「住まい探し」の観点から「大宮」と「浦和」を比較
さいたま市は、埼玉県の県庁所在地である。
大宮は平安時代の格式の高い武蔵一宮・氷川神社を「大いなる宮居」とあがめたことに由来するといわれ、その門前町として繁栄。その後、江戸時代には中山道4番目の宿場町として発展。明治時代以降、高崎線開業時に浦和には駅ができた一方で、大宮には駅ができなかったこともあり、政治・経済ともに衰退する兆しが見られた。
1885(明治18)年に大宮駅が開設、1894(明治27)年には日本鉄道の大宮工場が操業を開始したことで「鉄道のまち大宮」として変化を遂げた。交通の要衝となり、工場の進出やそれに伴う人口増で、大宮はさらなる発展を遂げ今に至る。
一方、浦和も中山道3番目の宿場町として繁栄。明治時代には教育施設の充実が進み、全国から優れた学生が浦和に集まるようになり、行政の中心であるとともに「文教都市浦和」としての地位も確固たるものになった。1932(昭和7)年、省線電車(現京浜東北線)が整備されると、都市化に伴う人口の流入が著しくなり、1934(昭和9)年には市制が施行され浦和町は浦和市となり、戦後は住宅都市・文教都市として発展を遂げてきた。
2001年、政令指定都市になることを目指し、大宮市と浦和市、与野市が合併しさいたま市が誕生。大宮と浦和の間で、人口や経済力を背景に、どちらに県庁を置くべきか争ったが、最終的には浦和区に所在することとなった。
埼玉県民なら一度は聞いたことがある「大宮 vs 浦和」論争。
統計データやLIFULL HOME'S独自データで両区を比較し、これまでになかった「住まい探し」の観点から大宮と浦和を比較調査した。各データをLIFULL HOME'S総研 チーフアナリスト中山氏が解説する。
人口規模(2023年10月時点)
住民基本台帳による月別人口推移によると、2023年10月の人口では大宮区が約12.4万人、浦和区が約16.9万人。人口差はあるもののどちらの区も人口は増加傾向にあり、2012年8月からの伸び率は大宮区111.6%、浦和区114.5%とほぼ同水準。
※さいたま市の人口・世帯(時系列結果)
〈中山氏コメント〉
総務省の調査によると、2022 年に人口増が最も顕著だったのがさいたま市で、良好な交通利便性、比較的安価な住宅価格、リモートワークの定着が要因とされ、中心エリアである大宮区も浦和区も今後の人口増が期待される。人口推移はお互いに譲らぬ状況が続くだろう。
住みたい街ランキング
2022 年における実際の問合せ数からユーザーの「本気」で住みたい街を算出した「2023 年 LIFULL HOME'Sみんなが探した!住みたい街ランキング」の首都圏版では、「借りて(賃貸)」と「買って(中古マンション)」のどちらも大宮に軍配が上がった。
〈中山氏コメント〉
賃貸意向は大宮が2 位(埼玉県内1 位)、浦和が39 位(埼玉県内6 位)、購入意向でも大宮8 位(埼玉県内1位)、浦和41 位(埼玉県内6 位)と明らかな差があった。大宮は首都圏有数のターミナル駅に成長し、新幹線移動も含めた交通利便性の良さや駅勢圏(駅周辺の繁華性の高いエリア)の広さなどが高く評価されている。
駅周辺の施設充実度
ある地点から徒歩圏で到達できる範囲に、生活利便施設、商業・レジャー施設、教育・学び施設など、都市のアメニティがどれだけ集積しているかを100 点満点で評価する指標「Walkability Index(ウォーカビリティインデックス)」で、駅周辺の充実度を比較した結果、わずか1 点差で「大宮」に軍配が上がった。
大宮:https://lifullhomes-index.jp/info/areas/saitama-pref/00040-st/
浦和:https://lifullhomes-index.jp/info/areas/saitama-pref/00541-st/
Walkability Index:https://www.nikken-ri.com/wi.html
〈中山氏コメント〉
大宮と浦和の生活利便施設充実度はほぼ同じとなった。指数では具体的な利便性を実感できないが、大宮は弁当・惣菜50点、公園57点、医療施設55 点、交番50点と50点台の項目が多いのに対して、浦和は満遍なく高得点を挙げており、どの項目を重視するかで大宮か浦和かを選択する意向に影響がある。
交通利便性
利用可能な路線数で比較した結果、新幹線の利用が可能な大宮が15路線、浦和駅は5路線となり、大宮に軍配が上がった。一方、主要駅へのアクセス時間は、大宮より都心方面に位置する浦和に軍配が上がった。
〈中山氏コメント〉
各駅に乗り入れる路線数は大きく差がついた。大宮には新幹線だけで6路線が乗り入れ、JR 在来線に私鉄も加わって、上野に代わる「北の玄関口」のポジションを獲得。浦和は大宮よりも都心寄りだが、JR在来線のみの乗り入れとなっており、出張や旅行、帰省なども含めて交通利便性は大宮に優位性がある。
賃貸物件 家賃相場&物件数
〈調査概要〉
抽出期間:2022年1月~12月(1年間)
― 家賃相場:築40年以内、駅徒歩20分以内、定期借家を除く、専有面積15m2以上40m2未満
― 物件数:築40年以内、駅徒歩20分以内、定期借家を除く
― 駅近物件数: 築40年以内、駅徒歩5分以内、定期借家を除く
― 新築物件数:築1年以内(未入居)、駅徒歩20分以内、定期借家を除く
〈中山氏コメント〉
交通利便性と駅勢圏の広さは大宮がやや優勢で、その影響が賃貸ニーズにも反映されている。首都圏の家賃相場分布は都心に物理的に近いエリアの水準が高いが、主に単身者向け物件の家賃相場は大宮が7.5万円に対して浦和は7.0万円と逆転している。賃料が高水準な駅近、新築物件が圧倒的に多いことがその要因だ。
売買物件 価格相場&物件数
〈調査概要〉
抽出期間:2022年1月~12月(1年間)
― 価格相場:築40年以内、駅徒歩20分以内、専有面積30㎡以上75㎡未満
― 物件数:築40年以内、駅徒歩20分以内
― 駅近物件数: 築40年以内、駅徒歩5分以内
〈中山氏コメント〉
賃貸ニーズとは対照的に購入ニーズは浦和に軍配が上がった。中古マンション価格相場は大宮が3,685万円に対して浦和は5,180万円と約1,500万円の差があった。住宅購入は長期の居住を前提とするため、交通・生活の利便性に加えて住環境、教育・医療、安全性などチェック項目が多岐にわたり、住宅地としての“品質”が評価された結果だ。
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