ニュージーランドでは、人口の半分近くが過去1年の間に最低でも1回はガーデニングを楽しんでいるともいわれています。

そんな人気のガーデニングは一時期下火になったものの、コロナ禍のロックダウンもあって人気が再燃。世界的な食料価格の高騰もあって、最近、野菜や果物を自分の手で育てようとする人が増えています。

一言で「ガーデニング」といってもいろいろあります。ニュージーランドでは、「野菜や果物を作る場」としてだけでなく、「友情を育む場」であり、「癒しの場」ともなるのが、いわゆるコミュニティガーデンです。

最近日本でも同様の形態が増えてきましたが、ニュージーランドはまさにこの分野の先進国。今回は、ニュージーランドのコミュニティガーデンと、本格的な家庭菜園事情をご紹介していきましょう。

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キーウィ(ニュージーランド人のニックネーム)はガーデニングが大好き。このためコミュニティガーデンは決して珍しい存在ではありません。

 

例えば学校や先住民マオリの人たちの集会所などがある「マラエ」と呼ばれるスペース、教会など、さまざまな場所にあり、それぞれに所属する人たちが参加しています。

 

軒数としては、日本でいえば、各町内にコミュニティガーデンがあるといった具合です。

 

このようなグループに所属するコニュニティガーデンがある一方で、地方自治体の土地を借り、独立して活動を行うところも少なくありません。

 

地方自治体はコミュニティガーデンに協力的で、奨励・応援してくれる大切な存在になっています。

 

例えば私が住むニュープリマス市の場合、コミュニティガーデンは、

  1. 地域社会の楽しみとして、ガーデニングを実践する場、
  2. 屋外でのコミュニティ教育の機会を提供する場
  3. 地域社会と交流を行い、社会的福利を促進する場
  4. 自宅に十分な土地がない周辺住民のための家庭菜園の場

として位置づけられています。

 

首都のウェリントン市では、コミュニティガーデンを運営するグループに補助金が出されていて、グループは肥料や道具類、種子や苗などを、補助金で買うことができます。

 

地方自治体は土地だけでなく、運営面でも、コミュ二ティガーデンを支援してくれるのです。

 

コミュニティガーデンのよさは分かるのですが、一体どのようにそのコミュニティに入っていけば……。私も最初は迷いました。

 

しかし、難しく考えることではなかったようで、すでに近隣にコミュニティガーデンがある場合は、そこに入会すればよく、なければ自分で立ち上げることもできます。

 

新しく立ち上げる場合は、近くに住む同好の士に声をかけ、グループをつくります。

 

そして次のような内容を決めていきます。

 

・土地を用意して吟味

・担当者や運営のルールを決める

・どんな作物をどのように育てたいか、誰がどの作業を行うかを決める

・収穫物をどのように分配するかを決める

 

せっかく野菜などを自分たちの手で育てるのですから、オーガニックにこだわりたいという人も多くいます。足並みをそろえるために、皆で話し合いをします。

 

チームワークは実作業以外でも発揮されるのです。基本的にこんな形をとることが多いコミュニティガーデンですが、決して型にはまる必要はありません。

 

“場所、土壌、参加者によって、バリエーションがあっていい”、それがニュージーランドのコミュニティガーデンのいいところです。

 

さて、実際コミュニティガーデンとはどのように運営されているのでしょか。

 

私が現在住んでいるニュープリマス市内にあるコミュニティガーデン「マーフェル・コミュニティガーデン」を見に行ってみることにしました。

マーフェル・コミュニティガーデンでは、2週間に1度農作業が行われる  © Mari Sato-Clothier

 

こちらの土地はニュープリマス市からの借地。農作業は、2週間に1度、日曜日に行われています。

 

周辺住民が中心に行っていますが、やって来た人は誰でも喜んで受け入れてくれます。会費などは必要ありません。

 

畑は一瞬、手入れをしていないかのような印象を受けますが、定期的に作業をしている人にとっては働きやすい、満足のいく環境のようです。

 

几帳面に手入れが行き届いていても、もちろん問題はありませんが、きれいに整備しようとストレスになっては、コミュニティガーデンに参加する意義はなくなってしまいそう。

 

おおらかな気持ちで、自然と向き合ってこ institutionalのコミュニティガーデンです。

 

運営主体は住民ですが、ニュージーランドでDIYの大型チェーン店を展開する「Mitre 10(マイター10)」が、物置小屋を建てる際のサポートをしたり、ガーデニング用具を寄付したり。

 

ほかにも、地元の芝刈り会社が、“堆肥用に”と刈った草を山盛りくれるなど、人々の善意に支えられ、運営されているようです。

 

作物はどれもオーガニック。中にはネットをかけたものもあります。これは、ニュージーランド原生の鳥「プケコ」よけ。

 

ガーデンのすぐそばには小川が流れていて、水辺が好きなプケコがやってきて葉野菜などを食べてしまうからだそうです。

 

ネットの支柱は日用品で要らなくなったものを使っています。苗を守るために、上下のふたを取った空き缶をかぶせます。

 

手持ちのものを工夫して畑に取り入れているようです。キーウィはお金をかけずに、何でも手作りするのが上手です。

 

収穫した作物は、実際に作業をしている参加者が分け合ったり、誰もが自由に取っていけるよう「パタカ」と呼ばれる食品用の小型倉庫に置いたりします。パタカは常に一般人が見られるようになっています。

 

コミュニティガーデンの活動に参加していなくても、そこから作物をもらっていっていいのです。

 

私も、顔を出しただけだったのですが、「もう収穫しないと花が咲いてしまうから」と、新鮮なレタスとケールを両手に抱えきれないほどいただいたのでした。

 

パタカ(食品の小型倉庫)に入っている一般の人へのおすそ分け用作物。パタカは、麻繊維の建築資材で作られている © Mari Sato-Clothier

 

このようにコミュニケーションの重要な場ともなっているコニュニティガーデンですが、実は地域のさまざまなプロジェクトにも協力しています。

 

私が訪ねたマーフェル・コミュニティガーデンは、将来、農業や園芸の道に進みたいという近隣の高校の生徒に、週に一度農業を学ぶための場として提供。

 

また、13~15歳の子どもたちを対象に代替教育を行っている若者グループは、その受講生向けのプロジェクトをマーフェル・コミュニティガーデンで行っています。

 

具体的には、市内のレストランやカフェと提携し、食材としては使えなくなった余剰食品を回収し、ガーデン内で肥料作りをしているのです。

 

一方、企業もマーフェル・コミュニティガーデンに一目置いています。

 

麻の繊維を用いた建築資材を使って敷地内に食品用の小型倉庫(パタカ)を建てたのが、ニュープリマスを含むタラナキ地方のビジネスを支援する組織。

 

このあたりの気候は、麻を生育するのに適しているといわれ、麻の繊維を地元産業の一つにできないかと、同組織は検討中です。

 

ガーデン側は、日光や雨風を避けて食物を保管できるので助かる一方、この組織にとってみれば、麻の繊維を利用した建材をより多くの人に見てもらえる機会になります。

 

今やコミュニティガーデンは、コミュニケーションのハブ機能を持つまでになっているのです。

 

今やコミュニティガーデンはさまざまなプロジェクトとコラボレーションする場となっている © Mari Sato-Clothier

 

さて話を少し戻して。私がマーフェル・コミュニティガーデンを訪ねた時、5人ほどが作業をしていました。

 

そのうち、いろいろなことを教えてくれたマギーさんは、参加してまだ2年と聞き驚きました。

 

マギーさんは、ニュープリマスに引っ越してきた当初、前から住んでいた息子夫婦を通じての交流がほとんどでした。

 

しかし、独力で「知り合いや友人をつくりたい」と思い立ち、近所のマーフェル・コミュニティガーデンに来るようになったそうです。

 

 

今では、ほかの人とおしゃべりしたり、相談に乗ったり。初めての参加者にも気軽に話しかけ、このガーデンのよさを伝えています。

 

マギーさんを見ていると、コミュニティガーデンでは、作物だけではなく、友情も一緒に育まれているのだとつくづく感じます。

 

ここまでコミュニティガーデン事情をご紹介してきましたが、冒頭でもご紹介したようにニュージーランド人は、とにかくガーデニングが大好きです。

 

最後に、私の家の近くに住むアンディ・クラークさん一家の家庭菜園をご紹介します。ニュージーランドの、熱心なガーデナーの家庭菜園は、こんな感じです。

 

アンディさん一家は家庭菜園作りにとても熱心です。7年ほど前に現在の場所に引っ越してきて以来、野菜を育て、果樹を植えてきました。

 

家の裏庭にある菜園は、緩い階段状になっていて、上段にはウメやライム、グァバ、レモンバーベナ(和名 コウスイボク)などの木があります。

 

レモンバーベナは葉を数枚採って、お湯を注ぐと、レモンに似た爽やかな香りのハーブティーになります。

 

さらに、小さめのスペースの中段にはイチゴがぎっしり植えられています。ここはアンディさんの娘さんが大好きなエリアで、夏にはイチゴを自分で摘み、その場で食べ、楽しんでいるそうです。

 

私が訪ねた時、旬にはまだ早いものの、いくつかはもう実を結んでいました。

 

今日はどのイチゴを採ろうかな?  © Mari Sato-Clothier

 

下段にはローズマリー、カレンデュラ(キンセンカ)といったハーブ、ブロッコリ、ホウレンソウ、パプリカ、シルバービート(フダンソウ)などが育っていました。

 

シルバービートはホウレンソウの仲間で、ニュージーランドでは、とても一般的な葉野菜。ホウレンソウと同じようにお料理に使います。

 

新鮮な野菜が、キッチンの目の前にあるので、簡単に採ってお料理でき、とても便利そうです。

 

さまざまなハーブ類、葉野菜が生い茂る下段のスペース © Mari Sato-Clothier

 

家の側面には、格子状の支柱が立ち、エンドウマメやズッキーニが植えられていて、小型の温室ではさまざまなタイプのトマトの苗が育てられています。

 

さらに前庭には、ナシ、ミカン、キンカン、ブルーベリー、フェイジョア(フトモモ科の常緑低木)などのフルーツの木。

 

さらに窒素固定木、タガサステも植えられていて、空気中の窒素を取り込み、地力を上げるのに役立っています。

 

エンドウマメが支柱に巻き付こうと伸び始めていた。手前はズッキーニ  © Mari Sato-Clothier

 

アンディさんは家庭菜園を始めた理由を「オーガニックの野菜や果物を食生活に取り入れたいと思っても、買うと値段が高いため、家庭菜園で自ら育てることにした」と話しています。

 

両親、祖父母も家庭菜園作りが上手で、テクニックやスキルは先代・先々代譲りとのこと。

 

自らも奥さんのマナさんとともにウーフィング(有機農場などを無給で手伝う代わりに、食事や宿泊場所、知識・経験をホストから提供してもらう)をしたり、専門学校でオーガニック農法を学んだり、今でも「学びは尽きない」と言います。

 

果物の木が実を実らせるのに、何年もかかったり、作物をうまく育てられない時があったり、忍耐力が必要ですが、それでもアンディさん一家は菜園作りが大好き。

 

菜園での作業は「癒し」であり、「マインドフルネスに通じている」からなのだそうです。

 

「まさに癒されてきたからこそ今までずっと菜園作りを続けてこられたし、この先も続けていけるのです」と話してくれました。

 

来年夏までの目標は温室を造ること。これからも家庭菜園は、新鮮な作物と豊かな心をアンディさんご一家にもたらすことでしょう。

 

このようなニュージーランドの家庭菜園の楽しさを知り、「私も始めたい!」という人は、初心者であれば1坪(畳2枚分)の広さがあれば十分です。

 

ただ、用地の覚悟が難しい場合はベランダに置いたプランターで、お気に入りの野菜やハーブ類を育てるところから始めてみるのはいかがでしょうか。

 

慣れてきたら、プランターの数を増やしていきましょう。ぜひ自分だけの家庭菜園にトライしてみて下さい。

 

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更新日: / 公開日:2026.02.27