大阪・昭和町にある古着屋「KAZE MACHI ROMAN」は、昭和町駅から徒歩約11分、繁華街から離れた穏やかな住宅街のなかにあるにもかかわらず、大阪だけでなく遠方に住む人からの支持も厚い人気店です。
「風街ろまん」といえば、1970年代に活動していた日本のバンド、はっぴいえんどの名作アルバムで、音楽好きならその名に期待が高まる人もきっといるはず。固定観念に縛られない柔軟な発想で、今までにないスタイルの古着屋を営む店主・飯田隆さんにたっぷりとお話を伺いました。大阪府の物件を探す

店主の飯田隆さん。この日レコードから流れていたのはChuck Senrickの「Dreamin’」

―「KAZE MACHI ROMAN」は最初オンラインショップからスタートしたとのことですが、どういった経緯で実店舗を構えることになったのですか?

飯田隆さん(以下、飯田さん):「『KAZE MACHI ROMAN』を始める前は、雑貨屋、古着屋、農業などいろんなことをしながら 10年ほどバンドをやっていて、音楽で生計を立てるのが目標だったのですが、30代に入ってすぐの頃に子どもを授かり、このままではなく違う生き方を真剣に考えるようになりました。

その時にまず自分が好きなことをノートに書き出してみて、音楽の次が古着だったんで古着屋かなって。「古着屋をやるならまずはアメリカにいかないと!」と意気込んだのはいいものの、お金はどこにもなかったので、バンドマン時代に大事にしていたヴィンテージギターや機材を売却して「このお金持ってアメリカに行ってきてもいい?」って当時まだ子どもが生まれたばかりの妻に相談したところ、大変な時期にもかかわらず「行っておいで!」と背中を押してくれて、そのまま初めてのアメリカ買付へ行くことになりました。

帰国後に始めたオンラインストアが 1 年くらいで軌道に乗ってきて、そのタイミングで現店舗の物件の話を頂いて今に至ります」

2018年にリノベーションされた『アベノ洋風長屋』。『KAZE MACHI ROMAN』含む5軒の店が並ぶ

―外観がとてもすてきな物件だなと思っていました。

飯田さん:「ここは1929年に建てられた長屋なんです。老朽化していたところをリノベーションして、さまざまなお店をテナントとして迎え入れて復活させようというプロジェクトから始まった物件で、当店の他にも素敵なお店が連なっているのも特徴です。

現在(2024年)はカフェや観葉植物の店があったり、おにぎり屋さんなどが営業しています。この辺りは古着屋もまだまだ少なくて、ありがたいことに「こんなところに古着屋がある」とたくさんのお客さまがインスタグラムでシェアしてくださったことをきっかけに広がって、当店へ辿り着くには駅からも少し歩かないといけないので、その分「阿倍野にもこんないい古着屋があるんだ!」と思っていただけるように心がけて買い付けしています。

あとは、現在不定休で営業しているのですが、自分が楽しくなかったり、ラインアップに納得いかない日は基本的には店を開けないようにしています」

―楽しくない日は店を開けないというのはどうしてですか?

飯田さん:「お客さまが休みの日に使ってくれる時間を楽しいものにしたいと思うんで、自分が「これいいですよ!」って気持ちよくおすすめできないラインアップが目立つ日はテンションが上がらず良い仕事ができないので開けないというか。お店をはじめた頃はまったくそんな考え方ではなく、売り上げを作らないと、毎日開けないと、という考えばかりで、お客さまも自分自身も楽しめてない日が今より多かった気がします。

そこを思い切って“テンションが上がらない日は休む”に舵切りをしたら、始めた頃より売り上げも上がりました。でも売り上げが上がると気持ちも比例して天狗になってしまうんで、常にフラットでいられるように調子にのったら半年に1回くらい奥さん に怒ってもらってます(笑)。で、めっちゃ落ち込む(笑)。それで初心をしっかり忘れないように保っています」

―(笑)奥様ととても良い関係性ですね。

飯田さん:「この物件を教えてくれたのも奥さんなんです。僕自身は最初、住宅街で周りには家しかないし、ここで商売やるのは難しいって思ってたんですけど、(奥さんが)「絶対大丈夫!ここがいい!」って言ってくれて、僕も「じゃあそうしよう!」ってどこからともなく謎の自信が湧いてきて(笑)。お店を始めてからも、売り上げがガクッと落ちることって全然あるんですけど、そういうときに『今一番欲しいものを今すぐ買って自分の機嫌をとりなさい』と言ってくれる人なんです(笑)」

―なかなか言えないセリフ…!かっこいい奥様ですね。

飯田さん:「そうしたらテンションも上がって自然と売り上げも上がるんですよね。自分の気持ちが良い方向へ向くと、不思議と会いたかった人が店に来てくれたり、お客さんも調子良さそうだったり、よくわかんないですけど目に見えない良い作用が起こったりする。そういう機嫌の取らせ方をしてくれる頼りになる奥さんです」

ジャズTシャツ各種。左からチャーリー・パーカー(29,800円)、バディ・リッチ(25,900円)、マイルス・デイヴィス(29,800円)

―ラインアップやバイイングのこだわりを教えていただけますか?

飯田さん:「ブームを捉えつつも、別の角度から提案したいなって。例えば、バンドTシャツが流行ってるならジャズTシャツの方がかっこよくない?って打ち出したりして、時代にフィットしつつ、おしゃれに見えるものを集めるようにしています。古着だから出せるオリジナリティを、KAZE MACHI ROMANらしさとして提案できたらいいなとは常に思っています」

店主のイチオシその① “新郎”Tシャツ(13,900円)

―最近買い付けた商品のなかでビビッときたものはありますか?

飯田さん:「最近見つけたなかで特にいいなと思ったのがこのTシャツ。美しいフォントで “GROOM ” って書いてるんですけど、これ“新郎”って意味で、多分結婚式の2次会か何かで作ったものが新郎さんの分だけこの店に流れてきたっていう(笑)。物語性があるし、フォントは今っぽいけどブランドでは作らなさそうなワードチョイスも、古着特有の二度と出会えない感があって気に入ってます」

―“got 〇〇?“と書いているTシャツがたくさん並んでるのは何のシリーズですか?

飯田さん:「アメリカでミルクの消費量を上げるために、ハリウッドスターなどを起用したプロモーションの一環で“got milk?(ミルク買ってある?)”っていう宣伝広告があったんです。そこから派生してさまざまなパロディとしてこういった面白いアイテムがたくさんあるんですけど、このシリーズがまだあまり日の目をみていない時期に自分がいいと思って、何年か前に大量に仕入れて提案してみたらすごくウケて、KAZE MACHI ROMANではスタンダードになりつつあります。今ではすっかり全国的にも人気が出て価格も高騰しているのですが、もしかすると自分が提案したことで価値が上がるきっかけになっていたらうれしいなと勝手に思ったりしていますね。」

店主のイチオシその② オールドパタゴニアの深海魚柄アロハシャツ(20,000円)

店主のイチオシその③ Appleとチャンピオンのロゴが横並びするニットキャップ(13,900円)

―スタンダードのなかに少しクセがあったり、ベーシックだけど他の店では見つからなさそうなアイテムが多くて見ていてワクワクしますね。

飯田さん:「もっとこうしたらいいのにって思う古着は基本的に街のリペア屋にリメイクをお願いして、着丈など調整してから店出ししたりもしています。なのでもし柄は好きだけどサイズ感で悩まれた際は、ぜひ気軽にお声がけいただきたいです。リメイクすることによってマイサイズな一着をご提案できると思います 」

―リメイクした古着を自店のオリジナルアイテムとして売る古着屋はありますが、「KAZE MACHI ROMAN」のリメイクは気に入った服を長く着られるようにするための提案といった感じでしょうか。

飯田さん:「そうですね。その方に似合うようにリメイクするって感じです。そうしたら次からそのお客さんの好みもわかるし提案しやすくもなる。たとえば着丈が長いTシャツってパンツにインしたら着られるけど、それだとコーディネートの選択肢も狭まって、その人がファッショナブルにはなっていかないと思っていて。 その場でリメイクを一緒に考えて、その人にあったサイズ感を提案するっていうのは古着の提案としては新しいかもしれないですね」

―飯田さんご自身は昭和町にはもともと縁はあったんですか?

飯田さん:「通っていた高校がこの近くだったというのはあるんですけど、まさか自分がここに戻ってくるとは思ってなかったです。学生時代の思い出の街でもあるので、ここで店をやっていることが不思議な気持ちです」

―改めて感じる、土地の魅力や好きなところはありますか?

飯田さん:「ゆるいつながりはありつつも何かを強要されることはない、その距離感はこの街特有ですね。夜ご飯でお酒も飲むなら「DJANGO」や「bowl」、レコード好きなら「昭和町ミュージック」、器やインテリアが好きなら「futou」、喫茶店なら「再會」とか、それぞれの気分で提案できるいい店もたくさんあります。とくに近隣の集まりとかはないけど、偶然飲みにいったバーでゆるくつながって、ゆるく協力するみたいな感じが好きです」

―最後に、これからの展望を聞かせてください。

飯田さん:「新しいスタッフを雇って、育てて、もう1店舗出したいなって思いがあります。KAZE MACHI ROMANで学んだことをベースにしながらも得たことに固執せず、手放しても良いと思ったものは手放せる身軽さを持ちながら、お客さまに新しさを感じてもらえる新店舗を作っていくことが理想です。新しいスタッフが入ることによって店がどう変化していくのかも楽しみです」

店内の植物のほとんどは谷町六丁目にある「abcde」で購入。最近で一番のお気に入りは、青い鉢に植えられたアンスリウム

◆今回取材したお店

「KAZE MACHI ROMAN」

住所:大阪市阿倍野区阪南町3丁目7-7

営業時間:14:00〜19:00

定休日:不定休(Instagramのストーリーズや投稿でお知らせ)

Instagram:@kaze_machi_roman

ONLINE SHOP:https://kazemachi11.thebase.in

KAZE MACHI ROMAN

日本、大阪府大阪市阿倍野区阪南町3丁目7−7 KAZE MACHI ROMAN

KAZE MACHI ROMAN

〒545-0021 日本、大阪府大阪市阿倍野区阪南町3丁目7−7 KAZE MACHI ROMAN

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今回お話を伺った「KAZE MACHI ROMAN」の最寄り駅は、Osaka Metro御堂筋線の昭和町駅。1つ隣の駅は天王寺駅で繁華街が近いエリアにもかかわらず、改札を出て地上に上がると、高いビルが少なく、都会の忙しなさとは真逆の緩やかな時間が流れることにまず驚きます。

大通り沿いにスーパーやドラッグストア、100円ショップなど生活するなかであればうれしいお店がそろい、路地に入れば長屋の木造建築の家が今も残る静かな住宅街が広がります。

1Kの家賃相場は6.09万円。今回のお話にあったように、繁華街にはないような個性的なお店もたくさん。一人暮らしからファミリー層まで世代問わずおすすめしたいエリアです。

◆本記事の担当者

取材・文:福永杏 写真:上村典子

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公開日: