東京高速道路(KK線)の歩行者空間化と一体的に行われる再開発
日本の経済の中心地である東京駅周辺エリアで、大規模な都市再生プロジェクトが進行している。特に東京駅と銀座を結ぶ重要な結節点である京橋エリアでは、「京橋三丁目東地区第一種市街地再開発事業」が本格的に始動している。この再開発は、単なる老朽化した建物の建て替えにとどまらず、長年、東京の経済活動を支えてきた東京高速道路(KK線)の役割転換と連動する、壮大な都市計画の一環として進められている。
この計画の鍵となるのが、KK線の廃止後に誕生する予定の空中回廊「Tokyo Sky Corridor」だ。本稿では、再開発事業の全体像と、新たな歩行者空間として生まれ変わる「Tokyo Sky Corridor」との関係性をわかりやすくお伝えしていく。
京橋エリアとは
京橋エリアは、八重洲エリアと銀座の間に位置する京橋地区のこと。京橋の地名は、江戸時代、東海道の起点である日本橋から京都へ上る最初の橋であったことに由来する(引用:中央区公式ホームページ)。
京橋という地名から、東京駅をイメージしにくいかもしれないが、下図の位置から分かるようにほぼ東京駅八重洲エリアに位置し、今回、取り上げる京橋三丁目東地区も八重洲に隣接していることがわかる。このように京橋という地名であっても、東京駅や日本橋への近接性から当該駅の利便性を享受することができるエリアであり、東京駅や日本橋と一体的な都市空間が形成されている。
これまでに京橋地区では、2016年に竣工した「京橋二丁目西地区(KYOBASHI EDOGRAND(京橋エドグラン)」の市街地再開発事業がある。今回、市街地再開発事業が進められている「京橋三丁目東地区」は、2015年3月に合同勉強会が開始され、同年12月には、京橋三丁目東地区まちづくり協議会の設立、2017年1月には、再開発準備組合が設立され、2023年1月には市街地再開発事業に必要な都市計画が決定され、2024年4月には組合設立が認可されている。
今後、権利返還計画の認可を経て、建築着工は2026年6月が予定されている。
京橋三丁目東地区再開発事業の位置
再開発の位置は、中央区京橋三丁目地内、中央通り(国道15号線)に接し、東京メトロ銀座線京橋駅、都営浅草線宝町駅に近接し、JR東京駅からは距離にして約900m離れている。この施行位置の周辺では、八重洲エリアでの市街地再開発事業に加え、市街地再開発事業ではないものの、住友不動産において特定街区を活用した超高層建築物(事務所、ホテル、店舗等)の計画が進められている。
さらに、再開発エリアは、2025年4月に廃止された東京高速道路(KK線)に隣接している。当該道路は、廃止後、既存施設を活用した歩行者空間に生まれ変わる計画であり、当該空間と歩行者デッキで結ばれる予定となっている。
京橋三丁目東地区の再開発とは
京橋三丁目東地区の施行面積は約0.9ヘクタールのエリアに地下4階、地上35階建ての事務所・ホテル等の施設が計画されている。延べ面積は、約16.5万m2、容積率は1,990%が計画されている。また、地下歩行者ネットワークの拡充が行われ、東京メトロ銀座線京橋駅と再開発エリアが結ばれることとなる。
すでに事業が進められている「八重洲二丁目中地区」の再開発により、京橋駅と東京駅八重洲地下街とのネットワーク空間が結ばれることが明らかにされているため、この再開発エリアと東京駅は地下空間で結ばれることとなる。
京橋三丁目東地区における事業目的や設計の基本方針、建築物の詳細概要は次のとおり。
【事業目的】
①京橋エリアの広域的な回遊性強化に資する都市基盤の整備
②京橋エリアの賑わい創出を支える都市機能の導入
③防災対応力強化と環境負荷低減
【設計の基本方針】
「京橋」と「銀座」の結節部として、放射第28号線(中央通り:国道15号)の賑わいの連続性を創出する拠点、地下・地上・KK線上部空間(Tokyo Sky Corridor)をつなぐ歩行者ネットワークの整備による回遊性の高い国際都市東京の玄関口の形成に寄与。
【建物概要】
・施行面積:約0.9ヘクタール
・用 途:事務所、ホテル、店舗、地域貢献施設、住宅等
・建築面積:約6,820m2
・延べ面積:約164,900m2
・規 模:地下4階、地上35階建て、高さ約45m
・容積率 :約1,990%
・公共施設:歩行者通路、地上屋外広場(約500m2)、1階屋内広場(300m2)、2階屋内広場(500m2)、地下広場(300m2)
・総事業費:約1,552億円(うち、補助金54億円)
※出典:京橋三丁目東地区第一種市街地再開発事業 事業計画書
再開発と関係するKK線とは
京橋三丁目東地区の再開発事業は、東京高速道路(KK線)の再生と密接に関係している。KK線は、1966年の全線供用開始から東京の都市高速道路網の一部として機能してきたが、首都高速道路の新たな都心環状ルートの整備等に伴い、東銀座出口を除き廃止されることとなった。2025年4月5日20時をもって自動車専用道路としての役割を終えた。
廃止後のKK線は、東京都策定の「東京高速道路(KK線)再生方針」に基づき、「自動車専用の道路」から「歩行者中心の公共的空間」へと生まれ変わる。この再生事業は「Tokyo Sky Corridor」として、東京の新たな価値と魅力を創出する歩行者中心の公共的空間を目指している。全区間の整備完了は2030年代から2040年代を目標としているが、都市空間の価値向上を目指し、周辺のまちづくりと連携した段階的な整備により、一部区間の早期開放を図る方針となっている。
京橋三丁目東地区の再開発では、KK線へのバリアフリー動線や、立体的に連続する広場空間を整備することで、周辺まちづくりと一体となってその再生に寄与する計画となっている。
事業スケジュールまとめ
京橋三丁目東地区第一種市街地再開発事業の事業スケジュールは以下のとおり。
事業施行完了予定: 2031年5月
KK線が歩行者中心の公共的空間へ再生するプロセスと並行して進められることとなる。なお、竣工予定は、現在、再開発組合が公開している事業計画書に基づくものであり、今後の社会情勢等の変化に伴い竣工時期が変わる可能性がある。
再開発事業によって京橋エリアはどのように変化するのか
京橋三丁目東地区の再開発事業は、京橋エリアに大きな変化をもたらすことが考えられる。まず、最大の変化は、KK線の上部空間が歩行者中心の公共的空間「Tokyo Sky Corridor」として再生される点にある。また、地下の京橋駅、地上、そして空中へとシームレスにつながる、安全で快適な歩行者ネットワークが構築される。
歩行者ネットワークは、東京駅との関係性も大きく変える。再開発エリアは、すでに事業が進められている「八重洲二丁目中地区」の再開発によって、京橋駅と東京駅八重洲地下街とのネットワーク空間が結ばれるため、地上に出ることなく東京駅までアクセスすることが可能となる。これにより、京橋駅から東京駅へのアクセス性が飛躍的に向上し、両駅が地下空間で一体的に結ばれることになる。
さらに、再開発では、にぎわいの創出を目的として、アート・ものづくり文化の発信・育成・交流の場を形成する施設や、国際水準の宿泊施設を整備する計画となっている。これにより、八重洲同様にビジネス街としての性格が強かった京橋が、平日のみならず休日も多くの来街者で賑わうエリアへと変化することが期待される。
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