東京都の空き家の現状

東京都では空き家が増加していくことが懸念されており、その対策として「東京における空き家施策実施方針」が発表された東京都では空き家が増加していくことが懸念されており、その対策として「東京における空き家施策実施方針」が発表された

2023年3月30日、東京都は都内全域で効果的な空き家対策が着実に展開されることを目的に「東京における空き家施策実施方針」(以下、指針)を公表している。指針は、東京都の空き家対策の考え方や具体的な取組みの方針を示す内容となっている。

2018年の「住宅・土地統計調査」によると、東京都の空き家数は約81万戸であり、数としては増加傾向にある。一方で、住宅に占める空き家の割合(空き家率)に関しては、1998年からほぼ横ばいとなっているのが東京都の特徴である。全国では空き家率は増加しているが、東京都の空き家率は30年間ほぼ1割程度にとどまっている。

東京都では人口は2030年にピークを迎えるが、世帯数は2040年を境に減少することが見込まれている。そのため、世帯数が減少したタイミングで東京都でも空き家が増加していくことが懸念されている。人口と世帯の構成に関しては、65歳以上の単身または夫婦のみの世帯は持ち家で約90万戸存在する。これらの世帯は、相続を契機に空き家になる恐れがあり、空き家予備軍と考えられている。

また、東京都の空き家は賃貸住宅の空き家の割合が高いことが特徴である。賃貸住宅の空き家が全体に占める割合は、全国では51.0%であるのに対し、東京都では71.5%にもなっている。その他として、売却用の空き家が全体に占める割合も、全国では3.5%であるのに対し、東京都では5.1%にもなっており、流通していない空き家の割合が高い点も特徴である。

東京都では空き家が増加していくことが懸念されており、その対策として「東京における空き家施策実施方針」が発表された東京における空き家施策実施方針より「住宅ストック数と世帯数、空き家率の推移(東京都)」

3つの課題

東京都の空き家の課題は以下の3点が挙げられる。

1.既存住宅の流通の活性化
2.長期不在等の空き家の解消
3.壊れた空き家の発生の防止


1つ目の課題は、「既存住宅の流通の活性化」である。東京都は売却用の空き家の割合が比較的高いことから、中古住宅の流通を促進させていくことが必要となる。

2つ目の課題は、「長期不在等の空き家の解消」である。東京都には、65歳以上の単身または夫婦のみの世帯の空き家予備軍が約90万戸もあり、これらが相続をきっかけに長期不在等の空き家となる可能性がある。長期不在等の空き家を生まないためには、現時点から所有者に対し売却や利活用等の動機づけなどを行っていくことが必要となってくる。

3つ目の課題は、「壊れた空き家(腐朽・破損のある空き家のこと)の発生の防止」である。壊れた空き家は空き家特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)により特定空き家(危険な空き家)に指定される可能性がある。東京都では特定空き家に指定されて除却や修繕がなされた空き家は累計で225件となっているが、特定空き家以外で除却や修繕がなされていない管理不全の空き家は7,523件にもなる。

特定空き家よりも管理不全の空き家のほうが圧倒的に多く、壊れた空き家を減らしていくには管理不全の空き家に対して自治体が指導や助言をできる仕組みが必要となってくる。

これまでの経緯

東京都では、2012年に「東京都民間住宅活用モデル事業」を立ち上げて以降、さまざまな空き家対策の取り組みを行ってきた。国の法律である空き家特別措置法は2015年に全面施行されているため、東京都は国の動きに先立って空き家問題に取り組んできたパイオニアともいえる。

直近では2020年に「民間空き家対策東京モデル支援事業」を開始し、補助金制度を通じて空き家を子育て向けの住宅へ改修するなどの取組みを行うことで、空き家解消の一定の成果を上げている。2021年には「東京既存住宅ガイドブック」を発行し、中古住宅の売買に関する積極的な情報発信も行っている。

東京都は2012年に「東京都民間住宅活用モデル事業」を立ち上げて以降、さまざまな施策を実施している東京都は2012年に「東京都民間住宅活用モデル事業」を立ち上げて以降、さまざまな施策を実施している

3つの施策

指針では3つの課題に対し、3つの施策を行うことを示している。

1.既存住宅市場での流通促進
2.地域資源としての空き家の利活用
3.利活用見込みがない空き家の除却等


1つ目の「既存住宅市場での流通促進」では、住宅ストックの質の向上および住宅にかかる取引の安全・安心の確保を図る取り組みが行われる。例えば、固定資産税の納税通知書等を活用し、空き家の売却等にかかる所有者への情報提供など、空き家所有者等に向けた効果的な啓発に取り組む施策が示されている。

2つ目の「地域資源としての空き家の利活用」では、空き家を地域資源としての利活用を促すとともに、空き家所有者や利活用希望者からの相談に対応できる体制が整備される。例えば、「民間空き家対策東京モデル支援事業」の成果を踏まえ、活用事例を情報発信していくことで新たな民間事業者が空き家の利活用に取り組む機運を醸成していく施策が示されている。

3つ目の「利活用見込みがない空き家の除却等」では、利活用が困難な空き家の除却を促進する取組みが行われる。例えば、台風などの強風時における倒壊や、飛来物の要因にもなる空き家、土砂災害特別警戒区域などのレッドゾーンにある利活用が困難な空き家等の除却費補助を拡充することが示されている。

また、マンションの空き家については除却が困難であることから、相続後に空き住戸として放置されないように管理組合に対して相続発生時に法定相続人の届け出などが円滑になされるような仕組みづくりの啓発や助言を行う施策も掲げられている。

「東京における空き家施策実施方針」において、3つの視点に基づく具体的な施策展開を示している「東京における空き家施策実施方針」において、3つの視点に基づく具体的な施策展開を示している

国への働きかけ

指針では「国への働きかけ」という形で国政への提言も盛り込まれており、その内容もなかなか興味深い。指針の中で述べられている国への提言内容は以下の3つとなっている。

1.既存住宅市場での流通促進
2.地域資源としての空き家の利活用
3.利活用見込みがない空き家の除却等


1つ目は、「既存住宅市場での流通促進」を提言している。現在、国は中古住宅の流通を促進するために、「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を出して建物評価手法の整備を進めてきた。しかしながら、査定実務を行う宅地建物取引業者にとって活用しにくい内容となっていることから、簡便で統一的なものに変更してほしいという内容だ。

また、相続空き家の3,000万円特別控除についても、要件緩和を提言している。本特例は要件がかなり厳しく、例えば介護が必要なため子ども世帯と同居していた場合には適用要件を満たさない。被相続人の一人暮らし要件は流通促進の障害となっていることから、緩和して3,000万円特別控除が利用できる対象者を拡大することを提言している。相続空き家の3,000万円特別控除が、もっと使いやすくなれば売却もしやすくなるため、価値のある提言内容といえる。

2つ目は、「地域資源としての空き家の利活用」を提言している。現状、補助金や交付金を受けて地域活性化施設として空き家を利活用する場合、10年以上の活用が要件となっている。しかしながら、10年以上という活用期間が長く、空き家の利活用に対して所有者が躊躇してしまうケースが生じている。そこで、提言では補助金や交付金の交付要件の緩和を求めている。要件緩和によって利用しやすい制度になれば、空き家の利活用が進むものと期待される。

3つ目は、「利活用見込みがない空き家の除却等」を提言している。現状、空き家特別措置法により、特定空き家に指定された空き家は適切な管理を促す仕組みができている。ただし、特定空き家は倒壊等、著しく保安上危険となる恐れや著しく衛生上有害となる恐れ等でないと指定できないことから、指定のハードルが高く、少数の空き家しか改善できない状況にある。

一方で、適切な管理が行われていない空き家(特定空き家になる前段階の空き家)は、数が多いにもかかわらず何も措置ができないようになっている。そこで、提言では特定空き家になる前段階の空き家にも自治体が所有者に措置を行えるように改善を求めている。特定空き家の予備軍に対しても、自治体が指導や助言を行うことができれば、危険な空き家の発生防止になるものと期待される。

国への働きかけの内容は現場からボトムアップで提言されているものであるため、するどい内容のものも多い。すべてが実現できるとは限らないが、一部が反映されればさらに実効性のある空き家対策ができるものと期待される。

東京都は、今後も国に法整備や支援策の拡充などを働きかけ、その実現を目指していくとしている東京都は、今後も国に法整備や支援策の拡充などを働きかけ、その実現を目指していくとしている

公開日:

ホームズ君

LIFULL HOME'Sで
住まいの情報を探す

賃貸物件を探す
マンションを探す
一戸建てを探す