はじめに

2026年2月18日、不動産小口化商品「みんなで大家さん」の運営会社である都市綜研インベストファンド株式会社に対し、出資者約1,300人が分配金の支払いが遅延しているとして、契約の解除と出資金約118億円の返還を求め、地方裁判所に提訴したことが報道された。すでに同社に対しては、昨年9月から11月にかけて出資者約1,200人が約114億円の返還を求めて提訴している。よって、今回の新たな提訴を含めると、請求額は合計約232億円にのぼり、この問題は拡大の様相を見せている。

想定利回り7%という高配当を目玉にし、テレビCMなどで大々的な宣伝を行っていた「みんなで大家さん」に何が起きたのか。そして被害にあったとされる投資家は、このリスクを事前に感知できなかったのか。本記事ではその本質を検証する。

「みんなで大家さん」問題の概要

今回問題になっているプロジェクトとは、同社が千葉県成田市で開発を進めるとしている成田空港周辺開発プロジェクト「シリーズ成田」である。このプロジェクトは、成田空港の近接地に巨大な観光・商業複合施設を建設するという壮大な計画だ。しかし、実際には開発が大幅に遅れており、さらに2025年11月、開発用地の約4割を所有する成田空港株式会社などが、工事の遅延を理由として11月末に期限となる土地賃貸借契約の更新をしないことを決定したことにより、本プロジェクトは実質的に頓挫している。

本来、不動産投資から生じる分配金は、投資物件から生み出される賃料収入や売却益から支払われる。しかし、本プロジェクトはいまだに更地の状態で収益が発生していない。にもかかわらず分配金を支払う原資はどこになるのか。そこには「新たな投資家から集めた資金を、既存の投資家に分配する」という、ポンジ・スキーム(自転車操業的な状態)を想起させる資金の循環の疑いも指摘されている。なお、同社は、行政から業務停止命令などの処分を受けているが、これは募集内容から事業計画が変更になったにも関わらず、投資家への説明が不十分であったことが処分の主な対象となっており、情報開示の不透明さも大きな問題とされている。

不動産小口化商品とは

対策の前に、不動産小口化商品の基本について押さえておきたい。
不動産小口化商品とは、数千万円から数億円、場合によっては数十億円規模の高額な現物不動産を小口に分割し、多数の投資家を募る仕組みであり、それにより個人投資家が不動産を対象とした投資に参入しやすくなっている。

不動産小口化商品は、1995年施行の「不動産特定共同事業法(不特法)」に基づき組成される。投資対象の不動産を1口100万円程度に小口化し、多数の投資家に販売するのが一般的である。通常は1棟の不動産を対象とするが、中には複数棟をまとめて対象とするものや、今回のように1つのプロジェクトを投資対象とするケースもある。
不動産小口化商品には、投資家が事業会社と共に不動産の持分を保有する「任意組合型」と、投資家は事業会社に出資し利益の分配を受ける「匿名組合型」がある。

※出所:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の多様な活用手法検討会」第1回 会議資料29ページ(令和2年6月29日)※出所:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の多様な活用手法検討会」第1回 会議資料29ページ(令和2年6月29日)

また、近年注目を集めているスキームに「不動産クラウドファンディング」がある。これは2017年の不特法改正により、不動産小口化商品がインターネット上で契約を完結することが可能になったことを背景に急速に拡大した販売形態である。不動産小口化商品と同じ不特法の枠組みの中で組成されるが、投資のカテゴリーとしては不動産小口化商品とは別物として扱われる。主な違いとして、不動産小口化商品が1口100万円単位などの高額投資であるのに対し、不動産クラウドファンディングは、一口1万円程度からの投資が可能であり、ハードルが低いことがあげられる。また、運用期間も不動産小口化商品は5年から10年程度の長期に渡るのに対し、不動産クラウドファンディングは数ヶ月から長くても3年程度と短い。なお、不動産クラウドファンディングの多くは「匿名組合型」である。

不動産小口化商品のメリット・デメリット

不動産小口化商品のメリット

不動産小口化商品の主なメリットとして、以下があげられる。

(1)管理の手間がかからない
物件の運営・管理は運営会社が行うため、投資家には現物不動産投資のような管理業務を行う必要がない。

(2)相続や贈与がしやすい
現物不動産は相続や贈与の際に分割が難しい場合が多いが、不動産小口化商品の場合は口数単位で分けることができる。

(3)優先劣後方式の採用
多くの不動産小口化商品では、優先劣後方式が取り入れられている。これは、総出資額のうち、投資家の出資を優先出資、事業会社の出資を劣後出資に分け、損失が発生した場合には、まず劣後出資から充当する仕組みである。そのため、損失が劣後出資の範囲以内であれば、投資家の元本は棄損せず、損失を負わなくてすむ。

(4)相続税・贈与税の節税効果がある
「任意組合型」の商品の場合、投資家は不動産の所有権(持分)を取得するため、現物不動産と同様、路線価による相続税評価が可能であり、相続税評価額の圧縮効果が期待できる。ただし、2026年税制改正大綱には、不動産小口化商品の相続税評価方法の見直しを行うことが明記されており、今後、節税効果が大幅に縮小されることが見込まれるため注意が必要だ。

不動産小口化商品のデメリット

一方、デメリット・リスクとしては以下があげられる。

(1)流動性(換金性)の低さ
不動産小口化商品は、上場株式やJ-REITのように即時に売却することができない。

(2)運営会社の信用リスク
投資対象が優良物件であっても、運営会社が破綻すれば投資資金の回収は困難となる。不動産特定共同事業は2017年の改正により新規参入のハードルが下がり、事業者も増加している。そのため、出資にあたっては、運営会社の財務内容や実績、ガバナンス体制などを十分に確認する必要がある。

投資家は被害者か?自己責任か?

不動産小口化商品やソーシャルレンディングの世界では、これまでも類似のトラブルが繰り返されてきた。かつての「ラッキーバンク」や「maneo」「SBIソーシャルレンディング」などでは、投資家への説明内容と実際の資金用途の乖離や、担保価値の過大評価などが問題となった。これらの事例に共通するのは、「高い利回り」と「不透明な資産評価」である。運営会社が開示している鑑定評価額が、開発完了後の想定価格を前提としたもので、現時点の不動産価値を十分に反映していなかったケースも少なくない。投資家側も、「行政の認可を受けている」というお墨付きを過度に信用してしまったという側面は否定できない。

2018年に社会を騒がせたシェアハウス投資の「かぼちゃの馬車」問題では、運営会社がオーナーの通常残高を改ざん、スルガ銀行の行員がこれらの不正を主導し融資を実行していたことが明らかにされたことから「組織ぐるみの不正」が行われていたとされ、投資家は被害者と位置付けられる向きが強い。一方で、30年一括借上げや建築費・賃料設定などについての運営会社の説明を鵜呑みにした点については、投資家として持つべき基本的な知識の欠如や確認すべき基本を怠った点において、投資家としての過失を厳しく問う声もある。確かにこれらの情報は、事前に投資家自身が容易に調べることができた内容である。

今回の「みんなで大家さん」問題において、提訴に踏み切った投資家たちも、当然ながら「騙された」という気持ちが強いだろう。特に、同社の社員が元本割れのリスクが極めて低いかのような説明をしていたのであれば、それは説明義務違反にあたる。

しかし、投資の原則から見れば、投資の世界には「自己責任」という原則が付いてまわる。今回の問題についても、投資家が事前に最低限の注意を払いながら投資判断をしていれば、被害者になる可能性も抑えられたのではないか。

事前にリスクを感知する5つのポイント

それでは、投資家はどのようなポイントを見逃してしまったのか。以下に5つのポイントをあげる。裏を返せば、これらのポイントを事前に押さえておくことで、リスクの多くは事前に感知でき、投資を見送るという判断を下せたかもしれない。今後の不動産小口化商品への投資の際のヒントにもなるだろう。

(1)7%という高利回りを数年間分配し続けるというモデル
近年、土地価格に加え建築費も高騰しており、都心の優良物件でも利回りは3~4%台に留まるケースが多い。このような環境の中で、短期間だけ高い利回りを確保できれば良いという不動産クラウドファンディングとは異なり、運用期間が長期に及ぶ不動産小口化商品で、7%という高利回りを維持し続けるビジネスモデルは考えにくい。

「シリーズ成田」の運用期間は概ね5年(60ヶ月または61ヶ月)に設定されている。本来、利回りを維持するためには運用期間を通じて安定した収入が継続する状態が望ましい。
しかし本件は更地からの開発プロジェクトであり、運用期間の中に収益をまったく生まない期間(工事期間)が含まれている。さらに現在は工事の大幅な遅延も重なり、運用期間の多く、あるいはすべての期間において、実質的に収益が生じない可能性が指摘されている。
こうした点を踏まえると、当初想定されていた高い利回りを長期間にわたって維持できる事業計画に無理がなかったのかについては、あらためて検証する必要があるといえるだろう。

(2)更地であるのになぜ分配金が支払われていたのか
不動産投資の利益は、本来「賃料収入」か「売却益」から生まれるが、今回は更地から開発するプロジェクトなので現時点で「賃料収入」はない。運営側の説明では、開発会社である共生バンクグループに土地を貸し付け、そこから受け取る地代を分配金の原資とする仕組みとされていた。ただし、外部からの収益がまだ生まれていない段階で、グループ会社間で資金を循環させて分配金の原資を捻出する構造は、一般的な不動産投資としては異なる特徴をもつ。さらに、開発中で未完成の事業であることを踏まえると、利益を生んでいない会社が多額の地代を何年も払い続けられるかどうかについて、慎重に見極める必要がある投資案件だったと考えられる。

(3)広告費の過剰投入
印象的な「みんなで大家さん」のテレビCMは一時頻繁に放映されていたが、テレビCMの広告費は莫大で、その原資がどこから捻出されているかという視点も必要である。

(4)行政の認可への過度の信頼
今回のプロジェクトは、未完成物件を販売するいわゆる「青田売り」の方式で進められた。ただし、開発行為については行政の正式な認可を受けている。この事実が、投資家にとって「行政のお墨付きがある事業」という安心感を生み、事業の安全性を信用してしまうという大きな落とし穴になったとも考えられる。しかし、実際には認可後に事業計画が変更されていた。計画の変更は収益性にも影響を及ぼす可能性があるが、都市綜研インベストファンドは投資家に対して十分に周知していなかった。この点は不誠実と言わざるを得ない。
ここから得られる大きな教訓のひとつは、「行政の認可=必ずしも事業の安心・安全の保証ではない」ことを認識することの重要性である。行政の認可は、あくまでも法令上の形式的適合性を審査するものであり、いわば事業の「入口要件」を満たしていることを示すに過ぎない。事業計画の妥当性や健全性まで保証してくれるものではないのである。

(5)過去の営業停止処分
投資先の企業名を調べるのはリスク感知として必須である。
実は、みんなで大家さんの運営会社である都市綜研インベストファンドは、2013年にも大阪府から60日間の営業停止処分を受けている。このときには所有不動産を不当に高く評価し、債務超過の状況を隠蔽していたことが理由であり、今回の営業手法に通じるところもある。過去に処分を受けたことが即座に詐欺であると断じることはできないが、少なくても投資家がその事実を知ったのであれば、投資を躊躇するのではないか。

まとめ

「みんなで大家さん」の提訴問題の責任の多くは運営会社にあることは明らかである。しかし、投資家が本来行うべきチェックを行わず投資を行っていたとしたならば、やはり投資家として一定の責を負うことは避けられないだろう。

不動産投資とは、収益とともにリスクを引き受ける行為である以上、「知らなかった」ではすまされないという側面もある。だからこそ、商品構造、事業計画の妥当性、運営会社の信頼性を冷静に検証することが重要である。