渋谷駅周辺大規模再開発
渋谷駅周辺の再開発は、渋谷を国際的なビジネス・文化の拠点とするために2010年代から進行中の大規模プロジェクトである。駅の改良や利便性向上に加えて、バリアフリー対応の強化や交通動線の整理が行われた。さらに、「SHIBUYA SCRAMBLE SQUARE」や「渋谷ストリーム」といった新たなランドマークが次々と誕生し、商業・オフィスエリアが拡充されたことで、観光およびビジネスの双方において渋谷の魅力が高まっている。
防災対策やエネルギー効率の向上、スマートシティ化も進行しており、渋谷はより安全かつ持続可能な都市へと進化しつつある。公共空間の整備により歩行者の回遊性も向上し、新たな名所が誕生するなど、街全体の機能性と魅力が格段に増している。2030年代まで続く再開発を通じて、渋谷は今後さらに多様な人々が集う都市としての発展が期待されている。
この再開発に伴い、周辺の中古マンション相場も明らかに高騰している。
下のグラフは、渋谷区全体および渋谷駅周辺における中古マンションの成約坪単価の推移を示したものである。
出典:福嶋総研
渋谷はもともと若者文化やファッション、IT企業の集積地として知られていたが、近年の大規模再開発により街の姿が一変し、それに伴い不動産市場にも大きな影響が及んでいる。特に渋谷駅周辺では、大型ビルの建設や広場の整備、インフラの近代化が進行したことで、街全体の利便性と魅力が飛躍的に向上し、それが不動産価格の上昇を後押しする結果となっている。グラフ1に示されるように、2010年から2014年前半までは渋谷駅周辺の坪単価は渋谷区全体の平均とほぼ同水準で推移していた。この時期は再開発が計画段階にあり、市場への影響も限定的であった。しかし、2014年に入り再開発が本格的に始動すると状況は一変する。大型プロジェクトの着工と、それに伴う注目度の高まりを背景に、渋谷駅周辺の中古マンション成約坪単価は急速に逓増し、渋谷区全体の水準を明確に上回る傾向を示すようになった。
渋谷駅周辺エリア別評価
このような価格上昇は、再開発による街のブランド価値の向上や、将来的な資産価値への期待感が複合的に作用した結果といえる。再開発は都市景観の刷新にとどまらず、居住エリアとしての魅力を高め、実需および投資の双方から注目されるエリアへと変貌させる力を有していることが、渋谷の事例からも明らかである。ここからは、価格の高騰状況をより詳しく見ていく。
表1では、渋谷駅周辺の分譲マンションにおける価格高騰の程度を示している。たとえば、渋谷区渋谷エリアでは対象となった17棟のうち、2024年には実に16棟で平均13%(対2023年比)の価格上昇が見られた。渋谷区渋谷は、棟数・上昇率の両面において非常に高い水準であることがわかる。
図1では、これらの評価結果を地図上にプロットし、エリアごとの評価を以下の通りに色分けしている。
• 茶色プロット:評価A(上昇率・上昇棟数ともに高い)
• 黄色プロット:評価B(いずれかが中程度)
• 青色プロット:評価C(上昇傾向は限定的)
渋谷駅周辺では、大多数のエリアが「評価A」となっており、再開発の影響が広範囲に及んでいることがうかがえる。
中でも特に興味深いエリアが桜丘町である。この地域では、調査対象となったすべての中古マンションで価格上昇が確認されており、平均上昇率は約10%に達している。特筆すべきは、2023年11月に竣工した大規模再開発プロジェクト「渋谷サクラステージ」の存在である。この施設の完成によって地域の利便性や景観が大幅に向上し、不動産価値の上昇へと直結したと考えられる。再開発の効果が顕著に表れた事例といえる。
渋谷駅周辺以外の東京都23区大規模再開発
渋谷駅周辺と同様に、現在大規模再開発が進行中のエリアとして注目されるのが、広域品川圏および東京湾岸エリアである。これらの地域においても中古マンション価格の顕著な上昇が見られ、価格高騰が確認されたマンション棟数の割合や、棟単位での上昇率も高水準にある。再開発によってもたらされる都市機能の向上が、周辺不動産市場に大きな影響を与えていることが明確である。
交通インフラの整備、新駅の開業、大型複合施設の建設などにより利便性が向上し、エリアの景観も大きく変化したことで、これまで注目されていなかった地域に対する関心が高まり、新たな居住地として選ばれる傾向が強まっている。その結果として人口流入が進み、地域経済の活性化に寄与するとともに、住宅需要が増加し、不動産市場全体の活性化にもつながっている。
このように、大規模な再開発プロジェクトは都市整備にとどまらず、周辺エリアに広範な経済的・社会的影響をもたらすものであり、不動産価格を押し上げる効果を有している。特に人口の集中する東京においては、その効果が顕著に現れており、将来的な資産価値の上昇を見越した投資需要も含めて、市場の活性化を促進する要因となっている。
今回は現在進行中の大規模再開発周辺の価格の変化を調査したが、今後は「開発後のエリアの不動産価格がどのように変わったのか」「どのような開発が周辺の不動産価格に大きな影響を与えるのか」等開発をテーマに深く掘り下げていこうと思う。
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