不動産情報ライブラリとは

住まい探しをする場合、災害リスクや周辺での取引価格、用途地域、学区などの情報をどのように調べればよいか悩んだ経験はないだろうか。もしくは、契約前に不動産事業者から説明を受けたものの、本当に正しい情報なのか自身で調べたいと思った方もいるのではないだろうか。

現行法では、物件の購入・賃借前には不動産会社が宅建業法に基づき重要事項の説明をする義務がある。しかしながら、一般の方が自分で調査するには、ある程度の専門知識や手間を要するという課題がある。

そのような課題を解消する便利なツールが今年の4月1日から運用を開始した。それが、WebGISシステムの「不動産情報ライブラリ」である。リリース直後から利便性の高さが業界内で話題となった。

そこで、今回は、「不動産情報ライブラリ」を運用している国土交通省の担当者にライブラリの目的や活用方法などについてインタビューを行った。

不動産情報ライブラリトップページ(https://www.reinfolib.mlit.go.jp)不動産情報ライブラリトップページ(https://www.reinfolib.mlit.go.jp)

不動産情報ライブラリの目的やねらい

国土交通省政策統括官付情報活用推進課長 (併)内閣官房地理空間情報活用推進室参事官 矢吹氏国土交通省政策統括官付情報活用推進課長 (併)内閣官房地理空間情報活用推進室参事官 矢吹氏

今回、インタビューしたのは、国土交通省政策統括官付情報活用推進課 矢吹課長並びに同課の菅沼課長補佐だ。「不動産情報ライブラリ」をつくったねらいについてこう話す。

「不動産情報ライブラリには様々な情報を載せているが、いずれもオープンデータであり、自ら探しに行けば手に入る情報ではある。しかしながら、一般ユーザーの方であれば、情報を探しに行く手間や時間がそれほど日々の生活の中にはない。また、よくよく探さないと得られないデータは使いにくい。このことから、背景地図とオープンデータを重ね合わせることができるとかなり手に取りやすい情報となる。加えて、スマートフォンでも見られるようになれば、例えば、通勤途中や様々な隙間時間で使用できる」と話す。

住まい探しの際に知りたい情報の一つとして近年の災害増加を背景とした災害リスクが挙げられるが、災害リスクに関する情報を公開する部署は、それぞれの法律並びに条項によって異なる。このため、国、都道府県及び市町村のそれぞれの組織内の部署毎に公開しており、情報にたどり着くためには一定の専門知識が必要な他、時間と手間がかかるという課題がある。

また、オープンデータの一元化も課題となっていたことも挙げられている。従来、価格情報は「旧土地情報総合システム(不動産情報ライブラリの開始により令和6年3月末廃止)」、地形情報は「国土地理院地図」、防災情報は「国、自治体、重ねるハザードマップ」、周辺施設情報は「国土数値情報」、都市計画情報は「自治体」といったものがあるが、いずれもオープンデータとして公開されているものの、データは国や自治体の部署ごとに異なっており、情報を得るためにはそうした部署を見つけ出す必要がある。

実は私の知り合いにも、不動産会社に長年勤めていても必要な情報を見つけ出すのが難しいと話す人がいる。

しかしながら、ライブラリでは、こうした情報の主要データを一元化しているため誰でも簡単に取得することができるというメリットがある。加えて、従来には無かった要素として、スマートフォン上でもすばやく閲覧可能で、ちょっとした隙間時間に自分でも調査を行うことが可能となった。

国土交通省政策統括官付情報活用推進課長 (併)内閣官房地理空間情報活用推進室参事官 矢吹氏不動産情報ライブラリの使用例(パソコン)

不動産情報ライブラリが不動産取引にもたらす効果

矢吹課長は、「情報を重ねて見やすくすることにも価値がある」とも話す。

ライブラリでは、ゼンリン地図(国土地理院地図への切り替えが可能)をベースとして、取引価格や災害リスク、避難施設、学区、都市計画情報などを地図上で重ねて表示することができる。重ねて見ることが可能のため、それぞれの情報を行き来する手間がなくなっており、その結果、スマートフォン上でも見やすいのが特徴となっている。

不動産情報ライブラリの使用例(スマートフォン)不動産情報ライブラリの使用例(スマートフォン)

また、矢吹課長は、「二地域居住の推進にもつながる」と話す。二地域居住とは、主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点を設ける暮らし方のことで、地方創生や東京一極集中の是正につながるため、国が進めている重要な取り組みの一つとなっている。特にコロナ禍を契機として企業のテレワーク導入が拡大しており、住む場所に縛られない新たな暮らし方や働き方が一定程度浸透しはじめている。

しかし、二地域居住の浸透には課題も存在する。その一つが居住先となる候補地の情報取得だ。令和4(2022)年に国が行った「二地域居住に関するアンケート」によると、二地域居住等を実施していない約11万人に対し「どのような点が改善されれば、今後、二地域居住等を行いやすくなると思うか」という質問(複数回答)に対し、約15%の方が「居住先や空き家物件情報の提供」をあげている。ほとんどの方が該当すると思うが、土地勘のない地域を選択するのはハードルが高いものと考えられる。

この点において、ライブラリでは、取引価格情報に加えて、500mメッシュの現住人口・将来推計人口(年少人口、生産年齢人口及び老年人口の別)、及び駅の乗降人員などを閲覧することができる。しかも、地図上で日本全体を探索できる。このことから、候補先エリアの将来性をある程度把握することができ、二地域居住のハードルを下げることにつながる可能性があるのではないかと考えられる。

もう一つの効果として、国が進めるネットワーク型コンパクトシティとの連動があるとも話してくれた。

ライブラリの特徴の一つとして、立地適正化計画(人口減少が予測される自治体で作成しているコンパクトシティ形成のための計画)において、都市計画区域内に指定している「居住を誘導していく区域」と「日常生活に必要不可欠なサービス機能を誘導していく区域」の閲覧が可能となっている。これらの区域は土地の将来人口や防災、公共交通などを配慮した上で指定している。

物件購入・賃借前に行う重要事項説明の際にも得られるが、住まい探しの際に土地の将来性を把握するために重要性の高い情報であり、重要事項説明前よりも候補地を探す段階で知っておきたい。

矢吹課長は、「(不動産情報ライブラリは)より安全な地域に住んでもらうという政策にも寄与できるのではないかと考える。ライブラリのような情報基盤が、より安全な居住環境の実現につながるのではないか。また、一人一人の土地取引にあたって、より多くの情報に基づく判断が行われ、不動産取引時のトラブル減少にも寄与するのではないか」と話す。

不動産情報ライブラリで得られる情報

現時点(記事公開時点)での不動産情報ライブラリでは、ゼンリン地図(国土地理院地図への切り替えが可能)をベースとして、「価格情報」、「地形情報」、「防災情報」、「周辺施設情報」、「都市計画情報」及び「人口情報等」のカテゴリーで次の情報を閲覧または取得することができる。

⑴価格情報
地価公示、地価調査、取引価格情報、成約価格情報

⑵地形情報
陰影起伏図、土地条件図、大規模盛土造成地マップ

⑶防災情報
想定最大規模洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定区域、高潮浸水想定区域、避難施設、災害危険区域、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止地区

⑷周辺施設情報
保育所・幼稚園等、小学校区、中学校区、学校、役所、集会施設、図書館、医療機関、福祉施設、自然公園地域

⑸都市計画情報
都市計画区域、区域区分、用途地域、高度利用地区、防火地域、準防火地域、地区計画、立地適正化計画(居住誘導区域、都市機能誘導区域)

⑹人口情報等
国勢調査(500mメッシュ平成27年人口)、将来推計人口500mメッシュ、駅別乗降客数

ライブラリが特徴的なのは、取引価格の妥当性や地域の将来性(人口)、災害リスクに加えて、学区や医療施設といった情報も地図上で確認できる点にある。特に学区については、各自治体の教育委員会のページから住所を探す手間を省略することができるため子育て世代やこれから子育てを予定している方にとっては嬉しいサービスではないかと思う。

ライブラリに学区情報が組み込まれている理由としては、以前、国土交通省が行った調査にて、消費者は不動産取引の際に価格情報に加えて、周辺の公共施設の立地状況や学区に関する情報を重要視していることが分かったためだ。

土地の災害リスクや周辺での取引価格、用途地域などをまとめて調べることができる「不動産情報ライブラリ」が運用を開始した。そこで運用している国土交通省の担当者にライブラリの目的や活用方法などについてインタビューを行った。不動産情報ライブラリの使用例(小中学区を表示)

利用方法

ライブラリは、事前申請やアプリのダウンロードなど行う必要なく誰でも無料で利用できる。パソコン、スマートフォン及びタブレットのいずれの端末でも操作がしやすい。国土交通省のトップページからクリックするか、検索画面にて「不動産情報ライブラリ」と検索することで当該トップページに至ることができる。

国土交通省政策統括官付情報活用推進課長補佐 菅沼氏国土交通省政策統括官付情報活用推進課長補佐 菅沼氏

すでに利用したことがある人なら分かると思うが、スマホ上でも扱いやすいのが特徴的だ。この点について、開発担当の菅沼課長補佐は、「スマホユーザーでも操作性をよくするため最大限に地図を表示といった工夫や動作の最適化を行っている」と話す。
実際に利用してみると分かりやすいのだが、画面表示がシンプルで地図ができる限り大きく表示されるようになっており、なおかつサクサクと動きストレスがない。

また、ライブラリでは、API連携も可能となった。APIとは、アプリケーション・プログラミング・インターフェイスの略称で、APIを利用してシステム間でデータを連携し利用可能な機能を拡張することができる。ライブラリでは、取引価格や地価公示、都市計画情報などが公開APIとして提供(申請が必要)されている。このため、今後、民間企業からより便利なアプリケーションがリリースされる可能性もある。

不動産情報ライブラリの今後の可能性

ライブラリについて、今後どのようなアップデートを考えているのか矢吹課長に伺った。

「まずは災害リスクデータのリフレッシュや拡張をしっかりやっていく。同時に、自治体が有する情報のオープンデータ化に向けてデジタル庁と連携して自治体の支援も行っていきたい」と話す。

現在、ライブラリで確認することができる災害リスク情報は、主要なハザードエリアが掲載されているが、近年被害が大きい内水ハザードや100年確率程度の洪水などの情報は確認できない。この点は、従来からある「重ねるハザードマップ」を閲覧する必要がある。その一方で「重ねるハザードマップ」では、不動産情報ライブラリでは確認可能な「災害危険区域」や「急傾斜地崩壊危険区域」、「地すべり防止地区」などの情報が掲載されていないといった課題もある。

不動産情報ライブラリの使用例(防災情報)不動産情報ライブラリの使用例(防災情報)

今後、こうした災害リスク情報をはじめとしたデータの拡充や既存データの更新を図っていきたい考えだ。また、ライブラリに掲載される情報の基礎データを作成する自治体の情報フォーマットの整理に向け、デジタル庁と連携して自治体支援も行っていきたいとも話してくれた。

自治体が作成する基礎情報のフォーマットが整理されれば、ライブラリがより充実していき、その結果、不動産取引において一般ユーザーの方がよりよい判断を行うことができるようになるはずだ。

最後に、矢吹課長は、ライブラリの今後について「ライブラリは、土地取引のシチュエーションだけでなく、自らが住む地域の状況よく知る・考える材料としても活用できると考える。今後、時間があれば土地取引以外の使われ方なども確認していきたい。」とする考えを示した。

私個人としては、ゼンリン地図をベースとした全国の用途地域や人口メッシュなどから、各都市の市街地の広がりや店舗等の立地状況、災害リスクなどが一目で判断できることから、都市分析や地図上での街歩きとしても活用できるのではと思う。

次回以降、ライブラリの活用方法や見られる情報について詳細な解説を行っていきたい。

参考リンク

・不動産情報ライブラリ:https://www.reinfolib.mlit.go.jp
・【公式】国土交通省政策統括官付情報活用推進課:@GIS_MLIT

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