全国の地価公示の動向
2024年の地価公示は、全国平均で全用途および住宅地、商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大する結果となっている。
景気が緩やかに回復しているなか、全国の地価は地域や用途により差がありつつも、三大都市圏および地方圏ともに上昇が継続している。名古屋を含む三大都市圏では上昇率が拡大し、地方圏でも上昇率が拡大傾向となるなど、上昇基調を強めている状況だ。
近年の地価上昇は、三大都市圏よりも地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)のほうが目覚ましい上昇を遂げている。東京圏や名古屋圏では、全用途および住宅地、商業地は3年連続の上昇であるのに対し、地方四市では11年連続で上昇している。特に地方四市では商業地の上昇が大きく、上昇率も拡大している。
全国的に見られる傾向としては、住宅地では中心部における地価上昇に伴い、周辺部においても上昇の範囲が拡大しているという点だ。住宅の需要はドーナツ状に外周部に広がっており、割安感のある周辺部ほど高い上昇率を示す地点が多くなっている。
また、住宅地のなかでも北海道富良野市や長野県白馬村などの外国人にも人気の高いリゾート地では、別荘やコンドミニアムなどの需要が増大し、高い上昇率となった地点が生じている。商業地に関しては、インバウンドを含めた観光客が回復した観光地や、人流回復が進む繁華街において地価の大幅な回復が生じている。都市中心部の交通利便性等に優れた地域では、マンション需要との競合によって高い上昇率を示した地点も多い。
工業地に関しては、インターネット通販の拡大を背景に、大型物流施設用地等に対する需要が旺盛となっており、高速道路などへのアクセスが良好な工業地では高い上昇率が継続している。なお、2024年の地価公示では、北海道千歳市と熊本県菊陽町に大手半導体メーカーの工場が進出してことで、広域的に高い上昇率で地価が上がったことが大きな話題となっている。
名古屋の地価公示の特徴的な動き
経済圏域としての名古屋圏で見ると、住宅地の平均変動率は+2.8%と3年連続で上昇しており、上昇率も拡大した。名古屋圏の商業地の平均変動率は+4.3%であり、商業地も3年連続で上昇して上昇率も拡大している。名古屋圏の工業地の平均変動率は+4.1%であり、工業地も3年連続で上昇して上昇率も拡大している状況だ。
名古屋市内では、人流回復によって地価が大きく上昇している地点が生じている。飲食店舗ビルなどが立ち並ぶ名古屋を代表する歓楽街(錦三)の中にある商業地の標準地「名古屋中5-28」(愛知県名古屋市中区錦三丁目地区)の上昇率は+13.8%だ。昨年の「名古屋中5-28」の上昇率は+8.8%であったため、人流回復が地価上昇に与えた影響は大きい。
住宅地の状況と値動きの背景
名古屋市の住宅地は、市中心部のマンション適地や駅徒歩圏の一戸建て住宅地では住宅需要が底堅いため、地価上昇が継続している状況だ。
名古屋市全体で見ると住宅地の平均上昇率は+4.5%であり、昨年の+3.7%よりも上昇している。全 16 区のうち、11 区で上昇率が拡大しており、南区では上昇率が横ばい、4 区で上昇率が縮小となっている。
区ごとに見ると、市中心部の利便性良好なエリアに加え、市内の外縁部でも高い上昇率が生じており、中区では+9.9%、東区では+8.1%、熱田区では+9.1%の上昇が生じている。
名古屋市の住宅地の標準地で、最も地価が高いのは伏見駅を最寄りとする「名古屋中-2」(愛知県名古屋市中区栄2-6-17)である。「名古屋中-2」は、名古屋市中心部のマンションやオフィス、ホテルが混在する交通利便性良好な地域の中にあり、多様な用途における需要によって地価が高く上昇している。2024年における「名古屋中-2」の上昇率は+11.8%であり、昨年の+8.3%よりも拡大する結果となった。
また、名古屋市の住宅地の標準地で最も上昇率が高いのは、上前津駅を最寄りとする「名古屋中-3」(愛知県名古屋市中区上前津2-12-9)である。「名古屋中-3」は、名古屋市中心部の交通利便性良好な事務所やマンションが混在する地域の中にあり、マンション適地としての需要が旺盛であることから、地価の高い上昇が継続している。2024年における「名古屋中-3」の上昇率は+16.2%となっており、昨年の+16.0%と同水準の高い上昇率が生じている。
その他として、愛知県内では西三河地域の知立市、刈谷市、安城市等において自動車関連企業の従事者などからの需要が底堅いことから、地価の上昇が継続している。また、知多北部地域の東海市や大府市では、名古屋市中心部への交通利便性が良好で、かつ、名古屋市と比較して割安感があることから需要が底堅く、地価上昇が続いている。
商業地の状況と値動きの背景
名古屋市の商業地では、名駅周辺や栄・伏見周辺でオフィス・店舗等の需要は堅調であるとともに、大規模開発計画等による発展期待感も手伝い、地価上昇が生じている。
市内の外縁部の交通利便性が良好な地区では、店舗や事務所だけでなく、共同住宅の需要も競合しており、地価上昇が継続している。 名古屋市全体で見ると商業地の平均上昇率は+6.0%であり、昨年の+5.0%よりも上昇している。
全 16 区のうち、10 区で上昇率が拡大しており、昭和区では上昇率が横ばい、5区で上昇率が縮小となっている。区ごとに見ると、東区で+8.8%、中村区で+6.8%、中区で+6.9%の上昇が生じている。
名古屋市の商業地で最も地価が高い標準地は、名古屋駅に近接する「名古屋中村5-2」(愛知県名古屋市中村区名駅地区)である。名駅周辺のオフィス空室率はやや高止まりしているものの、店舗需要は堅調に推移しており、再開発事業等の進展による発展期待感もあることから地価上昇が継続している。 2024年における「名古屋中村5-2」の上昇率は+2.6%であり、昨年の+2.7%と同水準の上昇率となっている。
また、名古屋市の商業地で、最も上昇率が高い標準地は久屋大通駅を最寄りとする「名古屋東5-11」(愛知県名古屋市東区)である。「名古屋東5-11」は栄地区に隣接する幹線道路沿いのオフィスエリア内にあり、良好な利便性や栄地区における再開発事業等の進展による発展期待感から、オフィス需要と投資需要とも堅調に推移しており、地価の高い上昇が続いている。2024年における「名古屋東5-11」の上昇率は+15.0%であり、昨年の+11.4%よりも上昇率が拡大した。
その他として、愛知県内では西三河地域や知多北地域等で、駅周辺の利便性良好なエリアにおける店舗や事務所、共同住宅の需要が堅調であり、地価上昇が継続している。
工業地の状況と値動きの背景
名古屋市全体で見ると工業地の平均上昇率は+6.2%であり、昨年の+5.8%よりも上昇している。
名古屋市内でも大型倉庫の建築に適した物流適地が高い上昇率を示す結果となっており、インターネット通販の需要が工業地の価格を押し上げている。名古屋市の工業地の標準地で最も上昇率が高いのは、「名古屋港9-5」(愛知県名古屋市港区)であり、2024年の上昇率は+13.8%となっている。
今後の動向
近年の地価公示では再開発が進展しているエリアの地価が高く上昇する傾向が見られたが、2024年の地価公示では人流回復が生じているエリアやマンション需要が強いエリアにおいて地価が高く上昇する現象が生じ始めている。
名古屋市は繁華街の人流回復とマンション需要に関しては堅調であることから、このまま行けば名古屋市の地価は今後も上昇することが見込まれる。特にマンション需要の高まりは、名古屋市に限らず全国的な傾向となっており、大きな流れとなっている。
日銀は2024年3月19日の日銀の金融政策決定会合にてマイナス金利政策の解除を宣言したものの、総じて低金利環境は続く見込みであり、マンション需要は大きくは衰えないと思量される。そのため、オフィスとマンションが混在する交通利便性の高い名古屋市内の商業地では、引き続き高い上昇率が継続していくことだろう。
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