東西同時進行の全体像:西口約0.6ヘクタール/東口約2.7ヘクタールで進む都市機能更新
港区の主要ターミナル駅の一つであるJR田町駅周辺では、東口(芝浦側)と西口(三田側)の両側において、国家戦略特区・都市再生特別地区等の都市計画手法を活用した大規模な都市機能の更新が計画されている。
はじめに、田町駅西口側では、都市再生特別地区(都市再生緊急整備地域内において建物用途規制や容積率規制を除外する都市計画ツールの一つ)を活用し、区域面積は約0.6ヘクタール、延べ面積約98,600m2、最高高さ約125m(地上24階・地下2階)規模の業務系複合が計画されている。主要用途は事務所、店舗、産業支援施設、駐車場等となっており、2025年10月に建築着工した。
一方、駅東口側でも同様に、都市再生特別地区を活用し、区域面積約2.7ヘクタール、延べ面積約289,000m2、最高高さ約179m(地上39階・地下2階)規模の複合拠点が検討されている。主要用途は事務所、大学施設、産学連携施設、ホテル、商業施設、保育所等で、土地は国立大学法人東京科学大学(旧東京工業大学)が所有し、事業主体による75年間の定期借地が予定されている。
本記事では、JR田町駅の「西口駅前地区(芝五丁目)」と「東口地区(芝浦三丁目)」を、それぞれ都市計画等の公表情報に基づき計画概要を紹介する。
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背景と手続き:特定都市再生緊急整備地域と都市計画決定のポイント
JR田町駅周辺は、品川駅や高輪ゲートウェイ駅同様に、都市再生特別措置法にもとづく「品川駅・田町駅周辺地域(特定都市再生緊急整備地域)」の枠組みの中で、広域交通結節点の形成や、歩行者ネットワークの充実等を含む都市再生が求められてきた経緯がある。
国では、JR田町駅西口駅前地区開発事業について、優良な民間都市再生事業計画として国土交通大臣が認定した旨を公表(2025年10月)しており、駅まち一体の都市基盤整備(交通広場の拡張、交差点改良、自由通路拡幅、デッキ広場整備等)や、国際交流拠点にふさわしい都市機能の導入、帰宅困難者支援等による防災対応力強化を挙げている。
西口側の都市計画では、従来の都市計画であった「特定街区(1970年決定)」を見直し、今回の計画にあわせて「都市再生特別地区/地区計画」へ移行し、特定街区を廃止した。また、東口側については、都市再生特別地区と再開発等促進区を定める地区計画を組み合わせ、駅・周辺市街地・運河をつなぐ基盤整備と、多様な機能導入を同時に進める方針が示されている。
<田町駅西側再開発の都市計画の経緯>
・2024年3月:都市再生特別地区および地区計画決定
<田町駅東側再開発の都市計画の経緯>
・2025年11月:都市再生特別地区および地区計画決定
西口:約125m・地上24階の業務系複合と駅前基盤整備(交通広場・自由通路・デッキ)
駅西口側においては、事務所、商業、産業支援施設を備えたミクストユース型の業務棟として、計画容積率約1,300%、延べ面積約98,600m2、最高高さ約125mが示されている。
特徴は「駅まち一体の基盤整備」を同時に実装する点である。
事業者の公表資料では、地上レベルで交通広場を約1,200m2から約3,000m2へ拡張し、路上に点在するバス乗降場の集約やタクシー乗降・待機スペース整備、交差点改良等によって交通結節機能の強化を図るとしている。また、2階レベルではJR田町駅構内の東西自由通路の拡幅、駅前デッキ広場の拡張(約2,000m2規模)等により、人流混雑の緩和と歩行者ネットワーク改善を行う方針が示される。
これらに加えて、都営地下鉄三田駅へのバリアフリー動線確保を含め、駅と周辺街区を連続的につなぐ構成が描かれている。
建物への導入機能としては、6〜23階にはオフィスが、4階に産業支援施設が、1〜3階に商業施設が入る。産業支援施設は、社会課題解決に資するスタートアップの育成・支援拠点が整備される。また、商業施設には、JR東日本グループの一つである株式会社アトレの商業施設がオープンする予定となっている。また、防災面では帰宅困難者の一時滞在施設としての機能を担い、中圧ガス発電により停電時でも約1週間の電力供給が可能。停電およびガス供給停止時時でも72時間の電力供給を可能とする計画が公表されている。環境面では事務所用途で「ZEBReady(ゼブレディ)」認証(事務所用途)取得を目指すとしている。
<建築計画の概要>
・敷地面積:約6,615m2
・建築面積:約5,600m2
・延べ面積:約98,600m2
・容積率:約1,300%
・主要用途:事務所、物販店舗、飲食店、駐車場等
・構造:鉄骨造・一部鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造
・規模:地下2階・地上24階建て、高さ約125m
・事業主体:三井不動産株式会社、森永乳業株式会社、東日本旅客鉄道株式会社
・設計者:鹿島建設株式会社一級建築士事務所
・施工者:鹿島建設株式会社東京建築支店
・建築着工:2025年10月
・竣工予定:2029年3月(建物完成・供用開始)、2033年度(全体竣工)
※出典:東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例第5条第1項に基づく現地標識等による。
東口:約179m・地上39階の複合拠点と運河接続デッキ/大規模屋内広場の計画
駅東口側については、区域面積約2.7ヘクタール、延べ面積約289,000m2、高さ約179mの複合拠点として、事務所に加え、大学施設・産学連携施設・ホテル・商業・保育所等の導入が計画されている。
基盤整備面では、駅周辺の歩行者ネットワーク再編が柱となる。また、既存の東西自由通路の品川方面に「新たな自由通路及び改札」を整備し、歩行者交通量の分散と回遊性向上を図ること、計画地を斜めに貫く「大規模屋内広場(動線兼広場)」を整備すること、さらに駅から運河までダイレクトにアクセス可能な「運河接続デッキ」を整備することが示されている。
また、芝浦運河通りに停留する企業バス等に関して、計画地内に乗降場(5バース)を整備して交通環境を改善する案や、シェアサイクルポート整備等も予定されている。なお、駅東口については、2025年11月に再開発に不可欠な都市計画決定がなされたばかりであり、今後、計画が具体化され次第、情報が公表されると考えられる。現時点で判明している情報によると建築計画の概要は次のとおり。
<建築計画の概要>
・敷地面積:約22,421m2
・延べ面積:約289,000m2
・容積率:約1,150%
・主要用途:事務所、大学施設、産学連携施設、ホテル、商業施設、保育所等
・構造規模:地下2階・地上39階建て、高さ約179m
・事業主体:エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社、鹿島建設株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東急不動産株式会社
・建築着工:2027年度
・竣工予定:2033年度
※出典:第29回東京都都市再生分科会(2025年3月)資料1
スケジュール:西口2029年3月供用開始・東口2033年度竣工までの工程
駅西口側は、2025年10月1日に建築着工し、建物完成・供用開始は2029年3月が予定され、全体竣工は2033年度が予定されている(下図参照)。また、駅東口側は、2027年度に着工し、2033年度に竣工する予定となっている。
まとめ
田町駅周辺では、西口駅前(芝五丁目)と東口(芝浦三丁目)で、国家戦略特区の枠組みの下、都市再生特別地区等を活用した都市機能更新が同時並行で進められている。西口側は、事務所・商業・産業支援施設を備えた業務系複合の整備に加え、交通広場の拡張、バス・タクシー動線の再編、交差点改良、東西自由通路の拡幅、駅前デッキ広場整備など、駅まち一体の基盤整備を一体で実装する計画である。
また、導入される産業支援施設は、社会課題解決に資するスタートアップの育成・支援拠点とされ、商業施設はJR東日本グループのアトレの開業が予定されている。
さらに、東口側は、事務所に加え大学施設・産学連携施設・ホテル等を含む大規模複合拠点として、新たな自由通路・改札の整備、大規模屋内広場、運河接続デッキ等により、駅と運河・周辺市街地を結ぶ歩行者ネットワークを再構築する方針が示されている。なお、東口は都市計画決定直後の段階にあり、今後、建築計画や駅施設改良、交通処理の具体的な内容が順次公表される見込みといえる。引き続き、各計画の都市計画手続き、事業スケジュールの更新、デッキ接続の段差解消・動線運用、バス乗降場配置等の交通計画を確認し、駅周辺の使われ方がどのように変化するかを追っていきたい。
















