『Dorf』_D様邸

力強く重なる2つの切妻屋根が、住まいの風格を感じさせるデザインです。パッと目を引くダイナミックなフォルムでありながら、真っ白な外壁と整然と並ぶ窓が、全体に落ち着きと端正な印象を与えています。装飾を抑えたシンプルな構成は、年月を経ても色褪せない、飽きのこない美しさを形にしています。

道路からドアが丸見えではないこの「路地」のような設計は、外部の視線を遮るシェルターの役割も果たします。 ドアの鍵を開ける前、一息ついて肩の力を抜く。 「ただいま」と言う前の、ほんの数秒の贅沢な瞬間が、ドアを開けたとき、笑顔で「ただいま」と言えると考えました。

空間の構成要素を極限まで絞り込み、石・木・鉄・光といった素材の対比を際立たせた設計です。大地を感じさせる床、リズミカルに配置されたスケルトン階段の踏板へと続く木質感が、空間に連続性と奥行きを与えてくれます。テクスチャー豊かな白壁に映えるオリジナル照明の陰影が、時間ごとに異なる素材の美しさを引き出しています。

キッチンとリビング。家族の気配を感じられる開放感はそのままに、機能的なディスプレイ棚をひとさじ。 調理中の手元や生活感はさりげなく視界から遠ざけ、お気に入りの雑貨たちが主役となる景色を作りました。「見せたくないもの」を隠すのではなく、「見せたいもの」で空間を仕切る。 機能と美しさが心地よく連続するゾーニングの形です。

職人の手仕事が光る漆喰の壁に、木の扉。足元には温かな無垢材、天井には味わい深いエイジング加工を施しました。 自然素材がつくり出すこの空間では、傷や色の変化さえも「家族の記憶」として愛着に変わります。時とともに美しさと深みが増していく、一生もののリビングです。

キッチンから秘密の空間のようなパントリーへ、機能的な動線を「アーチの入り口」が「ちょっとした路地」へと変えてくれます。