居住者が0から主体的に作り上げる仕組み、コーポラティブハウス

分譲の集合住宅や一戸建て住宅は、すでに商品として完成しているものを選んで買い、そこに住むという認識の人が多い。しかし、居住者たちが組合を組んで、開発から携わることができる仕組みもある。それがコーポラティブハウスだ。大量供給、大量消費の時代を経て、今住まいを自らカスタマイズしたいという思考をもつ人たちが増えている。そこで注目されているのがコーポラティブハウスというわけだ。

コーポラティブハウスとは、そこに住もうとする人たちが集まり、自分たちで、あるいは全体をとりまとめるコーディネーター、建築家などとともに開発計画や設計、建築に関わってつくりあげる集合住宅のことである。ちなみにコーポラティブという言葉には「共同の」「組合の」という意味がある。なかでも、同じ価値観を持つ人たちが集まって住まいをつくっていく、という点が特徴的だ。

先にも述べたが、日本で集合住宅をつくる際には、開発者(デベロッパー)が主体となって土地を取得・設計・建築し、完成した各居室を販売するのが一般的な流れである。

しかし、コーポラティブハウスは入居予定者たちが集まり、建設組合を組成。組合が主体となってプロジェクトを進める。つまり「そこで住みたい人たちが集い、プロジェクトの主人公となって協力し合いながらマネジメントしていく」のだ。

コーポラティブハウスには、集合住宅と、集合戸建群、長屋方式の住宅など複数のパターンが存在するコーポラティブハウスには、集合住宅と、集合戸建群、長屋方式の住宅など複数のパターンが存在する

参考までに、旧建設省(現国土交通省)は、コーポラティブ方式の住宅のことを以下のように定義している。

「自ら居住するための住宅を建設しようとする者が、組合を結成し、共同して事業計画を定め、土地の取得、建物の設計、工事の発注その他の業務を行い、住宅を取得し、管理していく方式」(出典:「コーポラティブ方式による住宅建設に関する研究」旧建設省(現国土交通省))

上記に挙げた例は代表的なものであるが、建設組合を設立し、居住希望者が主導となって物事を進めていくなかでも建設組合の関わり度合いに濃淡がある。

たとえば組合の関わる濃度が高いのが、集まった入居希望者たちが土地探しの段階から完全に主導するような「住民主導型」。一方、それよりも濃度が薄めな「コーディネーター主導型」がある。こちらはコーポラティブハウスの企画会社やコーディネイト会社が建設組合に伴走する。土地の候補や大まかな事業プランは伴走会社が担当しつつ、入居希望者たちはある程度企画がコーディネイトされた段階から建設組合として参画、主導をしていく。

すべてを0から進めるには専門知識が必要で、労力がかけられない場合もあるため、実際のところは後者のコーディネーター主導型が多い。

協力しあって環境を作り上げる面白さ

ドイツの集合型のコーポラティブハウス(引用:一般社団法人クラブヴォーバン)

ドイツの集合型のコーポラティブハウス(引用:一般社団法人クラブヴォーバン)

一般的な分譲の集合住宅は、0からものづくりをしていくデベロッパーがいる。デベロッパーはプロダクト開発をしてくれる存在であり、私たち入居希望者は商品を買う消費者である。ところが消費者がプロダクト開発の段階から関わるということは当然にメリットもある。一戸建てだと注文住宅が同様の事例に該当するだろう。まとめると以下のような点がメリットなのではないだろうか。

⚫︎メリット

・自由な居室・共用部分の設計ができる
・設計会社選択の自由度がある
・企画に共感した人たちが集まるため、共通の目的をもつコミュニティが生まれることもある
・共通目的を持つ人たちなので、居住してからも意思を持って建物の運営ができる
・デベロッパーが入らないため、コスト削減にもつながる
・自らが開発の管理をするため費用把握がしやすく、透明性がある

しかし、当然ながらデメリットはある。

⚫︎デメリット

・デベロッパーが入らないため、手間と労力がかかる
・わからないことを自ら進めていかないとならないので、時間も相当かかる
・自由設計度が強い場合、売却する際に売りにくい可能性もある
・建設後も組合員としてのつながりはあるため、コミュニティへの帰属性やコミュニケーションを要しない人にとっては息苦しいかもしれない
・建て替えや大きな改修の度に組合員での協議が必要なため、自由に建て替えや改修が出来ないこともある

このように、メリットもデメリットも存在するが、自分なりのビジョンがあり、ものづくりに関わりたい、そして共同で物事を進めたうえで、これからも共同の活動や暮らしを楽しみたい、という人には向いているのだろう。

コーポラティブハウスの歴史は海外からスタート

アメリカのコーポラティブハウス、ダコダ・ハウス(引用:PhotoAC)アメリカのコーポラティブハウス、ダコダ・ハウス(引用:PhotoAC)

コーポラティブハウスは、18世紀後半にイギリスで始まった。その後ドイツ・北欧の各国にて発展。

現在も欧米諸国でコーポラティブハウスは多く目にすることができ、ドイツや米国では全住宅の20〜30%の住宅がコーポラティブ方式を採用している。海外では一般的な住宅形式の一つとして認識されているのだ。

デベロッパー主体での住宅建設が主体の日本だが、コーポラティブ方式の住宅も存在する。1960年代後半から少しずつ建てられるようになり、およそ40年の歴史がある。

コーポラティブハウスは以前からLIFULL HOME'S PRESSでも取りあげられており、以下のような事例がある。

●社員寮を買い上げて改装した事例
関連記事:コーポラティブハウスで自由な空間を実現。人間関係も魅力な社員寮改装、新築の関西の2事例を見学

●20年以上の歴史がある事例
関連記事:コーポラティブハウス「つなね」。20余年後の住み心地や満足度を聞いてきた

●環境との共生を重視した事例
関連記事:環境共生型コーポラティブハウス「経堂の杜」の満足度を20年以上住み続けてきた人たちに聞いた


なかでも環境共生型のコーポラティブハウスは、昨今注目されており、農地を転用し建設するコーポラティブハウスの事例も見られる。その一つとしてあげられるのが、先日別記事でお届けした、東京都東久留米市の環境共生型のコーポラティブハウスや西東京市新田農園が手がけようとするコーポラティブハウスである。これらは集合住宅式ではなく、一団地に複数の一戸建て住宅を建設するタイプのものだが、入居希望者で構成される組合が一定のルールを組成し、当該住宅エリアの完成までを導いていく。

●東久留米市の事例
関連記事:東久留米市・12代目の農家地主によるリジェネラティブな土地継承。農地を環境共生型レストランと共創住宅に活かす

●西東京市の事例
関連記事:都市農地の新たな可能性を探る、西東京市「新田農園」。目指すはシェアする畑と地域の公園のような畑

西東京市・新田農園の新たな取組み

過日取材した西東京市の農家である新田翔吾さんと綾子さん夫妻。1ヘクタール以上の農地を持つ都市農家だ。生産する作物の量を絞っている中で、未来に向けて土地をどう活用していくことが望ましいのかと考えていた。

そのなかで、“農の風景”を残しながらも一部の土地にコーポラティブ方式の住宅群を建設する方向に踏み切った。現在「柳沢プロジェクト」として進んでいる。

「柳沢プロジェクト」は全17世帯にて組合を組成予定。入居者の希望を取り入れ、共有の大きな庭をつくるような住まいづくりを目指している。また建築した住居は、小商いへの挑戦や、自宅の一部をコミュニティスペースとして活用し、街の小さな交流スポットを生み出すなど自由度がある。

プロジェクト発起人の新田夫妻。入居をした方は、新田夫妻との交流もできるだろうプロジェクト発起人の新田夫妻。入居をした方は、新田夫妻との交流もできるだろう
プロジェクト発起人の新田夫妻。入居をした方は、新田夫妻との交流もできるだろう柳沢プロジェクトのイメージ図。集合戸建群のコーポラティブハウス

柳沢プロジェクト最大の魅力は、緑のあふれる景色が残るという点だ。個々の敷地内はもちろん、共同敷地内も大きな庭のように緑あふれる空間を作り上げていく。さらに、本プロジェクトの発起人でもある夫妻が営む新田農園が徒歩数分の場所にあり、入居者はそこで農に関わることもできる。ただ住まうだけではなく、農や緑の風景を楽しむことができる環境だ。

筆者も該当地を見学したが、農の風景が残る住宅街に画一的な住宅群ができ上がるよりも、かつての農地の名残が残る風景ができることは、周囲の景色にもマッチするのではと想像ができた。

プロジェクト発起人の新田夫妻。入居をした方は、新田夫妻との交流もできるだろう周辺の環境とマッチする緑豊かな共用ゾーンを皆で考え創設できる
プロジェクト発起人の新田夫妻。入居をした方は、新田夫妻との交流もできるだろう軒先に創設する予定の土間は、ワークスペースにリビングに、小商いゾーンにとカスタマイズが可能

土地の良さを残し昇華することの意義

見学していた日に、近隣に30年近く居住する高齢の方々と会話をする時間があった。彼らは「この街のアイデンティティは、都心部でありながらも豊かな畑、緑があることである。子育てをし、地域との関わりや友人たちのつながりを育んできたその景色が残ってほしいと思っていた。こんな風にかつての名残を残しながらも新しい形に昇華してもらえるのはとてもうれしいこと」と話してくれた。

コーポラティブハウスに参加する人だけではなく、古くからこの街に暮らす人たちにも、こだわりをもって生み出す住宅の意義は感じてもらえるのかもしれない。

農園を地域に開く構想もあり、近隣の人との交流が進みそうだ農園を地域に開く構想もあり、近隣の人との交流が進みそうだ

<取材協力先>
新田農園
柳沢プロジェクト
東京R不動産

<写真提供>
一部引用と筆者撮影写真以外は、柳沢プロジェクト

ホームズ君

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