一人暮らしに必要な部屋の広さは「25平米」(壁芯面積)とされていることをご存じでしょうか?

これは、国土交通省「住生活基本計画における居住面積水準」で示された数字であり、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な住宅面積の目安といわれています。

しかしながら、特に家賃の高い都内では、25平米に満たない部屋に住んでいる人も多いでしょう。国で定められた基準と、実際に借りられる広さの間にはギャップがあるのかもしれません。

実際のところ、東京都で必要不可欠な広さを確保するには、どのくらいのお金が必要になるのでしょうか。

2022年にLIFULL HOME'Sで掲載された物件データを基に、必要不可欠な広さ「25平米」について詳しく見ていきましょう。

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25平米の間取り例

25平米の間取り例(ワンルーム)

まず、健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠とされる「25平米」の東京都23区の家賃相場を、ランキング形式でチェックしてみましょう。

健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠とされる「25平米」の東京都23区の家賃相場

もっとも安いのは足立区の6万8,880円でした。東京23区内で「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」を確保するなら、少なくともこの水準の家賃は必要であることが分かります。

 

また、23区内における平均家賃は9万1,848円なので、これが東京23区内で「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」を確保するのに必要な平均的な基準といえます。

 

もっとも高いのは港区の14万1,428円で、足立区との差はなんと7万2,548円と倍以上の家賃です。

 

一口に東京都23区といっても、エリアによって家賃に大きな違いがあるため、どこに住むかで「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」を確保できるかどうかが変わってくるでしょう。

 

では、「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」に住むには、どのくらいの収入があればいいのでしょうか。

 

総務省統計局の2021年「家計調査」(※)によると、賃貸物件(民営借家)で一人暮らしをする人の家賃を除く1ヶ月当たりの生活費は12万8,323円となっています。

 

主な支出の内訳は次のとおりです。

総務省統計局の2021年「家計調査」賃貸物件(民営借家)で一人暮らしをする人の家賃を除く1ヶ月当たりの生活費

この生活費12万8,323円に家賃を足した金額が、毎月かかる費用の目安になります。

 

25平米の物件を東京都23区内で借りる場合、家賃相場のもっとも安い足立区(6万8,880円)では19万7,203円、もっとも高い港区(14万1,428円)では26万9,751円です。

 

つまり単純に考えると、東京都23区内で一人暮らしをする場合、健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さを確保しようとすれば、少なくとも毎月20万~27万円程度の支出後も、貯金や急な出費にも対応できるくらい余裕のある収入が必要だということです。

 

※ 総務省統計局「家計調査 家計収支編 単身世帯〈用途分類〉1世帯当たり1か月間の収入と支出/住居の所有関係別 2021年

 

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家賃の目安として、一般的によく言われるのが「手取りの3分の1以内」というものです。

 

手取りとは、勤務先から支払われた給与(総支給額)から所得税や住民税、社会保険料などを控除したものを指し、総支給額の80%程度にあたります。

 

たとえば、月収が20万円だとすれば、手取りは約16万円で、家賃の目安は5万3,000円程度と計算できます。

 

先ほどの家賃相場を基に、手取り3分の1以内に当てはめた場合の月収と年収目安をまとめてみました。

手取り3分の1以内に当てはめた場合の月収と年収目安

25平米の物件を東京都23区内で借りる場合の、手取りの目安は月20万6,639円~42万4,284円程度となります。

 

この25平米の物件に住む場合の手取り額の目安は、世間一般的にどのくらいの水準にあたるのでしょうか。

 

国の調査データ(2021年)を基に年齢別にまとめた、全国および東京都の平均収入一覧(※)を基に照らし合わせてみましょう。

年齢別にまとめた全国および東京都の平均収入一覧

このデータを踏まえると、家賃相場のもっとも安い足立区(6万8,880円)の物件を借りるには、月の手取り目安は20万6,639円なので、全国では25歳以上、東京都では20歳以上並の収入が必要であることが分かります。

 

もっとも高い港区(14万1,428円)では、月の手取り目安は42万4,284円なので、全国平均では該当せず、東京都でも40歳以上並の収入が必要だといえます。

 

決して、広々とした部屋を借りるわけではなく、「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」を借りるケースの話ですが、東京の都心部で“必要不可欠な広さ”を確保できる人は、ある程度限られてくるといえそうです。

 

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東京都の市部で「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」の部屋を借りる場合、家賃は23区と比べてどのくらいの差があるのでしょうか。

 

先ほどと同じく、2022年にLIFULL HOME’Sで掲載された物件データを基に見ていきましょう。

 

東京都・市部の平均家賃相場は6万4,714円…区内より2万5,000円ほど安くなる

東京都の市部で「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」の家賃相場

同じ東京都でも市部に目を向けると、「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」を借りる際の平均家賃相場は6万4,714円という結果に。

 

東京都23区内の平均家賃が9万1,848円だったので、比較すると市部では2万5,000円程度安くなることが分かります。

 

三鷹市や狛江市、調布市、武蔵野市のエリアは、23区内と変わらない水準である一方、それ以外のエリアであれば7万円以内に収まることが分かります。

 

ただし、エリアによっては物件数が少ないケースもあるため、希望に合う部屋が見つからない場合は、東京都だけでなく、近隣県にまでエリアを広げて探してみるといいでしょう。

東京近郊県「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」平均家賃

千葉、埼玉、神奈川県の市区町村における「健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さ」の家賃相場TOP30の平均は5万907円でした。東京都と比較すると、かなりお手頃に感じるのではないでしょうか。

 

健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さも確保しつつ、リーズナブルに部屋を借りたいという人は、東京都23区内から市部、そして近隣県へとエリアを広げられれば、より理想に近い物件を見つけやすくなるでしょう。

 

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最後に、広さ以外に、物件を探す際のポイントについて紹介します。

 

ここまで見てきたように、都心部は郊外に比べて家賃が高くなる傾向があります。そのうえで「最寄り駅の利便性」や「最寄り駅までの距離」も家賃に大きく関係します。

 

快速や急行などが停車する駅や乗り入れ路線が多い駅は、家賃が高くなる傾向があるので、家賃を抑えるのであれば各駅停車しかとまらない駅の物件も候補に入れてみましょう。

 

また、設定した家賃で気に入る物件が見つからない場合は、駅までの徒歩所要時間を少し長く設定し直すことも必要です。

 

駅まで徒歩5分の便利な物件 家賃・賃料6万円以下の快適物件

 

一般的には、築年数が経過するごとに家賃も下がっていく傾向があります。築年数が経過した物件では、似たような条件の新築・築浅物件と比べて家賃が安くなっているケースがあるのです。

 

また、築年数が経過していても、リフォームやリノベーションによって室内はきれいな状態の物件も多くあります。そのため、広さを確保しつつも家賃を抑えたい場合は、築古物件を狙ってみるのもひとつの方法です。

 

リノベーション・リフォーム物件

 

賃貸物件の設備には、さまざまな種類があります。設備が充実していればいるほど家賃も高くなる傾向があるため、「必要な設備」と「あればうれしい設備」「不要な設備」をきちんと分けて考えておくことが大切です。

 

賃貸物件の設備には、専有面積に含まれないスペースがいくつかあります。ロフトもそのひとつで、ロフトの有無によって実際に使える広さには大きな違いが生まれます。

 

ロフト部分は就寝スペースや収納スペースとして活用できるので、通常の部屋よりも広く使えるのがメリットです。

 

25平米に満たない広さの部屋でも、ロフトがあれば、付いてない部屋に比べてスペースを活用できるので、狙って探してみるのもひとつの手です。

 

ロフト付きの物件

 

同じ建物内でも、部屋の位置によって家賃が異なることがあります。一般的には中部屋よりも角部屋、1階よりも2階以上のほうが家賃は高くなります。

 

そのため、家賃を抑えるうえでは、部屋の位置や階数にも目を向けてみましょう。

 

2階以上の物件 オートロック付き物件

国土交通省「住生活基本計画における居住面積水準」

25平米が健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な広さといわれていますが、厳密に言えば、次のような場合には、“25平米なくていい”とも国土交通省の資料(※)に記載されています。

 

  • 単身の学生、単身赴任者等であって比較的短期間の居住を前提とした面積が確保されている場合
  • 適切な規模の共用の台所及び浴室があり、各個室に専用のミニキッチン、水洗便所及び洗面所が確保され、上記の面積から共用化した機能・設備に相当する面積を減じた面積が個室部分で確保されている場合

 

つまり、学生や単身赴任での一時的な住まいや、シェアハウスや寮のようなプライベート空間と共有スペースが分かれているような住居スタイルであれば、25平米なくてもいいということです。

 

また、引越しが好きで、いろんな場所や物件に短期間ごとに移り住みたいというタイプの人も、25平米未満の部屋で問題ないといえるでしょう。

 

人や物件、間取りによっても、広さの感じ方はそれぞれですし、豊かな暮らし・住まいにおいて何を優先すべきかは人それぞれで異なります。

 

25平米が健康で文化的な住生活を送るのに必要不可欠な目安といわれていますが、あくまでも目安とし、ライフスタイルや周辺環境も含めて、自分にとって納得できる部屋探しを行うことが大切です。

 

※ 国土交通省「住生活基本計画における『水準』について

 

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以下条件で、LIFULL HOME’Sに掲載された賃貸物件の平均賃料(管理費・駐車場代などを除く)

 

期間: 2022年1月1日 ~ 2022年12月31日

エリア: 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県

間取り:すべて

物件種別:アパート、マンション

専有面積:25平米

築年数:30年以内

駅徒歩:10分以内

賃料:1万円以上~100万円以下

更新日: / 公開日:2023.05.09