中山登志朗のマンションニュースピックアップとは?
LIFULL HOME'S総合研究所副所長兼チーフアナリストの中山登志朗が、マンション業界に関わる方なら知っておくべきという観点でニュースを厳選し、豊富な経験に基づくコメントとともに伝えるコーナー。業界関係者はもちろん、マンションに関心がある人にとっても、重要な動きを理解できるほか、新たな視点を得ることができるはずだ。
住宅の居住面積を「最低50m2」から「40m2程度」に緩和することを決定
国交省が、10年ごとに住宅政策の指針として公表している「住生活基本計画」において、2026年度から住宅ローン減税の適用基準の根拠とされてきた居住面積要件を、従来の“最低50m2以上”から“40m2程度”に10m2緩和することを決定した(“程度”と表記されたことに議論が錯綜した痕跡が窺われる)。
現状でも2025年度までの特例措置として(2021年度の税制改正でコロナ禍での住宅需要減退対策として開始&毎年延長)、住宅ローン減税の対象となる住戸の面積要件を“40m2以上”に緩和していたが(新築住宅のみ&世帯年収1,000万円以下)、この要件を半ば恒久的に適用することには大きな意義があると言える。
まず、住宅ローン減税の対象となることは各金融機関に住宅ローンを申し込み可能ということになるから、住宅価格が高騰する状況下では、住宅選択の幅を安定的に拡大させるというメリットがある。住宅ローン減税の対象となるかならないかは、多くの実需購入者にとって住宅購入の主要条件となっているからだ。近年、住宅価格の高騰を契機として、平屋戸建もコンパクトマンションも注目が高まっており、居住面積の緩和措置は住宅の“現実的な選択肢”を増やす効果があるとも言えるだろう。ただし、中古住宅においても面積要件が40m2に緩和されるか否かについては現時点では言及がなく、対象外となる可能性が高いが、新築住宅価格の高騰対策としても前向きに検討して欲しい。
また、40m2に面積要件が緩和されると、現行制度では新築住宅で13年間&0.7%(中古住宅でも10年間&0.7%)の住宅ローン控除が受けられるから、住宅に掛かる税金の軽減によってもランニングコストを抑制できる効果が期待できる。もちろん、コンパクトな住宅は電気代ほか光熱費も抑制可能だし、マンションであれば管理費や修繕積立金が比較的安価なこともメリットの一つになる。
さらに、住宅政策としてはやや面積の狭い住宅の購入が進むことが、結果的に結婚や出産といったライフステージの変化に伴う住み替え・買い替えを促すことにも繋がり、“半住半投”など資産形成の側面からも住宅市場全体の活性化に寄与する可能性がある。
加えて、この居住面積の緩和措置が現時点で公表されたことは、毎年末に公表される来年度の“税制改正大綱”にも決して少なくない影響を与えるものと考えている。特に住宅ローン減税については、2025年度は上記の通り新築住宅で13年間&0.7%、中古住宅でも10年間&0.7%の住宅ローン控除が設定されているが、面積要件の緩和は所得水準の高くない若年層の住宅購入も促進する効果が高いと考えられるため、生活支援の側面からも控除を拡大する可能性があることについて言及しておきたい。実際に11月11日に開催された自民党の予算・税制に関する「政策懇談会」では、不動産業界団体から住宅価格の高騰を受けて、住宅ローン減税の維持・拡充を求める声が相次ぎ上がっている。
円安に起因する資材価格の高騰、コロナ禍以降顕在化した人手不足による建設・運輸業の人件費の高騰、地価の安定的上昇に加えて、2025年度からは住宅性能適合義務化による住宅価格の上昇が顕著であり、また住宅ローン金利も中長期的には緩やかに上昇していく公算が高い。つまり住宅購入に向けてのハードルが年々上がり続ける状況にあるのだが、居住面積要件の緩和措置は単身世帯もしくは少人数世帯の住宅購入促進策として、現段階ではほぼ唯一の“朗報”と言えるのではないだろうか。
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