神戸の中心地・元町のお隣、花隈。元町に比べ住宅なども増え、落ち着いた雰囲気のエリアです。そんな花隈に2015年にオープンしたのがパニーノ専門店の「ポルトパニーノ」。イタリアへ行き現地の料理教室やマンマから料理を教えてもらった地本さんが始めたお店です。
パニーノとはイタリアのサンドイッチのことですが、日本ではまだまだ本場の味を楽しめるような専門店は多くありません。そんな中「ポルトパニーノ」は、小さいお店ながらもひっきりなしにお客さんが訪れる人気店。なぜ、ここ花隈で始まったのでしょうか。お店を通して見える、街の景色を紹介します。兵庫県の物件を探す
初めはバリスタに憧れて。イタリアの食文化に魅了された1年間

―オープンして8年半が経つそうですが、そもそもなぜパニーノ専門店を開くことにしたのでしょう?
地本さん:「イタリアのフィレンツェで料理を学んだのですが、パニーノを食べることも作ることも大好きだったので」
―イタリア料理はピッツァにパスタなど日本人も親しみのあるメニューが多いですが、いろいろなメニューを出すレストランではなく、専門店にしようと?
地本さん:「そうですね。当時パニーノ専門店は日本にほとんどなかったですし、せっかくなら専門店にしてみようと思いました。イタリアではパニーノテカと言って、町中にたくさんあるんです」
― イタリアにはいつ頃行っていたんですか?
地本さん:「2003年から2004年にかけて、約1年間です。実は初めは、コーヒーを学ぼうと思ってたんですよ」
―そうだったんですね!バリスタを目指していたんですか?
地本さん:「そうなんです。私は芸術学科の出身なんですが、アートにまつわるカフェをやりたいなと思っていて。それで、どうせやるならめっちゃ美味しいコーヒーを出したい!と思って、留学することにしました」
―それでいきなり、イタリアへ?
地本さん:「私、めっちゃ極端なんです(笑)。コーヒーの美味しい国へ行きたいなと思っていくつかピックアップした中にイタリアがあって。イタリアは食事も美味しいイメージがあるし、アートも多いし、サッカーも好きだし、いいかも!って」
―なるほど、そういう経緯だったんですね。コーヒーというと、イタリアはナポリがエスプレッソ文化発祥の地と言われていたりしますが、どの街へ行かれたんですか?
地本さん:「トスカーナ州のフィレンツェです。たまたまマンマから料理を学ぶというコースがフィレンツェで見つかったので、決めました。コーヒーを学びたいと行ったイタリアですが、結局向こうに行って料理のおいしさに目覚めてしまって。だからバリスタになりたいというよりも、食文化自体を伝えられるような人になりたいなと考えるようになったんです」

―イタリアは州ごとにも食材や料理が全然違い、おもしろいですよね。スローフードという言葉もイタリア発祥のものですし、地産地消を大切にしている。
地本さん:「そうですね。それとやっぱり、食事を大切に考えている人が多いですね。日本の習慣が悪いとは思っていませんが、日本はどちらかというと速さや手軽さが重視されますよね。イタリアは、どちらかといえば一回一回の食事を大切にする人が多い。日本では、家族と一緒に住んでいても、食事の時間がバラバラな家庭もある。でも向こうの人って、本当に家族が揃って食べるんですよね。そういう食事に対する考え方がすごくいいなって、感動しました」
寄り合い所のような空気が生まれたのは、このエリアならでは。

―今は、メニューは何種類ぐらいあるんでしょう?
地本さん:「だいたい20種類ぐらいですね。でもこれはあくまで一例なので、これを基に、チーズを変更したり、トッピングを足したり、みなさん好きなように注文しています。パンも3種類あって、それぞれのメニューにおすすめのパンがありますが、自分の好きなパンに変更される方もたくさんいますよ」

―みなさん、好みとこだわりがあるんですね。そうやって自分の好みを注文できる環境も、なんだかイタリアみたいですね。
地本さん:「そうですね(笑)。毎日食べに来てくれる常連さんもいらっしゃいますよ。私、日本で一番自分がパニーノを食べていると思っていますが、その方はオープン当初から来てくださっているので、日本で2番目にパニーノを食べているのではないかと思います(笑)」
―(笑)。毎日食べても飽きがこないのは、種類が豊富なだけでなく、サンドイッチよりも、より食材のおいしさが引き立つからかもしれないですね。
地本さん:「今からつくる、生ハム・トマト・モッツァレラチーズのパニーノは、オリーブオイルだけで塩胡椒も使っていないんです。メニューによってはこれぐらいシンプルですし、だから食べ続けられるのかもしれませんね。もう3年半ぐらい毎日通ってくれている91歳のおばあちゃんもいらっしゃいます」

―すごく幅広い世代の方が、来ているんですね。
地本さん:「そうなんです。やっぱり三ノ宮や元町に比べると、花隈は下町というか。店を出す前は中心地の隣ですし、若い子が多いのかな?と思っていたんですが、実は昔から住んでいる方が多いエリアで、ご高齢の方もたくさん住んでいるんですね。あとファミリー層も多くて、うちにも2〜3歳ぐらいの子がパニーノを食べに来てくれます。昼にパニーノを食べに来て、夕方にコーヒー、ビールを飲みに来るなど、バールのように使ってくださる方も多いです」
―イタリアのバールは、幅広い世代の人が日常の合間合間に訪れていて、日常の一部になっていてとてもいいですよね。
地本さん:「うちは、なんだか寄り合い所というか公民館みたいになってますね。おしゃべりするために常連さんが集まって、みかん食べてたり(笑)。もちろんパニーノは食べて欲しいですが(笑)、そうやって人が集まれる雰囲気になったのはこのエリアならではだと思いますし、花隈を選んでよかったなと感じています。三ノ宮の方では企業などが経営しているお店が多いですが、花隈は個人店が多くお店同士も仲が良いです」


―なるほど。そういえば神戸は、外国人の方も多く暮らしている印象ですが、お客さんにも多いですか?
地本さん:「神戸在住の外国人のお客さんが、めっちゃ多いですね。彼らに聞くと、『おいしいサンドイッチになかなか出合えなくてここに辿り着いた』と言ってくれることが多くて、嬉しいです。ベジタリアンの方も多いので、最近はベジタリアンのメニューにも力を入れていて」
―どんなメニューなんですか?
地本さん:「フムスや、アーティーチョークとクリームチーズのオーブン焼きなど、いろいろやっています」
―おいしそう! ベジタリアンメニューと聞くと生野菜などのイメージがあったのですが、全然違いますね。
地本さん:「そうですね。手の込んだ野菜料理を挟んだパニーノを提案していて、ベジタリアン以外の方にも結構人気です」
―ぜひ食べてみたいです。イタリアにはその後も行ってらっしゃるんですか?
地本さん:「コロナ禍以前は、毎年イタリアへ行っていました。でも実は今年から、世界中のサンドイッチを食べる旅を始めたんです。3月にスタートして、まずは韓国とベトナム、シンガポールに行ってきました。9月からはアメリカに行きます」
―それは、おもしろそうですね。
地本さん:「来年は南米に行って、南米のサンドイッチを食べ歩こうかなって考えています」
―それが最終的にはメニューに仲間入りする、と?
地本さん:「そうですね。でもそのまま作るというよりかは、そこでインスピレーションをもらって、パニーノへアレンジしていきたいと思っています。ベトナムではカシューナッツでつくられたチーズが入ったサンドイッチを食べて、とっても美味しかったので、パニーノにもアレンジしてみました。アメリカにはホットドッグやハンバーガー、メキシコにはタコスもありますし、現地で味わってそこから何かアイデアにつなげていきたいなと思います」
―どんなふうにパニーノへアレンジされていくのか楽しみですね。
地本さん:「はい。チュニジアにすごくおいしいサンドイッチがあると聞いたんですよ。どうせやったら、何年もかけて大陸を回って、サンドイッチを食べていきたいなと思っています」

◆今回取材したお店
「ポルトパニーノ」
住所:兵庫県神戸市中央区元町通5-8-15
電話:078-362-2770
営業時間:11:30〜19:00
定休日:月曜休
Instagram:@portopanino
中心地の隣で下町情緒を感じる暮らし・花隈
「ポルトパニーノ」がある花隈駅は、神戸高速鉄道東西線が通っており、元町と三ノ宮の中間に位置しアクセス良好。一駅離れるだけで落ち着いた雰囲気があり、家賃平均も6.49万円と比較的安価なため、若い子育て世代や一人暮らしの方も暮らしやすそうです。
「ポルトパニーノ」のお客さんのお話やお店の雰囲気を見ると、町の人と人が遠すぎず近すぎずという程よい距離感がある印象も受けます。パニーノはもちろん、ワインやビール、コーヒー、そしてグラニータなどさまざまなメニューがあり、いろいろな時間帯に足を運べるのも魅力ですね。イタリア人が地元のバールに訪れるように、1日に何度も訪ねられるお店が暮らす町にあるのは、町を選ぶ際のポイントの一つになるはずです。
◆本記事の担当者
取材・文:小島知世 写真:沖本明
兵庫県の物件を探す更新日: / 公開日:2026.02.27










