福島県郡山市では複数の市街地再開発プロジェクトが進行中
現在、東北地方において人口が2番目(※1)に多い郡山市では、複数の市街地再開発プロジェクトが進行中だ。
(※1) 1位 宮城県仙台市:1,097,620人、2位 福島県郡山市:321,329人、3位 福島県いわき市:320,600人
*各市の令和6年1月1日時点の推計人口(国勢調査を基準とした住民基本台帳の異動を加減した数値)
みなさんは福島県郡山市というとどういったイメージをお持ちだろうか。東北新幹線を利用した経験があれば、車窓からの望むビル群の光景に都会的な印象を持ったのではないだろうか。
郡山市の人口は県庁所在地である福島市の人口を超える30万人以上を有している。福島県内で最も人口が多い市である。
江戸時代は奥州街道の宿場町の一つで栄えていた。人口が急増しはじめたのは明治に入ってからだ。
明治時代の開拓事業を機に急速に都市化が進み、東北地方では初めて中核市に移行するまでに発展した。こうした急成長は全国的にみても珍しい地方都市の一つ。また、現在は約50万人を有する郡山都市圏(※2)とともに成長を続けている。今回は、都市としての成長を続ける福島県郡山市の市街地再生の取り組み(市街地再開発プロジェクト)を追った。
(※2) 郡山市への通勤率等の割合が10%を超える市町村の人口の合計(データは令和2年国勢調査)
はじめに市街地再開発について簡単に解説しておきたい。市街地再開発は市街地再生手法の一つで都市計画法に基づく「都市計画」の一部である。
分かりやすく市街地再開発を説明するとすれば、中心市街地や旧市街地などの比較的人口密度が高い地域で実施される”都市機能や空間のリニューアル”のこと。
意外に思う方もいるかもしれないが、中心市街地は成熟しているようにみえて様々な課題を抱えている。特に旧市街地では、旧城下や宿場の名残で土地が細分化されていたり、狭隘(きょうあい)な道路が入り乱れている。これに加えて、老朽化した木造建築物が密集するなど、都市空間として防災上・経済上、健全とはいえないケースが多い。
このため、そうした課題の解決を目的に、土地の形状を整え新たに道路や公園、広場などの公共施設を整えるとともに公共空間をパブリックなスペースとして市民に提供する。これらに加えて、中心地である地価の高さを有効に活用するために土地の高度利用(敷地面積に対する建物の床面積の割合が高いこと)が図られる。
なお、これらの整備は、民間単体、行政単体、官民協働で行う3パータンに分けられているが、これ以上の説明はニッチ過ぎる話となるため次回以降、機会があれば解説したい。
話を戻し、こうした面でみると、市街地再開発には、都市の顔となるエリアの更新的役割がある一方で、市街地の防災対策としての役割も担っている。また、不動産投資の視座に立つと都市の新陳代謝を高める役割も担っており新たな投資判断の材料にもなる。
とはいえ、一般的な目線でいえば、高層マンション・商業ビルなどの建設がイメージされ、その建物の規模や数が都市のステータスを測る指標の一つになっているのではないかと思う。
郡山駅前一丁目第二地区第一種市街地再開発事業
郡山市内では、郡山駅前、大町及び細沼町の3ヶ所でプロジェクトが進行している。
いずれのエリアも、コンパクトシティの形成を推進する計画(都市再生特別措置法上の「立地適正化計画」)において、商業や医療、福祉などの都市機能を誘導する区域で展開されている。
郡山駅に最も近い位置にある郡山駅前地区。当該地はもともと病院があった敷地で、敷地自体は約0.3haと比較的小規模であるものの、医療機能と居住機能を有する地上21階、高さ約71mの複合型分譲マンションの建設が進められている。
容積率は上限の容積率600%に対して計画が約525%とされているため高度利用が図られることに注目したい。郡山駅前の再開発施設の一つである高さ約133mを誇る「ビッグアイ」にはとどかないものの、駅前での存在感は相当なものになる。
また、ポケットパーク(広場)や災害時避難スペースの設置などが予定されている。事業協力者として参画している野村不動産株式会社によると、住宅の分譲戸数として約150戸を予定しているとしている。完成は2025年度を予定している。
・敷地面積:約2,942平米
・延べ面積:20,797平米
・容積率 :約525%
・建蔽率 :約57%
・主要用途:共同住宅、医療施設(健診・透析センター)
・階 数 :地上21階
・構 造 :鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
・高 さ :70.7m
・施行年度:~2025年(予定)
・住宅分譲戸数:約150戸(予定)
※出典:郡山市、野村不動産株式会社
郡山市大町二丁目地区地域生活拠点型再開発事業
大町地区では、近傍地に移転した地域医療を担う病院の跡地(旧星総合病院)を活用した再開発プロジェクトが進行している。
施行者は郡山市を含む周辺市町村の医療を支えている地域の医療法人である「公益財団法人星総合病院」だ。病院経営を手掛ける法人が医療健康をテーマとした地域貢献を含む再開発は地方では珍しく、そうしたまちづくりが実現については多くの市民の期待を寄せているのではないかと思う。
プロジェクトとしては、約0.5haの敷地に地産地消マーケットやレストラン、県の子育て支援施設、さらには高齢者向けの共同住宅(賃貸46戸)を整備することとしており、地上7階建てで延べ面積は約1.5万平米を予定している。また、付帯施設として、広場やテラス、緑地などを整備して地域住民の憩いの場となるような整備を予定している。完成は2024年度を予定している。
私個人としては、イメージパースをみるとファサード(建築の正面)が美しく、完成したらきっとエリアの不動産価値を上げてくれるのではないかと思う。
・敷地面積:約5,233平米
・延べ面積:15,111平米
・容積率 :約288%
・建蔽率 :約62%
・主要用途:共同住宅、医療施設、子育て支援施設、マーケットほか
・階 数 :地上7階
・構 造 :鉄筋コンクリート造
・施行年度:~2024年(予定)
※出典:郡山市、公益財団法人星総合病院
郡山市細沼町地区地域生活拠点型再開発事業
最後に細沼町地区。こちらは郡山駅から少し離れた場所にある。
老朽化した医療施設のリニューアルとまちなか居住の促進を図ることを目的として、医療と共同住宅(50戸)を整備している。
敷地周囲には空地や緑地、ベンチが整備され、隣接する「21世紀記念公園」との公園的連続性を有することが特徴的だ。こちらの再開発プロジェクトは、2023年度の完成を予定しているとしており、先月、現地を取材した限りでは、分譲マンション(「レーベン麓山の杜THE ONE」)や医療施設ともに整備が完成していた。
なお、分譲自体は完了しているようだが、物件を調べると賃貸物件としてLIFULL HOME'Sの情報に掲載(記事執筆時点)されていたので興味がある方はぜひ。
・敷地面積:約3,315平米
・延べ面積:7,588平米
・容積率 :約199%
・建蔽率 :約54%
・主要用途:共同住宅、医療施設
・階 数 :地上11階
・構 造 :鉄筋コンクリート造
・施行年度:~2023年(予定)
・住宅分譲戸数:50戸
※出典:郡山市等
注目したい市街地再開発プロジェクト
今回の市街地再開発事業で注目したいのは、大町地区の市街地再開発のスケジュールにあわせて面的な整備(土地の再編)も行われることにある。
具体的には、郡山市では市街地再開発にあわせて郡山駅前で区画整理事業を実施し、新たな道路や公園などの公共施設の整備を進めている。大町地区で実施されている駅前の区画整理は大町地区の市街地再開発プロジェクトとの連携も期待できる。
郡山市では、区画整理事業による効果として郡山駅周辺の歩行者通行量を2018(平成30)年の40,337人/日から45,000人/日の目標に設置している。
*出典:都市再生整備計画
区画整理事業についても大町地区の市街地再開発同様に2024年度の完了を目指していることから、2025年度以降は当該区画整理事業地等での不動産投資が活性化し郡山駅前の回遊性に良い変化が起きそうな予感がする。
また、こうした状況に加えて、郡山駅前では2025度には駅前地区の市街地再開発が完成し、150戸の分譲住戸が供給されるため、まちなかの居住人口の増加も期待される。こうした動きにあわせて民間投資(賃貸住宅)への投資が活発化していくことも考えられる。
市街地再開発で東北第2位の人口を有する郡山市はどう変わるのか
東北地方といえば、仙台市の経済力が他の東北地方内の市に比べて著しく高いため人口が2位以下の市が見劣りしてしまうのが実態だが、郡山市の中心市街地の人口が増加している点に注目したい。
2015年から2020年の5年間の郡山市の中心部(人口集中地区*)の人口は約5千人の微増となっている。人口集中地区の面積が微増しているため、市街地の人口密度が低下している課題が残るものの、東北地方の主要な市の多くが市街地の人口減少が進んでいる状況下においては特筆したい部分だ。
*人口集中地区:人口密度が4000人/km²以上の基本単位区が互いに隣接して人口が5,000人以上となる地区。なお、都市計画上の市街化を促進する区域である「市街化区域」の設定基準として人口集中地区が一つの指標となっている。
今後、市街地再開発によってエリア価値が高まることでさらなる民間投資を誘発する可能性は高く、これからも郡山駅前のリニューアルが進む可能性が十分に残っている。
とはいえ、これ以上の人口集中地区(市街地)拡大を防ぐことは前提として、郊外の大規模集客施設の立地抑制、まちなかへの人口・商業・オフィスの回帰に向けた支援策などに加えて、これらを都市圏全体で俯瞰する必要がある。特に同一都市圏でも都市計画制限が緩い周辺市町村と調整するなどの難しい舵取りが求められる。
私個人としては、今後も、東北地方の人口第2位の市として継続した発展を続けると予想される「郡山市」の成長に注目していきたいと考えている。
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