国立がん研究センターのがん統計によれば、日本人は2人に1人の割合でがんになるといわれており、将来の備えとして、がん保険は非常に重要な存在です。住宅ローンの借入時に加入する団体信用生命保険(団信)の中にも「がん特約」がありますが、金利を上乗せして加入するほどの価値があるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、がん団信の補償内容や金利の変動、加入時の告知義務など、がん団信について知っておくべきことを包括的にご紹介します。
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生命保険証券

「団体信用生命保険(団信)」とは、住宅ローンを借りる際に加入することが多い保険です。住宅ローンの返済期間は30年以上という長期に及ぶケースが大半を占めますが、この返済期間中に借り入れをした名義人に万一のことが起きた場合、保険金によって住宅ローンを完済できるという保険になります。

 

住宅ローンの支払い途中で病気になってしまったり、不慮の事故で亡くなってしまったりした場合、数千万円という借金を家族に残してしまう可能性があります。これを避けるため、団信は多くの人から頼りにされている保険です。

 

団信は金融機関が保険会社と結ぶ契約であるため、住宅ローンを組んだ人は、団信の保険料を保険会社ではなく、金融機関に直接支払います。金融機関は、消費者から集めた保険料をまとめて、保険会社に支払う流れになると認識するといいでしょう。

 

なお、団信の保険料については、確定申告において、所得控除の対象にすることはできません。一般的な生命保険の場合は、支払った金額を控除することができますが、団信の場合はそのほかの生命保険と同じようには扱えないので要注意です。

 

団信には特約を付けることができます。3大疾病や8大疾病などの特約がありますが、特に利用されることが多い特約として、“がん特約”の存在が挙げられます。次の項目では、団信のがん特約における主な補償内容について詳しくご紹介します。

契約する金融機関によって補償内容は異なりますが、原則として“がんと診断された場合”には保険金が下りることになります。治療を行い、完治することができたとしても、その後に支払いを再開するよう求められることはありません。

 

団信としての基本的な補償も付くので、死亡した場合や高度障がいになった場合、余命宣告を受けた場合なども住宅ローンを完済できる場合があります。充実した補償内容になるので、将来のリスクにしっかりと備えたいという場合には、加入を検討するといいでしょう。

 

団信のがん特約は、ローンの金利を上乗せする形で加入することが一般的です。実質的に月々の支払額が増加しますが、別途に請求を受けることはありません。特約を付けることによって上乗せされる金利は、契約する金融機関によって異なります。

がんになった場合でも、住宅ローンが免除されないケースもあるため、注意が必要です。
多くのがん特約では、支払いを免除する条件として、“生まれて初めて罹患した場合”という条項を付け加えているため、以前にがんを患った経験がある場合は、補償の対象外になります。

 

また金融機関により、がんの種類によっては補償の対象として認めないというケースや、加入から一定の期間が経過した後にがんの診断を受けた場合のみを補償対象とするケースもあります。契約前に、支払いの条件について詳しく確認するようにしましょう。

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資金計画を考える夫婦

がん特約を付けることによって、ローンの金利はどの程度変わることになるのでしょうか。がん特約を付けておいたほうが、先々のリスクを軽減させられることは間違いありませんが、返済額の増加という課題とも向き合わなければなりません。

 

がん特約の料金は、金融機関によって大きく変動します。都市銀行や地方銀行、ネット銀行、フラット35などの種類に応じたがん特約付き団信の金利を表でまとめてみました。なお、2020年7月時点の変動金利をもとにご紹介します。

金融機関上乗せされる金利住宅ローン金利合計の金利
みずほ銀行0.150%0.625%0.775%
横浜銀行0.200%0.440%0.640%
イオン銀行0.100%0.520%0.620%
auじぶん銀行0.200%0.410%0.610%

三大都市銀行では、みずほ銀行だけががん特約を販売しています。りそな銀行や三菱UFJ銀行の場合、がん特約に相当する“三大疾病特約”などを付けることは可能ですが、これはがん専門ではなく、金利もこの表で取り上げた利率を大きく上回ります。

 

フラット35の場合は、融資率に応じて金利の範囲が変わります。がん特約はありませんが、新三大疾病付機構団信を利用することによって、がんをカバーすることができます。最も多い金利から見た合計金利は、以下のようになります。

融資率上乗せされる金利もっとも高い金利合計の金利
9割以下0.240%1.230%1.470%
9割超0.240%1.490%1.730%

フラット35は、固定金利での契約となります。そのため、上記で取り上げているそのほかの金融機関よりも、高い利率となっています。

 

簡単にシミュレーションしてみましょう。例として、みずほ銀行でがん特約を付けた場合と、付けていない場合の返済額を計算してみます。住宅ローンの残債が3,000万円だった場合、年間の金利は以下のように変わります。

  • がん特約に加入していない場合:18万7,500円
  • がん特約に加入している場合:23万2,500円

差額となるのは4万5,000円です。単純計算になってしまいますが、4万5,000円の差が30年間続いたとすると、135万円ということになります。この金額を費やしてがん特約に加入する価値があるのかどうか、いま一度考えて結論を出しましょう。

団信は誰もが加入できるわけではなく、審査を通過しなければ、契約を結ぶことができません。生命保険の一種として扱われる商品なので、健康状態に関する審査があり、この際には自身の体調や病歴について、真実を告知する義務が生じます。

 

契約内容によっては診断書の提出が必要なケースもありますが、住宅ローンの金額が5,000万円を下回る場合などは、診断書が不要になるケースがほとんどです。従って、虚偽の情報を提示すれば審査をすり抜けられてしまう場合もありますが、うそが発覚したときは厳しく対処されます。

 

団信の告知義務を果たさなかった場合、加入している団信が解除される可能性が極めて高くなります。住宅ローンは30年以上にわたって付き合い続けるものですから、告知義務はしっかりと守り、正々堂々と審査を受けなければなりません。

告知義務の内容として問われることが多いのが、“直近の3ヶ月で医師による指示や治療を受けたかどうか”です。投薬を含め、医療機関でなんらかの診療・治療を受けた場合には、そのことを正直に伝えなければなりません。

 

また、過去数年以内に脳卒中や高血圧症、糖尿病、肝炎、腎炎、緑内障、がん、精神障がいなどの病気にかかったことがあるかどうかという質問も行われます。同様に、手や足に欠損や機能障がいがある場合なども、これを告知する義務があります。

 

がん特約の場合、過去にがんにかかった経験が一度でもあれば、残念ながら契約を結べない場合がほとんどです。うそをついて特約を付けても、将来的にがんにかかった場合、診断の際にうそがばれてしまいますから、病歴を隠すことはできません。

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団信のがん特約に加入すると、がんに初めてかかった場合に、住宅ローンの残債をゼロにすることができます。日本人の2人に1人ががんにかかるともいわれている時代なので、不安がある場合には、加入するといいでしょう。

 

がん特約は、通常の団信に金利0.1~0.2%程度を上乗せして契約することになります。団信への加入時には告知義務を守らなければなりません。うそをついて加入すると、団信が解除されることになりますから、虚偽の情報を伝えることは絶対に避けましょう。

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更新日: / 公開日:2020.08.27