住宅ローンの審査においては、単純な年収だけではなく、勤務先や雇用形態などもチェック項目となります。
そのため、業務委託として働いている場合は、一般的な会社員と比べて審査のハードルが上がるとされているのです。しかし、決して住宅ローンの利用が不可能なわけではありません。
今回は業務委託で働いている人における住宅ローンの審査基準、利用時に押さえるべきポイントについて解説していきます。
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業務委託とは

2019年4月以来、「働き方改革」が進んだことにより、業務委託契約で働く人が増えています。ここではまず、業務委託契約の仕組みや、一般的な会社員との違いについて確認しておきましょう。
業務委託の仕組み
業務委託とは、会社が雇用する通常の従業員と異なり、自分で仕事を受注して対価を得る働き方のことを指します。業務委託社員という呼称があっても、形式上は「個人事業主」となり、仕事の裁量は働き手自身に移ります。
自由に仕事を進められる点はメリットとなるものの、個人事業主となるため会社の社会保険の枠組みからは外れ、国民健康保険と国民年金に切り替える必要があります。
また、通勤費用や経費などは自己負担しなければならず、1ヶ月以内に税務署に開業届を提出し、毎年確定申告をする必要もあります。
業務委託でも住宅ローンは組める?

業務委託という形態は、住宅ローンの審査にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、住宅ローンを利用するうえで知っておくべき仕組みについて詳しく見ていきましょう。
業務委託と一般的な会社員の違い
一般的な会社員の場合、住宅ローン審査においては、勤務している会社が信用力の一部を担保してくれます。特に一定以上の事業規模があり、勤続年数も十分な場合、審査では有利に働くのです。
一方、業務委託の場合は、個人の信用力のみで審査を受ける必要があります。そのため、住宅ローンは組めるものの、審査では不利になってしまうのも事実です。
また、審査を受ける際の項目にも細かな違いが見られます。通常の会社員の場合は、前年の給与支払額が審査対象となるため、「源泉徴収票」や「給与明細書」などを用意する必要があります。
一方、業務委託の場合は、年間売り上げから経費を引いた金額(所得)をもとに審査を受けることとなります。そのため、業務委託の売り上げが会社員の年収と同じであっても、ローン審査では借入可能額が少なくなってしまう点に注意が必要となります。
また、所得についても「直近の3期連続で黒字であること」が前提条件になるのが一般的です。
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業務委託であっても、しっかりと審査基準を満たしていれば、住宅ローンを利用することができます。ここでは、住宅ローン審査で見られる主なポイントについて見ていきましょう。
ポイント1:安定的かつ継続的な収入の有無
住宅ローンは長期にわたって返済していく借金となるため、収入の安定性と継続性が求められます。
特に業務委託の場合は、会社員と比べて安定性が低いと判断されがちであるため、少なくとも3年間は継続的な所得があることが条件となるのです。
また、個人事業主である以上、税金対策として経費を多く計上したいと考える場面もありますが、住宅ローン審査を受ける際には注意が必要です。あくまでも売り上げではなく所得が重視されるため、審査では不利になってしまうケースもあります。
ポイント2:収入に対する借入金額の割合
収入に対してあまりにも借入金額が大きいと、審査では不利になってしまいます。特に業務委託の場合は、借入金額が大きすぎると、返済計画の実現性が低いと判断されてしまう可能性があるのです。
ポイント3:税金の支払い状況と個人の信用情報
住宅ローン審査では、「納税証明書」の提出が求められます。このとき、税金や健康保険料などの滞納があると、審査には大きく影響してしまうため注意が必要です。
また、過去にクレジットカードなどの返済を滞納していたり、現在住宅ローン以外のローンも利用していたりする場合も、審査通過が難しくなってしまいます。
信用情報に不安がある場合には、JICC(株式会社日本信用情報機構)やCIC(株式会社シー・アイ・シー)などの信用情報機関で情報を取り寄せ、事前に確認しておきましょう。
ポイント4:年齢・健康状態
住宅ローン審査では「借入時年齢」と「完済時年齢」の両方がチェック項目となります。現在の年齢が若くても、長期返済などで完済時年齢が高くなってしまうと、審査では不利になることもあります。
また、ほとんどの金融機関では、住宅ローンを利用する際に「団体信用生命保険(団信)」への加入が必須とされています。団信は生命保険の一種であるため、加入する際には利用者の健康状態がチェックされます。
ポイント5:物件の担保評価
住宅ローン審査においては、利用者自身の属性だけでなく、購入する物件も審査対象となります。
万が一返済ができなくなってしまう事態に備えて、金融機関は物件を担保として確保する必要があるため、築年数が経過した古い物件など担保価値が低いと審査では不利になる場合があります。
審査に通過するために押さえるべきポイント

現在の収入に問題がなくても、「返済負担率」が高すぎると審査に落ちてしまうことがあります。そのため、無理のない返済計画の立て方を押さえておくことが重要です。
返済負担率とは
返済負担率とは、返済比率とも呼ばれ、年収に対する年間返済額の割合を示す数字です。
たとえば、所得が400万円の世帯で月々10万円ずつ返済を行っていくケースでは、返済負担率は「10万円×12ヶ月÷400万円=30%」となります。
多くの金融機関では、返済負担率30~40%以内を上限として設定しており、安定して返済できる目安は25%以内とされています。業務委託の場合は、収入の安定性が低くなるため、できるだけ返済負担率を抑えることが大切です。
頭金の重要性
返済負担率以外のポイントとして、頭金の割合が挙げられます。住宅購入の自己資金割合を増やせば、借入額を減らせるため、安定した返済計画を立てやすくなります。
また、頭金が多いことで貯蓄能力が評価されたり、より金利の低いローンを利用できたりするといったメリットもあります。個人の信用度を高める意味でも、ある程度の自己資金を準備しておくことが審査通過のポイントとなるのです。
物件を探す 住宅ローンについて調べる 住まいの窓口に資金計画を相談する業務委託の場合は借入先選びも大切! フラット35のメリットと注意点

審査に通過するためには、借入先を慎重に検討することも重要なポイントとなります。ここでは、借入先選びのコツを紹介していきます。
個人事業主向けの住宅ローンを利用する
大手金融機関などでの融資が難しい場合には、自営業者向けの住宅ローンに力を入れている金融機関を選ぶのもひとつの方法です。金融機関のなかには、業務委託などの個人事業主に適した住宅ローンを取扱っているところもあります。
審査においても、個別の事業内容や中長期的なプラン、世帯全体での資産といった細かなポイントが対象となります。そのため、大手金融機関の審査で落ちてしまった場合でも、事情によっては利用できる可能性があるのです。
フラット35を利用する
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して取扱っている住宅ローンのことです。
一般的な住宅ローンと異なり、雇用形態や勤続年数はそれほど重視されない傾向にあるため、業務委託でも比較的利用しやすいローンだといえます。
また、金利は全期間固定であり、返済計画を立てやすい点もメリットです。ただ、フラット35の審査基準は、通常の住宅ローンと大きく異なる点に注意が必要となります。
フラット35では、利用者自身の属性だけでなく、物件自体の担保価値がより重要視されます。物件検査によって、基準をクリアする必要があるため、慎重に住宅選びを行うことが大切です。
まとめ

- 業務委託は個人事業主扱いとなるため、一般的な会社員よりも審査ハードルは高い
- 直近3期分の収支が黒字であることが条件とされるのが一般的
- 審査では収入や個人信用情報、年齢、健康状態、物件の担保価値などがチェックされる
- 返済負担率を低く抑えることが審査通過のポイント
- 必要に応じてフラット35などの利用も検討しておく
更新日: / 公開日:2021.05.25










