高齢者世帯になると、現役時代と比べて収入が低下するのが一般的であり、家計の見直しを行わなければならないケースもあります。
今回は毎月の出費を抑えるために実践したい節約術と、高齢世帯で利用できる公的制度の仕組みについて解説します。
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高齢者の家計プランで意識すべき課題とは?

高齢者の家計プランでは、具体的にどのようなポイントを意識すべきなのでしょうか。まずは、高齢世帯の家計の現状から詳しく見ていきましょう。
高齢世帯では毎月貯金を取り崩しているケースが多い
総務省統計局の2021年度「家計調査」(※)によれば、65歳以上の夫婦のみ、無職世帯の平均消費支出は1ヶ月当たり22万4,436円となっています。それに対して、非消費支出を除いた可処分所得は20万5,911円であり、支出が上回っていることが分かります。
さらに、これはあくまでも平均値であり、持ち家の人なども含めたデータであることを踏まえる必要があります。実際のところ、データ上での住居費は1万6,498円であり、賃貸物件の家賃としては現実的な数値ではありません。
そのため、仮に賃貸物件を借りたり、住宅ローン返済が続いていたりするケースを想定すると、収支のバランスは大きく赤字になってしまうことが分かります。
※ 総務省統計局「家計調査 家計収支編(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別二人以上の世帯 2021年」
高齢者の家計で目を向けなければならない課題
内閣府の令和元年度「高齢者の経済生活に関する調査」(※)によれば、何かしらの経済的な不安のある人は全体の6割以上を占めます。
不安なこととして「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること」「転居や有料老人ホームの入居費用がかかること」「収入や貯蓄が少ないため、生活費がまかなえなくなること」と回答しています。
特に、やはり賃貸住宅に住んでいる人や住宅ローンを返済中の人では、生活費がまかなえなくなることへの不安が強いという結果が出ています。そのため、少しでも支出を減らして、貯蓄をなるべく取り崩さないようにすることが重要な課題といえるでしょう。
※ 内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果/第2章 調査結果の概要」
生活費節約の基本! 食費を抑えるためのコツ

老後の支出のうち、大きな割合を占めるのは食費です。先ほど紹介した家計調査においても、食費は6万5,789円と、支出全体の3割近くを占めており、節約するうえでは特に重要な項目といえます。
ここでは、食費を抑えるために意識したいポイントを見ていきましょう。
食品ロスを減らす
高齢者世帯は若い世代と比べて、長きにわたって生計を維持してきた経験があるため、自然と節約の意識が身についていることも多いものです。安いタイミングでまとめ買いをしたり、無理なく自炊を続けるコツを見つけていたりと、これまでの生活で身についた生活の知恵はそのまま活用できます。
しかし、若い世代と比べて「食品ロス」が生まれやすくなる面もあります。以前と比べて食事量が減っているにもかかわらず、つい習慣で食品を買い込みすぎてしまう人は「冷蔵庫に詰め込んでいるうちに消費期限が切れていた」という場面も多いのではないでしょうか。
食品ロスを生まないように買い物の計画を見直すことが、高齢世帯における節約の第一歩となります。
買い物の頻度を減らす
無駄な買い物を減らすためには、買い物の回数自体を少なくするのが近道です。買い物の頻度は週3回以内を目安にしたうえで、食材の重複を防ぐために買い物リストをつくったり、冷蔵庫と冷凍庫の中身をこまめにチェックしたりすることを心がけましょう。
物件を探す シニア・高齢者歓迎の物件ほかにもある! 生活費を節約するためのポイント

続いて、食費以外の生活費を節約するために押さえたいポイントを見ていきましょう。
家計費の予算は週単位で計算する
家計の管理は1ヶ月単位で行おうとすると、どうしても予期せぬ出費などで計画が崩れてしまうことがあります。そこで、1ヶ月分の予算をより細かく1週間単位で割り、調整しやすくするのもひとつの方法です。
水道・光熱費の節約を心がける
水道代は節水グッズを活用して、特に意識をしなくても節約できるような仕組みを整えるのがコツです。節水コマや節水シャワーヘッドなど、日常的な使用で自然と節水できるグッズが市販されているので、普段の生活に合ったものから取り入れてみましょう。
電気代については、特に消費電力が大きいエアコンの使い方を工夫してみましょう。夏場や冬場は「自動運転モードを活用する」「あまり頻繁にオンオフをしない」など、ちょっとした心がけを意識するだけで電気料金に大きな差が生まれることもあります。
また、契約する電力会社を見直したり、プランを最適化したりすることも重要なポイントです。
固定費の見直しを行う
固定費は毎月必ず出ていくお金なので、少しの工夫でも年間を通して見ると大きな節約につながります。具体的には保険料や通信費などの項目が挙げられます。
保険料の節約例
- 子どもが独立したら自身の死亡保障を減額する
- 保障内容や特約は必要最低限のものにする
- 医療保険の保険料負担が重い場合は、解約して貯蓄に回すことも検討する
- 保険料一括払いやネット申し込みなど、保険料が安くなる支払い方法を見つける
通信費の節約例
- 固定電話を使わない場合は解約する
- 契約する料金プランを見直す
- 格安SIMに乗り換える
車を処分する
高齢世帯が実践できる節約方法のひとつに、自家用車の処分が挙げられます。自動車は保有しているだけで税金や駐車場代、保険代、ガソリン代などが発生するため、大きな出費につながりやすいです。
そのため、駅近や商業施設に近い立地に住んでいる場合は、車を処分してしまうのもひとつの方法です。自治体によっては高齢者を対象に、低額で公共交通機関を利用できる制度を設けているところもあるので積極的に活用しましょう。
高齢世帯が知っておきたい公的制度の仕組み

高齢になると病院にかかる機会が増えるため、民間の医療保険を充実させたいと考える人も多いでしょう。しかし、まずは医療・介護に関する公的な制度をきちんと理解して活用することが大切です。
公的な健康保険制度の仕組み
公的な健康保険では、基本的に自己負担額は3割で済む仕組みとなっているのに加えて、70~74歳の場合は2割負担まで、75歳以上なら1割負担まで下がります(現役並み所得者を除く)。また、医療費が高額になってしまう場合も、自己負担額には一定の上限が設けられています。
そのため、民間の保険は、あくまでも公的保険で補えない部分をカバーする目的で加入し、必要な保障内容を明確に見極めることが大切です。
公的な介護保険制度の仕組み
介護保険は要介護、要支援状態と認定された65歳以上の人に対して、介護サービス料金を原則1割負担まで軽減させる制度です。また、そのほかにも以下のような特徴を備えています。
特徴
- 負担額が上限を超えた場合は、差額を高額介護サービス費として支給
- ケアマネジャーにケアプランを作成してもらうのは無料
- 手すりの取り付けなどの住宅改修時に20万円までの費用を支給(※工事費用の1割は必ず自己負担することが条件)
年金の繰り下げ受給
2022年4月時点、年金制度では65歳から受給資格が発生する仕組みとなっていますが、受給のタイミングを66歳以降に繰り下げることで、本来よりも上乗せした金額を受け取れるようになります。
これを「繰り下げ受給」を呼び、具体的には「繰り下げた月数×0.7%」が増額される仕組みです。
たとえば、5年繰り下げて70歳からの受け取りを選択した場合、増額割合は「60ヶ月×0.7%=42%」となります。65歳のタイミングで収入にゆとりがある場合には、繰り下げ受給も検討してみるといいでしょう。
物件を探す シニア・高齢者歓迎の物件持ち家を活用して老後資金を確保! リバースモーゲージの仕組み

持ち家がある場合には「リバースモーゲージ」と呼ばれる資金確保の仕組みを活用するのもひとつの選択肢です。最後に、リバースモーゲージの仕組みを解説します。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして生活資金を借り入れる方法のことです。持ち家に住み続けながら、まとまった資金を調達できるのが特徴であり、安定した収入がない高齢世帯でも利用しやすい仕組みとなっています。
毎月の返済は利息分のみであり、元金については「利用者が亡くなったときに自宅を売却して返済を行う」か「相続人が代わりに負担する」ことで返済します。そのため、無理のない生活設計を立てやすいのがメリットです。
また、利用者が亡くなった後も、配偶者は契約を引き継げるようにしているプランが多いのも特徴です。ただし、あくまでも物件に十分な担保価値がなければ利用できない点や、長生きするほど当初に設定した資金が枯渇してしまうリスクがある点など、いくつか注意しなければならないポイントがあるのも事実です。
そのため、リバースモーゲージを利用する場合には、取り扱っている金融機関や各都道府県の社会福祉協議会で具体的な事情を踏まえた相談をすることが大切です。
まとめ

- 高齢世帯ではデータ上、毎月貯金を取り崩して生活しているケースが多い
- 食費の節約では買い物の頻度を減らすとともに、食品ロスを防ぐ工夫が重要
- 光熱費や通信費を見直し、必要に応じてプランも最適化しよう
- 民間保険は公的保険の仕組みを理解したうえで、本当に必要な内容を見極める
- 持ち家がある場合はリバースモーゲージの仕組みも把握しておこう
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