人生100年時代といわれるようになった昨今。
購入時点では最良の選択だったにも関わらず、時の経過とともに「住まいに対する価値観」が変わってきたり、「予想外のトラブルに巻き込まれる」ことも少なくありません。

そのため、「今の住まいに一生住み続けられるか不安」「親が60歳近い年齢だがこのままの住まいで大丈夫なのか」と不安に思っている人も多いのではないでしょうか。

快適であったはずの住まいが、時の経過とともにどのように変化していき、どのようなことがきっかけで「買い替えしたい」「住み替えしたい」と思うのでしょうか。

これまでに1,000棟以上の物件を見てきたマンションのプロフェッショナルであり、「60歳からのマンション学」(講談社+α新書)など多数の著書のある、マンショントレンド評論家の日下部理絵さんに解説してもらいました。

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住まいに対する価値観が変化

 

今まで住まいについて考えるのは、「結婚のタイミング」「子どもが生まれ手狭になった」「賃貸物件の更新期限が迫っている」などの理由がきっかけとなり、一度購入したらそこに住み続けるというのが一般的でした。

 

しかし、平均寿命が延びたことや、新型コロナウイルスによる在宅時間の増加などによって、住まいに対する価値観が多様化してきています。

 

平均寿命が延びたということは、その分、長く住むところが必要です。しかし、住宅の寿命である耐久性と乖離(かいり)が生じたり、買ったときには重要視していた住まいに求める価値観が、時間の経過とともに変わってきたことで、住みづらくなることがあります。

 

購入時点では最良の選択だったにも関わらず、さまざまなトラブルに巻き込まれたことが、住まいを考えるきっかけとなる事例も少なくないのです。

「ダウンサイジング」という選択肢

 

たとえば、都内のマンションに住む60代前半の加藤さん夫婦。加藤さんのマンションは、4LDKで最寄り駅から徒歩12分。邸宅という名がふさわしい住環境の良いマンションです。しかし、加藤さんはいま買い替えを検討している、といいます。

 

加藤さん夫婦には、2人のお子さんがいるのですが、長女は結婚し、長男は地方都市に本社がある会社に就職して、2人とも実家マンションを出て行きました。しかも2人の子どもに、「このマンションを譲ったら住みたいか?」と聞いても、どちらも「将来は住む予定はない」「いらない」との返事が…。

 

4人家族で住んでいたときは、交通利便性よりも4人で住める部屋の広さ、子どもたちの学区、公園や図書館が近くにあるなど住環境の良さを決め手として、今のマンションを購入しました。

 

しかし、夫婦2人には、広すぎるし、掃除なども大変。しかも部屋が大きいと管理費や修繕積立金、固定資産税などの維持費も高くなります。

 

夫婦2人の希望としては、将来、運転免許の返納も検討しているため、もう少し最寄り駅に近いコンパクトなマンションに住みたい、といいます。今の住まいは住宅街にあり、スーパーやコンビニエンスストアなどが遠く、生活するのが不便なため、生活利便性が高い立地が理想だそう。

 

このように家族構成の変化によって、夫婦2人や1人暮らしの場合、買い替えや住み替えを検討することが多いのです。近年では、「ダウンサイジング」「縮小買い替え」といわれることも。

 

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マンションの階段の上り下り

 

郊外の駅近マンションに住む60代後半の田村さん夫婦も買い替えを検討している、といいます。田村さんが住むのは、4階建ての3階でエレベーターがない物件。二人は年の差婚で夫がひと回り年上です。今の住まいは、交通利便性、部屋の広さともに申し分ないのですが、年齢のせいか毎日の階段の上り下りがつらいそうです。田村さんは定年退職し、年金暮らし。階段が面倒で、用事がないときは1日中部屋から出ない日もある、といいます。

 

購入した当時は、エレベーターがないことが面倒だと思ってもつらいと感じたことはなく、むしろ健康にも良いと感じていたぐらいです。エレベーターがないことで相場よりも物件価格が安いのも購入の決め手でした。しかし、時を重ねることでエレベーターなどの設備がないことが、年を重ねた自分たちの仇になることに気がついてしまったのです。

 

そのほかにも、骨折などのケガや病気などの健康上の理由が、「買い替え」や「住み替え」のきっかけになることも多いです。

希望どおりのリフォームができない

 

間もなく60歳になる間宮さん夫婦も今の住まいに困っている、といいます。

今の住まいは新築時から住み続けており、内装や設備が古くなってきたのでリノベーションを検討しているのですが、希望する間取り変更は躯体に影響するため、マンションの管理規約で禁止されており、できないという状況です。

 

間宮さんのマンションは、「直天井・直床」のため、床と床の間に空間がなく、給水管・給湯管、給気排気ダクト、電気配線などを設置するスペースが限られているためです。老後に備えてバリアフリー化も検討しているそうですが、特に給排水の配管設備は、水は上から下に流れるため、パイプに傾斜をつけるためのスペースが必要。そのスペースを確保するために、段差のないバリアフリー化は難しいのです。

 

購入時は立地や内装デザインが決め手となり、将来のリフォームやリノベーション、さらにバリアフリー化までは考慮して物件を選んでいませんでした。あと何年住む物件なのか、という視点が足りなかったようです。

 

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住宅ローンを検討

 

吉田さん夫婦は転勤が多くずっと賃貸住宅だったため、定年目前にして初めてのマンション購入を検討中。また藤井さん夫婦も晩婚だったため、終の住処(ついのすみか)を視野に入れたマンションを探している、といいます。

 

どちらの夫婦も年齢的に住宅ローンを組むことはできるのか。もし住宅ローンが組めなかった場合、ほかに融資制度などはあるのか。価格が高騰している市況においてどんな物件を選べばいいのか、といった漠然とした不安があるといいます。

 

そのほかにも時間的な余裕ができてペットを飼いたいのに、管理組合のルールがペット不可で飼えない。いっぽうで動物アレルギーがありペット不可が購入の決め手だったのに、ペット飼育可へと管理組合のルールが変更になってしまい困っている、というケースもあります。

 

自転車を買いたいのに、自転車置場が空いておらず万年順番待ち。バイクを購入したが、マンション内に置場がなく、遠くの月極駐車場を借りており不便。近隣の騒音トラブルに悩んでいるなど、生活に支障をきたすことがきっかけとなることもあります。

 

また、車離れで空き駐車場が増えてしまったことで管理組合の収入が減り、毎月の管理費等の負担が重くなったり、大規模修繕工事の費用が足りず一時金の徴収が検討されているなど、お金に関することがきっかけになることもあります。特に年金収入と貯金で老後の生活を考えている方にとっては死活問題でしょう。

ライフスタイルに合う住まいを

 

住まいは人生の拠点です。いまのライフスタイルに合わなければ、新たに購入したり、買い替えや住み替えなどを積極的にするべきです。住宅購入にはさまざまな検討事項がありますが、「ライフスタイルに合う住宅が欲しい」という人生のタイミングが、もっとも優先されるべき事項と考えます。

 

そのタイミングの一つに、定年前後の60歳からの「終の住処」を視野に入れた住宅探しがあります。

 

60歳から家のことを考えるのは遅すぎるのではないか、と思うかもしれません。確かに、住宅ローンの借り入れ時年齢という側面においては、60歳はまさに人生の分岐点です。しかし60歳は、平均寿命から見るとあと20年~30年住める住まいが必要です。

 

さらに住まいの購入や売却、住み替えなどを人生で何度も経験している方は少ないのが現実でしょう。特に買い替えは、売却と購入をほぼ同時に行うため、難易度が高く注意が必要です。

 

そこで次回は、加藤さん、田村さんも検討している「買い替え時に気をつけるポイント」についてご紹介します。

 

本連載が、「今の住まいに一生住み続けられるか不安」「間もなく定年で買い替えを検討中」「住宅ローンの残債がある場合どうしたらいいか」「親が高齢だがこのまま住み替えなくて大丈夫なのか」など、住まいに対して不安のある皆さまの参考になれば幸いです。

 

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更新日: / 公開日:2022.11.17