城下町の時代から広島の行政・経済の中枢を担っている「紙屋町・八丁堀」での再開発

広島市の中心部に位置する「紙屋町(かみやちょう)・八丁堀(はっちょうぼり)」エリア。広島の行政・経済の中枢といえるこのエリアで、複数の再開発プロジェクトが進行している。その中のひとつが「広島市基町相生通地区第一種市街地再開発事業」だ。

再開発が行われる場所は、基町(もとまち)の南東部の相生通り沿いで、「立町(たてまち)電停」交差点の北西角にあたる。広島朝日ビル、 中広島変電所、市営基町駐車場などがあったところだ。ここに都市間競争力を高める高規格オフィスや、国際会議などの多様なニーズに応えるラグジュアリーホテルを備えた複合施設を建設。現在原爆ドーム付近にあり2022年に市が定めた高さ制限を上回る広島商工会議所が同ビルに移転し、原爆ドーム周辺の景観を改善するとともに、街の新しいランドマークを目指し、にぎわいと交流を生み出すことを目的にしている。総事業費は、約576億7,800万円。

同事業で新たに建設される複合施設は、高層棟変電所棟市営駐輪場棟の3棟からなり、高層棟が核になる。変電所棟は、再開発地にもともとあった中広島変電所が新しくなるものだ。

2025年10月、高層棟の名称が「KAMIHACHI Xカミハチクロス)」と発表され、ロゴも発表された。同事業の施行者であるNTT都市開発株式会社、株式会社広島朝日ビルディング、日本放送協会(NHK)などと、地元エリアマネジメント団体「エリアプラットフォーム・カミハチキテル」によって、約半年間の議論を経て決定したもの。

「カミハチ」は紙屋町・八丁堀それぞれの頭文字を合わせたもの。そして、紙屋町・八丁堀のエリア内外のヒト・モノ・コトが交差(クロス)する場所を目指すという意味が込められている。また「これからの新しい広島のまちづくりを地域の方々とともに考え、発信していく場所にしたい」という思いもあるという。

都市再生緊急整備地域に指定されている紙屋町・八丁堀エリアの区域(出典:広島市公式ウェブサイト)都市再生緊急整備地域に指定されている紙屋町・八丁堀エリアの区域(出典:広島市公式ウェブサイト)
都市再生緊急整備地域に指定されている紙屋町・八丁堀エリアの区域(出典:広島市公式ウェブサイト)広島市基町相生通地区第一種市街地再開発事業の施工区域の位置(出典:広島市公式ウェブサイト)

再開発が実施される紙屋町・八丁堀エリアは、「紙屋町」交差点と、その東側にある「八丁堀」交差点を中心としたエリア。「紙屋町」交差点はJR広島駅から西に約2km、同じく「八丁堀」交差点は約1.5kmだ。エリアの中央を広島駅から西へ続く大通り「相生通り」が通過し、広島電鉄の路面電車で結ばれ、路線バスも走る。また、西側を南北に太田川が流れ、平和記念公園がある。

紙屋町・八丁堀エリアの北西には広島城があり、同エリア一帯はかつての広島城の城下町の一角だった。北西の基町周辺は広島城のほか、美術館や体育館・サッカースタジアムといった文教施設が多い。北東の八丁堀・上八丁堀(かみはっちょうぼり)、および紙屋町の東部付近は、官公庁や病院が多いエリアになっている。

一方で相生通り沿いや、それより南の紙屋町・立町(たてまち)・本通などの一帯は、百貨店や商店・企業などがひしめく一大商業地。広島市最大の商店街として市民に親しまれている「本通商店街」もある。

本通商店街の起源は江戸時代にさかのぼる。江戸時代初期の広島城主・福島正則は、城下町の北側を通過していた西国街道を、城下町の中を東西に通過するように変更。西国街道沿いに商人が集まり、繁栄した。現代になり、「本通商店街」に発展したのである。紙屋町・八丁堀エリアは、江戸時代から現代まで、広島の行政・経済の中心を担っている。

広島市では、紙屋町・八丁堀エリアのさらなる民間開発を誘発・促進するため、広島県・広島商工会議所とともに、内閣府へ同エリアを「都市再生緊急整備地域」として新規指定するよう申し出た。そして2018年に、紙屋町・八丁堀を含むエリアが「都市再生緊急整備地域」に指定された。

広島市基町相生通地区第一種市街地再開発事業は、このような背景のもとで進められている。

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都市再生緊急整備地域に指定されている紙屋町・八丁堀エリアの区域(出典:広島市公式ウェブサイト)着工以前の様子:施工地区を相生通り南東側から見たところ(出典:広島市公式ウェブサイト)
都市再生緊急整備地域に指定されている紙屋町・八丁堀エリアの区域(出典:広島市公式ウェブサイト)着工以前の様子:施工地区を北東から見たところ(出典:広島市公式ウェブサイト)

再開発の目的は「楕円形の都心づくり」の西側の核として都市機能の集積・強化を図ること

広島市基町相生通地区第一種市街地再開発事業の目的は、紙屋町・八丁堀地区の活性化だ。広島市は、同地区活性化のリーディングプロジェクトとして同事業を「第6次広島市基本計画」に位置付け、官民が連携して推進し、広島市の国際水準の都市機能の集積・強化を図ることを目指す。

広島市は紙屋町・八丁堀エリアと広島駅周辺のエリアを「都心の東西の核」と定める。そして都市機能の集積・強化を図り、両エリアが相互に刺激し高め合うことで活性化していく「楕円形の都心づくり」を進めている。都心の西の核である紙屋町・八丁堀エリアは、中国・四国地方で最大の業務・商業集積地であるが、更新時期を迎える建築物が多く存在する。さらに狭い敷地が多く、土地が有効活用されていないといった状況であった。

広島市基町相生通地区第一種市街地再開発事業は、これらの課題をクリアするとともに、都心の西の核にふさわしい街づくりの起爆剤とするものだ。

なお、同事業の区域面積は、約1.0ヘクタールで、2022年度から着手されており、2029年度の完成を目指している。

完成予想図:低層階部分(出典:広島市公式ウェブサイト)完成予想図:低層階部分(出典:広島市公式ウェブサイト)

広島市基町相生通地区第一種市街地再開発事業では、6点の特徴を挙げている。

(1)業務機能の高度化
(2)国内外からの多くの人を惹きつける宿泊機能等の充実・強化
(3)地域経済の活性化に資する産業支援機能の集約
(4)官民連携による公共空間を活用したにぎわいと交流機能の強化
(5)都心におけるインフラ更新
(6)原爆ドーム周辺の景観の改善

「業務機能の高度化」とは、高規格オフィスなどの国際的なビジネス環境を整備し、業務機能の高度化を目指す。「国内外からの多くの人を惹きつける宿泊機能等の充実・強化」は、広島は国際平和文化都市であり、国内外からの観光客やビジネスで訪れる人も多い。世界に通用するラグジュアリーホテル「アンダーズANdAZ)」を整備することで、滞在ニーズを満たし、国内外からの訪問者等の誘致を増やすことが目的だ。

「地域経済の活性化に資する産業支援機能の集約」では、利便性の高い都心に、官民連携拠点を構築。経済団体・商工団体・産業支援機関等を集約することで、地域経済を支える中小企業・小規模事業者や起業家等へ各機関の支援をしやすくする。

「官民連携による公共空間を活用したにぎわいと交流機能の強化」では、施設内に居心地の良いオープンスペースを整備する。相生通りの道路空間と一体的な利用ができ、歩きたくなるような街中の沿道空間をつくり出す。さらに地域のエリアマネジメント団体等と連携し、地域活動によってにぎわいと交流の機会を生むことを目指している。

「都心におけるインフラ更新」とは、広島市の掲げる「自転車都市づくり」を推進するため、市営基町駐輪場を改修。また再開発地にある、電力供給の基幹施設である中広島変電所を、機能を中断することなく更新する。

「原爆ドーム周辺の景観の改善」は、原爆ドームの北側に立地していることにより、景観面を損ねていた広島商工会議所を、KAMIHACHI Xの3〜6階へ移転。これによって、原爆ドーム周辺が世界遺産にふさわしい景観になることに寄与する。

完成予想図:低層階部分(出典:広島市公式ウェブサイト)工事中の様子:相生通りの南西側から見たところ(2025年12月撮影)

高層棟「KAMIHACHI X」を中心に変電所棟・駐輪場棟の3棟を建設

広島市基町相生通地区第一種市街地再開発事業で誕生する施設の概要は、次のとおりだ。

● 区域面積:約1ヘクタール
● 敷地面積:約7,500m2
● 建築面積:5,900m2
● 延べ床面積:約8万6,300m2(容積対象面積 約6万7,500m2)

また、各棟の概要は、次のとおり。

【高層棟(KAMIHACHI X)】
● 高さ:160m
● 階数:地上31階、地下1階
● 用途:オフィス、ホテル、店舗、駐車場、駐輪場
● 高規格オフィス:7~19階(計13フロア)、オフィスエントランス:3階、基準階面積:約1,700m2、天井高:約2,800mm

【変電所棟】
● 高さ:30m
● 階数:地上5階
● 用途:変電所、駐車場

【市営駐輪場棟】
● 高さ:20m
● 階数:地上5階、地下1階
● 用途:駐輪場、駐車場

再開発区域の予定配置図(出典:広島市公式ウェブサイト)再開発区域の予定配置図(出典:広島市公式ウェブサイト)

KAMIHACHI Xに予定されている高規格オフィスは、約7,000坪の計画。これは広島市内で最大級の規模だという。しかも眺望の良い中層部に設置され、広島を代表するに相応しいオフィスになる。

さらに多様化する就業者ニーズに応えられるよう、一部をコワーキングスペースとして活用。3階にはゆとりあるオフィスエントランスを設ける予定だ。

再開発区域の予定配置図(出典:広島市公式ウェブサイト)KAMIHACHI X ゾーニング計画図(出典:広島市公式ウェブサイト)

1階にオープンスペース、6階にオープンテラスを設置しにぎわいを創出

官民連携による公共空間の活用・にぎわいの創出にも寄与するため、相生通りと一体的に利用できるオープンスペースを整備する。オープンスペースは、KAMIHACHI Xの1階ピロティに設置される予定だ。面積は約730m2で、間口約27m・奥行約27m・高さ約16mの規模になる。

1階のオープンスペースは街のゲートとされ、「かみはちひろば」と名付けられた。かつて城下町だったころ、再整備地近くにあった「立町御門(たてまち ごもん)」にちなんでおり、KAMIHACHI Xの象徴的な場所で、緑があふれる市民に開かれた広場を目指す。

加えて、6階にオープンテラスも設置。こちらは面積が約430m2で、間口約36m・奥行約12mだ。憩いの場として市民に親しまれるパーク(公園)を目標にする。そのため6階オープンテラスは「かみはちこうえん」と名付けられている。

腰かけて、広島の街並みを見渡せる憩いの場として整備し、市民や来訪者・オフィスワーカーらの居場所を目指す。さらに、地元のエリアマネジメント団体や学生と連携し、6階の商工会議所大会議室でのイベントと連動した利用や、休日のイベント開催、夜にはビアガーデンや芝生バー、パブリックビューイングなど、様々な活用計画もあるという。

完成予想図:1階のピロティのオープンスペース「かみはちひろば」(出典:広島市公式ウェブサイト)完成予想図:1階のピロティのオープンスペース「かみはちひろば」(出典:広島市公式ウェブサイト)
完成予想図:1階のピロティのオープンスペース「かみはちひろば」(出典:広島市公式ウェブサイト)工事現場に掲示してあったKAMIHACHI X各部の完成予想図(2026年12月撮影)

広島の原風景を想起する水・緑・石を取り入れたデザイン

KAMIHACHI Xの外観デザインは、中高層部をセットバックし、街並みとの連続性に考慮している。同時に、相生通りに面した「街の新しい顔」になることも意識した。

外観は空に向かって斜めにカットされたオリジナリティーのあるデザインに。たくさんの窓ガラスは、広島の街の風景を映し込み、広島の新たなランドマークになる。

完成予想図:外観全体・相生通り南東側から(出典:広島市公式ウェブサイト)完成予想図:外観全体・相生通り南東側から(出典:広島市公式ウェブサイト)

さらに、広島の原風景を想起する「水」「緑」「石」の表情を取り入れたデザインも特徴だ。水は太田川と瀬戸内海。緑は広島城、官公庁街・文化ゾーン、平和大通り、河岸緑地、中国山地。石は広島城や河岸緑地の石積み、路面電車軌道の石敷きをイメージした。

これらのデザイン上の工夫により、親しみやすい広島の象徴的な存在を目指している。街とつながり、緑があふれる心地良い空間を実現するとともに、歩行者の回遊性を高めて、にぎわいと交流の新たな基点になることが期待される。

再開発による街の魅力とにぎわいの創出で、エリアの価値向上を期待

江戸時代から広島の街の中心として支えてきた、紙屋町・八丁堀エリア。基町相生通地区第一種市街地再開発事業で生まれる3棟によって、エリアの価値がさらに高まることを期待したい。特に、街の新たな魅力とにぎわいの創出の拠点を目指す「KAMIHACHI X」に注目だ。

工事中の様子:北東から見たところ(2025年12月撮影)工事中の様子:北東から見たところ(2025年12月撮影)
工事中の様子:北東から見たところ(2025年12月撮影)工事中の様子:北西・広島県庁入口前あたりから見たところ(2025年12月撮影)