小岩駅周辺にて市街地のリニューアルが進行中
JR小岩駅(こいわえき)は、新中川と江戸川の間の小岩地域に位置し、1日平均約12万人(2023年度)が利用する江戸川区北端の主要駅であり、JR秋葉原駅まで約17分で結ぶ。駅の開業は1899年と歴史を有する。また、小岩駅が位置する小岩地域は、北・西側は葛飾区、東側は千葉県市川市に接しており、江戸時代は佐倉や成田と江戸を結ぶ佐倉街道の小岩市川関所が置かれ、交通の要所として発展した歴史ある街でもある。
このように歴史ある小岩駅周辺にて、現在、駅を挟んだ南北で市街地再開発事業が進められている。
現在、市街地再開発事業が行われているのが、「南小岩六丁目地区」、「JR小岩駅北口地区」および「南小岩七丁目駅前地区」となっており、このうち、工事に着手しているのが、「南小岩六丁目地区」と「JR小岩駅北口地区」である。
なお、「南小岩七丁目駅前地区」については、2023年10月に都市計画決定されているものの工事着手には至っておらず、現在は、東京都からの組合認可および事業計画策定等に向けて検討が進められている状況にある。次に市街地再開発事業に至った背景を探っていく。
市街地再開発事業導入の背景等
小岩地域が抱えている主要な課題として、「JR小岩駅周辺地区まちづくり計画2019(江戸川区策定)」では、商業の衰退や高齢化をあげている。小岩駅周辺の年間小売販売額は、1991年の約640億円をピークに一貫して減少を続け、2014年には約278億円まで落ち込んでいる。
さらに、高齢化率も顕著だ。江戸川区全体の高齢化率は2018年10月時点で21.0%(※出典:江戸川区都市計画マスタープラン)であるが、小岩地域は24.9%と区内で最も高い。さらに、年少人口(0-14歳)についても区全体では13%であるが、小岩地域では10.8%と、将来を担う若い世代の割合が低い状況にある。
これらに加えて、市街地形成の成り立ちから木造密集市街地が多いこと。さらには新中川(中川放水路)と江戸川に挟まれており、河川洪水に対しても備えなければならない課題がある。
また、交通面でみると1日平均約12万人が利用するターミナル駅にもかかわらず、駅北口に交通処理を担う交通広場が未整備であることや公共広場が不足しているなど、都市基盤としても脆弱な部分があった。
これらを解決するための手段の一つとして、市街地再開発事業の実施に至った。南北の市街地ともに2006年頃には地域住民等による勉強会等が発足しており、2009年以降、江戸川区による「JR小岩駅周辺まちづくり基本構想」の策定や「江戸川区都市計画マスタープラン」への位置付け、その後、準備組合の設立や、再開発必要な都市計画を決定し、南口は2019年5月に着工(南小岩七丁目駅前地区を除く)、北口は2022年1月に着工、している。
駅北口の市街地再開発事業の概要
駅北口では「JR小岩駅北口地区第一種市街地再開発事業」として、施行面積約2.0haにおいて、交通広場整備や既存道路拡幅、高さ約110mの住商複合建築物を建築するとしている。
事業計画(JR小岩駅北口地区第一種市街地再開発事業 事業計画書(2023年9月6日変更))では、地区の課題である駅前広場の不足や不十分な道路基盤など防災面を解決するため、次の4つの方針を定めており、防災面や商業に主眼を置きながらも良好な景観や生活空間を確保するとしている。都市計画上も高度利用地区や地区計画に加えて、景観地区を指定している。
1)都市基盤整備とあわせた交通・防災の拠点街区の形成
2)活気とにぎわいのある小岩らしい駅北の顔づくり
3)多世代が快適に暮らせる生活環境づくり
4)歩いて楽しめる憩いの景観づくり
事業計画書によると、北口の市街地再開発事業で整備される施設は、分譲住宅(731戸)、店舗・業務、保育所、駐車場・駐輪場に加えて、駅前広場(約1,015平方メートル)や緑地(約90平方メートル)、道路(歩行者通路を含む)が整備される。また、これらの総事業費は約700億円を予定しており、このうち、補助金は約193億円、保留床処分金は約115億円を見込んでいる。
市街地再開発事業のうち、建築物の整備についての計画は次のとおり。
・建築敷地面積:約8,675m2
・建築面積:約6,830m2
・延べ面積:約94,590m2(容積率対象延べ面積:約69,385m2)
・階数:地下1階、地上30階
・建蔽率:約 79%
・容積率:約799%
・用 途:住宅、店舗、業務、保育所
・構 造:鉄筋コンクリート造、鉄骨造
・高 さ:約110m
・付帯施設:駐車場355台、駐輪場1,820台、自動二輪駐車場80台
当該地区は、都市計画上「商業地域」に指定されており指定容積率は600%とされるが、市街地再開発事業に伴う高度利用地区の指定により上限値が800%まで引き上げられており、計画建物の容積率は約799%が予定されている。
事業計画によると、住宅部分は、地上6階から地上30階で構成されるタワーマンションが建築される。店舗・業務・保育所部分は地下1階から地上5階まで、その他、駐車場等が整備される。地上5階と6階の間には免震構造(中間免震)が設けられる。
分譲住宅の戸数は合計で731戸と大規模となる予定だ。内訳として、1R・1LDK・2DKは207戸、2LDK・3DKは101戸、3LDK〜は423戸が設けられ、それぞれ一戸あたりの床面積は約35〜50m2、約51〜65m2、約66m2〜とされる。
駅南口の市街地再開発事業の概要
駅南口では「南小岩六丁目地区第一種市街地再開発事業」および「南小岩七丁目駅前地区第一種市街地再開発事業」が進められているが、このうち、再開発組合が発足し事業計画が公表されている「南小岩六丁目地区」を取り上げる。
なお、「南小岩七丁目駅前地区」では、市街地再開発事業に加えて隣接部では土地区画整理事業が予定されており、比較的規模の大きい市街地再編が予定されている。市街地再開発に加えて更なる大きな変化となるため、今後、事業が本格化した段階で記事にまとめたい。
「南小岩六丁目地区」の施行面積は約1.3ha、ⅠからⅢ街区に分けて段階的に事業が進められている。このうち、Ⅰ街区については、2020年12月に竣工、Ⅱ街区については2022年5月に竣工している。最後となるⅢ街区については、2022年12月に着工し、2026年2月の竣工を目指して工事が進められている。
Ⅲ街区では、高さ約110mの住商複合建築物を建築するとしている。事業計画(JR小岩駅北口地区第一種市街地再開発事業 事業計画書(2023年9月6日変更))では、駅前広場の不足や、不十分な道路空間など、防災面の課題の解決を図ることを目的とした施設整備が行われる。
Ⅲ街区において整備される施設は、分譲住宅(367戸)、業務、駐車場・駐輪場が整備される。また、事業計画書によると、これらの総事業費は約523億円(Ⅰ〜Ⅲ街区の合計)を予定している。このうち、補助金は、約178億円、保留床処分金は約28億円を見込んでいる。
市街地再開発事業のうち、建築物の整備(Ⅲ街区)についての計画は次のとおり。
・建築敷地面積:約5,012m2
・建築面積:約4,507m2
・延べ面積:約53,153m2(容積率対象延べ面積:約35,069m2)
・階数:地下1階、地上33階
・建蔽率:約 70%
・容積率:約700%
・用 途:住宅、商業
・構 造:鉄筋コンクリート造、鉄骨造
・高 さ:約110m
・付帯施設:駐車場164台、駐輪場3,767台(内、自動二輪駐車場53台)
Ⅲ街区は、都市計画上「商業地域」に指定されており指定容積率は500%とされるが、市街地再開発事業に伴う高度利用地区の指定により上限値が700%まで引き上げられており、計画建物も上限いっぱいの約700%を予定している。事業計画によると、Ⅲ街区における住宅部分は、地上4階から地上33階、商業部分は地上1階から地上4階まで、その他、駐車場等が整備される。
続いて、Ⅲ街区の分譲住宅の戸数は合計で367戸、間取りは1LDKから3LDK、専有面積は55.76m2〜85.36m2が予定されている。
スケジュール
北口および南口それぞれの事業計画書によると、駅北口の再開発事業の建築工事は2027年1月に、駅南口のうち「南小岩六丁目地区」の再開発事業の建築工事は2025年9月に竣工するとしている。また、現時点で都市計画決定のみにとどまっている「南小岩七丁目駅前地区」については、現在のところ明確な完成時期は示されていない。
また、分譲マンションの入居(引渡)時期については、2025年3月13日時点での販売者の公式ページによると、南口の「プラウドタワー小岩フロント」が2026年3月中旬、北口の「パークシティ小岩 ザタワー」が2027年3月下旬を予定している。
今後、どのような街の変化があるか
小岩地域の土地利用は、江戸川区の平均に比べ商業用地や住宅用地が多く占めている。歴史的にみても古くから市街化が進んだこともあり、住宅地に加えて、下町情緒が残る商店街が形成されている。一方、小岩地域は木造密集市街地が多く、災害時の延焼防止帯(緑地や空地、準耐火建築物以上)や、河川洪水・高潮による浸水被害への適応などがまちづくりとして求められている状況にある。
今回、小岩駅を挟んだ南北で市街地再開発事業より、人と車両が集中する駅周辺エリアでの木造密集市街地の解消や、広場・公共空間の確保、駅北口では交通を円滑に処理するための交通広場整備、さらには道路拡幅や緑地整備などにより、不足していた社会基盤が整うことになる。さらに、数年後には「南小岩七丁目駅前地区」での再開発や土地区画整理事業が予定されている。
整備効果として、これまで小岩駅利用数に対して充足していたとは言い難い駅周辺の都市基盤が整うことで、安全・安心な街、洗練された街として認知度が高まり、都心への交通利便性の高さからさらに住宅地・商業地として魅力的な街に発展していく可能性が高い。
また、そうした新たな居住者や業務従事者をターゲットとした商業が賑わうことが想定される。一方、下町であるがゆえに再開発による地価上昇に伴い住み慣れた住宅を手放す人も一定数存在する可能性もあることから、そうした方々が持続的な生活が可能なよう、ケアも重要になる。
おわりに
小岩駅は、東京23区の東端にありながらも総武線を利用することで都心へのアクセス性が良好だ。さらに、西隣の新小岩駅(葛飾区南端)において総武線・横須賀線快速線に乗り換えれば、東京駅や神奈川方面へのアクセスも容易で、交通上優れている特徴を持っている。
これらに加えて、今回の市街地再開発によって、木造密集市街地の改善や交通広場の確保、商業の活性化など、地域が掲げる課題の解決に寄与することが考えられ、特に小岩地域にとっては防災面の課題解決につながると考えられる。
一方、小岩地域は大地震や大規模火災以外にも河川洪水・高潮への適応も求められている状況にある。今後も、都市計画を生かした防災性の構造上や回復力(レジリエンス)を持つ街への構造変化も必要になってくると考えられる。小岩駅の街のリニューアルは開始したばかりだが、このような変化を起点として、数年後には既存住民のみならず若い世代に魅力的な街として認知されるのではないだろうか。商業地として再活性化していく日も近いかもしれない。
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