豊海地区とは
勝どきや月島は知っていても、豊海(とよみ)は知らないという人も多いのではないだろうか。豊海地区とは、中央区の勝どき駅があるエリアの南西部に位置するエリアで、このエリアの多くは港湾法上の臨港地区に指定されており、その役割として、冷凍・冷蔵倉庫が多く立地している。このこともあり、一見すると住宅地はないように思えるが、実はそうでもない。
豊海エリアは、1962年に東京港の埋め立て事業として誕生した町で、町名である「豊海町」は、住民のアンケートから選ばれた。前述したように、豊海エリアの大半を港湾施設が占めているものの、一部では住宅用地がある。中央区の方々や港湾関係者でもない限りは、あまり馴染みがないと思うが、工場・倉庫跡地が住宅用地等に転換されており、2025年7月1日時点で、約500人が居住している。また、豊海に隣接する勝どき5・6丁目には、約1.4万人が居住している。このため、豊海町内には、豊海幼稚園ならびに豊海小学校が立地している。それぞれの通学区・通園学区は、豊海町、勝どき5丁目および6丁目である。
このような豊海エリアだが、2017年より市街地再開発事業が始動している。現在、500名ほどしか住んでいないエリアに約2,000戸の住宅が供給されることになるのは地域に大きなインパクトをもたらし、街並みが変化していく起点となる。本稿では、豊海エリアで進められている市街地再開発事業についてリサーチした結果を整理してまとめたものを皆さんに共有したい。
豊海地区で進行中の市街地再開発の概要
市街地再開発事業が行われているエリアは、豊海町内の一部と勝どき6丁目で、施行面積は約2.0ヘクタールとなっている。事業の正式名称は「豊海地区第一種市街地再開発事業」であり、すでにマンション名についても「THE TOYOMI TOWER MARINE & SKY」に決まっている。このエリアに地上54階、地下1階、高さ189mに及ぶ住宅・店舗・公共施設が入る複合用途の建物の建築工事が進められている。
中央区の湾岸エリアは、都市再生特別措置法による「特定都市再生緊急整備地域」に位置付けられている。この地域自体は専門家が使うことが多いので普段は見慣れないと思うが、この地域における整備目標の中の一つに、外国人が住みやすい居住環境の充実などが掲げられており、都心を支える居住機能を強化した魅力的な複合市街地を形成していくこととされている。
中央区では都市計画の基本的な方針となる都市計画マスタープランは定めていないものの、2016年に中央区が策定した「勝どき・豊海地区まちづくりガイドライン」では、将来像を「新しい都心ライフスタイルを育むまち 勝どき・豊海」とし、子育て・高齢世代が楽しめ、自然環境・都心利便性を満喫できるなどの空間をつくっていくことを掲げている。
話を戻し、そうした中、豊海エリアで進められている再開発では、2017年に市街地再開発事業等の都市計画決定、2020年に再開発組合設立認可、2021年に権利変換計画が認可され、2023年1月に建築工事に着手した。再開発では、住宅の供給のみならず、店舗や区民館・集会所、子育て施設(保育所)が配置される予定となっているなど、公共貢献も盛り込まれていることが特徴だ。
市街地再開発で計画されている建物とは
豊海地区第一種市街地再開発事業で計画される建築物の概要は次のとおり。
・建物用途:住宅、店舗、公益施設、保育所など
・敷地面積:約1万5,901m2
・建築面積:約6,323m2
・延べ面積:約22万8,580m2
・容積率 :約1,000%
・建蔽率 :約39%
・規模 :地下1階、地上54階、高さ189m
・その他 :駐車台数約689台、駐輪台数約3,185台、バイク台数約118台
・総事業費:約1,248億円(うち補助金:約227億円)
※出典:豊海地区第一種市街地再開発事業(2023年11月29日変更認可)
その他、歩行者道の拡幅、オープンスペースの整備、周辺の防潮堤と連続した防潮堤整備、豊海小学校と再開発エリアとの段差解消のための改修などが予定されている。
また、住宅については、総戸数2,046戸、1〜4LDK(平均72m2)が予定されている。
・1LDK:241戸、専有面積約33〜66m2
・2LDK:771戸、専有面積約57〜92m2
・3LDK:1,031戸、専有面積約69〜159m2
・4LDK:3戸、専有面積約129〜151m2
豊海エリア内には鉄道駅が存在しないが代替輸送が便利
豊海町は、居住環境という面で魅力的である一方で、交通利便性が高いとは言い難い点がある。その理由は、勝どき駅までの距離にある。今回、市街地再開発事業が進められているエリアから都営大江戸線の勝どき駅までは、およそ1km離れており、大量輸送機関へのアクセス性の課題がある。
とはいえ、それを補う輸送機関も存在する。その輸送機関が「TOKYO BRT」だ。当該路線は、虎ノ門ヒルズから新橋や勝どき、晴海、豊洲、有明方面を結んでいる路線であり、勝どきの停留所は、環状第2号線沿いに位置し、勝どき駅までのおよそ半分の距離である。豊海エリアから勝どき駅までは若干遠いものの、BRTの停留所は利用しやすい位置にあるため、鉄道駅を利用しにくくともそれに替わる輸送機関を利用することが可能だ。
TXの延伸計画。今後、注目されるエリア
豊海エリアには注目できる将来の鉄道計画がある。それが、都心・臨海地下鉄新線である。東京駅から臨海部を通り有明・東京ビッグサイトに通ずる地下鉄の新線である。2021年7月に国の交通政策審議会の答申において「常磐新線(TX)延伸との接続を含め、事業化に向けて検討の深度を図るべきである」とされており、事業計画の検討が進められている。
この新路線が開通することで、勝どき駅から東京駅までダイレクトに結ばれることになる。さらに、つくばエクスプレスが秋葉原駅から東京駅まで延伸すれば、筑波研究学園都市や臨海部の有明ビッグサイトまで乗り換えなしでアクセス可能になることが考えられる。
▶︎都心・臨海地下鉄新線についての記事はこちらを参照
豊海の将来性は?TX延伸を踏まえた不動産価値への影響を考察
豊海エリアには、2027年に約2,000戸の住まいを備えた大規模居住エリアへと変貌を遂げる転換期にある。しかしながら、最寄り駅まで約1kmという交通利便性の課題は、その不動産価値を評価する上で無視できない点でもある。
この状況を覆す可能性を秘めるのが、繰り返しになるが、現在、事業計画の検討段階にある「都心・臨海地下鉄新線」である。計画が実現すれば、豊海の最寄り駅である勝どき駅への乗り入れ本数が2本になり、東京駅やつくば、有明方面までへダイレクトにアクセス可能という利便性を手にすることになる。もちろん、BRTによる移動手段もあるが、中長距離移動という面では鉄道の方に優位性がある。
現在の不動産価値は、この新線計画がまだ事業化されていない「期待感」を織り込んだ水準にある。したがって、今後の価値変動は計画の進捗と密接に連動する。まず、計画の「事業許可」のタイミングで、不動産価値は一度目の上昇を見せる。「期待」が「確定」に変わることで、資産評価の前提が覆るためだ。そして二度目は、「開業時」であり、利便性が現実のものとなることでその価値は確立されたものとなる。
結論として、豊海エリアは「未来の街の価値に投資する」という側面が極めて高いエリアといえる。現在の不便さと将来の大きな可能性をどう評価するかが問われる。今後の新線計画の事業化決定の動向こそが、このエリアの真の価値を測る上で最も重要な指標となりそうだ。
筆者としては、港湾計画との関係性や、高潮などの災害リスクなどに留意する必要があると考えられるものの、将来の街並みが楽しみであるエリアである。今後、さらに動きがあれば記事にしてお届けしたい。
都市整備局 豊海地区第一種市街地再開発事業












