異例の2月総選挙は自民党の圧勝 与党で2/3を上回る352議席を獲得

2026年通常国会の冒頭に解散し、1月27日公示、2月8日投開票という異例の日程で実施された衆議院選挙。自民党が316議席、日本維新の会が36議席を獲得し、与党で合わせて352議席となった。定数465議席の2/3以上となり、委員数でも過半数を確保できる261議席を大きく超え、憲法改正の発議も可能な議席数に達した。日本初の女性総理であること、過半数を得ていない“少数与党”からの脱却を目指す政権選択選挙であること、「日本列島を、強く豊かに。」との政権公約を掲げたこと、などが奏功し、高い内閣支持率を背景に圧勝したことは、高市総理大臣の作戦勝ちであり、野党の準備不足であったと言える。

自民党は政権公約で住宅価格高騰への対応を明記

50ページに及ぶ自民党の政権公約には、社会資本整備の項目に「首都圏等の投機的売買の抑制を含む現下の住宅価格高騰への対応、住宅・建築物の耐震化や省エネ性能の高い住宅の整備等を進め、誰もが安心して暮らせる住まいの確保と住生活環境を整備します。また、既存住宅の流通促進を拡大し、子育て世代への住居支援等を推進します」と明記されている。

外国人政策の項目には「外国人政策は、わが国の秩序ある地域社会を維持・発展させるための国家的課題です。近年一部の外国人による制度の不適切利用が国民の不安や不公平感を助長しています。社会変化に合わせて法律やルールを見直し、安全・安心を確保し、活力ある地域と成長する日本を実現します」との認識・総論を踏まえて、以下の記載がある。
「基準を引き上げた在留資格『経営・管理』について、事業実態がないもの(同一ビルに小規模事務所が集中するケースや民泊営業への悪用等)の実態調査と在留申請時の厳正な審査を実施し、一掃します」
「土地や建物、森林、農地等の国籍把握・透明化を図ります。安全保障の観点から、外国人の土地取得等に関する新たな法的ルールの具体案を速やかに整備します。国有化された無主の国境離島と同様に、無主の国境離島以外の離島についても、国土の適切な利用と管理の観点から、国有化に向け実態把握を進めます」
「国籍を含むマンション等の取引実態の調査・分析も踏まえ、取得規制について検討します。国籍情報を含む、各種土地関連台帳情報の一元的データベース化と適切な公開を行います。マネロン・テロ対策と並び、土地等の実質的所有者を把握する仕組みを検討します」
広く国民が感じる不安・不満に対応する文言が並ぶ。
 
政権公約は方針を述べたものであり、公約実現に至る具体的な方策や法案の提出および立法化・制度化の目途などについては今後の国会での審議の進捗を待つほかないが、近年の住宅価格の高騰および外国人の投機目的での買い進みなどについて「対応・検討」すると明記されている(対応し検討した結果どうするのかは現時点で判断できる材料は皆無である)。いずれにせよ、政権与党として住宅価格の高騰によって購入検討者のハードルが上がり続ける状況に対策を講じ、また住宅価格高騰の一因ともされる外国人の不動産購入実態調査(=実質的所有者の把握)の結果を基に何らか対応するとの方針が示されている。

住宅価格と物価高騰には円安対策が待ったなしの状況 “責任ある積極財政”は物価上昇を助長

まず、喫緊の課題である“住宅価格の高騰”については、4つのコストプッシュ要因、すなわち、資材価格の高騰、人件費の高騰、地価の安定的上昇、住宅性能義務化への対応(断熱性と省エネ性の向上)が挙げられる。

このうち、人件費は空前の人手不足によるもので早晩解決することはできないし、地価についても経済活動の結果として上昇することに歯止めをかけることはできない。また、住宅性能の向上も2050年カーボン・ニュートラル実現(および2030年中間目標達成)のために不可欠で、今後さらに基準を引き上げることが決まっている。そのため、住宅価格抑制のための唯一有効な手段としては、資材価格の高騰を食い止めることになる。

その多くを海外からの輸入に依存する住宅建設資材は、円安の影響を強く受け続けており、やはり“行き過ぎた円安”を抑止することが住宅価格のこれ以上の高騰を抑制するため、同様に輸入品が多い食料品の価格を引き下げるためにも必要であることは論を俟たない。2021年1月には月中平均で1ドル=103.75円だった為替相場は、5年後の2026年1月に1ドル=156.69円まで円安が進んでいる。この間ドルベースで51.0%(円ベースでは33.8%)もの価値の低下(価格の下落)が発生しているから、結果的にインバウンド需要が国内の不動産市場に積極的に流入するのも当然のことと考えられる。しかも、外国籍の法人・個人が国内の不動産を取得することには重要施設や離島を除いて特段の規制は設けられていないことも(2022年以降「重要土地等調査法」に基づく一定の規制あり)“日本買い”を助長することに繋がっているとの指摘もあり、対策を急ぐ必要がある。

円安は日米欧の政策金利差によっても進捗するため、一義的には日本の政策金利の引き上げ(米欧の金利引き下げ)による金利差の縮小が求められる。だが、政策金利を引き上げれば連動して住宅ローン金利が上昇するだけではなく、国債の利払いも増大する結果となり、経済・財政面でのデメリットも決して小さくはないから、引き上げのタイミングは慎重でなければならない。植田日銀総裁は2026年1月の記者会見で「既往の利上げが賃金・物価上昇継続(=良いインフレ)の妨げにならないと確認できれば次の利上げに移る」との趣旨の発言をしていることから、利上げには依然として前向きな姿勢であり、あわせて物価上昇率を加味した実質金利の推移も踏まえ、日銀の金融政策には今後も注視する必要がある。

なお、高市政権が掲げる“責任ある積極財政”とは、政権公約に基づくと、戦略的に財政出動を行って所得を増やし、消費マインドを改善することで事業収益が上がり、結果的に税率を上げずとも税収を増加させる好循環を目指す政策と記されている。これは“風が吹けば桶屋が儲かる”政策と言わざるを得ず、実質賃金指数が2020年平均=100から足元で103ポイント程度の水準に留まっていることを考慮すれば、財政出動によってインフレが加速しても実質的な所得の伸びは期待できない(もしくは一時的な効果に留まる)。まずは一にも二にも円安を抑制して消費者物価指数の上昇を抑止し、国民生活の安定を図ることが急務と言える。

住宅価格高騰の一因と想定される“インバウンド需要”の抑止には一定の対応

上記の通り、「経営・管理」ビザでの入国については在留資格の規制を強化された。2025年10月16日以降、資本金および投資額の基準を従来の500万円から6倍の3,000万円へと引き上げ、原則として常勤職員1名以上の雇用、および公認会計士、税理士、中小企業診断士等の専門家による事業計画書の確認などが必須条件となる。併せて経営者または常勤職員が一定レベル(JLPT N2相当)の日本語能力を求められるほか、経営者・投資家として3年以上の実務経験、または修士相当以上の学歴を有することも求められることになった(ただし2028年10月16日までのビザ更新には審査による経過措置あり)。

また、周知期間を経て2027年6月以降は、外国籍の税や社会保険料の未納者に対して在留資格の更新・変更を原則認めない方針も公表している。2026年度を目標とした不動産取得に関する移転登記書面への国籍記載義務化(日本人も対象)、法人については重要土地取引や森林取得において代表者および実質的支配者の国籍届出も義務化する方針を明らかにしているから、国内不動産の取得に関する外国籍の(心理的な)ハードルは今後確実に高くなる。

ただし、これらの“対策”は不動産取得を直接規制するものではないため、実効性の有無と合わせて、外国籍の国内不動産購入の度合いと住宅・不動産価格に与える影響を見極める必要があるだろう。

国策プロジェクトや副首都構想は地価の上昇を招くか

AIや半導体製造拠点の誘致、データセンターの整備などの政権構想によって、誘致先の地価の上昇が期待されるが、その効果が長期間に渡って持続するかは未知数だ。熊本や千歳などでは“半導体バブル”と言われるような高性能半導体の不足と価格高騰が発生する一方、汎用製品は供給過剰となっており、日進月歩する半導体需要はマーケットの動向が一般には不透明で、長期的・安定的な需要を創出し地域経済の発展と安定的な地価の上昇に繋がるのかについて方向性は明確ではないから、需要と供給のバランスによってマーケットが変化する状況を見守ることになる。

また、副首都構想については、日本維新の会との連立政権樹立の際に公約に盛り込まれていた。自民党の政権公約にも、首都の危機管理機能のバックアップ体制を構築し、首都機能分散および多極分散型経済圏を形成する観点から副首都機能の整備を含め、国家社会機能の継続性を高めるための法案を策定し、速やかな成立を図る旨の記載がある。日本維新の会は2023年の通常国会に「副首都機能の整備の推進に関する法律案」を提出しており(副首都については特定の地域の名前は挙がっていないが大阪を前提としていることは言うまでもない)、住民投票で2度否決された“悲願”を国政の場で成し遂げたいという意識は極めて高い。

副首都構想は、大規模な自然災害の発生時に首都機能を維持するための防災対策の一環として注目される。日本維新の会は長期にわたる日本経済低迷の一因を東京一極集中としており、それを是正して経済成長を促すという戦略構想に位置付けている。確かに東京一極集中の是正は、東京での生活・インフラ不足と地方での生活・インフラ余剰の問題を緩和し、日本経済の生産性を向上させるとも考えられる。だが、他方で省庁移転ほか、4兆円とも8兆円ともされる大阪への首都機能の一部移転が、大阪への人や企業の過度な集中をもたらし、東京で現在発生しているような不動産価格の高騰を生じさせる可能性もあり、事実上機能移転コストとの見合いで検討されるべき事項となる。

したがって、高市政権が掲げる“責任ある積極財政”と副首都構想が合致するのか否かも含めて検討されるものと考えられるが、国内外に課題山積の状況下で副首都構想が優先されることもまた考えにくいと言わざるを得ない。

長期政権も視野に、求められる住宅市場の安定化

高市自民党政権は今回の選挙によって衆議院で圧倒的多数を得たが、参議院では依然少数与党という位置づけとなる。ただし、“衆議院の優越”により予算の議決、条約の承認、法律案の議決(参議院否決でも出席の2/3で再可決可能)など、重要事項について衆議院の議決が優先されるため、慎重さは求められるものの安定的な政権運営が可能であり、また2028年7月の参議院選挙の結果如何によっては長期政権となることも視野に入る。

そのなかで実施される政策、特に住宅政策については住宅ローン減税制度の維持・拡充、住宅価格高騰対策としてのアフォーダブル住宅の新規供給、もしくは公営住宅のリノベーションへの国費投入など、様々な住宅取得および居住全般に関する政策実行が、社会基盤や地域経済の安定にも寄与することになる。喫緊の課題である円安対策を契機として、住宅市場の安定化、賃貸住宅の整備にも対応が急がれる。