日本は地震が多い国です。「耐震等級って何?」「自宅の耐震等級が知りたい」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
耐震等級とは、地震に対する建物の倒壊などを防ぐ、耐久力を示す基準のことです。1〜3の等級があり、数字が高くなるほど耐震性は高いとされています。そのため、物件を購入する際は耐震等級を意識することが重要です。
一方ですでに住宅を購入されている場合でも、耐震等級を高めることはできます。しかし、耐震等級を調べて耐震リフォームを行わなければなりません。耐震等級の調べ方は物件によって異なります。
この記事では、耐震等級の基礎知識や耐震等級の調べ方、購入後に耐震等級を高める方法などを詳しく解説していきます。購入を検討している物件や、現在住んでいる物件の耐震性に不安を感じているなら、最後まで読んで参考にしてみてください。
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耐震等級とは? 意味はあるの?

耐震等級とは、地震に対する建物の倒壊などを防ぐ耐久力を示した基準のことです。
耐震等級は、2001年に施行された「品確法」によって規定されています。建築基準法の「新耐震基準」を満たしているものは、耐震等級1級の強度があるとされています。
なお耐震基準には「旧」と「新」の基準があり、1981年6月に基準が見直されたことによって、建築基準法が改正されました。この改正によって示された耐震基準が、「新耐震基準」と呼ばれています。
具体的な新旧の耐震基準の違いは、以下です。
耐震基準の違い
- 旧耐震基準:中規模の地震でほとんど損傷しないこと
- 新耐震基準:数百年に一度程度の大規模な地震で倒壊や崩壊しないこと
1981年以降は旧耐震基準で建築ができないため、1981年以降に建築された建物であれば、新耐震基準を満たした建物になります。
耐震等級は3段階に分けられている
耐震等級には、以下の3段階があります。
耐震等級
- 耐震等級1
- 耐震等級2
- 耐震等級3
それぞれについて説明します。
耐震等級1
耐震等級1とは、建築基準法で定められている新耐震基準と、同じ強度を持っている建物であることを示すものです。したがって、新耐震基準を満たした新築住宅は申請をすることで、耐震等級1の認可を得られます。
耐震等級2
耐震等級2とは、地震に対する耐久力が耐震等級1の1.25倍を有する建物であると示すものです。学校や病院など避難所として指定されている建物は、耐震等級2以上の基準が必要です。
なお「長期優良住宅」として認定されるためにも、耐震等級2以上が条件になります。
耐震等級3
耐震等級3とは、地震に対する耐久力が耐震等級1の1.5倍を有する建物であると示すものです。高い耐震性能を有しており、地震保険の耐震等級割引で50%の割引を受けられます。
ちなみに、不動産会社が耐震等級3相当という言葉を使用していることがあります。しかし「耐震等級3相当」とは、耐震等級3と同様の耐震性能を有しているけれど、正式な認定は受けていないもののことです。耐震等級3の認定を受けるには、10〜20万円程度の費用がかかるため、費用を抑えたいという理由から認定を受けないこともあります。
大地震に耐えるために必要な耐震等級はどれくらい?
大地震に耐えるために必要な耐震等級は、耐震等級3です。2016年4月14日および16日に発生した熊本地震で、多くの耐震等級1の住宅が損壊し、耐震等級2の住宅についても一部損壊したためです。耐震等級3の住宅だけが大きな損傷が見られず、大部分が無被害でした。
したがって耐震等級3があれば、大規模な地震が発生しても比較的安心できる耐震機能があるといえます。
耐震基準との違い
耐震基準とは、「建築基準法」と「建築基準法施行令」によって規定されている耐震性能の基準です。建物を建築するためには、基準を満たす必要があります。もちろん耐震基準を満たしていなければ、住宅などを建築する許可が下りません。
一方で耐震等級とは、品確法(住宅の品質確保の促進などに関する法律)によって規制されている、耐震性能の指標のことを指します。耐震等級の条件を満たす耐震性能を有している場合に、住宅性能評価書の発行を申請することで、耐震等級の認定を受けることが可能です。
ちなみに、耐震等級は住宅を建築するために必要なものではありません。あくまで認定を受けるかについては任意になります。
住宅の耐震等級を調べる方法

住宅の耐震等級の目安は、以下のとおりです。
| 目安 |
|---|---|
耐震等級1 | 建築基準法で定められている耐震基準と同じ強度を持っている建物 |
耐震等級2 | 地震に対する耐久力が耐震等級1の1.25倍を有する建物 |
耐震等級3 | 地震に対する耐久力が耐震等級1の1.5倍を有する建物 |
では、住宅の耐震性能がどの耐震等級であるかを調べるためには、どうすればいいのでしょうか? 調べ方は購入する住宅によって異なるため、以下の5つのケースで紹介します。
注文住宅の場合
注文住宅を建築する場合は、建築会社と打ち合わせて設計する段階で、住宅の耐震等級を決めることが可能です。ただし、正式に耐震等級の認定を受けるときは、住宅性能評価書が必要になります。性能評価を受けるためには、ハウスメーカーや工務店に申請を相談する必要があることを覚えておきましょう。
建売住宅の場合
建売住宅の場合は、基本的にハウスメーカーや工務店が耐震等級を事前に決めています。
ただし、必ずしもハウスメーカーや工務店が住宅性能評価書を申請して、耐震等級を調べるわけではありません。建売住宅を購入する前に、どの耐震等級かを確認することは重要です。
仮に耐震等級が分からない場合や、耐震等級が正式に認定されていない場合は、ハウスメーカーや工務店に認定を得られないか相談をしてみましょう。
新築マンションの場合
新築マンションの場合は、基本的にデベロッパーが耐震等級を決めています。そのため、購入を検討しているマンションの耐震等級について、デベロッパーに確認しておきましょう。
ちなみに、一般社団法人住宅性能評価・表示協会の2019年のデータによると、共同住宅の約81.7%が耐震等級1になります。したがって、マンションも耐震等級1が多いです。このように多くのマンションは耐震等級1なので、耐震等級が1以上のマンションに住みたい場合は購入前に確認するようにしましょう。
中古一戸建て住宅の場合
中古一戸建て住宅の耐震等級を調べる場合は、不動産会社に問合せをして住宅性能評価書を確認することで、耐震等級が分かります。ただし、住宅性能評価書がない場合は耐震診断が必要です。
耐震診断とは、建物の耐震性を調べる方法です。外部の専門機関に依頼して耐震診断を行ってもらうことが多く、調査費用もかかります。とはいえ、購入を検討している中古物件の耐震性が気になる方は、耐震診断を行うようにしましょう。
中古マンションの場合
中古マンションの耐震等級を調べる場合も、不動産会社に問合せをして住宅性能評価書を確認することで耐震等級が分かります。ただし耐震性能評価書がない場合は、中古住宅と同様に耐震診断が必要です。
マンションで耐震診断を行う場合は多額の費用がかかるため、個人での依頼は現実的ではありません。管理会社や不動産会社に耐震診断を実施してくれるかを、確認するようにしましょう。
耐震・免震・制震住宅の住宅カタログを探す地震に強いハウスメーカー・工務店の選び方

地震に強いハウスメーカーや、工務店の選び方は以下の2つです。
- 実大耐震実験の結果を比較する
- アフターフォローの内容を比較する
それぞれについて説明していきます。
実大耐震実験の結果を比較する
地震に強いハウスメーカーや工務店を選ぶ際に重要なのは、実大耐震実験の結果を比較することです。実大耐震実験とは、実物大の住宅を組み立てて実験するものを指します。
住宅の一部ではなく、実物大の住宅で耐震実験を行っているため、より正確なデータを取ることが可能なため、信頼性は高いといえます。なお、どのハウスメーカーが実大耐震実験を行っているかについては、ホームページを確認できます。
アフターフォローの内容を比較する
アフターフォローの内容を比較することも、ハウスメーカーや工務店を選ぶうえで重要です。たとえば、地震発生後に建物の点検をしてくれる会社や、被災時に相談できる体制が整っている会社があります。
ただし、アフターフォローがある会社でも、地震発生時に対応できるだけの資金力がないと意味がありません。地震はいつ発生するか分からないので、アフターフォローを長期的に継続できる会社かどうかも重要です。
地震に強い建売住宅・中古住宅の選び方

地震に強い建売住宅と中古住宅を選ぶ際の、3つのポイントを紹介していきます。建売住宅や中古住宅を選ぶ際の参考にしてみましょう。
地盤の強さを確認する
地震に対して強い建売住宅や中古物件を選ぶ際に重要になるのは、地盤の強さです。地盤が弱いと地震が起こった際に沈下して家が傾き、基礎に亀裂が入るといったトラブルが起こる可能性があります。
地盤の強さは、以下の方法で確認できます。
地盤の強さの確認方法
- 災害や地質などに由来したものが多い旧地名を調べる
- 高低差や、周辺の建物の基礎に亀裂があるかなどを調べる
- ハザードマップを確認する(液状化現象が起きやすい場所など)
- インターネットで情報を集める
- 地盤調査報告書を確認する
上記の方法で、購入を検討している住宅の地盤の強度を調べることが可能です。ただし、旧地名や高低差、周囲の建物の状況を調べる方法は、あくまで目安程度になるので注意しましょう。より信頼性の高いハザードマップの確認や、地盤調査報告書で確認を行うほうが確実です。
ホームインスペクションを依頼する
地震に強い住宅かどうかを調べる方法として有効なのが、ホームインスペクション(住宅診断)です。
ホームインスペクションは、第三者である住宅診断士が、建物の外壁や屋根、基礎など建物全体をチェックして欠陥の有無や劣化を調べることを指します。ホームインスペクションを行うことで、建物の耐久性や耐震性に問題があるかなどを確認してくれます。
仮に契約前に重大な欠陥が見つかった場合は、売主に修繕の相談をしましょう。
中古住宅の場合、築年数を確認する
中古住宅を購入する場合は、築年数を確認しましょう。前述したように、築年数によって耐震基準が異なるためです。
1981年6月より前の建物は旧耐震基準で建築されているため、新耐震基準に比べると耐震性は低い可能性があります。一方で1981年6月以降の建物は、新耐震基準で建築されています。劣化状況に問題がなければ安心といえるでしょう。
ただし、新耐震基準であってもメンテナンス不足だと耐震性に問題があるかもしれないので、注意が必要です。
耐震・免震・制震住宅の住宅カタログを探す地震に強いマンションの選び方

地震に強いマンションを選ぶ際に重要なポイントは、以下の2つです。
ポイント
- 長期優良住宅を選ぶ
- 制震・免震構造のマンションを選ぶ
それぞれについて説明します。
長期優良住宅を選ぶ
長期優良住宅とは、長期にわたり住宅に住み続けるための措置が実施されている住宅のことです。この住宅に認定されるための基準のなかに、耐震等級2以上の強度があるという条件があります。つまり、長期優良住宅に認定されているマンションの耐震性能は、耐震等級2以上であると判断することが可能です。
ただし、長期優良住宅に認定されているマンションは決して多くありません。自身が購入したい立地にない場合や、仮に見つけたとしてもすぐに埋まってしまう可能性もあるでしょう。購入を検討する際は、こまめに確認するようにしてください。
制震・免震構造のマンションを選ぶ
地震に強いマンションを選ぶとき、制震・免震構造を採用しているマンションを選ぶことが重要です。制震・免震構造とは、地震などによる揺れを減らすための工夫のことを指します。そのため、制震・免震構造の採用しているマンションは地震の揺れに強く、耐震性が高いです。
ただし、免震構造は縦揺れの地震には弱いなどのデメリットもあります。制震・免震構造があるからといって、耐震性が高いと安易に判断してはいけません。制震・免震構造の以外の耐震性も含めて、総合的に判断するようにしましょう。
住宅購入後に耐震等級を高めるなら、耐震リフォームを検討しよう

住宅を購入した後に耐震等級を高めたいなら、耐震リフォームを検討してみましょう。耐震リフォームを行うことで、耐震等級1の家を耐震等級2にできます。
ただし、マンションの場合は多額の費用がかかるので、個人で耐震リフォームを行うことは現実的ではありません。ここでは、耐震リフォームの内容と費用について解説します。
耐震リフォームの内容
耐震リフォームの内容は、基礎の補強や柱と土台などの接合部の補強、壁の強化や増設、屋根の軽量化などがあります。
たとえば基礎の補強については、ひび割れの補修や鉄筋コンクリート造の基礎の追加、新たな基礎を設置するなどの工事を行うことで、耐震性を高めることが可能です。しかし建物の状態によって耐震リフォームの内容が変わってくるため、事前に耐震診断を行う必要があります。耐震診断後にどういった補強が必要なのかを確認して、スケジュールを組むようにしましょう。
ちなみに、耐震リフォームはほとんどの場合、建物の一部を解体して行います。補強内容によっては仮住まいが必要です。リフォームの内容によっては住みながら行うことも可能ですが、その場合は時間がかかることに注意しましょう。
耐震リフォームにかかる費用
耐震リフォームにかかる費用は、建物の状態や耐震等級をどれにするのか、建物の構造が木造か鉄筋コンクリートかによっても変わります。
たとえば、耐震等級1を満たしていない木造住宅を耐震等級1にする場合は、150〜200万円程度必要です。また、前述したとおり耐震リフォームを行う前に、耐震診断を行うことも重要になります。耐震診断の費用は5万〜20万円程度です。
このように、耐震リフォームにかかる費用はリフォームの内容によって大きく異なります。耐震診断の結果を踏まえて見積もりを取るようにしましょう。
耐震・免震・制震住宅の住宅カタログを探す耐震等級に合わせて、火災保険・地震保険が割り引きされることも!

地震保険は、耐震等級によって割引を受けることが可能です。具体的には、以下の4つの割引制度があります。
割引の種類 | 対象の建物 | 割引率 | |
|---|---|---|---|
建築年割引 | 1981年6月1日以降に新築された建物 | 10% | |
耐震等級割引 | 住宅の品質確保の促進などに関する法律に規定する、評価方法基準に定められた耐震等級の建物
国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に定められた耐震等級を有している建物 | 耐震等級1 | 10% |
耐震等級2 | 30% | ||
耐震等級3 | 50% | ||
免震建築物割引 | 住宅の品質確保の促進などに関する法律に規定する、評価方法基準に定められた「免震建築物」の基準に満たす建物 | 50% | |
耐震診断割引 | 地方公共団体などによる耐震診断、または耐震改修の結果、改正建築基準法における耐震基準を満たす建物 | 10% | |
出典:財務省
上記の「耐震等級割引」を利用することで、地震保険の割引が可能です。たとえば耐震等級3の場合は、保険料を50%割り引きできます。
地震保険に入るなら、制度をうまくつかって安心できる住まいを手にいれましょう。
まとめ

耐震等級は、地震に対する建物の倒壊などを防ぐ耐久力を示すものです。地震が多い日本では、重要な指標になります。耐震等級の高い物件を購入することで、地震による倒壊のリスクなどを軽減することが可能です。
ただし、建物が正式に耐震等級と認定されるには、申請が必要などの多くのポイントがあるので注意しましょう。
この記事では、耐震等級の基礎知識や耐震等級の調べ方、購入後に耐震等級を高める方法などについて詳しく解説してきました。購入を検討している物件や、現在住んでいる物件の耐震性を調べる際に、ぜひ参考にしてみてください。
耐震・免震・制震住宅の住宅カタログを探す更新日: / 公開日:2021.09.27










