全国的に増え続ける空き家・空き地

居住目的のない空き家数の推移 *出典:平成30年住宅・土地統計調査(総務省統計局)、国土交通省資料居住目的のない空き家数の推移 *出典:平成30年住宅・土地統計調査(総務省統計局)、国土交通省資料

ここ数年、空き家の発生を社会問題として特集した報道を目にする機会が増えた。国民の多くが空き家を現代社会の課題の一つとして認識している。

現在、日本は人口減少並びに世帯数が急速に減少しているため、その結果、空き家の数は増え続けている。平成30年住宅・土地統計調査(総務省統計局)によると、「使用目的のない空き家(=居住目的のない空き家)」数は、2018年には約349万戸となっている。国では、2030年には約470万戸に達すると推計している。

南東北の市町村における高齢化率と空き家率の関係 *出典:平成30年住宅・土地統計調査(総務省統計局)、住民基本台帳に基づく2018年の人口(総務省)南東北の市町村における高齢化率と空き家率の関係 *出典:平成30年住宅・土地統計調査(総務省統計局)、住民基本台帳に基づく2018年の人口(総務省)

近年の研究により「空き家率」は、人口減少率や高齢化率と相関することが明らかになっている。人口減少率や高齢化率が高い傾向にある地方都市において空き家が多い。

こうした空き家のうち、所有者不明等などの理由により管理されずに放置される市街地の空き家は、健全な市街地環境に対して大きな悪影響を及ぼす恐れがある。このため、多くの自治体では解決すべきまちづくりの課題の一つと認識、多くの労力を割いている施策の分野となっている。また、国でも2014(平成26)年に空家等対策特別措置法を制定し各自治体への支援等を実施している。

2023(令和5)年12月13日に改正空家等特別措置法が施行

改正法の概要(抜粋) *出典:「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について(国土交通省住宅局)改正法の概要(抜粋) *出典:「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について(国土交通省住宅局)

空き家が増え続ける中、国のおいてさらなる対策強化のため今年の通常国会で改正法を制定し、2023(令和5)年12月13日に施行された。改正法は、「活用拡大」、「管理の確保」、「特定空家の除却等」の3本柱とされ、空き家・空き地対策が強化されている。

私が注目したのは空き家所有者に影響を及ぼす地方税法の改正だ。

倒壊などの恐れがある危険性の高い特定空家の発生を防止するために新たに「管理不全空家等」が追加され自治体による指導・勧告措置が規定された。

「管理不全空家等」とは、そのまま放置していると特定空家化してしまう空き家のことを指し、適切に管理していないと行政の指導・勧告の対象となる。

仮に、行政指導に従わずに勧告を受けた空き家は、固定資産税の特例措置である住宅用地特例が解除される。これにより課税標準額に対して1/6(敷地面積200平米超の部分は1/3)を乗ずることができる特例制度が使えないため、固定資産税額は6倍等となる。

なお、令和5年改正空き家法は、この他にも建築基準法や都市計画法の特例制度なども盛り込まれており、空き家所有者や不動産事業者に関わる改正が多いため、空き家所有者の方は今後の各自治体の動向を注視してほしい。

福島県南相馬市における空き家・空き地の実態

南相馬市小高区の状況南相馬市小高区の状況

空き家の実態について話を戻したい。空き家が社会問題とされている状況は一部の人口増の地域を除きほぼ全国の共通の課題となっている。

とはいえ、地域差がある。特に、2011(平成23)年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故の影響を受けた福島県の一部地域はより深刻だ。長期間に及ぶ居住制限が設定されたことやインフラ等の復旧作業が遅れていたり、また、避難指示が解除されても避難者は生活の拠点が市外に移っているなどにより住民の帰還が実現せず空き家率が高い。

今回、取材を行った南相馬市は、福島県浜通り北部の中心都市で、人口約5万人が居住している。震災前は約7万人が暮らしていた。この南相馬市の南部に位置する小高区の一部が震災後に警戒区域に、その後、2016(平成28)年まで避難指示解除準備区域に指定されたこともあり、特に空き家率が高い傾向にある。

こちらのデータは最新の平成30年住宅・土地統計調査における空き家率のデータである。

南相馬市の空き家率は、26.2%となっており、福島県平均の14.3%、福島県内の市に比べて突出して高いことが分かる。

この空き家の内訳として、最も高いのが「その他の住宅」である。この「その他の住宅」は、別荘や賃貸用、売却用のいずれにも該当しない使用目的のない空き家とされ、社会問題視される空き家だ。
南相馬市における「その他の住宅」の数は県庁所在地の福島市と同程度の5,750戸と推計されている。「空き家率(その他の住宅)」でみても18.9%となっており、他の市に比べて非常に高い。

南相馬市小高区の状況福島県内市の空き家率及びその他の住宅数 *出典:平成30年住宅・土地統計調査(総務省統計局)

南相馬市小高区(原発被災地)の実態

南相馬市内における空き家・空き地バンクの登録件数(累計,2023(令和5)年12月8日時点) *データ提供:南相馬空き家・空き地サポートセンター ミライエ南相馬市内における空き家・空き地バンクの登録件数(累計,2023(令和5)年12月8日時点) *データ提供:南相馬空き家・空き地サポートセンター ミライエ

南相馬市において「南相馬空き家・空き地サポートセンター」を運営しているミライエによると、2023(令和5)年12月8日時点までの空き家・空き地の累計登録件数は448件に及ぶ。このうち、福島第一原子力発電所の事故の影響を大きく受けている小高区では中心地がある原町区よりも多い213件となっている。

また、ミライエに登録された小高区の空き家・空き地は、他の区と異なり、空き家よりも空き地の割合が大きい。おそらく、長期間の避難により避難先での生活が定着したことで、やむを得ず家屋解体を決断した方が多いためだと考えられる。

実際に、宿場町として発展した小高駅周辺を歩いてみると空き地が多い印象を受ける。市街地の更地といえばすぐに買い手が付きやすいと思われがちだが、原発事故の影響を受けて不動産市場が落ち込んでいるため買い手が少ないのが実態だ。

小高区の人口は、2016(平成28)年の避難指示解除準備区域の解除以降戻りはじめたが、近年は0.4万人前後で高止まりしており、震災前の約1.3万人には及んでいない。こうした状況などを踏まえて、国や地元自治体、地元企業では、農地復旧やスーパー、医療、子育て支援施設の充実を図るなど、再生に向けた取り組みを進めている段階にあるものの、復興過程の途中といっていい。

南相馬市内における空き家・空き地バンクの登録件数(累計,2023(令和5)年12月8日時点) *データ提供:南相馬空き家・空き地サポートセンター ミライエ南相馬市全体人口及び南相馬市小高区(原発被災地)の居住人口の推移 *出典:南相馬市

南相馬市における空き家対策の取り組み

ミライエの窓口ミライエの窓口

「南相馬空き家・空き地サポートセンター」ミライエの取り組みについて、担当者に話を伺った。

ミライエは、地元の「宅建協会」、「全日本不動産協会」、「建築士会」の3団体を中心として2023(令和5)年1月に設立した。南相馬市から業務委託を受ける形で、これまで市が運営を担ってきた空き家・空き地バンクの業務を引き継いでいる。

また、空き家・空き地バンクの運営の他にも空き家利活用や住宅購入に係る市の補助金の受付業務なども行っており、同じ建物内の移住相談窓口とも連携を図っている。

昨今、多くの自治体で空き家・空き地バンクが運営されているが、ミライエの特徴としては、空き家・空き地の相談に加えて、南相馬への移住相談、さらには空き家活用等に関する市の補助金の窓口も兼ねていることだ。これにより、ワンストップ型の窓口を構築し、利用者にとって利便性の高いサービスを実現していることにある。

さらに、ミライエでは、今年度市の業務委託を受け空き家の実態調査を実施しており、調査結果を踏まえ空き家所有者に対して「提案」を行うことを検討している。待ちの姿勢では、マッチングしているサービスのみで空き家・空き地の課題解決には至らないためだ。積極的に空き家・空き地対策に取り組んでいることが分かった。

南相馬市小高区の空き家を活用した地域住民との交流等 *写真提供:南相馬空き家・空き地サポートセンター ミライエ南相馬市小高区の空き家を活用した地域住民との交流等 *写真提供:南相馬空き家・空き地サポートセンター ミライエ

空き家対策で重要なことは何かを伺うと、「相談者が求めているものを用意すること」にあると話す。ミライエでは、今年1月に設立されたばかりにもかかわらず積極的な運営を行っており、その結果として、市が直接運営したときよりも空き家・空き地の登録件数の伸び率が高いとのこと。

次年度からは、空き家・空き地の管理サービスを展開することを検討しているという。
原発事故の影響もあり県外居住者が多い空き家所有者は、年に年度も南相馬へ足を運ぶことができないため、不法投棄の有無や住宅の換気、雑草の状況などを調査してほしいとする相談が多いことが理由である。管理業務を通じて所有者に安心してもらい、次のステップである空き家バンクの登録に結び付けたい考えだ。こうした取り組みに加えて、小高区の空き家を活用した地元住民・移住者参加型のイベントなども開催し空き家・空き地サポートセンターの認知度を広める活動を展開している。

「なぜ、ミライエでは短期間に積極的な空き家対策を推進できているのか」を伺うと、市から委託を受けた空き家実態調査の影響があるという。地域の地元不動産会社が1社あたり数十軒を調査し、実際に空き家の現状を目の当たりにしたことで自分事として捉える機会になったことが推進力につながっているそうだ。

余談だが、私の行政勤務の経験上、空き家等対策計画などをはじめ行政が作成する法定計画は、専門知識を有する人材が少ない小規模な自治体では、コンサルタントに外部委託することが多い。そのような中、南相馬では、実際に地域で事業を営まれている企業等が実際に調査している。こうした調査での体験は自分事として地域課題を捉えるキッカケになりつつ、かつ地域経済をまわすという点でメリットが大きいと感じた。

南相馬市のミライエについて

南相馬市のミライエについて

最後に、親切にご対応頂いたミライエのご担当者に南相馬市移住の魅力を伺った。

南相馬では原発被災地ということもあり良い意味で真っさらな状態であること。移住し地域の方々とともに復興にチャレンジできる点にあると話す。加えて、南相馬市は田舎過ぎず生活に必要な施設が揃っており、適度な都市規模であることなどもメリットの一つと話してくれた。

相馬小高神社(南相馬市小高区)相馬小高神社(南相馬市小高区)

最後に私から南相馬について話したい。

南相馬といえば、隣接する相馬市や浪江町などを含めて相馬氏が約700年間にわたり統治した地方の一つで歴史が長い。毎年初夏に開催される相馬野馬追は国の無形重要文化財に指定され多くの観光客で賑わう。さらに、江戸後期の天明・天保の飢饉からの復興時には、現代では誰もが道徳教育等で学ぶ「二宮尊徳(幼名:金次郎)」の報徳の教えを取り入れたことで知られ、現代でも”豊かに生きるための知恵”として地域に根付いている。国内で見ても歴史や文化を現代まで継承する数少ない都市だ。

気候的には東側は太平洋、西側は阿武隈高地により守られ、東北地方の中では最も温暖ないわき市に並ぶ。めったに積雪もない。また、食も豊かで相馬の沖合で水揚げされる海産物は“常磐もの“としても有名だ。仙台や福島、いわきといった主要都市へのアクセス性も良い。

私個人としては、首都圏からの移住先として相馬地方が注目される日も近いと考えている。さらに、今なら地域の方々と一緒に原発被災地の復興を成し遂げる物語を手にすることができる。新たなビジネスにチャレンジしたい方にとっては好条件が揃っている。10年後、この地域がどのように発展しているのか今から楽しみでもある。


▶ミライエ: https://www.minamisoma-akiya.org/
▶相談方法: 窓口、電話、サイト問合せフォーム
▶アクセス: 福島県南相馬市原町区旭町1丁目46-4(JR常磐線原ノ町駅徒歩5分)

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