高齢者が一人暮らしをする場合、さまざまなリスクが想定されますが、中でも注意したいのが転倒や転落による事故です。

住宅内には水で滑りやすい浴室、足が引っかかりやすい布団類、つまずきやすい玄関や階段など、高齢者にとって気をつけるべき箇所が多くあります。

この記事では、高齢者の一人暮らしにおける転倒・転落事故のリスクや原因、未然に防ぐための対策などを解説します。

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高齢者が家庭内で、気をつけたいのが転倒・転落です。転倒・転落による事故は、死亡や救急搬送を要する大ケガに発展するケースも多く、一人暮らしでは特に注意する必要があります。

 

ここでは、消費者庁のデータを基に、住宅内で転倒・転落のリスクが高い場所、高齢者が転倒することで起こり得る問題について見ていきましょう。

 

消費者庁が2017年に公表したデータによると、65歳以上の高齢者の日常生活における事故の原因としてもっとも多かったのは転倒・転落で、1,600件でした(2010年12月から2017年8月末の集計)

 

住宅内で転倒・転落が一番多い場所は浴室・脱衣所で、ベッドや布団玄関・勝手口階段と続きます。

 

浴室・脱衣所での事故がもっとも多い原因としては、水で滑りやすいこと、浴室入り口の段差や浴槽につまずきやすいことが考えられるでしょう。

 

ベッドや玄関は段差でつまずきやすく、布団は足が引っかかりやすいため、転倒する高齢者が多くなっています。

 

事故の発生状況を見ても、「滑る」「つまずく」の割合が高いことから、これらの場所は転倒しやすい条件がそろっているといえます。

 

転倒や転落は発生件数が多いことに加え、救急搬送の件数が多い点も特徴です。

 

症状の内訳を見ると「骨折」の割合が高く、とりわけを骨折するケースが多く見られます。骨折をして入院した高齢者は76%、要通院が22%という結果になっており、特に深刻な状況です。

 

また、骨折などのケガを負うことで高齢者のQOLが大きく低下するリスクがあります。QOLとは「Quality of Life、クオリティー・オブ・ライフ」の略で「生活の質」を意味し、心身が満たされ、質の高い暮らしを送れているときがQOLの高い状態とされています。

 

これまでできていたことができなくなるとストレスがたまり、生活の質の低下につながります。たとえば、足を骨折すると松葉づえやほかの人のサポートが必要です。

 

これまで問題なく歩けていた高齢者が歩行の自由を奪われると、生活の質が大きく低下し、生きがいや活力を失ってしまう可能性もあります。

 

高齢者の日常生活における事故で大きな割合を占める転倒・転落ですが、高齢者が転倒・転落してしまうのはなぜなのでしょうか。主な原因を把握して事故の予防につなげましょう。

 

高齢になると筋力が低下するため、身体のバランスを崩しやすくなります。さらにバランスを崩したときに身体をうまく支えることができず、そのまま転倒してしまうことが考えられます。

 

筋力の低下は体力の低下を招き、疲れやすくなると出掛けるのが面倒になってしまい、活動量の低下にもつながります。その結果、筋力と体力がますます弱まるという悪循環に陥ってしまいます。

 

また、転倒や転落によるケガで歩けない状態が長く続くと、いっそう筋力や体力が低下し、悪循環が加速する可能性もあるでしょう。

 

体力の低下によって外出がおっくうになると、運動量や活動量が低下し、運動不足に拍車がかかります。

 

運動不足で太ももやおなか周りの筋肉が落ちるとすり足歩行になり、電源コードやカーペット、マットなどにつまずきやすくなります。

 

また、ドアレールやサッシといったわずかな段差でもつまずき、若い人からすれば「何もない場所」で転んでしまう恐れもあります。

 

ベッドや布団で転倒する高齢者が多いのは、足が引っかかるだけでなく、立ち上がるときにふらつくことが増えるためとされています。

 

筋力が落ちていると体勢をうまく保てず、立ったり座ったりする動作が不安定になり、転倒しやすくなるのです。

 

住環境が高齢者の転倒・転落の原因になっているケースもあります。

 

高齢者の家庭内事故で多いのは「滑る」「つまずく」です。加えて「引っかかる」ことによる事故もよく見られます。古い住宅の場合、段差も多く転倒・転落のリスクが高まるでしょう。

 

転倒の危険性が高い住環境としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 滑りやすいフローリングや畳
  • タイルなど滑りやすい床材にもかかわらず滑り止めマットを敷いていない浴室
  • 滑りやすいマットを敷いた玄関
  • サイズの合わないスリッパの利用
  • 動線上に延びる電源コード
  • 簡単にずれてしまうカーペット

 

こうした危険要因ともいえる住環境を改善することで、転倒・転落のリスクを低減できるでしょう。

 

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一人暮らしの高齢者が自宅で転倒・転落すると、発見が遅れて事態が深刻化する恐れがあります。

 

一人暮らしの高齢者に関しては、家族と同居する高齢者以上に転倒・転落を防ぐ工夫が必要です。どのような対策が有効なのか順番に見ていきましょう。

 

すり足気味の高齢者は、床に置きっぱなしの本や新聞紙、洗濯物、毛布などに足を取られて転倒することがあります。

 

使ったものはすぐに片付け、部屋を整理整頓することでリビングや居室における転倒リスクを低減できます。そもそも床に物を置かないということも大切です。

 

また、電源コードに足が引っかかって転倒することも考えられます。長い電源コードはまとめておき、生活動線上にないようにする工夫が必要です。

 

扇風機やストーブなどの季節家電は使わなくなったらすぐ収納し、余計な電源コードを減らすようにしましょう。

 

床に余計なものを置かないといっても、部屋の快適性を考えるとカーペットやマットなどの敷物をすべて片付けるのは難しいでしょう。

 

室内にカーペットやマットを敷く場合には、端のめくれやすい部分をテープなどで留めておきます。どうしても滑りやすい敷物は滑り止めをつけるか、滑りにくいものに買い替えることを検討しましょう。

 

スリッパや靴下を履いているときに滑ってしまい、転倒・転落事故につながる可能性もあります。滑る原因となるサイズの合わないスリッパは履かないようにし、靴下は滑り止めがついているものに替えるのがおすすめです。

 

転倒しづらい環境を整えるのと併せて、高齢者自身が筋力や体力をつけることも大切です。身体能力が落ちているからといって外出や運動を十分にしないと、筋力・体力がさらに低下し、いっそう身体能力が落ちてしまいます。

 

前述のように、筋力低下が招くすり足は転倒リスクを高めるうえ、筋力がないとつまずいたときに踏ん張りが利かず、そのまま転倒・転落してしまう恐れがあります。

 

ただし、無理に運動すると身体を壊したり、ストレスの原因になったりするかもしれません。高齢者の運動は何よりも継続が大切です。続けやすい頻度で、無理なく運動するように心がけましょう。

 

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高齢者の一人暮らしには多くのリスクが潜んでいます。特に注意が必要なのが、室内での転倒・転落のリスクです。

 

高齢者が転倒・転落すると、骨折をはじめとした大ケガにつながる危険性が高く、生きがいや活力まで失ってしまう可能性もあります。

 

住まいの転倒の要因になる箇所を把握し、適切な対策を講じることが大切です。高齢者だけでは危険に気づきにくいケースもあるため、家族や周囲の人がサポートしながら安心して一人暮らしできる住環境を整えていきましょう。

 

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