背景に街が発展した分、コミュニティ意識がやや希薄でしたが、最近は人が見える街になっています」

民間図書館の蔵書は市民の寄贈でまかなわれ、今では駅前や住宅街、商店やマンションなどに広がり、市内に26館を数えるまでの人気ぶりとなっている。
「船橋を舞台とした映画『きらきら眼鏡』も市民が中心となって映画化プロジェクトが進められました。近年は地方や郊外にある都市の地元意識が強まっている傾向がありますが、船橋もその典型ですね」

2000年代以降、ニューヨークのミートパッキング・ディストリクトやダンボなど、世界各地で工場や倉庫が立ち並ぶエリアが再開発され、人気スポットになるケースが知られていますが、首都圏でそれに似た街づくりが行われそうなのが川崎市の京急大師線沿線。川崎大師への参拝客を運ぶ路線である一方、工場地帯ということもあり、これまで住宅地のイメージが少なかったところです。しかし近年、川崎市がこの近くの一帯を「キングスカイフロント」と名付け、新産業を創出する研究機関を誘致するなど整備を進めています。

「企業などが増えれば、そこで働く人の住居ニーズが生まれます。特に港町駅は川崎駅や中心街からも近く、ホテルやタワーマンションが新たに建てられるなど、エリア全体の雰囲気や利便性が向上する可能性を秘めています。羽田空港や都心が近いのも利点ですね」