秋は、新米の季節。土鍋でふっくらと炊きあがったつやつやぴかぴかのお米を想像すると、思わず食欲がそそられますね。
「土鍋ごはんは好きだけど、自分でやるのは難しそう…」「ただでさえ忙しいのに、土鍋で炊くなんて時間がかかりそう…」と思っていませんか?
実はコツさえつかめば、誰でも簡単に土鍋でお米を炊くことができるのです。
かくいう私も土鍋を使った炊飯方法をマスターし、赤ちゃんと一緒に過ごす育休中の今も、土鍋ごはん生活を続けています。
今回は「新米の秋」にぜひマスターしたい、土鍋ごはんの魅力や炊き方のコツについてお伝えします。
土鍋ごはんの美味しさの秘密
土鍋ごはんとは
土鍋ごはんとは、土鍋を使って炊いたごはんです。料亭や料理屋さんでは、こだわりの土鍋ごはんが出てくると幸せな気持ちになりますよね。
土鍋で炊くごはんはなぜ美味しいのでしょうか。その秘密は、土鍋の「熱伝導性の低さ」と「保温性の高さ」にあります。
一粒一粒の旨みが引き立つ、土鍋ごはん
熱伝導性が低いため、内部がしっかりと温まるまで時間がかかります。そのため、アミラーゼが一番働きやすいといわれる40~50度を長く保つことが可能です。アミラーゼとは、お米のでんぷんを分解して旨み成分を作り出してくれる酵素です。いきいきと働いたアミラーゼが旨み成分をたくさん引き出してくれるのです。
土鍋は保温性が高いことから、一度温まると温度が下がりにくいです。沸騰状態が続くことでむらなくお米を炊きあげることができます。
さらに火を消して蒸らしている間もじっくりと熱がお米に入り、余分な水分を飛ばしてくれます。その結果、一粒一粒が立っているふっくらごはんに炊き上がるのです。
家電量販店には5万円以上する高級炊飯器が並んでいます。高級炊飯器の中には、内釜や加熱の仕方を工夫することで土鍋を使った炊きあがりの食感と味を目指しているものもあります。つまり、土鍋の炊き方をマスターすれば、高級炊飯器を購入しなくてもその味を楽しめます。
土鍋ごはんをはじめたきっかけ
炊き方一つで感動的な美味しさに
私が土鍋ごはんをはじめたのは、「週末婚」をしていたときでした。週末婚とは別々に暮らす夫婦スタイルのことで、食費や住居費などの生活費が二重にかかってしまうのがデメリットです。
そこで私たち夫婦は食費を少しでも抑えようと、いつもスーパーで一番安いお米を買っていました。
しかし、値段を優先して買ったお米はぱさぱさで、食べているだけでみじめな気持ちになることもありました。さらに10kg単位で購入するので、一度失敗するとしばらくその残念なごはんが続いてしまうのです。
ある日、夫が「土鍋でお米を炊くと美味しくなる! 」ということを知り合いから聞いてきました。わが家は鍋料理用の土鍋は持っていたものの、キッチンの奥にしまったまましばらく使っていませんでした。
半信半疑で試してみたところ、あまりの美味しさに感動しました。安いお米だから美味しくないのだと思いこんでいましたが、炊き方一つでこんなにも変わるのかと驚いたのです。
さらに、土鍋ごはんであれば、炊飯器ではできないような香ばしくてきれいなお焦げを作ることも簡単です。面白いことに食事の中心であるごはんが美味しいと、食事全体の満足度が高くなります。
それがきっかけで、わが家の基本は土鍋炊飯になり、予約機能を使いたいときにのみ炊飯器でお米を炊くという暮らしになりました。
手間もかからない土鍋
土鍋ごはんの魅力は、美味しいのに短時間で簡単なところです。これから紹介する基本の土鍋ごはんの炊き方は、炊く時間そのものは3合で30分程度なので、炊飯器で炊く場合と大差がありません。
共働きかつ週末婚というスタイルで料理に時間をかけられなかった私が、土鍋ごはんライフを続けられている1番の理由です。実際に料理があまり好きではない夫も、「この程度の手間で美味しくなるなら」と、進んで土鍋でお米を炊いてくれています。
つまり、土鍋ごはんは決して食事にこだわりがある家庭のものではなく、どのご家庭でも簡単に取り入れられるのです。週末婚を終えて出産し、赤ちゃんがいる今もおかずは週末に作り置きして電子レンジで温め、ごはんは土鍋で炊くようにしています。
土鍋ごはんの基本の炊き方
土鍋を用意しよう
まずは土鍋を用意しましょう。炊飯専用のこだわった土鍋もたくさん販売されていますが、普通の鍋料理に使う土鍋でも問題なくお米を炊くことができます。
炊飯専用の土鍋は、吹きこぼれにくいように鍋のふちが高くなっていて、より炊きやすい構造になっているのがメリットです。そのため、鍋料理用の土鍋は炊きあがりの容量を6割程度におさえておきましょう。炊飯専用の土鍋を使えば、推奨されている量まで炊くことが可能です。
一方で、炊飯専用の土鍋を購入すると、キッチンを圧迫してしまうというデメリットもあります。わが家は賃貸の2LDK暮らしでキッチンも手狭なので、4人用の鍋料理用の土鍋を愛用しています。もし鍋料理用土鍋をお持ちであれば、まずはそれを使ってチャレンジしてみましょう。
土鍋ごはんの炊き方(基本編)
それでは、わが家の定番の炊飯方法を紹介します。
材料
・お米(3合)
・3合に対して水600mLが目安
調理器具
・土鍋(鍋料理用、4人用)
・ざる
・ボウル
(1) 3合のお米をボウルで研いだ後、ざるにあげて30分置く。
お米を研ぐときは、必ず土鍋ではなくボウルを使うようにしましょう。火をかける前に土鍋が濡れていたり水をたくさん吸っていたりすると、土鍋にひびが入ったり割れたりする恐れがあります。
また、必ずしも30分をしっかり計る必要はありません。私は赤ちゃんがいるためまとまった時間がとりにくく、時間があるときにお米を研いでざるにあげ、ラップをして置いておきます。
(2) 土鍋に研いでおいた3合分のお水を入れて、中火でおよそ9分。
(3) 湯気が出たのを確認し、弱火で9分。
湯気が出ていれば沸騰していることが確認できます。不安であれば、そっと蓋をあけて確認してください。お焦げを楽しみたい方は、最後に10秒ほど強火にかければきれいなお焦げを作ることができますよ。
(4) 火を消した後コンロから別の場所に移し、9分蒸らせばふっくら土鍋ごはんの完成!
蓋をあけた瞬間、ふわっと甘いお米の香りが広がります。
お米を研いで置いておく時間は別にかかるものの、実際に炊きあげる時間は計27分です。炊飯器よりも短時間で炊くことができます。
ベストな火加減や時間は、使用する土鍋やガスコンロによって違うので、お持ちの土鍋でいろいろ試してみてくださいね。ちなみに私は2回試してみたら、上手な炊き方を見つけられました。
さらに仕上がりにこだわりたい方は、ざるにあげて置く前に浸水する時間をとりましょう。ボウルの中でお米が浸かる程度のお水で春夏なら30~60分程度、秋冬なら60~120分程度、浸水させればOKです。
土鍋ごはんの炊き方(応用編)
普通のごはんを炊くのに慣れたら、季節の野菜などを入れた炊き込みごはんにもチャレンジしてみましょう。バリエーションが増えて、ますます土鍋ごはんが楽しくなりますよ。
新米ときのこを使った炊き込みごはんで実りの秋を堪能しよう
材料
・お米(3合)
・お好きなきのこ 適量
・油揚げ 1/2枚
・みりん 大さじ2
・酒 大さじ2
・しょうゆ 大さじ2
・水 580ml
作り方
(1) 3合のお米をボウルで研いだ後、ざるにあげて30分以上置く。
(2) きのこを小さめに割いてから塩を振り、フライパンで焼く。
(3) 土鍋にお米と焼いたきのこ、残りの材料をすべて広げて入れ、調味料と水を合わせて注ぎ、蓋をして中火で10分。
(4) 湯気がでたのを確認して弱火で9分。
(5) 火を消した後、コンロから別の場所に移し、10分蒸らして完成!
土鍋のお手入れ方法
土鍋は粘土でできており「小さい穴が無数にある」「水を吸収しやすい」という特徴があります。この特徴を意識して、お手入れをしていきましょう。
(1) 使いはじめのお手入れ(目止め)
使いはじめには、まず土鍋の穴を埋めてあげるお手入れ(目止め)が必要です。
まずはざっと土鍋を洗って乾いた布で拭き、底面を上にして乾かしましょう。その後、片栗粉を水の量の10%程度入れて溶かし、30分程蓋をしないまま弱火で煮ます。この作業によって、片栗粉に含まれているでんぷんが土鍋の穴を埋めてくれます。
(2) 普段のお手入れ
土鍋は急激な温度変化に弱いので、熱いまま洗うと割れたりひびが入ったりする恐れがあるので注意してください。食事をした後に洗うなど、充分に土鍋が冷めてから水で洗い、乾燥させましょう。食器用洗剤を使う場合は少量で済ませるようにします。使いはじめと同じように、乾かすときは底面を上にしてください。
(3) 焦げてしまったときのお手入れ
ついつい火を強くしてしまって焦げたときは重曹を使えば大丈夫です。土鍋の8分目くらいまで水を入れ、重曹を10%程度入れて溶かし、10分ほど煮立てましょう。
土鍋ごはんは災害のときにも
普段から土鍋でごはんを炊くことに慣れていれば、地震や台風などの災害時にも役立ちます。停電して電気が使えなくてもカセットコンロさえあれば、あたたかいごはんを食べられます。ぜひカセットコンロを使って土鍋ごはんを炊き、もしもの災害に備えましょう。
土鍋ごはん生活に適した住まい
私が日頃から行っている土鍋ごはんの炊き方、アレンジレシピやお手入れについて紹介してきました。鍋料理用の土鍋でも、コツさえおさえれば簡単にできるのが土鍋ごはんの魅力です。
それでは次に、土鍋ごはんライフを楽しみやすい住まいの環境ついてご説明します。
3口コンロのある物件
炊飯器でお米を炊く場合との大きな違いとして、土鍋での炊飯はガスコンロを1口占領してしまうのがデメリットです。私は週末婚時代、2口コンロ付きのワンルームマンションに住んでいました。おかずは基本週末に作り置きしていたので、問題なく土鍋ごはん生活を楽しんでいました。
しかし、ほかほかの土鍋ごはんに合わせてでき立てのおかずを用意したいと思うと、コンロが足りないと感じることもありました。
3口コンロのある物件に引越した今は、ごはんの炊きあがりと同時にお味噌汁と卵焼きを用意することも全く問題ありません。土鍋でごはんを炊き、おかずを1品作っている横で、赤ちゃんのミルクやお茶用にお湯も沸かせます。土鍋ごはんを楽しみたい方は、3口コンロがおすすめです。
※LIFULL HOME`S掲載物件のうち、「3口コンロ」を詳細情報に含む賃貸物件を集めました。
キッチンの収納スペースが広い物件
すでに土鍋をお持ちの方は、キッチンのどこに収納されていますか? 鍋の季節の冬にしか土鍋を使わないから奥にしまっているという方も多いかもしれません。
毎日土鍋ごはんを炊くなら、絶対に土鍋がすぐ取り出せる方が便利です。土鍋の置く場所がフライパンなどの調理器具の奥にあると、結局炊飯器をメインで使う生活に戻ってしまいます。
私は土鍋をすぐ取り出せるように収納するようになってから、より土鍋を使ってお米を炊くことへのハードルが下がりました。キッチンの収納スペースに余裕がある物件なら、土鍋を日常から使う暮らしを維持することができます。
※LIFULL HOME`S掲載物件のうち、「パントリー」を詳細情報に含む賃貸物件を集めました。
お米の専門店がある街
土鍋ごはんはお米の美味しさを最大限引き出してくれるので、こだわりのお米を使って味や食感の食べ比べをしても楽しいです。
お米の専門店であれば、スーパーに並んでいないようなワンランク上のお米を購入できます。少量から気軽に購入できるのもポイントです。土鍋で炊いたグレードの高いお米は、もはや料亭や料理屋さんに負けない味です。
お米が大好きでこだわりたい方は、ぜひお米の専門店が近所にある住まいを検討してみてくださいね。
土鍋でふっくらごはんを炊く生活
食事の中心であるお米をぐっと美味しくできるのが、土鍋ごはんの魅力です。コツさえ覚えてしまえば、毎日美味しいごはんを楽しめますよ。手間も時間もかからないので、わが家はすっかり炊飯器が脇役の生活になりました。
食卓にふっくらつやつやのお米が入った土鍋が並んでいるだけで、いつもの食事にこだわりの雰囲気がプラスされます。特に新米が手に入りやすい秋は、土鍋ごはんをはじめるのにぴったり。美味しい新米と一緒に、今年の秋は土鍋ごはんライフを楽しんでみてくださいね。