人生100年時代。これからの長い人生を有意義に過ごすため、60歳にさしかかるタイミングで「住まい」を見直す人は多いものです。定年退職や退職金の支給、住宅ローンの完済や、子どもの独り立ちなどが重なる60歳前後は、老後の住まいを考える“絶好のタイミング”です。しかも今(2023年1月時点)は、「高値で自宅を売却できる、チャンス到来中」だそう。

これまでに1,000棟以上の物件を見てきたマンションのプロフェッショナルであり、「60歳からのマンション学」(講談社+α新書)など多数の著書のある、マンショントレンド評論家の日下部理絵さんに解説してもらいました。残りの人生を満ち足りた時間にするため、最善の居場所を探す参考にしてください。

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マンション

 

少し前の日本には、「住宅すごろく」と呼ばれるものが存在しました。たとえば、賃貸アパートから始まり、分譲マンションを経て、一戸建て購入という流れです。しかし土地神話が崩れ、多様な価値観が受け入れられるようになり、選択の幅も広がっています。

 

これからの住まいを選ぶうえで、一戸建てにするか、マンションにするか、悩む人は多いでしょう。それぞれに利点と欠点があります。何を優先するのかが、選ぶうえでの前提条件になります。たとえば、「広い庭が欲しい」「大型犬など、ペットを気兼ねなく飼いたい」などは、一戸建てでないと難しいでしょう。そのような、こだわりがなければ、私はマンションをおすすめしています。

 

マンションは、オートロックに防犯カメラと、セキュリティーが充実しているものが多く、鉄筋コンクリート造など防火性においても安心できます。駅近など、利便性の優れた立地に、多くの物件が出ているのも魅力です。

 

生活音など、騒音問題を心配される方がいますが、近年、マンションと一戸建ての騒音格差は、ほぼなくなりつつあります。また、条件付きですが、ペットを飼育できる物件も増えています。

 

若い時は、お子さんの学区や部屋数など、家族の条件を第一にしていたのではないでしょうか。老後の住み替えは、スーパー、病院などへのアクセスを第一するのもよいし、運転免許の返納や、足腰が弱くなった際に備えてバリアフリー、人生が豊かになるよう“趣味や好みに”力点を置くのもよいと思います。

 

ただし、すべてが理想どおりとはいきません。求める条件は、3つ程度に絞るとよいでしょう。

マンション

 

マンション居住者に行った国土交通省の「マンション総合調査(平成30年度)」によると、分譲マンションの世帯主の年齢は、「60 歳代」が 27.0%ともっとも多く、次いで「50 歳代」が 24.3%、「70 歳代」が 19.3%となっています。

 

また、終の住処にマンションを選ぶ傾向は年々強まり、「永住意識」は1980年度(昭和55年度)の21.7%から、2018年度(平成30年度)には62.8%と約3倍に増えています。年齢が高くなるほど、永住意識も高くなる傾向にあります。

 

「平成30年度マンション総合調査結果」世帯主の年齢/永住意識データP21〜22(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001287412.pdf)をもとにLIFULL作成

「平成30年度マンション総合調査結果」世帯主の年齢/永住意識データP21〜22(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001287412.pdf)をもとにLIFULL作成

出典:マンションへの永住意識 過去最高(6割超)に~平成30年度マンション総合調査結果(とりまとめ)国土交通省

 

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老後を楽しむ

 

ここ数年で価格が高騰しているのは、地方ターミナル駅付近のマンションです。東北や九州など、新幹線を利用しやすいエリアがシニア世代を中心に人気を集めています。

 

旅行好きなシニア夫婦が、すぐ旅に出られるよう、新幹線が止まる駅の近くに引越し、高い満足感を得た事例もあります。「ライフワークバランス」を重視しているのはシニア世代も同じ。老後の生活を楽しむため、公共交通機関を利用しやすい地方を選んでいるのです。

マンション

 

ただし、機械式駐車場やゲストルーム、スポーツジムにスパなど、立派な共用施設のあるマンションは要注意です。最初は魅力的に見えても、住んでからほとんど使わないなんてことも。共用施設は、住民で維持費を分担します。使わない施設にもお金を払っていることになります。

 

マンションは、十数年に一度、建物などの適正な維持・管理のため大規模修繕を行います。そのために毎月、修繕積立金を支払いますが、建築材料の高騰などにより、積み立てられた修繕積立金だけでまかなえない場合、高額な一時金を徴収されることがあります。

 

買い替えなどで購入する前に、近々、大規模修繕の予定はあるか、一時金を支払う可能性があるかを、不動産会社に確かめておくと安心です。

 

住宅ローンや毎月の管理費・修繕積立金など、個々の家計ばかりに気を取られがちですが、管理組合の懐具合もよく確認しましょう。一時金の徴収や毎月の管理費などの「固定費」の上昇は、年金暮らしなど、老後の資金計画にも支障をきたす可能性があります。

 

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自宅の売却

 

シニア世代にとって今はマンション売却のチャンス。全国的に価格が上昇しており、買ったときより高く売れる可能性もあります。

 

さらに“立地を重視してダウンサイジング(狭い部屋に住み替えること)を希望するシニア世代”と、“在宅勤務が増えて家族でゆったり過ごせるファミリーマンションを探している若い世代”という、需要と供給がぴったり一致しているのです。

 

実際に、「住宅市場動向調査報告書(令和3年度)」によると、初めて住宅を取得する世帯は、「30 歳代」がもっとも多く、2回目以上の取得となる二次取得世帯は、「60 歳以上」がもっとも多いという結果が出ています。

 

初めて住宅を取得する世帯の年代

初めて住宅を取得する世帯の年代と二次取得者(「住宅市場動向調査報告書(令和3年度)」をもとに編集部にて加工)

住まい探し

 

60歳だからと理想の住まいを諦める必要はありません。60歳は人生の分岐点ですが、通過点でしかありません。もう60歳ではなく、まだ60歳なのです。

 

住まいほど人生に密着したものはありません。どんな人の人生にも、その中心には家があります。家が理想的な状態であれば、心のありどころとして安心して外に行くこともできます。

住まいは人生の拠点であり、幸せの象徴ともいえます。

 

人生の終焉(しゅうえん)に向けて、本連載が皆さまの理想とする住まい、納得する住まい探しのお役に立てれば、これほどうれしいことはありません。皆さまが納得できる住まいに出会い、よりよい人生を最後まで歩まれることを切に願っています。

 

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