住宅購入の判断基準は「理性」と「感情」

人が物事を決めるときに使う「物差し」は様々だが、大きく分ける「理性」と「感情」に分類される。住まい選びにおいてもそれは同様である人が物事を決めるときに使う「物差し」は様々だが、大きく分ける「理性」と「感情」に分類される。住まい選びにおいてもそれは同様である

人は物事を決めるとき、自分の持つ「物差し」を使う。どのような物差しをもっているかは人それぞれだが、大きくわけると「理性」「感情」の2つに分類できる。これは住宅決定の際にも当てはまる。本当はここに「本能」を交えた3つの分類となるわけだが、住宅を購入する判断基準として「身の危険を感じるから買う」「衛生的に住めない環境だから買う」といった「本能でジャッジ」することは、全取引件数における割合はあまりないと思われる。都市部の多くでは「理性」か「感情」か、どちらかの軸で物件を決めていると考えて差し支えなかろう。

以下、住宅購入時の住まい選びついて理性と感情という観点から見ていきたい。

理性=損得で判断するということ

たとえあまり使用しなかったとしても、「和室がない間取りは次に売却しにくい」との理由で和室のある間取りを選ぶ人が多かった。損得を重視するために何かを我慢してしまうのはよくあることたとえあまり使用しなかったとしても、「和室がない間取りは次に売却しにくい」との理由で和室のある間取りを選ぶ人が多かった。損得を重視するために何かを我慢してしまうのはよくあること

理性で選ぶとはどのような事か? シンプルに表現すれば「理性で選ぶ」=「損か得かで決める」だ。住まい選びでは、「資産としての価値観を最優先で選ぶ」といってもいいであろう。例えば以下のような事を考えている人は「理性」で住まい選びをしている事になる。

・賃貸に出した時に高い利回りが確保できる
・周辺相場と比較して価格が安い
・賃貸/売却時に貸しやすい/売りやすい間取りを選ぶ

理性=損得で住まい選びを行うときの問題点は、損得を重視するために何かを我慢してしまう場合があることだ。新築マンションで和室の無い間取り。最近では珍しくないが、15〜20年ほど前であれば3LDKの間取りのほとんどに和室があった。当時から「和室はあまり使わない」という人も多かったが「和室がない間取りは次に売却しにくい(=和室がある方が一般的である)」との理由で和室のある間取りを選ぶ人が多かった。「リセールバリューのために何かを犠牲にする」一例だ。ちなみに当時は、新車購入時にも同じ理由で白やシルバーを選ぶ人が多かった時代である。

また何かを我慢して「お得物件」「割安物件」を買ったからといって、最終的に必ず得をするかどうかがわからないこと。これも問題点の一つ。不動産を保有し転売や賃貸等の収益を得ることを生業にしている人は、常に購入/売却のタイミングを見計らい「出口戦略」を考えている。しかし、家族で住む部屋を「今が売却のタイミングとしてはベストと思うから」「この時期に賃貸に出しておこう」と適宜転居を繰り返すようなことができるか、というとなかなか難しいのではないか。間取りや立地を我慢し経済的利益を優先させて住まい選びをしたのに結局自宅売却時に損をしてしまった、ではあまりに悲しい。なかには「我慢して見送った物件」を買ったほうが損が少なかった/得していた、なんて結末もあり得る。

理性で選ぶことの良い点は、自宅を通じて経済的利益を享受する可能性が高まる、ということだ。確実ではないが、得する確率は十分に高まる。賃貸利回りの調査や周辺の売買相場との比較をすれば、他の売物件と比べて相対的に有利な「お得物件」「割安物件」を見つけることは、さほど難しくない。実際に、不動産で「せどり」のようなことを行い利益を得ている人もいる。問題点としてあげたようにベストのタイミングでの売買は困難だが「築10年になる前に」「新駅ができてから」等の長期スパンでの出口戦略を考えることはできる。

感情=好き嫌いで判断するということ

では感情で選ぶ場合はどうか? 「感情で選ぶ」=「好きか嫌いかで決める」だ。ここでは、「楽しい、心地よいを優先して選ぶ」と定義する。「夢のマイホーム」「憧れの一戸建て」といった言葉があることからもわかるように、持ち家を手に入れること自体に喜びを感じる人も多く、そのような人は、大体において住まいを感情で選んでいる。例えば以下のようなポイントを重視している。

・デザイン性の高い外観や間取りの物件に住んでみたい
・特定の行政区/建物に住むことにステイタスを感じる
・生まれ育った実家の近所や学生時代を過ごした思い出の場所に住みたい

新築マンションのモデルルームをみて「こんな素敵なお部屋に住んでみたい!」といって物件購入を決めるのも感情で決めている例だ。複数エリアを比較検討せずに「実家に近いから」と物件を決めてしまうのも感情的決断として例示しているがこちらの場合は子供の面倒をみてもらう、もしくは、両親の介護の必要性など、好き嫌いというよりも「理性で選ぶ」場合もあることを付け加えておく。

住まいを選ぶ際に感情=好き嫌いで決めると、不都合なことも起きる場合がある。

よくあるのが住まい始めてから不便を感じることだ。例えば、3LDKは十分に取れるような広さの住戸を間仕切りの無い1ルームのようにした間取り。部屋が分かれている住戸に比べて開放感がある。広々としていて見栄えがすごくいい。ソファやダイニングテーブルなどの大物家具も置きやすい。しかしいざ住まい出すと「プライベートな空間が持てない」「暖房/冷房がきかない、もしくは費用がかかる」「料理をすると部屋中に匂いがまわる」といったことが気にかかることも容易に想定される。

ただこれについては伊達の薄着のようなもので「そんな苦労もまんざらではない」という人もいる。「理性で選ぶ」人にとっても信じ難いかもしれない。田舎住まいや町家に住む人などはこれにあたるであろう。

理性と感情はバランス良く、が理想

ファミリーやカップルで住宅を選ぶとき、一般的には女性が主導権を持つ場合が多い。また、男女の役割についてはステレオタイプ的には「女性が感情的、男性が理性的」といわれるかもしれないが、 男性が(「書斎が欲しい」が夢かどうかはさておき)夢のようなことを語り、女性の方がより現実的なことをいう場合も多い。

バランスとしては主導権を持つ人が感情的な判断をするときはもう一人は理性的に、理性的な判断をするときは感情的に、と互いが別の視点から確認し合うような形が望ましい。二人ともに「理性的」な場合は問題ないが、二人ともに「感情的」な場合は大事なことを見落としているようなことも考えられる。

また、一人の判断基準に「理性的」「感情的」双方の視点が入り交じっている事も考えられる。むしろその方が多いであろう。その場合は「住まいを選ぶポイント」を洗い出し、各々の条件についてそれが「理性的」なジャッジすなわち資産価値(損得)に重きを置いた条件なのか、「感情的」すなわち「好き嫌い」に重きを置いた条件なのかを確認し、両者のバランスを見るのも手だ。「好き嫌い」で判断しても結果それが「損」につながる事も「得」につながる事もある、いいかえると「好き嫌い」でのジャッジが「得になる」(例:駅に近い物件が好み)場合と、「損になる」(例:少し駅から遠い物件がいい)場合がある。一覧にする事によって頭の整理にもなり、複数物件を比べる選択する際の踏ん切りもつきやすくなる。

立地は理性、建物は感情で選べ

不動産の値打ちは「立地」と「建物」に大きく左右されるが、内装や設備、間取りは後から変更することもできる。変更のきかない立地こそ、「理性」で慎重に選びたい不動産の値打ちは「立地」と「建物」に大きく左右されるが、内装や設備、間取りは後から変更することもできる。変更のきかない立地こそ、「理性」で慎重に選びたい

最後にアドバイスを一つ。理性と感情のどちらで選ぶか迷った場合、「立地は理性」「建物(仕様/設備)は感情」と割り切るのも一つの手である。

不動産の値打ち(=価格)は大きく分けて立地と建物の2つに分けて考える事ができる。その内、立地については後から変える事はできない。後悔しても、自分で立地をリカバリーすることはできない。一方、建物については、内装/設備/間取りなどについては後からいくらでも変更できる。感情で決めて好みの分かれるビミョーな間取りや仕様/設備にしてしまったとしても、いくばくかのコストをかけさえすれば市場性の高い(=一般受けのする)ものに変更することが可能だ。

立地、外観、共用部などが人気の高いマンションを購入し、住戸内部はリノベーションを施し全くの自分好みにリノベーション。このような選択をする人が増えているが、まさに「理性と感情」のバランスをうまくとっている手法といえるであろう。

2015年 05月26日 11時06分