夢洲の隣の「咲洲」で進む大規模開発

2025年に開催された2,500万人以上が来場する世界的イベントの会場となった夢洲(ゆめしま)。その隣に位置するのが、大阪市住之江区の人工島「咲洲(さきしま)」である。

この咲洲エリアでは、2018年に「咲洲コスモスクエア地区複合一体開発」が始動した。これは、大阪市と大阪港トランスポートシステムが所有する約4.4ヘクタール、計4つの区画を一体的に開発するプロジェクトである。事業者公募の結果、アーク不動産が事業予定者として選定されたが、その後2020年に日本エスコンがこの土地を取得し、現在は両社が共同で事業を進めている。

この記事では、「咲洲コスモスクエア地区複合一体開発」の概要と、2025年11月現在の現地の様子を紹介する。

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「咲洲コスモスクエア地区複合一体開発」画地図(出典:大阪維新の会「2027年咲洲コスモスクエア地区複合一体開発事業完了」)「咲洲コスモスクエア地区複合一体開発」画地図(出典:大阪維新の会「2027年咲洲コスモスクエア地区複合一体開発事業完了」)
「咲洲コスモスクエア地区複合一体開発」画地図(出典:大阪維新の会「2027年咲洲コスモスクエア地区複合一体開発事業完了」)大阪メトロ中央線コスモスクエア駅

咲洲コスモスクエア地区の歴史を振り返る

咲洲は、大阪湾に造成された約1,045ヘクタールもの広大な人工島である。その歴史は古く、1933年の南港開発計画にまでさかのぼる。戦争による中断を経て1958年に埋め立てが再開、1980年に現在の姿となった。島の名称は1991年の公募によって決まり、古代の港「難波津」にちなんだ和歌が由来とされている。

1988年、バブル経済の熱気の中、大阪市制100周年事業として「テクノポート大阪」計画が策定された。これにより咲洲の北側は「コスモスクエア地区」として、国際的なビジネス拠点を目指す本格的な開発が開始される。そして「テクノポート大阪」計画により、アジア太平洋トレードセンター(ATC)や、当時西日本一の高さを誇ったワールドトレードセンタービルディング(現・大阪府咲洲庁舎)などが次々と建設されたのである。

大阪府咲洲庁舎「さきしまコスモタワー」(右側のビル)大阪府咲洲庁舎「さきしまコスモタワー」(右側のビル)

しかし、1990年代のバブル崩壊で状況は一変。企業の誘致は計画通りに進まず、多くの施設が空きテナントを抱え、エリアの開発は停滞を余儀なくされた。

2000年代に入ると、咲洲は再生に向けて舵を切り始める。コスモスクエア駅周辺ではタワーマンションの建設が進み、住宅地としての価値が向上。大学や企業の研究開発拠点、商業施設の誘致も進められ、現在ではオフィス、住宅、学校、商業施設が集まる複合都市へとその姿を変えつつある。

大阪府咲洲庁舎「さきしまコスモタワー」(右側のビル)駅前には高層マンションが立ち並んでいる

国際都市・大阪を支える咲洲の役割とは

咲洲は、大阪ひいては関西圏において、重要な役割を担うエリアだ。

まず挙げられるのが、国際ビジネスと研究開発の拠点という側面である。特にコスモスクエア地区は国際交流・交易のハブとして位置づけられており、海外企業やIT関連企業、先端技術を持つ企業の誘致が活発に進んでいる。日立造船株式会社やミズノ株式会社といったグローバル企業の本社機能や研究施設、データセンターなどが集積しており、日本最大級の国際展示場「インテックス大阪」や「アジア太平洋トレードセンター」では、日々多くの国際会議や展示会が開催されている。

さらに咲洲は、関西の国際物流を支えるハブとしての役割を担っている。咲洲には大阪港の中核をなすコンテナターミナルやフェリーターミナルが集積しており、関西圏の経済と暮らしを支える物流拠点としての顔も持っているのだ。

大阪湾には多くの貨物船や客船が運行している大阪湾には多くの貨物船や客船が運行している

そして、ビジネスや物流の拠点であると同時に、暮らしやすい住環境が整備されている点も大きな魅力である。高層マンションが立ち並ぶコスモスクエア地区では、海沿いの遊歩道や緑地で散策したり、ショッピングモールで買い物を楽しんだりすることができる。教育機関や医療機関も充実しており、働く人だけでなく、住まう人にとっても魅力的な環境が整っているのだ。

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咲洲コスモスクエア地区複合一体開発「1画地・2画地」の概要と開発状況

ここからは、咲洲コスモスクエア地区複合一体開発の4つの画地について、その概要と現状を見ていこう。駅の南西側に位置する1画地・2画地では、当初の計画から用途が変更され、それぞれ異なる形で活用が進められている。

1画地は、事業者公募時には飲食店舗やスポーツ施設など5棟の建物(延床面積約2,000m2)が建設される計画であった。2024年度の竣工を目指していたが、2025年11月現在、敷地は未舗装の更地のままであり、計画に進捗は見られない。現地では大型トラックやバスが駐車しており、現在は駐車場として暫定的に利用されている状況だ。

【1画地】西側は多くの大型トラックが駐車されている(2025年11月7日現在)【1画地】西側は多くの大型トラックが駐車されている(2025年11月7日現在)
【1画地】西側は多くの大型トラックが駐車されている(2025年11月7日現在)【1画地】東側はバスや乗用車のガレージとして利用されている(2025年11月7日現在)

一方、2画地では新たな開発に向けた動きが進んでいる。ここはかつて2004年に食のテーマパーク「おおさかフードアウトレット」がオープンした場所だが、2013年頃に閉業し、その後は空き地となっていた。今回の開発では物販・飲食店舗(延床面積約6,600m2)が計画されていたものの、現在、この土地ではホテルの建設工事が着々と進行中だ。

2025年11月7日の時点では敷地の整備が進み、重機による掘削作業も確認できた。現地の建築計画概要によると、建設されるホテルは延床面積5,356.70m2となる予定。1画地とは対照的に、夢洲の万博跡地活用や将来のIR(統合型リゾート)を見据えた需要を取り込むべく、具体的な開発が進んでいる様子がうかがえる。

【1画地】西側は多くの大型トラックが駐車されている(2025年11月7日現在)【2画地】重機が入り造成工事が行われていた(2025年11月7日現在)
【1画地】西側は多くの大型トラックが駐車されている(2025年11月7日現在)【2画地】現地ではクレーン車も稼働している(2025年11月7日現在)

咲洲コスモスクエア地区複合一体開発「3画地・4画地」の概要と開発状況

続いて、コスモスクエア駅に近く、住宅と駅前機能を担う3画地・4画地の開発状況に目を向けてみよう。こちらも計画の一部が実現する一方で、当初の予定からの変更や遅れが見られる。

3画地は分譲マンション用地として、15階建てのマンション2棟(合計約600戸)を2期に分けて供給する計画だった。しかし、2025年11月現在、完成しているのは1期棟に当たるある。

<大阪ベイレジデンス 概要>
・敷地面積: 6,860.78m2
・建築面積: 2,864.75m2
・延床面積: 27,024.51m2
・総戸数: 330戸
・階数: 地上15階建て
・竣工日: 2021年1月26日

大阪ベイレジデンスは「リブリーコート」(北棟)と「ブライトフルコート」(南棟)の2棟で構成されている。敷地内には「四季の庭」や「緑の回廊」など複数のガーデンゾーンが設けられており、自然を感じられる住環境が魅力だ。

その一方で、2期棟の建設予定地とみられる北側の区画はフェンスで囲われた更地のままで、工事が進む様子はなかった。

【3画地】1期棟「大阪ベイレジデンス」【3画地】1期棟「大阪ベイレジデンス」
【3画地】1期棟「大阪ベイレジデンス」【3画地】2期棟の建設予定地とみられる北側の区画(2025年11月7日現在)

4画地は、コスモスクエア駅の出入り口の目の前という、開発区画の中で最も利便性の高い場所だ。計画では、地上22階建て、約600室のホテルと店舗からなる複合ビルが2027年度に竣工する予定であった。国際交流の拠点としての役割や、万博・IRを見据えた宿泊需要への対応が期待されていたのだろう。

しかし、着工予定の2025年を迎えても工事が始まる気配はなく、敷地はコインパーキングとして稼働している。駅前の好立地であるため多くの車が利用しており、暫定的な土地活用が続いているのが現状だ。

【3画地】1期棟「大阪ベイレジデンス」【4画地】現在コインパーキングとして稼働している(2025年11月7日現在)
【3画地】1期棟「大阪ベイレジデンス」【4画地】コスモスクエア駅の目の前という好立地(2025年11月7日現在)

住宅地として咲洲エリアの価値はどこまで高まるか

咲洲エリアは今後、隣接する夢洲との連携を軸に、国際的なビジネス・観光拠点としてのさらなる発展が期待される。万博跡地の活用やIR開業が現実のものとなれば、国内外から多くの来訪者が見込まれ、咲洲の宿泊・商業施設への需要は一層高まるだろう。

LIFULL HOME’Sのコスモスクエア駅の中古マンション価格相場を見ると、2025年11月1日時点で70m2あたり3,418万円となっている。これは、隣接する大阪メトロ中央線の大阪港駅(1,726万円)や朝潮橋駅(2,835万円)、南港ポートタウン線のトレードセンター前駅(2,571万円)などと比較しても、明らかに高い水準にある。

夢洲のIR開業によって数万人規模の雇用創出が見込まれることもあり、職住近接を求める層を中心に、住宅地としての需要は今後ますます高まるだろう。

ただし、ここまで見てきたように、咲洲コスモスクエア地区複合一体開発が当初の計画通りに進んでいない現状も課題として残る。万博後の経済動向を踏まえ、計画が見直される可能性も否定できない。行政と民間事業者がいかに連携し、この広大な土地のポテンシャルを最大限に引き出すか。大阪ベイエリアの未来を占う上で、咲洲の今後の動向から目が離せない。

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