不動産情報ライブラリとは?

国土交通省では、円滑な不動産取引を促進する観点から、オープンデータ等を活用し、不動産取引の際に参考となる情報(価格、周辺施設、防災、都市計画など)を重ね合わせて表示できるWebGIS「不動産情報ライブラリ」の運用を令和6年4月より行っている。
不動産取引の際に参考となる情報の多くは、国や地方自治体などの複数の機関から、さまざまな形式で公開されているが、不動産情報ライブラリは、これらの情報を一元的に集約しており、誰でも簡単に無料で閲覧できる。
また、地図上でのデータ閲覧だけではなく、掲載情報の一部をAPIで取得できる。
不動産情報ライブラリ:https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

図1 地図表示画面(価格情報、小学校区、洪水浸水想定区域(想定最大規模)、立地適正化計画を選択・表示)図1 地図表示画面(価格情報、小学校区、洪水浸水想定区域(想定最大規模)、立地適正化計画を選択・表示)

不動産取引における防災情報の重要性

皆さんが住まいを探す上で重要としている情報は何だろうか?国土交通省が毎年行っている「土地問題に関する国民の意識調査」では、生活の利便性、治安に続いて自然災害に対して安全であることが重視されている。(図2)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001733927.pdf

また、不動産情報ライブラリについて、国土交通省が実施している国土交通行政インターネットモニターの調査結果でも「不動産情報ライブラリで役立つと感じた情報」で防災関連の情報が上位にあがっている。(図3)
https://www.monitor.mlit.go.jp/Shiryo/46/Shiryo1.pdf

図2_令和5年度「土地問題に関する国民の意識調査」より抜粋(住まいの立地に重視するもの(1番目に重視))図2_令和5年度「土地問題に関する国民の意識調査」より抜粋(住まいの立地に重視するもの(1番目に重視))
図2_令和5年度「土地問題に関する国民の意識調査」より抜粋(住まいの立地に重視するもの(1番目に重視))図3_不動産情報ライブラリで役立つと感じた情報(令和7年度国土交通行政インターネットモニターのアンケート結果抜粋)

不動産情報ライブラリでは、こういった調査結果やユーザの要望を受け、11月に防災情報のAPIを5種類追加したほか、12月にはこれまでのアンケート結果などでニーズが高い災害履歴を追加した。

災害履歴は、その土地で過去に実際に起こった災害の情報であるため、災害が起こる確率を示すハザードマップと組み合わせることで、より地域特性を踏まえた防災計画を立てることができる。不動産情報ライブラリに追加する災害履歴の詳細については、次章で紹介する。

災害履歴とは?

不動産情報ライブラリに掲載する災害履歴は、国土調査の土地分類基本調査の中の災害履歴図のデータである。皆さんは国土調査とは何か、土地分類基本調査とは何かご存じだろうか?今回は災害履歴の原典データの詳細についても説明する。
国土調査とは、国土調査法に基づき国土の開発及び保全並びにその利用の高度化に資するとともに、併せて地籍の明確化を図るため、国土の実態を科学的かつ総合的に調査するもので、地籍調査関係、土地分類調査関係及び水調査関係の3つに大きく分けることができる。
国土調査の概要については下記URLを参照してほしい。
https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/know.html

図4_国土調査の概要図4_国土調査の概要

国土調査の実施の促進を図るため、国土調査促進特別措置法が制定され、昭和38年以降、同法に基づき国土調査事業十箇年計画を策定されている。現在は、令和2年5月26日に閣議決定された第7次国土調査十箇年計画に基づき調査が行われている。
土地分類調査は、狭隘な国土を合理的かつ有効に利用するために、地形、地質、土壌などの土地の自然条件やその利用現況等を国土調査法に基づき調査し、地図や説明書等にとりまとめる調査で、古くは国土調査法制定直後の昭和20年代から実施しており、社会情勢の変化に応じて調査を進めている。平成22年度からは、災害の多発により土地の安全性に対する意識が高まっていること等を踏まえ、土地分類基本調査として「土地履歴調査」を国が主体となって調査を進めている。
災害履歴図は、この土地履歴調査の成果の一つで、過去に発生した災害の空間的な分布を調査するものである。土地履歴調査の成果には災害履歴図のほかに、土地の成り立ちや改変履歴を表した自然地形・人工地形分類図や土地利用の変遷がわかる土地利用分類図があり、土地固有の災害リスクに関する基礎的な地理空間情報として整備するものである。
なお、土地履歴調査は、平成22年度から調査を開始し、これまでに人口集中地区及びその周辺を対象に整備を進めているため、全国すべてのデータが網羅されているわけではないことに注意が必要である。また、文献調査を基本とし、調査時点で資料収集できた情報のみ掲載しているため、調査地域においてもすべての災害を掲載しているものではないことに留意が必要である。

土地履歴調査の結果は、国土数値情報ダウンロードサイト内で公表されている。GISデータもダウンロードできるので、ぜひ確認してほしい。

国土数値情報ダウンロードサイト
https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/inspect.html

不動産情報ライブラリでの災害履歴

不動産情報ライブラリでは、先述した災害履歴図の6分類(水害、土砂災害、地震災害、火山、地盤沈下、そのほか)のうち、水害・土砂災害・地震災害の3つについて、不動産取引に関わる情報を厳選して災害履歴として掲載する。
なお、水害・土砂災害・地震災害に関してもそれぞれの災害種別に分かれている。(図5)

不動産情報ライブラリでは、災害種別ごとに色分けして表示を行う。また、クリックするとその災害の西暦年月を確認できる。このことから、気になっている不動産付近で、過去にどういった災害が起こっていたのかを簡単に調べることができる。(図6)

図5_災害種別図5_災害種別
図5_災害種別図6_表示イメージ

災害の西暦年月は、発生した年代が古いなど、年代が不明な場合は「不明」と表示される。なお、本情報はAPIでも提供する。APIは原典データと同じ情報となり、災害分類、災害の発生年月日のほか、出典の資料名も取得できる。災害履歴をぜひAPIで取得し自社システムなどに組み込んで活用していただきたい。

不動産情報ライブラリで災害履歴を活用するには

不動産情報ライブラリは、不動産取引に関する情報を重ねあわせできることが特徴である。今回追加した災害履歴についても、他の情報と重ねあわせすることで地域傾向などをみることができる。例として、災害履歴(水害)と洪水浸水想定区域(想定最大規模)を重ねあわせて地図表示する。

図7_災害履歴(水害)と洪水浸水想定区域(想定最大規模)の重ねあわせ図7_災害履歴(水害)と洪水浸水想定区域(想定最大規模)の重ねあわせ

災害が起こる確率を示すハザードマップと実際に災害が起こった履歴の情報を重ねて可視化することで、より地域特性を捉えることができる。日本は災害が多い国であるが、地域によって起こりやすい災害は異なる。地域特性を把握し、自分の住まいや通学・通勤路などにおける防災対策の検討に役立ててほしい。

不動産情報ライブラリのデータ活用事例

不動産情報ライブラリに掲載されているデータは多様なサービスで利用開始されており、民間事業者のサービスを通じて不動産取引の円滑化に貢献している。今回は不動産取引価格情報を活用している事例を紹介する。

★公益財団法人不動産流通推進センター 既存住宅価格査定マニュアル
既存住宅価格査定マニュアルは、公益財団法人不動産流通推進センターが提供する不動産事業者向けの価格査定サービス。事例比較方式を採用しており、従来の地価公示・地価調査に加え、不動産情報ライブラリ掲載の「不動産取引価格情報」を追加。事例データが増えることで、より広範でリアルな市場データに基づいた高精度の査定が可能になっている。
https://www.retpc.jp/chosa/satei-2/

図8_既存住宅価格査定マニュアル図8_既存住宅価格査定マニュアル

ご意見募集

今回は不動産情報ライブラリで新規に追加する災害履歴について紹介した。災害履歴は過去に実際に発生した災害の情報であるため、既存の不動産情報ライブラリに掲載している情報と組み合わせてぜひ活用していただきたい。
不動産情報ライブラリでは、随時アンケートにてご意見を募集している。
掲載してほしいデータやAPI提供してほしいデータがある方はぜひ利用者アンケートに回答をお願いしたい。

アンケートはこちら
https://forms.office.com/r/MxuubqpHvT

また、不動産情報ライブラリの活用事例がある場合も、ぜひ上記アンケートのURLからご連絡いただければ幸いである。

■国土交通省「不動産情報ライブラリ」
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

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