スマートフォンから突然鳴り響く、不協和音のような緊急地震速報。「地震です。強い揺れに警戒してください」というアナウンスを聞くと、心臓が早鐘を打ち、身がすくむ思いをするのは誰しも同じではないでしょうか。

その直後、テレビ画面やニュースサイトに表示される「マグニチュード(M)」や「震度」という2つの数字。私たちは日常的にこれらの言葉に触れていますが、本当の意味や、生活への影響の違いを正確に説明できる人は多くありません。

「マグニチュード7.0と聞いて大地震を覚悟したけれど、揺れは大したことなかった」逆に、「マグニチュードの数値は小さかった割りに、想像以上に揺れた」

このようなギャップを感じたことはないでしょうか?

実は、この2つの指標の違いを正しく理解することは、自分自身や家族の命運を左右する、と言っても過言ではありません。「自宅が倒壊するリスクがあるのか」「今、避難すべきなのか」を瞬時に判断し、あなたと大切な家族の命、そして人生最大の資産である「家」を守るための「防災力」につながります。

この記事では、気象庁や国土交通省、住宅金融支援機構といった公的機関の信頼できるデータを基に、専門的な用語をわかりやすく噛み砕いて解説します。不安をただの恐怖で終わらせず、「正しく恐れ、正しく備える」ための具体的なアクションプランとしてぜひご活用ください。

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地震が発生した際、ニュースでは必ず「マグニチュード」と「震度」がセットで報じられます。 まずは、「マグニチュード」と「震度」のこの最も基本的かつ重要な違いをクリアにしましょう。 違い ここを理解することで、地震情報を見た瞬間の冷静さが変わります。

気象庁では、両者の定義を以下のように定めています。

マグニチュード(Magnitude / M): 地震そのものの大きさ(放出されたエネルギーの規模)を表す数値。

 

震度(Seismic Intensity): ある特定の場所における、揺れの強さを表す階級。

決定的な違いは、「1つの地震に対してマグニチュードは1つしか存在しないが、震度は観測する場所(あなたがいる場所)によって無数に存在する」という点です。

この関係性は、専門家の間でもよく「電球」と「机の上の明るさ」に例えて説明されます。

マグニチュード= 電球のワット数(光の強さ)

電球そのものの性能です。どこで見ようと、その電球が「100ワット」である事実は変わりません。

 

震度 = 机の上の明るさ

その電球からどれくらい離れているかで変わります。

 

どんなにワット数が高い(マグニチュードが大きい)電球でも、天井が高い体育館の隅(震源から遠い場所)にいれば、手元の本は暗くて読めない(震度は小さい)でしょう。

 

逆に、ワット数が小さい豆電球でも、目の前数センチ(震源の直上)に持ってこられれば、まぶしくて目を開いてけていられない(震度が大きい)状態になります。

「M7.0の大地震」という速報でも、震源が遠い沖合であれば陸地の震度は1で済むことがあり、「M5.0の中規模地震」でも地表に近い足元の浅い地下で起きれば震度5強になることがあるのは、この理屈です。

マグニチュードは対数で計算されるため、数字が「1」増えるだけでエネルギー量は桁違いに跳ね上がります。単純な足し算ではありません。

Mが0.2増えると、エネルギーは約2倍

Mが1増えると、エネルギーは約32倍

Mが2増えると、エネルギーは約1,000倍

例えば、M8.0の巨大地震は、M6.0の地震の約1,000個分のエネルギーを持っていることになります。東日本大震災(M9.0)がいかに規格外のエネルギーを持っていたかが、この計算式からもわかります。M7クラスの地震が霞んで見えるほど、M9クラスは別次元の破壊力を持っているのです。

 

【出典・参考】気象庁:「震度とマグニチュード」

 

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マグニチュードがいかに大きくても、私たちの体や建物に直接被害を与えるのは「震度(揺れ)」の方です。

 

日本の気象庁震度階級は、「0」から「7」までの10段階に分けられています(震度5と6にはそれぞれ「弱」と「強」があるため)。

 

どのくらいの揺れで生活や住宅に被害が出るのか、具体的な目安を見ていきましょう。特に「震度5弱」が、日常から「災害」へとフェーズが変わる境界線です。

震度   

人の体感

屋内の状況

屋外・建物の状況

0

感じない

地震計のみが感知

1

一部の人が感じる

静止している時、わずかに揺れを感じる

2

多くの人が揺れを感じる

電灯の紐などがわずかに揺れる

3

ほとんどの人が揺れを感じる

食器棚の食器がカチャカチャと音を立てる

電線が少し揺れる

4

ほとんどの人が驚く

吊り下げ物は大きく揺れ、座りの悪い置物が倒れることがある

電線が大きく揺れる。歩いている人も揺れに気づく

5弱

恐怖を覚える/物につかまりたい

棚の食器・本が落ちることがある。 固定していない家具が移動することがある

窓ガラスが割れて落ちることがある。道路に亀裂が入ることがある

5強

物につかまらないと歩くことが難しい

タンスなど重い家具が倒れることがある。テレビが台から落ちる

コンクリートブロック塀が倒れることがある。自動販売機が転倒することがある

6弱

立っていることが困難になる

固定していない家具の大半が移動・転倒する。ドアが開かなくなることがある

耐震性の低い木造建物は、壁や柱が破損するものがある

6強

這わないと動くことができない

重い家具のほとんどが転倒・移動する。屋内は物が散乱し危険な状態

耐震性の低い木造建物は傾くものや倒れるものが多くなる

7

揺れに翻弄され、自分の意志で動けない

ほとんどの家具が飛び跳ねるように移動・転倒する

耐震性の高い木造建物でも傾くものや、まれに倒れるものがある

【震度5弱の壁】物が凶器に変わる
ここから「怪我」のリスクが急激に高まります。食器棚の中身が飛び出したり、固定していないテレビが倒れたりします。 これまで静止していた家具が、突如として凶器に変わるラインです。

 

【震度6弱の壁】建物の「倒壊リスク」が高まる建物が悲鳴を上げる
建物の構造自体に影響が出始めます。 耐震性の低い住宅では、壁に亀裂が入ったり、瓦が落ちたり、筋交いが折れたりする被害が出始めます。 「家の中にいる方が危険」という状況が生まれ得ます。

 

【震度7の壁】地形そのものが変わる
最大級の揺れです。阪神・淡路大震災や熊本地震、能登半島地震などが該当します。地面が隆起したり、地表に断層が現れたりするレベルであり、どんなに頑丈な建物でも無傷ではいられない可能性があります。

 

【出典・参考】

気象庁:「気象庁震度階級関連解説表」

「隣の市は震度4だったのに、なぜうちの地域だけ震度5強だったの?」

地震発生時、こうした疑問を持つことがあるかもしれません。 同じ地震エネルギーでも揺れ方が劇的に変わる主な要因は、「震源の深さ」と「地盤の性質」の2つです。

震源が地下浅い場所(10km〜20kmなど)にある場合、地表までの距離が近いため、マグニチュードがそれほど大きくなくても、震源の真上(震央)付近では局所的に猛烈な揺れになります。

 

これを「直下型地震」と呼びます。 阪神・淡路大震災(M7.3)や熊本地震(M7.3)が代表例で、短周期の激しい揺れ(ガタガタという衝撃的な揺れ)が特徴です。

 

一方、震源が深い場合(深発地震)は、エネルギーが地表に届くまでに減衰したり広がったりするため、広範囲で揺れるものの、震度はそこまで大きくならない傾向があります。

災害に備える住宅選びにおいて最も重要なのが地盤 ここです。

地震波は、固い岩盤から柔らかい表層地盤(砂や粘土)に入ると、速度が落ちる代わりに波の振幅が大きくなる(揺れが増幅される)という性質を持っています。ゼリーをお皿の上で揺らすと、お皿以上にゼリーが揺れる様子をイメージしてください。

固い地盤(山の手や台地): 揺れが伝わりにくく、震度が抑えられる傾向があります。

 

軟弱地盤(埋立地、低地、旧河道): 揺れが増幅されやすく、震度が1階級ほど大きくなることもあります。さらに、水分を多く含む砂地盤では「液状化現象」のリスクも伴います。

「揺れやすい地盤」の上に建っている家は、それだけ建物への負荷も大きくなります。 これから家を買う方は、国土地理院のハザードマップ等で「表層地盤増幅率」を確認し、地盤のリスクを把握しておくことが推奨されます。

 

【出典・参考】

国土交通省 国土地理院:「地震のメカニズム」

 

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「震度いくつの地震が来たら、家は倒れるのか?」

これは住宅所有者が最も知りたい点ではないでしょうかしょう。 しかし、答えは「震度の大きさ」だけでなく「建物の耐震性」によって決まります。

気象庁の解説にもある通り、耐震性の低い(古い基準の)木造住宅は、震度6弱から被害が顕著になります。 一般的な倒壊プロセスは以下の通りです。

壁の亀裂・剥落: 最初の強い揺れ(P波・S波)で建物が変形し、、建物の動きについていけない追従できないモルタル外壁や内装のクロス(壁紙)にひび割れや剥がれが生じます が裂けます

 

筋交い(すじかい)の破損: 建物を支える斜めの補強材が、圧縮と引張の力に耐えられず折れたり、留め具が外れたりします。

 

層崩壊(そうほうかい): 1階の壁量が不足している場合、2階の重さに耐えきれず、1階部分がペシャンコに潰れます。

特に、1階に壁が少ない「店舗兼住宅」や、南側に大きな窓を多用し壁が少ない古い木造住宅は、1階がつぶれる形での倒壊リスクが高くなる傾向があります。

地震後の生活再建において、内閣府が定める被害認定基準(罹災証明書)は非常に重要です。

全壊: 住家がその居住のための基本的機能を喪失したもの。修理するより建て替えるしかない状態。

 

大規模半壊・半壊: 柱や壁などに損傷があり、大規模な補修を行わなければ住めない状態。

ここで知っておきたいのは、「倒壊しなくても、傾いて住めなくなれば『全壊』判定になることがある」という厳しい現実です。

 

「命は助かったが、ローンが残った家にはもう住めない。 二重ローンを組むしかない」という経済的な二次被害を防ぐためには、単に倒れないだけでなく、建物の損傷を軽微に抑える高い耐震性が求められます。

 

【出典・参考】

内閣府(防災担当):「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」

地震そのものを止めることはできませんが、自宅の強さを知ることはできます。自宅の安全性を判断する上で、必ず確認しておきたい していただきたい「2つの日付」と「等級」があります。

日本の建築基準法は、大きな震災の教訓を得て改正されてきました。ご自宅の「建築確認日(着工前の審査日)」を確認してください。 竣工日(完成日)ではない点に注意が必要です。

 

■旧耐震基準(〜1981年5月31日):

1978年の宮城県沖地震での被害を受けて改正される前の基準です。

震度5強程度で倒壊しないことを想定していますが、震度6強〜7クラスの地震では倒壊の可能性が高いとされています。耐震診断と補強が強く推奨されます。

 

■新耐震基準(1981年6月1日〜):

震度6強〜7程度の揺れでも倒壊しない(人命を守る)ことを想定しています。

 

■2000年基準(2000年6月1日〜):

阪神・淡路大震災(1995年)の教訓を受けて改正された、現行の基準です。

実は、1981年〜2000年の間の「新耐震基準」の木造住宅には、柱と土台をつなぐ金具の規定などが曖昧なものがありました。2000年基準では、地盤調査の事実上の義務化、接合部(ホールダウン金物等)の指定、耐力壁のバランス配置が厳格化されました。木造住宅にとっては、ここが最も信頼性の高い分岐点です。

 

これにより、震度6強〜7クラスの大地震に対しても「倒壊しない」という新耐震基準の考え方を、より確実に実現できる設計基準となっています。

新築や築浅の物件であれば、建築基準法を上回る強さを示す「耐震等級(1〜3)」も確認しましょう。 これは住宅金融支援機構の「フラット35」の技術基準などでも採用されている指標です。

耐震等級1: 建築基準法と同等(震度6強〜7で倒壊しない)。

耐震等級2: 等級1の1.25倍の強さ。学校や避難所レベル。

耐震等級3: 等級1の1.5倍の強さ。消防署や警察署など、防災拠点となる建物レベル。

熊本地震の追跡調査では、震度7の揺れを2回受けても、耐震等級3の住宅はほぼ無被害、または軽微な補修でそのまま住み続けられたことが報告されています。 これからの家づくりや住宅購入において、等級3は「安心のスタンダード」と言えるでしょう。

 

【出典・参考】

国土交通省:「住宅・建築物の耐震化について」 住宅金融支援機構:「新築住宅の技術基準の概要(耐震性)

 

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ここまで、マグニチュードと震度の違い、そして住宅の安全性について解説してきました。

 

知識を得た今、次に大切なのは「行動」です。「いつかやろう」ではなく、今日からすぐに取り組める安全対策を3つご紹介します。

大地震の際、負傷原因の30%〜50%は「家具の転倒・落下」によるものと言われています。 特に寝室や、避難経路となる廊下にある家具は最優先です。

L字金具: 壁にネジ止めするタイプが最も強固です。

 

突っ張り棒+ストッパー: 賃貸などでネジが打てない場合は、天井との突っ張り棒と、家具の下に挟むストッパーを併用すると効果が高まります。

 

配置換え: 「寝ている人の頭に倒れてこない位置」に家具を動かすだけでも、生存率は大きく上がります。

国土地理院の「重ねるハザードマップ」や自治体の防災マップで、自宅周辺の地盤リスクを確認しましょう。 もし「揺れやすい」「液状化の可能性あり」と出ている場合は、家具の固定をより強固にしたり、備蓄を多めに用意したりするなどの対策が必要です。

もしご自宅が1981年5月以前、あるいは2000年5月以前の木造住宅で、まだ一度もプロの目で見てもらっていない場合は、専門家による耐震診断を受けることを強くおすすめします。

 

「うちは古いから、診断したら悪い結果が出るに決まってる…」と怖がる方もいらっしゃいますが、現状を正しく知ることが安心への第一歩です。多くの自治体で無料診断や改修費用の補助金制度が用意されていますので、まずは役所の窓口やウェブサイトを確認してみましょう。

 

地震は「いつか来るかもしれない」ものではなく、「必ず来る」ものと考えてください

 

しかし、正しく恐れ、正しく備えることで、被害は確実に減らすことができます。 まずはご自宅の建築年を確認することから始めてみませんか?

 

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Q1. マンションと戸建て、地震に強いのはどちらですか?

一般的に鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは構造的に揺れに強く、倒壊リスクは低いとされています。ただし、高層階では「長周期地震動」により揺れが長く大きく続くことがあり、家具の転倒リスクが高まります。戸建ては構造(木造・鉄骨)によりますが、耐震等級3を取得していれば、マンション同等の高い安全性を確保できるとされています。

Q2. 「ガル(Gal)」という単位も聞きますが、震度とは違うのですか?

「ガル」は揺れの加速度を示す単位で、主に建物の設計や研究などで使われる専門用語です。 一方、震度はこの加速度に加え、揺れの周期や継続時間などを総合的に計算して算出される「体感や被害の目安」です。一般の方は、生活への影響が直感的にわかる「震度」を基準に考えて問題ありません。

Q3. 1981年以降の建物なら絶対に安全ですか?

「新耐震基準(1981年〜)」は震度6強〜7で倒壊しないことを目標としていますが、前述の通り2000年に木造住宅の基準がさらに強化されています。そのため、1981年〜2000年の間に建てられた木造住宅(いわゆる「81-00住宅」)は、現行基準に比べると壁の配置バランスや接合部が弱い可能性があります。心配な場合は耐震診断をおすすめします。

Q4. 緊急地震速報が鳴ってから揺れるまでの数秒間、何をすべきですか?

まず最優先は「頭を守る」ことです。丈夫なテーブルの下に隠れるか、クッションや雑誌などで頭を保護し、倒れてくる家具から離れてください。「火を消せ」と昔は言われましたが、現在は揺れを感じるとガスメーターが自動で止まるため、無理に火に近づくより身の安全の確保が優先です。慌てて外に飛び出すと、瓦や看板の落下で怪我をする恐れがあります。揺れが収まるまでは、室内で身を守りましょう。

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