親から「この土地は将来お前のものになるのだから、私が元気なうちに生前贈与しておく」と言われ、うれしい半面、税金のことを考えるとかなり不安な毎日。「一体、どのぐらいの税金がかかるのだろうか?」。
相続税の節税対策や相続トラブルを避けるためにも利用される「生前贈与」。土地や不動産を贈与する際にはどんな手続きをするのでしょうか。贈与の際にかかる費用や注意点を解説します。
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土地や不動産の贈与にかかる費用とは

不動産を生前贈与する場合にかかる主な税金は「不動産取得税」「登録免許税」「贈与税」の3つ。また、これ以外に、専門家への依頼費用が想定されます。詳しく見ていきましょう。
不動産取得税
土地や建物を取得したときに発生するのが不動産取得税です。贈与を受けた人が各自治体に納税する地方税で、不動産の贈与を受けたら直ちに申請が必要になります。
税額は、贈与が土地の場合には土地の固定資産税評価額の1/2に基準の税率(原則4%、2021年3月31日まで3%)を掛けて算出されます。贈与が住宅の場合も評価額に基準の税率を掛けて計算します。土地・住宅それぞれで一定の要件を満たせば軽減措置が受けられる可能性があります。
登録免許税
土地や建物の所有権を登記する登録免許税は、管轄の法務局へ納付します。贈与の場合には、登記簿にある不動産の所有権を贈与者から贈与を受ける人へと移転するための手続きとして必要になります。
登録免許税の税額は、取得した不動産の評価額に基準の税率(土地は2.0%)を掛けて算出されます。
贈与税
贈与税は不動産に限らず、個人から財産をもらった際にかかるものです。課税方法として、贈与を受けると課される「暦年課税」と、親や祖父母からの贈与で一定の要件を満たした場合に選択できる「相続時精算課税」のいずれか選ぶことができます。
そのほかにも、贈与税には要件を満たした場合に適用される制度や控除の特例があります。後ほど詳しく解説します。
専門家への依頼費用
不動産の生前贈与の手続きを専門家に依頼する場合もあります。もちろん個人で行うこともできますが、必要な資料の収集や贈与契約書の作成などの複雑な事務手続きが発生するため、大変な労力になることも。忙しい人や事務手続きに自信のない人は、専門家に依頼するほうがいいでしょう。
依頼の費用は不動産の価格や物件数、依頼する内容によっても変動します。法務局への不動産名義変更手続きなどは司法書士へ依頼するほうがいいでしょう。税務署への申告手続きは税理士への依頼となり、おのおの5万円から15万円程度が相場とされています。
贈与税に関わる控除や制度にはどのようなものがある?

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、贈与を受ける人は贈与者ごとに課税方法を選択することができます。さらに、贈与税には特例控除もあります。
暦年課税を利用する
親族かどうかにかかわらず、贈与を受けたときに発生するのが贈与税です。贈与者1人から受けた贈与の1年間の総額から、基礎控除110万円を差し引いた金額に対して課税されます。贈与額が基礎控除110万円に満たない場合には発生せず、申告の必要もありません。
また、基礎控除分を超えた贈与に対しても、両親・祖父母など直系尊属からの贈与には「特例贈与財産」が適用されます。それに該当しない場合の「一般贈与財産」に比べて税率が低く、控除額が多く設定されています。
相続時精算課税を利用する
相続時精算課税は60歳以上の両親や祖父母などの直系尊属からの贈与について、贈与者1人につき最大2,500万円の特別控除が適用され、その残額に対して一律に20%の贈与税を課す制度です。
この制度は贈与時には贈与税を抑える効果が期待できますが、特別控除を適用した贈与は相続時に相続税として清算されるため、相続税の節約になるかどうかは確認が必要です。
配偶者控除を利用する
相続した土地や不動産が配偶者からの贈与の場合、婚姻期間が20年以上の夫婦で一定の要件を満たすと、基礎控除の110万のほかに最大2,000万円の配偶者控除が受けられます。この控除は同じ配偶者間で一生に一度の特例になります。
いずれの税制度も適用するための要件や期間は変動します。自分のケースが適用になるかどうかは国税庁ホームページなどでリアルタイムの情報を確認することが重要です。
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贈与の手続きの流れとは

不動産の生前贈与は、口頭でも可能です。しかし口頭の場合には撤回も可能ですので、書面で贈与契約を締結すると、後からトラブルになりにくいでしょう。「誰が、誰に、何を(どの不動産を)贈与するか」を贈与する人と贈与を受ける人の双方で合意したら、契約が成立します。
その後、締結した内容をもとに「贈与契約書」を作成し、贈与をする人と受ける人それぞれが押印した上で、必要書類をそろえて法務局で不動産の名義変更を行い、税務署で贈与税の申告・納税を経て、一連の手続きは完了します。
名義変更登記や贈与税の申告には、それぞれに対して多くの必要書類が求められます。適用を受ける税制によって求められる書類が異なるなど、事務手続きは大変複雑です。そのため、司法書士など専門家に依頼する方法も、検討しましょう。
不動産贈与契約書は必要な項目を明記する
贈与契約書は、贈与後にトラブルが起こらないよう、契約内容を細かく記しておくことが重要です。不動産贈与契約書の作成にあたっては、5つのようなものが盛り込まれます。
誰に贈与するのか
いつ贈与するのか
何を贈与するのか
どんな条件で贈与するのか
贈与の方法
さらに、登記手続きに関する協力義務や、登記費用・固定資産税の負担に関する取り決めなども契約内容に盛り込まれていると、安心です。
贈与を受けたときの注意点

相続人の間でトラブルになるケース
生前贈与には多くのメリットがありますが、相続人の間でトラブルになるケースもあります。相続トラブルに発展しないように、あらかじめ契約書を交わしておくと安心です。贈与を受けたあとに贈与者が万が一亡くなってしまった場合、3年以内の贈与は相続税に加算されます。場合によっては節税にならない可能性もありますので、贈与や相続の方法はよく検討しましょう。
一度、相続時精算課税制度を選んだら戻せない
贈与税の制度への理解も深めましょう。相続時精算課税制度を利用した場合には、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻すことができません。
申告期間のご注意を
贈与税の申告期間は贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までです。申告を怠ると、想定していた控除が受けられなくなる可能性もありますので、申告は忘れないようにしましょう。
無料で住まいの窓口に相談する 土地と建築会社の選び方講座生前贈与のメリットとデメリットをよく知ろう
土地や不動産の生前贈与の手続きの方法や、関わる税制などを解説しました。必要な手続きや書類、適用される制度も多い贈与ですが、制度のメリットとデメリットをよく理解して活用しましょう。
※なお、この記事は2019年6月時点の情報です。今後変更となる可能性もありますので、最新情報については国税庁のサイトなどをご確認ください。
無料で住まいの窓口に相談する 土地と建築会社の選び方講座更新日: / 公開日:2019.07.01









